消えた凶器
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2部分:第二章
第二章
「犬好きでも猫好きでもだ」
「確かに。普通はそうなりますね」
「この場合は関係ないな」
また言う署長だった。
「関係があるのは執事の凶器だ」
「では少し話を聞いて考えさせてもらいます」
「考える。いつもの様にか」
「私は座って考えるので」
そうした形で事件を解決していくというのだ。事件の話を聞きそのことについて椅子に座ったまま細かく考えてだ。そうして推理をするのだ。
そのエルキュール=ポワロやネロ=ウルフの様なことをして事件を解決する。それが警部のやり方だった。そしてであった。
警部は今日もそのやり方をすると言ってだ。そうしてだ。
署長に対してもだ。こう述べた。
「では。これから捜査ファイルを細かいところまで読み」
「それからだな」
「事件を解決します」
こう述べてだった。警部は。
刑事課の部屋に戻りだ。自分の席に座ってだ。そのまま資料を隅から隅まで読んだ。そのうえで部下のヴェローナ警部補に言った。
「全て頭に入ったよ」
「事件の解決に必要なことはですね」
「うん、入ったよ」
そうだというのだ。自分の側に立つ若い彼に対して。
「成程ね。屋敷の中に化石があったんだね」
「昔の恐竜の」
「女性問題はともかく面白い趣味だったんだな、ファリーナ氏は」
警部は彼のそうした趣味については素直に称賛した。
「恐竜の化石を飾る趣味があったなんてね」
「それでその化石ですが」
「ティロサウルス。さらに面白いね」
「どうした恐竜だったんですか?」
「鰐に似ていたけれどその足はどれも鰭だったんだよ」
「というと魚みたいな」
「そうさ。完全に海生の恐竜でね」
さながら鯨の如くだ。そうした恐竜も多かったのだ。
「それでだったんだ」
「海ですか」
「成程、それでこれがその恐竜の化石か」
警部は今度は屋敷に飾ってあるその恐竜の化石を見た。かなり大きくしかも全身が揃っているだ。見事な化石がそこにあった。
しかしだ。ここでだ。
警部は見た。恐竜の化石をだ。
「ああ、アバラが一本足りないね」
「アバラ?」
「そう、化石のアバラの骨がね」
「アバラがですか」
「それに犬」
警部は犬のことも言った。
「犬だ」
「?どういうことでしょうか」
「とにかく。容疑者は一人に絞ってある」
その執事にだ。これは変わらないというのだ。
「アリバイも何もかもが成り立っていないのだから」
「犯行動機もありますし」
「しかし詰めがない」
問題はそこだった。
「そこを抑えれば事件は解決だ」
「では余計にですね」
「証拠を見つけなければ」
警部は言う。そしてだった。
化石を見続ける。そして犬の写真もだ。執事が飼っているその犬だ。
見れば黒いマスチフ犬だ。何処か悪魔めいた外見をしている。黒い大きく引き締まった身体に紅い舌だ。そうしたものを見てだ。
警部はだ。犬に目を止めた。しかしだ。
犬からも化石からも目を離しそしてだ。次はだ。
屋敷と執事の家の写真、捜査で手に入れたそれをどれも隅々まで見た。特に屋敷の台所を見た。そこには全てを砕く様な強いミキサーが排水溝のところにあった。それも見た。
そうしてそのうえでだった。警部はこうしたのであった。
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