逆襲のアムロ
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26話 アクシズ、起つ 2.10
前書き
更新が大分遅れました。
仕事が多忙で何もできませんでした。
さて、続きです。(誤字、脱字、文面のおかしな点色々ご指摘宜しくです)
サイド2とサイド6・・・
0079年に壊滅したサイド2は各企業の参入により、既に40バンチ近いコロニーが再生されていた。元々ラグランジュポイントであるサイドをそのままにする程、不利益なことはない。
サイド6のいくつかのコロニーが中立宣言を無視したジオンのグレミー軍によって占領されていた。
彼らがそこに居る理由はある勢力の牽制、打倒を目指していたためであった。
それがサイド2に居るゼナ派のジオン軍。移動用小惑星アクシズを携えて、地球圏に帰って来ていた。
グレミーはあくまでサイド6は補給拠点用での使用のみに限定していた。
全てを網羅するには余りに手駒が少ないためである。
* エンドラ級巡洋艦 ミンドラ艦橋 2.10 13:10
サイド6の宙域の外、公海にあたる宙域でグレミーの部隊はアクシズに向けて進軍していた。
斥候でプルがアクシズの防衛ラインの偵察に出掛けていた。
ミンドラの艦橋でグレミーが腕を組み直立不動で望遠モニターを通してアクシズを見つめていた。
「あのアクシズに住まう者を追い出すことが出来れば、私が天下を獲る足掛かりになる」
御年17になるグレミーは血気盛んで野心に満ち溢れていた。
シャリアはそのグレミーの危険性をギレンに伝えていたが、
「フッ、全面に出ている野心など取るに足らん。才気煥発で良いではないか。仮に奴が統治の才能を私を上回るとしたらば、淘汰されるのは私が道理だろう。それも人類のためでもある。その才能が見えん限り、私の相手ではない」
と、一蹴されていた。
グレミーの傍にはプルツーが居た。
プルシリーズと呼ばれるクローン達。彼女等は常にグレミーの傍らで親衛隊であり、遊撃隊であった。
グレミーの部隊はゼナ派との数々の戦闘でラカンを始めとする猛者、側近を失っていた。
戦略、戦術レベルでの力量不足がグレミーを苦しめていた。
自身でも経験の差と言うものを現場に立って、都度痛感していた。
しかし、ギレンは決して手を差し伸べたりしない。それはグレミーから望まなかったこともあったためであった。自身の力で出来ないことには先に立ち憚る強大なライバルには勝てないからだった。
そこもグレミーの若さ故の心情だった。
グレミーは率先して、人材確保に励んだ。制圧していったコロニーでは以前の統治体制を見直し、住民の支持を集めようと試みていた。それに付随して、優秀そうな人材の噂を聞いてはスカウトに励んだ。人心掌握の面も怠る事なく若いながらも努めた。
急場を凌ぐ上でグレミーはアステロイド・ベルト時代からの研究であった人道的な観点で非難されるクローンや強化人間を生み出し、その戦力利用のために愛情を注いでいた。プル、プルツーなど言ったクローンを戦場に送り出して戦力の均衡を補っていた。
そして艦橋には窓際の方にビーチャ・オーレグとジュドー・アーシタが居た。
彼らはサイド1の出身であったが、この数年の戦いの中で才気ある子供たちをグレミーは求め、見出していた。
グレミーはその彼らへの厚遇を怠らなかった。元々ジュドー達は生活苦で戦乱に巻き込まれていた為、そこに差し出したグレミーの誘惑に乗ってしまっていた。
「君らに給金を出そう。君たちはあんな戦乱の最中生き残ることができた。それは才能だ。私たちは時代を変え、君たちの様なひとをも豊かにする世界を実現したいのだ」
グレミーの本心だった。覇道を歩むために、その先にあるのは統治者としての地位。彼はギレンと同様に才能ある新人類こそ世界を牽引していくと考えていた。
彼は未だギレンに及ばないことを知っていた。それをまずは人的要因で補うことから始めようを考えていた。
ジュドーは妹のリィナを学校へ通わせるようグレミーに伝えた。グレミーは了承し、それに快くしたジュドーは参加を決め、ビーチャも金になるならばという下心で志願。それにエル・ビアンノとモン
ド・アカゲ、イーノ・アッバーブとジュドーとビーチャは誘い、皆グレミーの下で働いていた。
グレミーは支配者、統治者の為の帝王学に通ずる書籍を貪欲に読み漁り、努力をしていた。その姿勢にジュドー達は共感を受け、グレミーへ信頼を寄せていた。
グレミー自身もこの3年で変化を自覚していた。それは勉学、経験によるものでグレミー為りに人情味というものが芽生えていた。
「なあグレミー。アクシズの戦力はどのくらいなのか?」
ジュドーがグレミーに尋ねた。グレミーは艦橋中央より一蹴りで体を無重力に任せて、ジュドーたちの下へ降り立った。
「今の我が軍よりは少ないはずだ。大体が元々ジオンだ。あそこの支持者はゼナの私軍。マハラジャとユーリーぐらいが大物で後は小粒よ」
ビーチャがそれを聞くと、鼻で笑っていた。
「フフン、じゃあすぐに片付くかな」
ビーチャの発言にグレミーが少しため息を付いて、ビーチャへ話した。
「ビーチャ。窮鼠猫を噛むという。これまで数々の戦闘で倒してきたゼナ派であのラカンも散ったのだ。戦争は遊びではない」
「ちぇ・・・わかってるよ」
ビーチャはグレミーに軽く窘められ、ふてくされていた。その姿に傍に居たプルツーが笑っていた。
「ックックック・・・ビーチャは才能は有るのに、成長がないな」
「なんだと!」
「これだけの戦闘を重ねてきてジュドーらを見習え。彼らの戦い方はサポートしながら、戦局を見ながら戦っている。何故か?それは被害を抑えるためだ」
「しかし、オレが一番の撃墜スコアだぞ!」
ビーチャはプルツーに反論したが、プルツーはバッサリ切り捨てた。
「ゴールしたのはお前だが、アシストは他の仲間だ。これを見ろ」
プルツーは傍にあるデスクから戦闘詳報の束をビーチャに渡した。
ビーチャはそれに目を通すと険しい顔をした。
「・・・嘘だ・・・」
「機械・・・カメラ、映像は嘘は付けない。計算されたデータだ。お前の戦果報告は5人の中でも一番下だ」
ビーチャは下に俯いた。ジュドーは困った顔をして、グレミーを見た。
「おいグレミー。プルツー、厳しくないか?」
グレミーは少し笑い、ジュドーの気持ちを汲んでビーチャに語り掛けた。
「ビーチャ。お前の長所はその破壊力だ。しかし、それをみんなのサポートあっての発揮される力だと言うことを忘れてはならない。そのデータからそれを読み取って欲しかったのだ」
ビーチャはパッと笑みを浮かべた。そしてプルツーにギロっと睨んだ。それを見たジュドーがビーチャの頭を叩いた。
「いてッ!・・・何するんだジュドー!」
「バカか!プルツーの言いたいこと、グレミーがフォローしたこと。全て聞いていなかったのか!」
「っぐ・・・お前に言われたくない!」
そう言ってビーチャは艦橋から飛び出していった。
ジュドーは「全く」と呟き、プルツーもため息を付いた。そのビーチャと入れ違いでエルが艦橋に入って来た。
「ん?・・・何かあったのビーチャ?」
エルが手をポケットのパーカーに入れながら、ジュドー、グレミーの傍に近付いてきた。
ジュドーがエルの質問に答えた。
「ビーチャはちょっと自信過剰なんだよ」
「そんなの今に始まった話じゃないじゃない」
「それをデータでプルツーに突っ込まれて、拗ねたんだ」
エルはため息を付いて、ビーチャの出ていった扉を一目してから再びジュドーへ目線を戻した。
「確かに・・・。ビーチャを救うために、私たちも無茶してきたものね」
先日のゼナ派との戦闘でイーノとモンドがビーチャの退路をこじ開けるために腕と足をそれぞれ骨折し、戦線離脱していた。その原因となったのはビーチャだが要因となった敵をビーチャは葬り、その仇を晴らしていた。
ビーチャはより敵意をむき出しにし、ゼナ派を倒すべく邁進していた。その姿勢にジュドー、エル、プルツーと心配していた。ジュドーも頷いていた。
「ああ。ビーチャの破壊力は凄まじいが、あいつの自惚れがイーノたちを危険に晒した。それをあいつ自身は敵を葬ることで気を晴らし、顧みることがない。全く問題だな」
「そうねえ。ビーチャ・・・。あいつはリーダー気取っていてさ。いつも先頭を切っていたね~」
エルは困惑した顔で空を仰いでいた。
ビーチャは癇癪を持ったまま、モビルスーツデッキへ降りてきていた。
メカニックの一人にビーチャは声を掛けた。
「おーい!オレのドーベン・ウルフは整備大丈夫か?」
声を掛けられたメカニックは一言「問題ない。いつでも」とビーチャへ返した。
すると、ビーチャはドーベン・ウルフに乗り込み、艦橋に発信許可を求めてきた。
オペレーターよりグレミーに進言してきた。グレミーはため息を付いて、「ジュドーに任せる」と言った。ジュドーは先の斥候で出撃していたプルの帰投が若干遅いことをグレミーに伝えた。
「なあグレミー。プルの奴遅くないか?」
「ん?そうだな・・・ゼナ派のアクシズ防衛ラインを確認するだけだったのだが・・・」
「じゃあ、尚更ビーチャに見に行ってもらうことにしよう」
「・・・成程」
グレミーはジュドーの直感を論理的に理解をした。
プルの戻りの遅さとビーチャの猪突猛進。敵の布陣とプルの行方を一挙両得で派手に分かる可能性を見出していた。
発信許可を得たビーチャは得意げに操縦桿を握り、クワンバンより出撃していった。
ジュドーはモニターでそれを見届けると、自身もモビルスーツ内で緊急体制を取るとグレミーに具申した。
「グレミー。念のため、オレもZZ(ダブルゼータ)の中で待ってるよ」
グレミーはジュドーの意見を了承し、ジュドーは艦橋より退出していった。
一方のビーチャは予測地点である両派閥の軍事境界線のデブリ地帯に付いていた。
モニターのサイコ・フレームによる干渉波と熱源測定を使い、周囲を隈なく探していた。
サイコ・フレームの干渉波の測定はミノフスキー粒子の濃度に問わないサイコミュ搭載機体の発見に役立っていた。
ビーチャの手元には多くのサイコミュ反応が示されていた。小さな反応が多い。
「・・・これは。遠隔型のサイコミュの反応・・・。プルか」
ビーチャがそう呟くとその反応あった方向へ機体を進めていった。
すると、ビーチャに目がけて無数のビームが全方位より飛んできていた。
「!!・・・なんだと!」
ビーチャは夢中で避け、至る箇所が損傷した。一番酷い所だと片腕が無くなっていた。
たかが一撃でとビーチャが驚いていた。その攻撃の正体がファンネルだと気付いたのは、
目前に現れた白いキュベレイだったからだ。
「・・・白いキュベレイ・・・。プルのとは違う・・・」
ビーチャは白いキュベレイから発せられるプレッシャーに金縛りにあった。
「な・・・何故動けない・・・」
キュベレイはビーチャに目がけてビームサーベルで真正面から切りつけてきた。
ビーチャがやられると思ったその時、ビーチャの脇から紫のキュベレイがビーチャに体当たりをして、
キュベレイの攻撃から逃れた。
「ビーチャ!」
「プルか!」
紫のキュベレイも両腕が無く、満身創痍の状態だった。
ビーチャがプルに声を掛ける。
「大丈夫か!帰ってこないから心配したぞ」
「ビーチャ、余りにも目立ち過ぎだよ。そんなんじゃすぐ見つかってしまう」
「それって奴にか?」
ビーチャがそう呟くや否や、白いキュベレイのファンネル攻撃がビーチャとプルに降り注いできた。
プルも残りのファンネルで応戦したが、数と精度によって圧倒された。
ビーチャも有線式インコムでの応戦を試みたが、全くかすりもしない。
「こいつはヤバい!引くぞ、プル」
「できるならやっているよ!」
そう、プルの言う通り。キュベレイのファンネル攻撃とその機体の動きが逃げる方向へ回り込まれては
退路を断たれていた。
ビーチャの機体がキュベレイからの攻撃を喰らい、大きく揺れた。
「グワッ・・・っつ・・痛っ・・・成程な・・・」
「ビーチャ!」
「ああ・・・逃げられそうにない」
ビーチャは死を覚悟した。キュベレイと真向から勝負して撃破し、退却する。
それしか道がないと考えた。
ビーチャはビームサーベルを構えると、白いキュベレイも同じく構えた。
その時、プルが背後に気配を感じ、ビーチャに伝えた。
「ビーチャ・・・終わりだよ・・・」
プルの震える声にビーチャが後ろも確認した。
すると、ノイエ・ジールと青いリゲルグが1体ずつビーチャたちを挟むように鎮座していた。
「万事休すか・・・」
それでもビーチャは構えを解かなかった。戦意が残っているビーチャに白いキュベレイから
発光型のオープンチャンネル回線で声のみで降伏を勧告してきた。
「そこのモビルスーツ。既に勝ち目は無い事は承知なはずだ。武装を解いて、素直に投降してもらいたい」
その声は若い女性の声だった。とても柔らかく優しい声だ。ビーチャはそう感じた。
ビーチャはグレミー、ジュドー等を思い浮かべ、心の中で謝罪した。
「(済まない・・・オレはここまでのようだ・・・)」
ビーチャは覚悟を決め、プルに伝えた。
「プル!お前は降伏しろ。オレは最期まで戦う!」
ビーチャの告白にプルが怒りに震えた。
「何バカ言ってんの!ビーチャだけ死なせる訳にはいかないよ!2人で戦うよ!」
「フッ・・・お前も意外にバカだったんだな・・・」
「なっ・・・ビーチャに言われたくない!」
こうして2人とも決意を固め、白いキュベレイに同じ回線で回答した。
「と、言うことだ。このまま戦闘を続けさせてもらう」
白いキュベレイは少し間を置き、「承知した」と一言の後、ノイエ・ジールとリゲルグと合わせて
挟み撃ちを仕掛けてきた。
「ラルさん、ガトー少佐!この子達を無力化します」
「分かったハマーン。子供を殺す趣味は無いからな。行くぞガトー!」
「ああ。承知したラルさん」
ガトーはクローアームでドーベン・ウルフの足を捥ぎ取り、体勢を崩したところにランバ・ラルが残りの腕をビームサーベルで綺麗に切り取った。
その攻撃でビーチャと距離が開いたプルにハマーンがファンネルで誘爆しないようにプルのスラスターを破壊し、同じくビーチャもそのように措置をした。
「素直にはいかなかったが、投降してもらう」
ハマーンがそうビーチャたちに宣告したとき、側面より無数のビームが襲来した。
ハマーン、ガトー、ランバ・ラル共にすぐ回避行動を取り、散開した。
ランバ・ラルが索敵モニターを見た。すると3機のモビルスーツがすぐ傍まで来ていた。
「敵に更なる援軍だ。どうするハマーン」
ランバ・ラルがハマーンに確認した。ハマーンは敵の出方を見ると即断した。
「敵が救助に来たことは明らかです。こちらとて彼らを鹵獲したい。むやみな取引はしない。仮に敵が容赦ない場合はこちらが一撃で葬られる恐れがある。距離を保ち、牽制しましょう」
「了解だ」
ガトーはハマーンの指示通り、襲来した3機の敵に向かい威嚇射撃を行った。
もちろん距離がある、そして狙いを定めた訳でもないので当たることはない。
ビーチャの応援にやって来たのはジュドーのZZとエルのゲーマルク、そしてプルツーの赤いキュベレイだった。
「ビーチャ!生きているか!」
「ジュドー!ああ、生きてるぞ!」
ビーチャの声を聞いたジュドーは胸を撫で下ろし、すぐ目の前の敵と対峙した。
ジュドーは意識を目前の敵に向けて、放った。そのプレッシャーに3人ともたじろいだ。
「何という・・・抑圧・・・」
ガトーが歯に力を入れて、ジュドーの圧力に耐えていた。
ランバ・ラルはスーッと深呼吸をして、自身に喝を入れ、ジュドーに目がけて一太刀を浴びせに襲い掛かった。
「そのガンダムの性能、測らせてもらう!」
ランバ・ラルはジュドーの乗るZZの顔がガンダムの作りから、そう口にしていた。
ジュドーの頭上より振り下ろされたビームサーベルはジュドーのサイコ・フィールドの境界ではじかれた。
その斥力にランバ・ラルのリゲルグはよろめき、ジュドーは自身のビームサーベルでランバ・ラルのリゲルグの胴を打ち抜こうとした。
しかし、ランバ・ラルはスラスターを使い、重心軸を反時計回りに回転させて、その打ち抜きを空かした。その後、リゲルグのビームサーベルの出力を最大に上げて、ジュドーに再び振り下ろした。
すると、ジュドーはビームサーベルで受けた。
互いにサーベルが鍔迫り合いしている間、両者の声のやり取りができた。
「ふう・・・ニュータイプとやらは戦うに難儀する」
「むっ!オレのフィールドを突破してくる敵とはやるな!」
「フフ・・・オールドタイプでも、精神の勉強を怠らなければ、無我の境地に至れるという話だ」
「おっさん、古武術の心得でもあるのか?」
「いや、お前らを研究してきたものからの対応術さ。サイコフレームは精神論での機構だ。条件とタイミングでお前たちに攻撃は通る」
ランバ・ラルはリゲルグのスラスター出力で競り合いに勝ち、ジュドーを後方へ吹き飛ばした。
ジュドーは飛ばされた振動に耐えていた。
「っぐぐぐ・・・やるな、おっさん」
ジュドーが体勢を立て直している間にガトーが攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃にエルとプルツーが応戦した。
「簡単に取らせないよ」
「お前らにビーチャ、プルは渡せない」
プルツーはファンネルで、エルもマザーファンネルをノイエ・ジールに向けて攻撃した。しかし、ビームは全てI・フィールドにより無効化された。
「フン、笑止!ノイエ・ジールに効く訳がない」
ガトーは大振りでビームサーベルをエルのゲーマルクに振り下ろした。エルもビームサーベルを取り出し、それを受け止めようとしたが出力差に大きな違いがあった。
「何・・・コレ!デカい過ぎるよ」
接近してきてから気が付いたノイエ・ジールのスケールにエルは驚愕し、反射的に後方へ避けた。
しかし、避け切れなかった機体のビームサーベルで受けた腕がノイエ・ジールの一撃で持ってかれていた。
「うわあ・・・っつ・・・私のサイコ・フィールドを無視するような出力の攻撃!」
ゲーマルクもサイコフレーム仕様でエルもニュータイプだった。しかし、ガトーの攻撃の出力がエルのサイコ・フィールドの力場をねじ伏せる攻撃力だった。
「ほう、避け切ったか。やるではないか」
ガトーはエルの反射神経を褒めた。プルツーがガトーの背後より、ビームサーベルで攻撃してきた。
「このデカブツ!これでもらったーっ!」
絶妙なタイミングでのプルツーの攻撃はハマーンの横槍によって阻止された。プルツーの側面からハマーンはビームサーベルで攻撃してきた。
プルツーは直感でキュベレイの右腕を犠牲にして、横に急速旋回して難を逃れた。
ハマーンは「おしかった」と言った直後、プルツーと入れ違いでジュドーがハマーンの目前にサーベルを抜いて迫ってきた。
「なんだと・・・」
ハマーンは驚愕して、ジュドーの攻撃に応対した。ハマーンはファンネルを使いながらジュドーの前進を阻んだが、ジュドーは迫りくるハマーンのファンネルをサーベルで撃ち落とし、その数を減らしていった。
「私のファンネルが撃墜されている。ラルさんは?」
ハマーンはジュドーがランバ・ラルと戦っていたことを思い出した。戦いながらランバ・ラルと連絡を取ろうと試みていた。
「ラルさん!応答願います」
「・・・zz・・・ああ、ラルだ!ハマーン済まん。出し抜かれた。すぐ向かう!」
ランバ・ラルはジュドーとの戦闘でジュドーを見失っていた。ジュドーは直感で味方の危機を察知し、ランバ・ラルとの戦闘を一方的に切り上げて、ハマーンのいる戦場へ移動していた。と言っても目と鼻の先であるが。
その直感がプルツーとエルを救っていた。
ジュドーは徐々にハマーンのキュベレイに肉薄していった。ハマーンはジュドーの実力に若干の分の悪さを感じていた。
「(こいつは強いな)」
そうハマーンは感じた。ジュドーはハマーンへの攻撃途中で、後背よりガトーが攻撃を加えてきた。
「このガンダムが!」
ジュドーはその攻撃を後ろに目が付いているかの如く、あっさり避け切り、代わりに出力を絞ったハイメガキャノンをノイエ・ジールの直近で食らわせた。
「なっ!・・・うぐっ・・・」
ガトーはコックピット内の強烈な揺れにより、一瞬気が飛んでいった。
ノイエ・ジールは全身焼け爛れた損傷を被り、ゆらっと後方へ流れていった。
後方に流れていったガトーと交代したかのように、ランバ・ラルのリゲルグがジュドーに目がけて突進してきた。
「これ以上はやらせん!」
ランバ・ラルはジュドーにビームサーベルを浴びせた。ジュドーはビームサーベルでそれを受けた。
「またおっさんか!」
「ああそうだ!若造よ。お前に大義名分などあるのか!」
「そんなの真の平和を目指すオレ達にはナンセンスだよ」
ランバ・ラルは高らかに笑った。ジュドーの答えに納得していた。
「そうだな。大人の言うことなど、大抵屁理屈だ。そんな大人だが、お前らのようなヒヨっこよりはましな世界を現実的に見据えているよ」
「それはオレ達は飲むわけにはいかないんだよ」
ジュドーは今度は競り合いに勝ち、リゲルグを後方に下がらせた。
すると、今度はハマーンがジュドーに直接仕掛けてきた。
「隙ありだガンダム!」
ハマーンの一撃はジュドーのZZの肩部の一部を切り裂き、片腕が損傷して動かなくなった。
ジュドーは接近してきたキュベレイに攻撃を受けた直後に足でキュベレイの腹を蹴り飛ばしていた。
「う、うわーっ」
ハマーンは叫び上げて、コックピット内の振動に耐えた。
ハマーンのキュベレイが飛んでいくのを見てから、ジュドーは脇見をして、ニヤッと笑った。
エルとプルツーが既にビーチャとプルを回収し、この空域を離脱しつつあった。
ジュドーもランバ・ラルがハマーンの傍に寄るのを見ては距離を取り、一気にこの空域より離脱していいった。
ハマーンが軽い脳震盪から脱して、目の前のモニターを見た時、既にガンダムの姿はなかった。
通信回線でランバ・ラルの呼びかける声が聞こえてきた。
ハマーンは自らのノーマルスーツのヘルメットを脱ぎ、ピンクのボブヘアーをコックピット内になびかせていた。
「大丈夫かハマーン」
「・・・ああ、問題ない。ガトー少佐はどうです?」
全身焼かれた色をしたノイエ・ジールがハマーンの傍まで来ていたことをハマーンは感じ取っていた。
「ああ。こちらも機体の外傷だけだ。オレ自身は問題ない」
ハマーンは人的被害が無かったことに安堵した。
そしてハマーンは総括した。
「敵は間近のようだ。それに手強い。今まで劣勢でいた理由が理解できた」
ガトー、ランバ・ラルともに頷く。
「彼らの想いは大人の範疇より外れている。前から知っていたが、彼ら、グレミー達の想いは純粋だ。だから余計にたちが悪い」
「そうだな。所詮我らの理屈など、彼らの理想とは程遠い」
ガトーはそう述べた。3人共ギレンの野望、グレミー軍のこと、そしてその内情と、この3年間でかなり精通していた。
「しかし、子供が戦場にとは・・・やり辛い」
ランバ・ラルも含め、誰もがそう思っていた。グレミーの軍構成、所謂モビルスーツパイロットの構成が大体10代だった。大人が子供を殺すことになる。理由があれど、したくないのが心情、本心であった。
「私らはゼナ様の思想に従ってきた。反ギレンと言う思想だ。一個人の私怨では、中々戦意に限界がある」
ハマーンがそう発言すると、ガトーが頷いていた。
「そうだな。ギレン総帥のやり方に反発する、その考えだけでこの3年間戦い抜くにはモチベーションが難しいな。私も外に出て改めて気付いたことがあった」
ガトーの話にランバ・ラルが尋ねた。
「ふむ。それは?」
「世界の実情だ。ゼナ派に属してからは、今までの軍の括りから離れた。ゼナ派にはそういった思想的な規律が皆無だった。ハマーンの父君のマハラジャ様から世の理を学んだ。その上でゼナ様を助けて欲しいと・・・」
「マハラジャ・カーンか・・・。あの傑物は大した見識だ。ガルマ様と同じものを見ていた」
ハマーンは父の話題が上がり、ランバ・ラルにその同じものについて聞いた。
「ラルさん、同じものとは?」
「柔和的な地球圏の統一さ。スペースノイドの真の自立。地球と対等のな。そのために使者、いやむしろ指導者がアクシズに到着するはずだ」
「指導者?一体何者でありますか?」
「シャア・アズナブル。本名、キャスバル・レム・ダイクン。ジオンの遺児だ。スペースノイドの真の独立の柱として相応しいと私は思う」
「シャア・・・アズナブルか・・・」
そうハマーンは呟いた。戦時中で幾度も聞いたジオンの若き伝説のエース。彼のカリスマならばゼナを支え、ギレンを打倒できるかもしれないとハマーンは思っていた。
一方のガトーはシャアならば戦を終わらせることが出来るかもしれないと考えていた。同じジオン同士で殺し合うこと自体がナンセンスと思っていた。
ランバ・ラルが2人に帰投するように促した。
「さて、ご両人。旗艦のサダラーンへ参ろうか」
ハマーン、ガトー共了承して、ランバ・ラルの後に続いて機体を旗艦の方へ発進させていった。
* サダラーン 格納庫内 同日 16:45
無事帰投した3機はそれぞれの収納籠に収まった。ノイエ・ジールのみがスケールの性質上、艦内の別格納庫に収まった。
ガトーがコックピットの入口を開けると、目の前にニナが居た。
「ガトー・・・」
ニナは悲しい顔をしながらもガトーの胸に飛び込んでいった。
「おいおい・・・ニナ・・・どうしたんだ」
「だって・・・ノイエ・ジールがこんなにボロボロだから・・・。貴方が心配で」
ガトーはニナの頭に手をやり、宥めていた。
「フッ、私ならこの通り無事だ。お前の整備してくれたこの機体のお蔭で今日まで、そして今日も生き延びれたのだ。礼を言う」
「ガトー、ううん・・・こちらこそ」
ニナは仕事上で他のチームと共に営業と研究すべく、ゼナ派の下へ来ていた。
ガトーは機体から出ると、多少ふら付きながらもニナに支えられて床に降り立った。
その降り立った傍にアストナージ・メソッドがニナの傍に近寄ってきた。
「よう、お二人さん。いい形で再び元鞘に収まって良かったね~」
アストナージはスパナを自分の頭の後ろにやりながら、ガトー達をからかっていた。
ガトーは微笑し、ニナは反発した。
「アストナージさん!プライベートの事です。貴方は干渉しないでください」
「へ~い。わかってやすよ~。ノイエ・ジールの整備は我々アナハイムのチームに任せてください」
アストナージがガトーにそう伝えると、ガトーは「ああ、頼む」と頷いた。
アストナージは後方に従えたチームへ呼びかけて、ノイエ・ジールに続々と取り付いて行った。
ガトー等は艦橋に戻ると、そこにはガルマ、ゼナ、ユーリー提督、ランバ・ラル、ハマーン、そして見たことの無いオールバックの金髪の男性が赤いジオンの軍服を身に纏い、そこに居た。
「来たか」
その男がそう呟いた。ガトーはその迫力に息を飲んだ。肌で感じるその迫力は紹介されるまでもなく、あの赤い彗星だと言うことをガトーは認識した。
ガトーは敬礼をし、ニナは不安そうにその金髪の人物を眺めた。
「シャア大佐でありますか。自分はアナベル・ガトー少佐であります。お目に掛かれて光栄であります」
「フフフ・・・そう固くならずとも良い。私は貴方程ジオンに忠誠心ある者でもない。よくぞ生き延びてくれた。私はそれが嬉しい」
シャアはガトーに声を掛けた。ガトーはシャアを真っすぐ見ていた。
シャアはこれからのゼナ派についての指針をガトーに説明をした。
「既にマハラジャ、ユーリー両提督、こちらのゼナ様にも説明済で了承を頂いている。ゼナ派は今日を持って解体され、新・ジオン、ネオ・ジオンを旗揚げし、私が旗頭になることになる」
驚愕の方向転換にガトー、ニナともに唖然となった。理由を聞きたかった。
「何故です!我々は・・・、ゼナ派でのジオン再興を・・・」
ガトーはそう言いながらも、ゼナ派での支持限界を感じていた。それが現在のグレミーに押されている要因でもあった。その説明をガルマが代わりに担当した。
「ガトー少佐。私はガルマ・ザビだ。知っておろう」
ガトーはガルマの事は勿論既知だ。そのザビ家の者が語る話に全て任せようと思った。
「ザビ家は既にギレンの独裁体制だ。もはや戦争当初のジオンの形は失われた。彼はそれを結論排除した。ジオンの将兵にしても、思想の支え、大義名分が失われた。よってガトー少佐のような露頭に迷うものまで出てきた」
ガルマは後ろに腕を組み、少し歩いた。
「今大事なことは、世想が向くベクトルだ。ギレンも、私らも、地球連邦も次のステージに向いている中でゼナ派だけは取り残されている。これは支持する将兵にとって、余りにも残酷だ」
ガトーも言えなかったが、そう感じていた。ゼナは下に俯いていた。
「ゼナ義姉さんも私情に囚われることなく、世界を見据えることを7年掛けて、ようやく決断してくれた。有難う義姉さん」
ガルマの微笑みにゼナはため息を付いた。
「・・・そうですね。私の、私に従ってくれた。亡き夫の無念をアクシズの分裂まで招いて、多大な犠牲を伴ってまで、お付き合いして頂いたこと、感謝しておりますが、それ以上に後悔しております。結局の所、私は夫の様に武人でもなければ、政治家にもなれない半端者です」
ユーリーはゼナの話に助言した。
「いえ!ゼナ様はむしろ私たちの求心力の為に利用されたのだ。償うならば私とマハラジャ提督に罪がある」
ゼナはユーリーに手の平を向けて、否定した。
「私がいけないのです。良かれと思ったこと、夫の仇。全てが複合して、私が音頭を取りました。しかし、支えてもらっても力及ばずだったのです。ガルマさんの提案を飲む時が来たのです」
ガルマはゼナの話に頷いて、話を戻した。
「ゼナ派はギレン派と対抗するためには、それなりの政治的な大義名分で対抗しなければならない。最早、ザビ家のお家騒動では至難ということで、こちらのシャア・アズナブル大佐。本名キャスバル・レム・ダイクンに立ち上がっていただくことになったのだ」
ガトーは更なる衝撃を受けた。シャアがジオン・ダイクンの遺児だと言うこと。そして同時に理解した。ジオンの思想を体現するに相応しい人物だと。ガルマは話を続けた。
「今の連邦の悪い所は特権意識。あれも所謂独裁体制だ。多少は連邦組織というものを一度解体したりして、見直さなければならないと思う。国、地域の再生だ。連邦はそのただの抑止力の時代に戻す」
ガトーはガルマの展望を自分の中で消化していった。
「様々な勢力が独立して統治しても良い。まあ元々、国あっての連邦組織だから極端だが、武力闘争にある程度の目処を付けて、対話の時代にしたのだ。考え方、思想などを厳密に1つに強制するから歪が出る。世界を1つの括りに出来るならば、元来戦争や紛争など起こらん。ある程度の落としどころ、均衡が大事だと思う」
ガルマが全て話終えた。ガトーは深く息を吐いた。そして覚悟を述べた。
「私の喉の痞えが取れました。もやもやしたものがです。シャア大佐の下で、ガルマ様の語った理想実現のために粉骨砕身で働かせて頂きます」
ハマーンは少し寂し気な顔をしたが、シャアに腕を組みながら話し掛けた。
「私も頼む。このアクシズ、ゼナ様、ミネバ様、そして父が好きだ。どうかより良い方向へ導いてくれないか?」
シャアはハマーン、ガトー両名に「勿論」と答えた。
「戸惑いが多いかもしれん。ただ対話していくことには時間と労力を惜しまない。何分協力者がいる」
シャアは艦橋の皆を見回して、決意を語った。
「私は新生ジオン、ネオ・ジオンの総帥となり、このアクシズを中心にスペースノイドの独立を実現するために決起する。柔軟から断固な部分まで対話し、必要ならば武力を用いる。今更ながら展望に芸はない。ただ、選民意識など謳う奴らをジオンにしろ、連邦にしろ野放しにはしないということだ」
シャアの話に艦橋に居る全員が頷いていた。すると、未確認機の接近の警報が鳴り響いた。
オペレーターがシャア達に叫んだ。
「本艦に接近中の機体、小隊規模です。方向からしてもティターンズによるものかと・・・」
「追ってきていたか・・・」
シャアがそう呟いた。ランバ・ラルも腕を組んでぼやいた。
「大佐の後を付けられましたな。どうされます?」
シャアは少し考え、自分が出撃することに決めた。
「私が出よう。ハマーンやランバ・ラルは出撃して帰ってきたばかりだ。それでメンテナンスに入っている。これではスクランブル出来ない」
「私ならば別にキュベレイでもなくてもよいが・・・」
「私もリゲルグでなくても別機がありますよ」
2人の提案をシャアは退けた。もう一つシャアには考えがあった。
「実は時間的にもそろそろ合流ポイントに差し掛かるのだ。ロンド・ベルのブライトとそこで待ち合わせていてね」
何度驚かされたことかとハマーンとガトーは思っていた。
それについてガトーが質問した。
「最早、敵味方等・・・語るにも馬鹿々々しい限りですが、ロンド・ベルと何故?」
シャアはガトーに視線を合わせ、答えた。
「アクシズにロンデニオンからジオン仕様の新型量産機を納品するために合流するのだよ」
「新型量産機ですか・・・」
「AMS-119ギラ・ドーガだ。機体性能ならば世代トップクラスだ。これで外敵からの武力に対抗する」
シャアがそう話し終えると、再びオペレーターより入電が入った知らせが来た。
「前方に識別不能艦確認。及び通信が入ってきております」
「きたか。繋いでくれ」
そうシャアがオペレーターに頼むと、艦橋の大型モニターにブライトの顔が映し出された。
ブライトもサダラーンの艦橋の様子が見え、ガルマが居ることを確認すると敬礼した。
「これは・・・ガルマ議員も搭乗されていたとは・・・」
「フッ、敬礼には及ばんよ。よく来てくれた」
ガルマは前髪を軽く手ではねのけた。ブライトは少し笑い、再び話し始めた。
「この連邦の艦にジオンカラーの緑の機体が沢山載っていることにいささか滑稽に感じるが、ラー・カイラム以下クラップ級3艦率いまして、アクシズへ納品する機体を持って参りました」
ブライトの報告にシャアが笑顔で答えた。
「有難うブライト。これでスペースノイドは救われる」
ブライトはサダラーンに近付く後方の敵にロンド・ベルが牽制しようと提案を持ちかけた。
それにシャアは了承した。
「頼む。私も出るが、数がいささかいるのでな」
「分かりました。ジェガン隊もケーラ中尉を先発で出撃させます」
そう言って、ブライトは通信を切った。
シャアは艦橋よりモビルスーツデッキへ向かうため、皆に伝えた。
「では、私はこれより出撃しますので失礼」
誰もシャアを呼び止めなかった。パフォーマンスにしろ、これから率いていくリーダーが自ら先頭に立つという事実をそのうち皆が欲するだろう。それを見せる良い機会でもあったからだった。
金色の機体がカタパルトに乗り、発進の合図を待っていた。
「大佐。進路クリアです。いつでもどうぞ」
オペレーターの声がシャアの耳に聞こえた。シャアは黄土色のノーマルスーツを身に纏っていた。
「了解した。後方の敵を撃退する。百式出るぞ」
シャアの乗る金色の機体は星々の海へと身を委ねていった。
後書き
と、まあ世界は一括りできないので、何事も解決には至りません。
誰もが良いことやカッコよいことは言わないし、できないし、しない。
誰にとって都合よい世の中に善悪の区別すらナンセンスではないかと考えます。
どの勢力も一枚岩になれません。それもまた組織たる所以ですね。
また、ちょっと書くのが遅れると思います。
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