魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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第34話 フェリア帰郷
「ふぅ、やっと着いた」
お土産の荷物を持ち、フェリアが呟く。
スカリエッティのアジトに着くまで転送5回以上。しかも結構歩いて次の転送装置のある場所まで移動するのでかなり時間がかかっている。
「あっ!?フェ、チンク姉〜!!」
フェリアを見つけたセインがすかさず駆け寄った。
「久しぶり!!それとおかえり!!」
「ああ、ただいま」
「よっす、セイン」
「よっす!…………ってレイ!?」
「そうだよ久しぶりだな」
そこには私服姿の零治がいた。フェリアと同様にお土産の袋を持っている。
「何でここにきたの!?ドクターに魔導師だってバレちゃうよ!!」
「恐らくとっくにバレてるよ。だからゴールデンウィークの後に接触してくると思ってたんだが、それもない。だから今回何考えてるか話してみようと思ってな」
「でも………大丈夫なの?」
「いざとなったら逃げるさ。それにお前たちもいるしな」
「微妙だよ、トーレ姉やクア姉もいるし………」
「大丈夫だって、なんとかなるさ」
笑いながら言う零治にセインは不安を感じながらもそれ以上反論はしなかった。
「大丈夫だ、心配することない」
「うん分かったよ。じゃあ、行こう」
セインも覚悟を決め、2人をアジトに案内した……………
「で、誰なのですか?」
アジトに着いた3人だったが、早速ストップをかけられた。
ストップしたのはクアットロだ。
「チンクちゃん、男を連れてくるなんて一体どうしたの?まさか結婚報告とか?」
「この人はあっちでお世話になっている有栖零治だ」
「ああ、あの戦闘機人と戦っていた………私はNo.4クアットロと言います」
「クワトロ?」
「クアットロです!!………それでなんのようです?」
「スカリエッティに話がある」
「ドクターなら忙しくてあなたの相手をしている暇がありません、要件なら私が………」
「いいわお連れして」
「ウーノお姉さま!?」
「失礼しました、こちらにどうぞ」
零治はウーノに連れていかれた。
取り残された3人は………
「…………まぁおかえりと言っときますわ」
クアットロはそう言って自分の部屋に行ってしまった。
「えっ!?」
「どうしたの?そんな驚いた顔をして」
「クアットロがお帰りだと…………!?」
「ちょっと、チンク姉!?」
あまりのショックにフェリアはその場でしばらく呆然としていた………
俺は紫の髪のお姉さんに案内され扉の前に来た。
「ここにドクターがいます」
「ありがとうございます」
俺はお礼を言って、ドアの中に入っていった。
「待っていたよ、はじめましてだね。私はジェイル・スカリエッティ。ここの責任者になるのかな」
「有栖零治…………知ってると思うけどな」
「そんなに警戒しないでくれ。別に危害を加えるつもりはないよ。ウーノ、コーヒーを2つ持ってきてくれないか?」
「了解しました、ドクター」
入口付近にいたウーノが部屋から出ていく。
「取り敢えずそこの椅子にでも座ってくれ」
俺の予想以上に部屋の中は綺麗だった。
もう少し機械の部品やらが散らばってると思ったけど………
「で、君は私に用があって来たんだろう?」
「っと、そうだった。単刀直入に聞くけど、何故仕掛けてこないんだ?」
「……………何のことだい?」
「俺達の戦闘も見ていたんだろ?なのに何もないことが逆に不気味でな。だから直接聞きに来たんだ」
「なるほど、だけど君たちに危害を加えることはないよ。チンクやセイン、ノーヴェにウェンディも君たち家族を気に入ってる。娘達の為にも危害を加えるつもりはないさ」
軽い口調でスカリエッティが言う。
しかし、スカリエッティってこんなに優しい雰囲気だっけか?
もっと不気味な感じだと思ってたけど………
「ドクター、コーヒーを」
「ありがとうウーノ。零治君、君はブラックで大丈夫かい?」
「ああ、ありがとう………」
俺はまだ戸惑いながらもコーヒーを受け取る。
「………………」
「大丈夫だよ、コーヒーには何も入ってないから」
信じられるか。
「………まぁいい。それじゃあ、今度は私が君に聞きたいのだが………」
「なんだ?」
「君は黒の亡霊か?」
「……………何故だ?」
「まず、君のこの能力」
そう言ってパネルを操作し、ディスプレイにあの時の戦闘の映像が映る。
「ここだ」
その映像は星を触り、一緒にジャンプしている映像がスローモーションで再生される。
「君は敵の砲撃を避けるのに、彼女を触って転移した。距離は短いが黒の亡霊の転移と同じようだった。そう思い二つを比べてみたんだが………」
「どちらも魔力を使っているが、普通の転移とはスピードが違いすぎる。それに魔力の消費が普通の転移とは桁違いに魔力を使ってない。その辺からこの二人は関連性があるのではないかと思ったのさ」
見事に正解だわ………………
前にも言ったように俺のボソンジャンプの利点は、スピードと魔力の消費量。
普通の転移みたいに違う管理外世界には飛べないけど、その分、瞬間移動みたいにその場から一瞬で消え、現れることができる。ブラックサレナは少し長距離を飛べるようにしたため、消える時と現れるときに3秒ほど時間がかかるのが唯一の欠点だ。
逆に普通の時の欠点は転移の距離が短すぎる事。
欠点には気がついてないが、どのような能力かは当たっている。
流石だな………
「で、私の推測はどうだい?」
「……………正解だよ。全く恐れ入った。流石はスカリエッティと言ったところか。…………で俺をどうするんだ?もうお前の目的の黒の亡霊は目の前にいるんだぜ」
諦めた訳じゃないが、これ以上誤魔化せないだろう。
だったらいっそ……………
「俺には待ってる家族もいるんだ。悪いが抵抗させてもらうぞ。ラグナル!!」
『久々の登場!いつでもOKですよ!!』
ラグナルもやる気満々だな。
フェリアやセインたちには悪いが、敵対するぞ!!
「落ち着いてくれ、もう君に手を出すつもりは無いよ」
スカリエッティはデバイスを出した俺に、慌てず答える。
「何故だ…………?」
「セイン達から聞いたのさ。君たちはセイン達を戦闘機人と知りながら家族だと言ってくれた。私はそんな君に興味を持ったのだよ。それで一度ゆっくり話してみたいと思っていたのさ」
コーヒーを手に取り、そう言ったスカリエッティ。
「お前が………!?」
「私としても不思議でね、何故こんな風に思うようになったのかと………」
昔の自分を思い出しているのか、上を見ながら答えた。
「今は娘達の変わりようを見ていた方がとても楽しいのさ。そうだ、聞いてくれ!この前セインが私にクッキーを焼いてくれたんだ!!味はしょっぱかったけど、あの嬉しさは今までに味わったことのないものだった!!」
いきなり力説し始めるスカリエッティに俺も戸惑う。
キャラ違くないか?
「他にもクアットロが周りの娘たちとうまくなじめてないんだ、せっかく大きな大浴場を作ったのにクアットロだけ入らないし………年頃の娘は難しくてね………」
いや、あんたが皆女の子にしたのがいけないんだろ。
「それは私も悩んでいることなんです」
入口で聞いていたウーノが話に加わってくる。
わざわざ自分の椅子を用意して…………
「服も着ないでいつまでもあのボディスーツを着ていますし………言ってもきかないんです………」
なんか相談会になってる気が…………
その後も俺は二人から色々と愚痴を聞く羽目になった………
『また私は空気なんですね…………デバイスいらないんじゃないですか?』
「遅い………」
ドクターの部屋に行ってから2時間は経っていると思う。
「チンク姉………」
「ああ、少し遅すぎるな」
「大丈夫っスよ、案外ドクターと話が盛り上がってるんじゃないんスか?」
「それはねぇだろ………」
ノーヴェの言葉にウェンディ以外の2人が頷く。
「分からないっスよ〜。そうだ!!せっかくだからみんなで迎えに行くっスよ!!」
「えっ!?でもウーノ姉に怒られないかな?」
「いや、行こう」
「チンク姉の言う通りだ。あんな奴でも私達の家族だしな」
ノーヴェの言葉に3人は頷いた。
「それじゃあ、レッツゴーっス!!」
ウェンディの掛け声で4人はスカリエッティのラボへ向かった………
「着いたっス〜!」
4人は今、スカリエッティの部屋の前にいる。
「さてそれじゃあ………」
「入るっスよ〜!」
「「「ちょ!?」」」
勝手に中に入っていく末っ子の行動に慌てる姉達。
だが…………
「どうしたんだいウェンディ?」
「お腹でもすいた?クッキー食べる?」
スカリエッティとウーノの反応は普通だった。
「あっ、食べるっス。………って違うっス!!レイ兄はどこっスか!?」
キョロキョロと周りを見て探すウェンディ。
だが零治の姿は見当たらない。
「まさか、ドクター!!男の体まで興味を持ち始めたのじゃないんスか!?」
「んなわけあるか!!」
後ろからウェンディの頭にチョップを食らわせる。
「痛い〜!!ってレイ兄、無事だったんっスね!?」
そう言って飛びつくウェンディ。
だが、零治はそれを避けた。
「あぐっ!?」
「うわっ、痛そう………」
「避けることはないんじゃないか………?」
「何されるか分かったもんじゃないからな。それとノーヴェ久しぶり」
「お、おう………」
フェリアの後ろから返事をするノーヴェ。
っていうか隠れるなよ。
「フフッ、ノーヴェも嬉しそうですね」
「そうですか、俺にはそう見えないんですけど………」
「私のカンはよく当たるのよ」
「本当ですか?ウーノさん」
「どうかしらね」
「どっちなんスか………」
「あれ、なんかフレンドリーじゃない?」
「そうだな。零治、一体何があった?」
「えっ!?別になんにもなかったんだけど………」
取り敢えず、話した内容を簡単に話した。
「零治が黒の亡霊だったとは………」
「あの時に言ってくれればよかったのに………」
「私達は正直に話したのに、零治は嘘ついてたんだな………」
「最低っス、見損なったっス………」
ジト目で見られる俺。
まぁ隠してたのは悪いと思うけどさ………
「まさか、完璧に気づかれるとは俺も思ってなかったんだよ………」
そう言いながらスカリエッティを見る零治。
「まぁいいじゃないか、こうして話せて面白かったよ」
「まぁ俺も楽しかったけどさ………」
「もうすっかり仲良しっスね」
意外と話があって俺も驚いてるけどな。
俺も最初は星達に苦労したからな………
「まあな。ってそうだ!ウェンディ、ちょっと手伝え」
「何をっスか?」
「それは、ごにょごにょ」
「ふんふん………ごにょごにょ?」
「ボケんでいい。それでやってくれるか?」
「モチっス!!これでクア姉に仕返しが出来るっす………」
フッフッフと嫌な笑みを浮かべるウェンディ。
何か恨みでもあるのか?
「じゃあスカさん、ウーノさん。取り敢えずやってみるわ」
「ああ」
「お願いね」
「了解。それじゃあ行くぞウェンディ、案内よろしくな」
「了解っス!!」
二人はそのままスカリエッティの部屋を出ていく。
「待て、私も行くぞ!!」
「私も!!」
「セイン、待って!!」
フェリア、セイン、ノーヴェも2人に付いていく。
「やっぱり彼といると違うね」
「それほど、彼の存在が大きいのでしょう………」
そう言うが、羨ましそうにみんなが出ていった方を見るウーノ。
「羨ましいかい?」
「そうですね………おそらく羨ましいのだと思います」
「そうか………ウーノ、君も変わったね」
「そう言うドクターこそ」
そう言ってお互い笑い合う。
「だが、決して悪くない」
「そうですね、私もそう思います」
「今度は彼の家族全員で来て欲しいものだな」
「その時は盛大に迎えましょう」
二人は画面で零治達の様子を見ながら話したのだった………
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