進撃の幼子。
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【第1部】
【第1章】幼子世界を超える。
自己紹介します。
エルヴィンはスヤスヤとリヴァイの腕の中で眠る幼子から視線を外すと、リヴァイに問いかけました。
「何故捨て子だと思うんだい?迷子かもしれないだろう?」
「チッ。胸糞悪い手紙があったからだ。・・・こいつだ。」
リヴァイは手紙を取り出すと、机の上へ手紙を投げます。
無言でそれを手に取ったエルヴィンは、封筒の中から手紙を取り出し読みました。
「この子をよろしく・・・か。この塀の中では子供は宝だ。孤児が存在する場所など地下街しか・・・。そんな子供の運命なんて売り飛ばされるか、女なら・・・。否、やめておこう。リヴァイ。そう睨むなよ。」
「そんなこと、俺が一番知ってんだよ。・・・この目で見てきたんだからな。」
「・・・ああ。そうだったね。すまない。」
エルヴィンはチラリと手紙に視線を送ると、引っかかっていたことを口にします。
この世界には珍しい文字、そして今はもう希少とも言えるその髪色、エルヴィンは辿り着いた可能性がほぼ間違いないものだと確信していました。
「この手紙の文字。東洋人が使っていたものだろう。私やリヴァイは読むことが出来たが・・・。これは処分した方がこの子のためにもなるだろう。髪色は黒いが、瞳の色はどうなんだい?」
「・・・黒だ。」
「・・・そうか。リヴァイ。ゆずだったね。その子をどうするつもりなんだい?」
「分からねぇ。・・・だから連れてきた。俺はどうすればいい?」
エルヴィンに絶対的な忠誠を誓っているリヴァイにとって、エルヴィンの決めた決断がすべてなのです。
自分がどうこう思おうが、どうしたいと思おうが、エルヴィンが否と言えば否なのだ。
エルヴィンは自分に忠実な部下であるリヴァイを見据えると、ふぅ・・・と小さくため息をつきました。
「そうだね。それでは言い方を変えよう。リヴァイ。君はその子をどうしたい?」
「・・・・・・俺は。」
リヴァイが何かを言おうと口を開いたところで、腕の中で眠っていた幼子が身じろぎし、なんとも気の抜けた声が聞こえます。
「んにぃ・・・。ぅー・・・?」
「起こしてしまったね。おはよう。ゆず。」
エルヴィンは優しげに目元を緩めて話しかけると、ゆずは聞き慣れない声にぴくんと小さな頭を起こして、リヴァイの腕の中でキョロキョロと頭を動かします。
リヴァイは静かな声で、ゆずにエルヴィンが見えるように少し体を捻ると、『あっちだ』と小さく言いました。
「っ!?おいたん、だぁれ?」
「・・・・・お、おいたん。私はエルヴィン。どうかエルヴィンと呼んで欲しい。」
「俺はリヴァイだ・・・。」
「えりゅ、いんっ。りあいっ。」
なんともたどたどしい言葉に、まともに名前を呼んでくれないだろうと判断したエルヴィンは、仕方ないと諦めました。
結局、何度言い聞かせても、似たような発音しか出来ず、エルヴィンは『えりゅ』、リヴァイは『りぃ』になってしまいました。
「それで、リヴァイ。ゆずをどうしたい?」
「・・・俺が・・・育てる。」
「そうか。将来的に調査兵団の力になるかもしれない。この子は調査兵団で保護することにしよう。」
「っ。・・・ああ。」
リヴァイはエルヴィンが何のメリットを感じる事無く動く事はないと改めて感じましたが、それでもこの腕の中で見上げてくる大きな瞳と、胸元のシャツを握る小さな手を離したくないと感じていました。
報告を終えてリヴァイは調査兵団の現在の拠点にしている施設へと向かう事にしました。
この本部は上官や他の兵団の出入りが激しく、兵士たちは別の場所に拠点を置いているため、リヴァイはこの本部でゆずを保護することは考えていないのです。
「りぃ。おそと、いきゅの?」
「ああそうだ。ゆず。もう一度飛ぶことになるが平気か?」
「っ??こ、こあいにょ、やぁー。」
「チッ。仕方ねぇ。高く飛ばねぇし、ゆっくり飛んでやるから慣れろ。」
門を抜けてリヴァイは立体起動装置を使おうとすると、後ろから追いかけてきたエルヴィンが声をかけます。
その手には布のような物が握られていました。
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