ロックマンゼロ~救世主達~
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ロックマンゼロ3
第29話 壊れた宇宙船
前書き
ロックマンゼロ3
忘却の研究所に封印され、永き眠りから覚めた伝説のレプリロイド・ゼロは、シエル達レジスタンスと共にネオ・アルカディアを支配するコピーエックスを倒した。
ネオ・アルカディアの恐怖は去ったものの、深刻なエネルギー不足に悩まされる日々…。
シエルは新しいエネルギー研究に全力で取り組み…新たにエルピスが、レジスタンスの司令官となった。
ゼロはかつて初めてレプリロイドを開発した天才科学者、Dr.ケインの地下研究所で、かつての戦友・ルインを目覚めさせ、ゼロとルインは互いの力を合わせて作戦を成功させていく。
しかし…エルピスは、強さを求めるあまり、かつて世界を滅ぼしかけた力…ダークエルフを目覚めさせてしまう。
ダークエルフの力に自分を見失ったエルピスを激しい戦いの後、止めることには成功したが、ダークエルフはどこかへと飛び去ってしまった……。
ダークエルフを巡る戦いは、まだ終わってはいないのだった……。
それから二ヶ月後、ダークエルフの悪夢も一時去り、ネオ・アルカディアからの攻撃も沈静化してきたある日、レジスタンスの元に巨大な宇宙船が雪原に落ちたという情報が入る。
その現場にダークエルフと同一の強力なエネルギー反応があると知ったシエルは、ゼロとルインとレジスタンスの仲間と共に調査に向かった。
雪原を歩くゼロとルインの後ろにはシエルと二人のレジスタンス兵。
「静かだな…最近…ネオ・アルカディアの攻撃も殆どないし…全く…平和になったもんだ。」
「シエルさんが研究していた新エネルギーも、ついに完成したし…これでエネルギー不足が解消したら…ネオ・アルカディアも俺達と戦う理由がなくなる…ってもんだよな。」
「実はね……新エネルギー…システマ・シエルのこと、ネオ・アルカディアに伝えてみたのよ…。返事は…まだ、だけど…ね。」
「大丈夫ですって!もうすぐ返事が来ますよ!!“もう、戦う理由が無くなった。これからは、共に生きよう”……ってね!!」
「君達、作戦行動中は静かにしてね?」
「作戦行動中だ……黙って…歩け…」
周囲を警戒しながら、ゼロとルインは雑談をしているシエル達に注意する。
「ご、ごめんなさい。反応が強くなってきたわ。この辺りのはずなんだけど…」
しばらく歩くと、ダークエルフと似たエネルギー反応のある付近まで辿り着き、ゼロとルインは辺りを見回す。
「雪が酷すぎて、周りがよく見えないよ」
レプリロイドのカメラアイのセンサー機能をフルにして目を凝らしてもまるで見えない。
「あ、でも…雪が晴れてきましたよ」
レジスタンス兵の言う通り、雪が晴れ始めて辺りが見えるようになってきた。
「お、おい…あれを見ろ!!」
レジスタンス兵の一人がある場所を指差しながら叫んだので、全員の視線がそちらに向いた。
それはかなりの大型の宇宙船であった。
「ちょ…何なのあれは…?もしかして…船?あんな馬鹿でかい船が宇宙から落っこちてきたわけ!?」
「ええ…それも…この世界に、たった一人しかいないはずのダークエルフと…同じエネルギー反応を出しながら…ね……。ゼロとルインには、反対されたけど…。どうしてもこの目で確かめてみたかったの…。この世界に……一体…何が起きようとしているのか」
「……ゼロ、あれを見て。パンテオンだよ」
ルインが指差した先にはネオ・アルカディアの主力レプリロイドのパンテオンがいた。
「ああ、ここから先はネオ・アルカディアの警戒線が張ってある……。」
「何ですって!?」
「俺達がルートを確保するまで、お前達はここで待機しろ……。」
「ルートを確保したら通信を寄越すから」
「分かったわ……気をつけてね…ゼロ…ルイン……」
「うん」
二人は武器を構えると一気に突き進む。
雪の中に潜んでいるメカニロイドや砲台のようなメカニロイドを斬り捨てながら進み、近くまで来ると入り口らしき場所が二ヶ所ある。
「もしかしたら、中に敵が沢山いるかもしれない。別ルートで侵入しよう」
「ああ」
ゼロが右の入り口の方に向かい、ルインは左の入り口に向かった。
「この奥……か、ダークエルフの反応があったのは……ダークエルフはどうしてゼロのことを知っていたんだろ?世界を滅ぼしかけたサイバーエルフが、どうして…それに、このエネルギー反応には、ゼロの反応も紛れてる…?昔のゼロの…」
今、自分と共にいるゼロのエネルギー反応は自分が知るイレギュラーハンター時代の物とは微妙に違っていたのだ。
もしかしたら改修か何かされた際に変化しただけなのかもしれないが、それにしてはこのエネルギー反応は酷似し過ぎている。
『ルイン、聞こえる?』
「え?聞こえるけど?」
『良かった…ゼロと通信が繋がらなくなっちゃって…その船の中では通信が出来ないようなの』
「なる程ね。了解、シエル。それより通信閉鎖するよ…どうやら敵が近いようだからね」
『えっ、ご、ごめんなさい……』
ルインが注意すると、シエルが謝罪したその時である。
『伏せて!ネオ・アルカディアか!?』
『シエルさん、下がって!!』
『キャアッ!!』
レジスタンス兵の叫びとシエルの悲鳴と共に通信が切れてしまった。
「シエル!?みんなどうしたの!?返事をして!!」
敵にやられたのか?
最悪な想像が頭を過ぎるが、上空から高エネルギー反応を感知して上空を見上げると、緑のアーマーを纏うエックスに似た青年がいた。
「ハルピュイア…」
「ルイン…」
「久しぶり…だね…。エックスのパーツを渡して以来…だね」
「ええ…」
エックスのボディをエルピスから守れなかった罪悪感からか、ルインはハルピュイアを直視出来ないでいる。
それでもハルピュイアに聞かなくてはならないことがある。
「シエル達に何したの?」
「ご安心を。Dr.シエルを含めたレジスタンスに手出しは致しません。ルイン、今すぐDr.シエルとレジスタンスの者達を連れてこの場を立ち去って頂けませんか?」
「どういうこと?」
「説明している暇はないんです。ルイン、今すぐこの場を立ち去って下さい。いいですね」
それだけ言うと、ハルピュイアはこの場を飛び去った。
「……………」
『ル…ルイン。聞こえる…かしら……?』
「シエル、無事だったようだね。ここから先は私達だけでやらせてもらうから、君達はレジスタンスベースに戻っていてくれるかな?何だか嫌な予感がするの』
『で、でも……』
ルインの言葉にシエルは戸惑うが、宇宙船から聞こえてきた声にルインはハッとなって宇宙船の方を見つめる。
「グオオ…ッ」
「何なの…この声…初めて聞くのに、どこか懐かしい感じがする…」
宇宙船から聞こえてきた声は初めて聞くはずなのにどこか懐かしいものを感じた。
ダークエルフに酷似した反応に僅かだけ混じっているゼロの反応が何を意味するのかを確かめるために、ルインは通信をOFFにすると宇宙船の中に突入した。
宇宙船の中にはメカニロイドとパンテオンがおり、こちらに向かってくるパンテオンとメカニロイドを返り討ちにする。
先に進むごとに何かの激突音が強くなっていき、奥にあるシャッターを開くと、ゼロと巨大なレプリロイドが戦っていた。
あの巨大なレプリロイド…初めて見るはずなのにどこか懐かしい。
しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。
敵のゼロへの攻撃が激しくなっており、あまりの攻撃の激しさにゼロは反撃のチャンスを掴めないでいる。
ルインはZXセイバーをチャージすると、一気にダッシュで距離を詰めてチャージセイバーを叩き込んだ。
「グ…オオ……!!」
チャージセイバーのダメージで、レプリロイドの腕が地面に落下した。
「ごめん、ゼロ。遅くなったね。あれは何なの?」
「奴はオメガ。どうやらネオ・アルカディアはこいつの破壊に来ていたようだが、ファーブニルとレヴィアタンが既にこいつにやられている」
「あの二人が!?」
ファーブニルとレヴィアタンの二人がオメガというレプリロイドに敗北を喫したという事実にルインは目を見開いた。
次の瞬間、オメガの両腕は元の位置に戻る。
「ゲッ!?」
「ちっ…しぶとい奴だ」
「サンダーストライク!!」
次の瞬間、オメガに無数の雷が降り注ぎ、再びオメガの両腕が地面に落下した。
「この電撃は…」
ルインとゼロの前にハルピュイアが静かに降り立った。
「お前がオメガ…か…お前のような者をここから出すわけにはいかん。ここで…破壊する!!」
双剣・ソニックブレードを抜き放ち、オメガに斬り掛かろうとした時であった。
「クーックックックッ…オメガよ…。その位にしておけ。お前は今日から…ネオ・アルカディアのメンバーとして、この方と共に戦うのだ…。仲間になる者を殺してしまっては、居心地も悪かろう…」
「グ…オオ…バイル…サマ…」
突如聞こえてきた老人の声に、今までの暴れっぷりが嘘かのようにオメガは大人しくなった。
「ネオ・アルカディアの…メンバーだと!?何者だ!?」
ハルピュイアが鋭い声を飛ばすと、オメガの隣に一人の老人が姿を現した。
「クーックックックッ…我が名はバイル…。Dr.バイルだ…。名前くらいは聞いたことがあろう?四天王ハルピュイア、そして…伝説の英雄ゼロ…英雄のなり損ない…ルイン」
「何で私の名前を…」
「百年前の時点ではまだ貴様の存在は知られておったからのう。エックスとゼロに比肩する性能を持ちながら、最初の大戦で倒れ、英雄になり損ねた存在としてな」
「ムカつく…」
嫌味な言い方にルインは顔を顰めた。
「Dr.バイル…だと!?馬鹿な!有り得ん!!100年前にネオ・アルカディアを追放されたはずのお前が、何故オメガを!?」
「僕が…呼ンだのサ」
ノイズが混じった声が聞こえた次の瞬間、目の前に現れた一体の蒼いアーマーを纏ったレプリロイド。
「エ…エックス…様!?」
存在を認識し、直ぐに跪いたハルピュイアに対してルインは信じられないという目を向けた。
「エックス!?そんな…どうして!?」
「ルイン、あいつはエックスじゃない。コピーだ」
「ギギッ…ハルピュイアか。フフ…変わりない…な。そしテ……会いタかッたよ……ゼロ。そレから…ルインにもね…バイルかラ聞いたヨ、オリジナルの仲間なんダろう?」
「君が…エックスのコピーなの…?」
見た目はエックスに似ているが、コピーエックスの纏っている雰囲気は全く別物だ。
「そノ通リ、オリジナルエックスの完璧ナる…いや、そレ以上のコピーだよ。君が二百年間、眠っテいる間、人間は今までにナい程の繁栄を取り戻した…。かつてそこニいるゼロやオリジナルのエックスでさえ築く事の出来なカった真のパラダイスがネオ・アルカディアに誕生シたんだ。この…僕ノお陰デね」
コピーエックスの発声機関に異常が生じているのかノイズ混じりの声だが、彼は不便と感じていないようだ。
「エネルギー不足やイレギュラー化の恐れがあるからって、無実のレプリロイドを大量に処分して?とんだ統治者様だね、私は君のやり方を絶対に認めない。」
「フフ…、君もゼロと同ジように愉快な人だネ…君と話せテ良かッたよ」
コピーエックスの視線がルインからゼロに向けられる。
「何故お前が…あの時、俺が破壊したはずだ」
「クックックッ……かつてお前に倒されたエックス様をこの儂が蘇らせた…。混沌としたこの世界から人間を守るためにな!!」
「バイルは…僕の命の恩人なのサ…。オメガは、回収スる…。ハルピュイア、お前は引き続き、ダークエルフの捜索に当たレ。オメガとダークエルフ…二つとも、これカらの僕達に必要な物だからネ…」
「し…しかし!エックス様!!この男が造ったダークエルフとオメガのせいで…どれだけ多くの人間が死んだか…。新エネルギーが完成し、エネルギー問題が解決するかもしれない時に…。人間を危険に曝すようなことは、お止め下さい!!」
ハルピュイアが声を大にして、コピーエックスにバイルをネオ・アルカディアに引き入れるのは止めさせようとする。
「エックス様に意見をするのか?ハルピュイア…いつからそんなに、偉くなった」
「くっ…バイル……」
悔しげにバイルを睨みながらも黙り込むハルピュイア。
「サて…ゼロ、ルイン。君達も…ダークエルフを探してイるんだろウ?競争と行コウじゃないか!!ギッ…ギギギッ…!今度は、負けないヨ…!!僕こそガ…本当の英雄なんダからネ!!」
ゼロに挑戦するように言うと、コピーエックスは転送の光に包まれてこの場を去り、ハルピュイアもオメガも同様に去った。
「クーックックックッ…。楽しくなってきたな、ゼロ…その体でどこまで出来るか…ルイン…英雄になり損ねたお前にどこまで出来るのかを見せてもらうとしよう!!クックックッ…」
意味深な言葉を言い残して、バイルもこの場を去った。
「その体…だと…?………」
「最後まで嫌味な奴……」
それぞれが呟いた直後に通信妨害が無くなったのか、シエルから通信が届いた。
『ゼロ…ルイン…大変なことになったわね……』
「モニターしていたのか……」
『二人共、すぐにベースへ戻ってきて。オペレーターさん…お願い』
『転送を開始します』
ゼロとルインが転送の光に包まれ始めた。
「(本当に気のせいなのかな?オメガからゼロの反応が僅かに混じっていたのは……)」
疑問を抱きながらも、ルインはレジスタンスベースに転送されたのだった。
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