IS〜もしもの世界
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
44話
ー次の日ー
「・・・・これは」
一夏が肩を震わせつつ叫ぶ。
「これはどうゆうことなんだああああああ!」
「一夏うるさいぞ」
「いや、泰人はなんで他人事なんだよ⁉︎なんで女子の体位を俺達が測らないといけないんだよ⁉︎」
「知らねえよ。大人しく諦めろ」
「くそっ!なにか、なにか手はないのか!」
そう叫ぶ間にも時間は迫る。
「そうだ!泰人が倒れたから保健室までいってサボろう!」
「そんなことしたら織斑先生と楯無さんに殺されるわ」
「なら俺が倒れたということで!」
「そしたら5人組に殺されるぞ」
「嘘だあああああ!」
「やかましい織斑」
断末魔の如く叫ぶ一夏を出席簿で叩く織斑先生。
「お前も男なら枢木のように覚悟を決めろ」
「ぐっ・・・そこまで言うなら、やああってやるぜええええええええ!」
無駄にテンションが高い一夏を尻目に俺は先生と話す。
「あ、じゃあ本人がやる気なんで俺は外で待機してますわ」
「なんだと?それではお前は測れないじゃないか」
「そこはまあ、心配ないですよ」
ちょうど測れたようなので先生に見せる。
「体位なんて必要ないと思ったんで、体重と身長、その他もろもろISで測っておきました」
とISを使ったという言葉に反応する前に
「ああ。俺のISって体と融合してて、常時展開してるようなんで。あと理事長にも許可を取ったので心配ないですよ」
画面をスクロールして一番下に「バレなきゃよし」
と理事長名義でサインされていた。
「って泰人だけなんで回避なんだよ!理不尽だ!」
俺と先生のやりとりで忘れかけていたようだが思い出してしまったのであと一歩で引き止められた。
「いや二人もイラナイジャン?」
「なんだその中途半端なチャラ男」
「それにお前がやりたいって言ったんだからなぁ?」
「くっ・・・・!」
「そうゆうことだ。お楽しみだし何かあったら駆けつけるから心配すんな」
必ず仕返ししてやるという顔をしたまま黙ってくれたので俺は廊下の備え付けのソファーに座る。とそこに織斑先生も座り話しかけてきた。
「枢木、少し話をしようか」
「はい?ええ暇なんで良いですよ?」
「単刀直入に聞くが、本当に後遺症は無いんだな?」
「・・・ええ、もう痺れも無くなりましたし完治しましたよ」
「なら何故お前のISはお前から離れない?」
「それは・・・すいません分からないです」
「そうか。でもな、私の勝手な見解だがお前のISは度々お前を守っているような行動をとっているような気がしてな」
「俺を、守る?」
「ああ。今回の件にしろ、福音の件にしろ。明らかにISの範疇を超えている」
「そうですかね。束さんならそれくらい1日で作りそうですが」
「ああ、あいつならやりかねん。だがお前のISは明らかにオーバーテクノロジーだ。お前のワンオフと武器がそれを表している」
「・・・それは否定はできないですね。でも使用者がこんななんで、今は心配ないですよ」
はははと笑う俺を冷ややかに見つめてくる先生。
「・・・お前は一体何を隠している、何故そこまで自分を隠そうとする」
「・・・!俺を隠す、ですか。また返答しにくい質問ですね。勿体ぶってはいないんですがね」
そうやって席を立つ俺は先生に言う。
「俺は、この世界にいてはいけない存在だから、ですかね。最近は本当に思うようになってきましたよ」
千冬は何処か遠くを見つめている青年をどこかで見たような気がしたが、すぐに気づく。
「枢木、お前は嘘をついている。お前のその目は私と出会う前の、束の目だ!本当は悲しくて、寂しくて、絶望している目だ。何がお前をそこまで追い詰めた?」
その言葉は俺の心に響いた。
「俺が寂しい?そうですねあながち間違いでは無いですよ」
はははと乾いた笑いをする俺は言葉を繋ぐ。
「でも、アホみたいな正義感に突き動かされてるからかこうやって自分を鍛え続けていますが、ふと思うんですよ。目の前で大切な人や仲間が傷ついて倒れていると。なんで守れないんだろう。って」
「枢木・・・」
千冬はぐっと唇を噛みしめる。自分もそんなことは何回もあった。そして今も。
「でもな枢木、お前がいたからこそ守れた人だっているんだ。そこを分からなくちゃいけない」
「・・・そうですね。でもね先生。人間ってのはそんなことで納得できないんですよ先生もそう自分に言い聞かせてること多いんじゃ無いんですか?」
その言葉をかけられたら押し黙るしか無い。実際、そうなのだから。
「俺は、俺は一夏のようにポジティブには生きられない。大切な人達が傷つくのには堪えられないんだ‼︎それなら俺が傷ついても壊れてでも守らないとって・・・!
初めて泰人が吐いた本音に狼狽する。まさか普段ニコニコとついさっきまで楽しく弟と話していた生徒がこんな気持ちを抱えていたなんて思いもよらなかった。
「・・・すいません先生。こんな愚痴を聞いてもらって。他の人には内緒にしてもらえますか?」
「あ、ああ」
「それとこれから喋る事も他言無用で」
急に雰囲気が緊張に包まれて千冬は厳しい表情をする。
「俺は、ある部隊を造ります。目的はまだ言えませんが学園には手を出さないと約束します。ですが、束さんが行き着く先が人が入る場所ではないところなら俺はー」
ある言葉を呟く。
「・・・!それを私にいってどうする?」
「先生にも頼みたいことがあるので先に言っただけです。理事長にも言ったのでこの秘密は三人だけの秘密です。決して、一夏達、それに楯無さんには特に。そこだけお願いします」
深々と頭を下げる生徒を見ながら千冬は喋る。
「なぜそこまで漏らしたくない?一夏はあれだが楯無達は口は割らないぞ」
「そこが問題なんですよ。割らなかったら割らなかったで自決しかねませんからね。ま、俺が捕まらせるようなことは命に代えてもさせませんが」
そこで千冬は悟る。この生徒。いや、この男は一番に仲間達を巻き込みたくないんだと。
「・・・つくづくお人好しだなお前は」
今までの泰人の行動を思い出しフッと笑う千冬に泰人もつられたのか笑う。
「否定は出来ませんね。それに」
「それに?」
「世界最強とその人を部下にもつ人を味方につけたんだから失敗はできない」
「少し思い込みが激しいんじゃないのか?私は口は割らないと言ったが仲間になるとは言ってないぞ?」
「理事長が支援してくれるって言ってたからその部下である先生は味方と同じでは?」
「・・・理事長が言ったのか?」
「ええ。轡木理事長は快く承諾してくれましたよ」
質問をしようとしていた千冬だが一夏がぶっ倒れたのに気づいた泰人はそのまま教室に向かっていった。
だが一つだけ千冬は言葉を漏らした。そして、その言葉をたまたま楯無は通りかかって聞いてしまった。
「枢木。お前の、お前が行こうとしているその道は確実に身を滅ぼすぞ・・・!」
千冬はわかっていた。その先には何もないこと。それがわかっていたから今こうしてIS学園にいること。しかしそれを言ったところで泰人が止まるなんてことはありえないこともまた分かっていた。
「・・・くそっ!私は、私はこんなところで生徒一人守ることも出来ないのか!」
「・・・・!」
その言葉を聞いた瞬間、楯無には寒気が走った。彼がどこかへ行ってしまう?どこへ?いつ?誰と?そういった思いが頭を駆け巡り、しばらく楯無はその場に動けないでいた。
ページ上へ戻る