IS〜もしもの世界
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43話
あれから数日経ち、体もほとんど治ったので休んだ日の差を埋めるべく鍛錬を始めようと久しぶりに来た生徒会の仕事を終わらせる。
「・・・よし、楯無さん。溜まってた書類はこちらで整理したんで置いておきますね」
「ん、ありがとう」
そしてぐぐぐっと背伸びをしていると虚さんが
「お疲れ様です。紅茶、淹れますか?」
と、聞いてきたので用事があるからまた今度と言って荷物をまとめる。
「・・・(じーっ)」
背中からでも分かるほど楯無さんの視線が感じられる。
「え、えと楯無さん?なんか書類に不備でもありました?」
「・・・え?い、いや何も無いわよ」
「そ、そうですか、じゃあ俺はお暇しますね」
「・・・(じーっ)」
「・・・・楯無さん?」
荷物をまとめて出て行こうとするたびにこの調子なのでいつまで経っても帰れない俺は、痺れを切らして楯無さんの所へ行く。
「・・楯無さん。いくら復帰したてだからって気を遣わなくていいんですよ?少し確認させて貰いますね」
と楯無さんの机の上の自分がまとめた書類を確認する。
「・・・あれ本当だ。別に間違ってねえや」
「・・・(ぼーっ)」
「おーい楯無さーん大丈夫ですかー?」
何故か惚けている楯無さんを起こすべく肩を掴むと
「・・・!きゃっ!」
「うおっ⁉︎・・・本当にどうしたんです?風邪ですか?」
と言っても冷暖房完備なこの部屋で早々風邪は引きにくい。
「な、な、なんでも無いわよ?それより、貴方また修行をするつもりじゃないでしょうね?」
「うぐっ。そ、それはなんといいますか。普段からしてないと遅れが取り戻せないというか、違和感があるというか」
実際、怪我はほとんど治っているので有り余っている元気を発散するべく今日は少しきつい鍛錬をしようとしていたのだが、それを悟った楯無さんが
「っ!駄目よ。まだ安静にしてないと!」
「だ、大丈夫ですよほら身体は治ってますって」
と腕を振ってみせるが全然納得しない楯無さん。
「・・・仕方ないわね。私が見ててちゃんと確認しないと」
不意にそんな事を漏らす楯無さんに場の三人(一夏は部活のお手伝いのため外出)は固まる。
「・・・は?」
「・・・ほへ?」
「・・・・あらあら」
ちなみに、俺、のほほんさん、虚さんの順。
「っ⁉︎べ、別に変な意味じゃないわよ⁉︎ただ怪我人が無理して倒れたら大変じゃない⁉︎そうよね。泰人くん‼︎」
「え⁉︎ま、まあそうですね。楯無さんなら任せても安心ですし居て貰えるなら助かりますが・・・暇ですよ?見てるだけですし」
「・・・え、いいの?」
「いや、暇ですよ?マジで」
「そ、そうなんだ。じゃあ早く仕事片付けようかな!」
「楯無さんこそあんまり無理しないでくださいね」
そんなこんなで仕事の片付けを待つ俺だが紅茶を持ってきて貰ったときに虚さんがふふっと笑って去っていた姿が何故か心の中で引っかかった。
ー武道館ー
「1000・・・よし、つぎは素振りかな」
ISで作ったパワーリスト(左右50kg)で全体の筋肉を鍛える鍛錬や、いろいろな武術の鍛錬が終わったのでリストをISの中に仕舞い、次は居合の素振り(もちろん模擬刀)をする。と言っても刀の重さと同じでは居合は辛いのでIS使用時の重さの刀を振るう。
一応木偶を作り(完全固定型)そこに打ち込むように刀の居合をする。
「・・・なんでいつもこんなに辛い鍛錬をするの?」
ふと思ったのかそんな事を聞いてくる楯無さん。
そんな疑問に少し笑いながら
「そうですね。強いて言うなら、生きるため、ですかね。」
「あら、それは失礼な事を言っちゃったわね」
「別に失礼ではないですよ?」
「私に言わせればこの質問は愚問だからよ。生きるためにこんなに辛い鍛錬をするなら仕方ないわ」
振っている刀を鞘に戻し、楯無さんより少し離れて座る。
「・・・実を言うと、俺のISの特性のせいで鍛錬してるってのもあるんですけどね」
「あら」
とぶっちゃけた話をすると意外そうに返事をする。
「それでも、少しオーバーワークと思われても仕方ないわね」
「慣れれば楽ですよ。一夏にもこれ程では無いですがやらせてるんで楯無さんもするなら練習量調整しますよ?」
「あら?これでも普段から鍛えてるのよ?」
と自信満々に言ってくるので
「考えればそうですね。生徒会長ですもんね」
別に皮肉を言ったつもりはなかったのだが不服だったのか
「む、信じてないわね?なら信じてもらうまで組手しましょうか?あ、ハンデは無いわよ?」
と言うとそのまま構えてくるので大人しく構えをとる。
「・・・分かりました。では行きますよ」
俺から楯無さんの懐に踏み込む。そのまま勢いをつけて襟を掴み投げようとする。
「・・・ふふっ」
そのまま投げられる筈もなく、掴まれる前にしゃがみ腹に鋭い蹴りを入れる。
「ぐっ!」
「まったく、ビクともしないわね。あなた金属で出来てるんじゃない?」
確かに吹っ飛びもしなかったが、運良く鳩尾に入らなかったので大したダメージにはならず集中し次の戦法をとる。・・・後の先で決める。
「・・・来ないならこちらから行くわよ」
と見事な足さばきで急に前に来たような感覚がくる。
「見事な骨法ですね。ですが」
顎を狙った掌底を躱し、足を絡め押し倒す。
「一本ですね。あの一撃が鳩尾に入ったら負けてましたよ」
「・・・まったく、本当に悔しいわ」
と立ち上がりながら制服の裾を手で払う。
「ははは。まあ非公式なんで許してくださいよ」
「負けたことも悔しいけど全力を出してくれないことがもっと悔しいのよ!」
「・・・あはは」
苦笑いするしかない。俺の全力は、すなわち殺人拳、殺しを目的に鍛えているので柔道でしか試合では本領を発揮できなかった。それに、女の人に手を出すこと自体気が引けるので全力は出せる筈もなかった。
「・・・そろそろ終わりますか」
「そうね、またあとで」
「・・・・・ん?」
気のせいだろうか、これで解散ではなく後でと言っていた気が。
「勝手に帰ったらお姉さん許さないんだからねー!」
考え事が漏れたのか釘を刺される。分かってますよーとだけ返事をして自分も汗を流しにシャワールームに行くために足を動かした。
「・・・なんで」
「・・・(もぐもぐ)」
「なんでここにいるんですかねぇ?」
「今さらじゃない?あ、このお菓子美味しいわね」
何事もないようについてきて、何事もなく俺のベッドで寝転んでお菓子を食っている生徒会長、もとい楯無さん。
「今さらって・・・それおれが隠したお菓子・・・しかも大会前日に買っておいたのになんでバレてるんだ・・・」
「え?これ昨日見・・・ゲフンゲフン、ちょうど怪しい棚を調べて出てきたのよ。あと今日からここに住ませて貰うわね」
「あーそーですかーって住む⁉︎」
「ええ?何か問題でも?」
「問題しかないですよ⁉︎しかもここ1人用だからベッドも足りないしー」
「ああ、貴方って余計なもの置かないから。ほら」
と指を指された方向を見ると普通にベッドが鎮座していた。いやよくないけど。
「なんかデジャヴを感じる・・・」
「前の時は、結局なあなあで私帰っちゃったからね。でもこれからは正式にここの住人よ。これからよろしくね泰人くん?」
トントン拍子でことが進んでいく・・てか俺がいない間に決められていたようで。すでに一夏も周りの生徒にも認知されていた。
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