学園黙示録ガンサバイバーウォーズ
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第一話
高校三年生となった俺。田中一郎は知り合いが離れ離れなったものもいたが、特に気にも留めずに新しいクラスに馴染んでいた。まあ、いつかは地獄に変わるために、そこまでクラスの連中と必要以上に馴染む必要がないんだけどな。この学校にいるやつらの殆どは食い殺されてゾンビとなるか、理性を失い同じ人間に殺されるかの二つに一つしかないんだからな。
(プレイヤーに殺される可能性もあるか……)
とはいえ、ニュースでプレイヤーと思わしき人間が事件を起こす事は確認は出来てはいるが、いずれも馬鹿のように暴れて最後は警察に捕まり、軍隊に殺されているのが殆どであった。俺はニュースでプレイヤーの臭いを感づいてはいるが、現在のところ接触はない。いつかは接触はするだろうと俺は思っている。何しろこの世界の崩壊が始まれば、一番の脅威となるのは、驚異的な身体能力と技能を保有しているプレイヤーなのだから。
一応、春に惨劇は起きる事は理解している。正確な時間までは俺は知らん。何しろ三十年以上も前に読んだ漫画なのだから細かいとこまで覚えている訳がないのだから。いつものように授業を受けていると、校内放送が流れだした。最初こそ普段通りの放送が流れていたが、途中から断末魔の叫びが教室全体に響き渡った。
『ギャアアアアッ助けてくれっ!止めてくれっ!たすけ!ひい!痛い痛い痛い痛い!!助けて死ぬ!ぐわああああ!!』
クラスは静まり変える。それと同時に教室から悲鳴が上がり、教室から生徒たちは一目散に逃げ出す。俺はそれを冷静に観察する事が出来た。いつかは起きるだろうとある程度は予想が出来ていたからだ。変にパニックに陥って逃げ出してもマイナスにしかならないと頭でわかっているからだ。
だが、当然のようにそれを理解していない生徒達は我先に逃げ出した。ゾンビが周りにいるとはわかってないとはいえ、非常事態に冷静な判断を欠けば、とんでもない事になると理解は出来るだろう。多分、頭で理解している奴らもいるだろう。だが、頭で理解しても心で理解できずに冷静な判断を欠いて、現状に至るわけだ。
それでも我先に逃げ出した奴らの中には少なからずは、冷静に対処する奴らもいるだろうな。とりあえず教室の窓から外を確認すると、すでにゾンビ共の餌となって食い殺されている生徒や教師達が沢山いるな。
「どうやって逃げますかね……」
学校内は意外にも幅が狭い。そんな中で武器として選ぶなら拳銃だな。ゾンビ達の動きを見る限りは走るゾンビではなく、歩くのろのろと動くタイプのゾンビであると理解はした。ならば俺にとっては止まった的に等しい存在だ。とにかく、デスバレットでプレイした人間からすれば、相手はのろまで撃ってくださいと言っているようなものだ。
俺は教室を出て。操作画面を出して愛用の武器の一つを装備する。ブローニングハイパワーである。銃器設計の天才とも言えるジョン・ブローニングの集大成とも言える拳銃の一つだ。ハイパワーは、初めて拳銃でダブルカラムを採用した拳銃でもあり、従来の拳銃の7~8発のオートマチックより5発も多く装弾が出来るのだ。
ダブルカラムを採用した拳銃はグリップが太くなり扱いにくいとされているが、ハイパワーはブローニングの基本設計がしっかりとしているために撃ちやすい拳銃でもあった。デスバレット時代から多弾倉の拳銃にしては安く購入できるために、俺はこれを気に入って初心者のころから愛用している思いれのある拳銃だ。
「戦闘開始だ。」
戦闘開始を意識すると目の間のビジョンが変わる。デスバレットの時のように右下に武器の装弾数と残りの弾数が表示される。そして銃を撃つときに、より緊張感を味わえるようにデスバレットでは、弾道予測線という赤い線が表示される。これにより初心者でも狙いやすくするための工夫でもあるが、一部のスナイパーに特化したプレイヤーから不評もあったが、ゲーム的面白さがあるとも称されていた。
既にゾンビとなった生徒に向けてハイパワーを向ける。弾道予測線の赤い線が、ゾンビの眉間に表示されて俺はハイパワー撃った。
ダーン!
9mmパラべラム弾の乾いた発射音が廊下に響き渡る。見事に眉間に命中して糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
「先ずは一匹」
それに続くように俺は、次々とゾンビとなった生徒と教員に向けて撃ち続ける。撃ちだされた薬莢が地面に落ちる音がよく聞こえる。そして弾丸の硝煙の臭いも。撃っても撃ってもひるまずに、こっちに向かってくるゾンビ共に、俺は少し悪態をつく。
いくら攻撃しても何でおれだけに向かってくるんだと。マガジンの弾が切れれば直ぐに新たなマガジンを装着してスライドを引く。これで発射準備は完了する。
倒しながら進んでいくが、まるで俺の所にゾンビが集中しているようだと思う。まさかと思うが、ゾンビ共は音に反応しているんじゃないか?
「銃を撃ち続けたのは失敗だったかな?」
今さら後悔しても遅い。実際に撃ってゾンビを殺さない事には俺の命はないのだ。近接戦にも持ち込むにも数は多いし、一匹一匹に近接戦を仕掛けては非効率すぎるし、下手をすれば囲まれておじゃんだ。
ーーー。
撃っても撃ってもゾンビ共は消える気配がない。まあ、音に反応するんだ。激しい音を出す銃をぶっ放してれば嫌でも群がってくるか。拳銃弾は、特にコスト的に高くないので、かつてのデータのままのマネーを保有していれば、大した痛手でもないので気にせず撃てるが、道具枠で出しといたマガジンの予備も無くなりそうなので、落ち着いた所でマガジンの補充をしたいんだが、こうも群がってると落ち着ける場所が見当たらんな。
ん。反対方向から足音が聞こえるが、またゾンビが近づいて来たのか?
「田中君か」
「ん。毒島か?無事だったようだな」
3年の進級時にクラスが別となった毒島冴子であった。となりにいるのは、確か保険室の校医の鞠川静香先生だったかな。そのおっとりした表情とスタイル抜群で巨乳でもあるため、学校の男子生徒達から絶大な人気を誇る。毒島とは別ジャンルの美人である。
毒島が女傑の大和なでしこなら、鞠川先生はおっとりとしたお姉さんキャラと言った所かな。
「さっきから激しい音が聞こえたと思えば君がやった事だったのだな」
「おう。このハイパワーで死体もどきを殺しまくってた」
そう言って俺は、ハイパワーを二人に見せる。
「で、でも。学生の君がどうして銃なんて持ってるの?」
鞠川先生の最もな指摘である。確かに銃規制が厳しい日本で、ただの学生が普通に学校で銃なんてぶっ放す光景は怪し過ぎるものな。
「今はそんなこといいじゃないですか。それより、二人は何処に向かうんで?」
「職員室だ」
何でも二人は、学校を脱出する足である車のカギが職員室にあるので取り向かう途中であったようだ。その説明を受けた俺は、ある提案をする。
「だったら俺も手伝うよ。その見返りに、俺も車に乗っけてくれない」
「当然だ。一緒に戦うならば拒否する理由もない。先生もよろしいか?」
「ええ。私は良いわよ」
こうして一人は頼りない先生だが、戦闘に関しては信頼できる毒島が仲間になるのは生存率が高くなる。これは、非常時においてはありがたい事だ。
「出来れば、あまり銃を使わないでくれ。ゾンビは音に敏感に反応する。撃って進んでいては、学校に存在するゾンビがここに全て集中する羽目にもなる。」
「いや、それに関してはマジで悪いことした」
何の下調べもしないで銃をぶっ放す事で、自分を不利にしていたとはな。まあ、銃を持ってデスバレットのキャラの身体能力を保持した事で俺はどうやら慢心してしまったようだ。例え一般人より遥かに高い身体能力を保持しても、扱いを間違えれば自滅する。
それは分かりきっていたのに、まさか自分がそんな状況に陥るちいるとはな。
(この世界をなめすぎだな……俺は……)
こんな初歩初歩でつまずいてちゃあ、プレイヤーと対峙する前にゾンビ共に食われてゲームオーバーだ。それを俺は理解していなかった。銃を持っているからって絶対的なアドバンテージを持っているわけではない。使えば頼もしいが、逆に使い何処を間違えると自分の首を絞める羽目になる。
そして二人と行動を共にすると決めて移動を再開した。銃をむやみにぶっ放すわけにもいかないので、出来るだけゾンビを体を突き飛ばす程度で対処した。毒島も木刀で突き放し、俺も走る途中で見つけた箒で突き飛ばして対処した。
頭をかち割らないのは、それをして足を止めてしまうので下手をすれば周りに囲まれて餌となる可能性が高いからだ。出来る限りは、無駄な戦闘を避ける手段であった。
「ん。アイツらは?」
職員室の近くにゾンビに囲まれている二人の生徒がいた。一人は小柄な肥満体系の眼鏡をかけた少年。小柄だが強気な表情が特徴なツインテールの女子であった。
「仕方ねえ、銃を使う。援護しろ毒島!」
「了解だ!」
俺はハイパワーに装備を変えて狙いを<奴ら>に照準を合わせる。9mmパラべラム弾が火を噴く。吸い込まれるようにゾンビの頭部に命中して<奴ら>は倒れていく。毒島も木刀でゾンビを吹き飛ばして、壁のほうに追い込んだと同時に木刀で撲殺した。
「うし、何とかなったな」
「そうだな」
俺達が一息ついた時に、小柄な眼鏡少年が一目散に俺の方に走ってきた。不覚にも予備動作が見えない程に素早かった。
「こ、これは!ジョン・ブローニングの傑作銃の一つのFN社が開発した。ブローニングハイパワーじゃないか!!世界初で拳銃でダブルカラムを採用。現代で活躍する拳銃に多大な影響を与えた拳銃の一つだ!」
お、おう。説明ありがとう少年。
「興奮するのもいいけど、とりあえず名前を教えてくれ。後で好きなだけハイパワーを触らしてやるから」
「あ、すいません。僕は二年B組の平野コータです!」
「俺は三年C組の田中一郎。ありきたりな名前というツッコミは受け付けないのでよろしく。ほい、約束だ」
俺はそう言ってハイパワーを平野に渡した。その興奮気味な様子に思わず引いてしまうほどだ。というか危険なオーラが感じるし。まあ、今は敵もいなし別にいいか
「危ないとこだったな」
「うるさいわね。私は天才なんだから大丈夫よ!」
見た目通りにきつい性格のようだ。プロモーションは最高なんだが、性格でダメにしてしまうな。まあ、一部の男子からは受けそうな性格だが。
「さっきあの少年に名前を教えたから自己紹介はしないぜ。それで、君の名前は?」
「高城沙耶よ。それといちいち芝居かかったセリフをやめなさいよ。キモイわよ」
何ともまあ強気な女性で。だけど足が震えて、誤魔化してるのは誰の目から見ても分かりきる光景だが、そこは、あまりツッコミを入れる事はしないでおこう。
「あ、高城!」
更に他にも生徒たちが来たようだ。男女の二人組だ。まあ、あれだけ派手なドンパチを起こせば嫌でも目立つか。これは、どうやら大所帯な予感がするな。
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