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学園黙示録ガンサバイバーウォーズ

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プロローグ

転生という言葉を知っているか?俺が前世の時には、ネット小説ではやったジャンルでもあった。それでも良作もあれば駄作も沢山ある。何しろネット小説は基本的にプロもアマも関係なく投稿できるのだから、そのため内容が薄いものもあれば、すごく凝った設定で書く人もいる。

俺も転生して第二の人生を面白おかしく歩んでみたいなと思った事は学生時代はよく思った事だ。だが、現実は非常である。社会にでると嫌でも現実と向き合わなければいければいけず、上司の理不尽な対応にも我慢しなくてはいけず、そして新しく入ってきた新人にはさじ加減を考えて教育しなければいけないので、色々と神経も磨り減る毎日だ。そんなこんなで俺も40を過ぎたおっさんとなったが、結婚もしない独身を貫いた。同僚から「早く結婚しろよ」とも言われるが、俺も女性に少なからず興味はあるが、だがそれでも一線を超える程の関係になりたいと思うほど執着しているわけでもなく、眼前に趣味を優先する傾向が強かった。そのため俺が学生の時には夢のような話であったVRMMOが出た時の衝撃は凄まじく、更に趣味を優先する事に拍車がかかり、今では会社の仕事を終えればネット住人である。

現実ではありえない夢のような仮想空間をバーチャルの世界といえど、駆け巡る事は俺にとっては学生時代に忘れた純粋な冒険心が目を覚まして、のめり込んだのだ。

そんな感じに会社にストレスを感じながらも趣味に没頭する毎日に少なからず満足していた俺であるが、まさか自分がネット小説のように転生するなんて夢にも思わなかった。気がつけば子供になっており、最初は戸惑いが隠せなかった。それで俺の不振な行動に不安になったの俺の現在の両親は心配そうな顔で俺に近づいたが、そこは長年の上司の嫌味な対応や、大勢の重役がいる中でプレゼンをした経験から作り上げた鉄の心臓をもってして冷静に、しかも子供らしい対応でなんとか誤魔化した。

それから訳も分からず転生した俺だが、現在の俺の名前は田中一郎。何とも誰もが分かりやすい名前と名字にありきたりだわと、思わず言葉に出してしまいそうであった。

なお、俺はただ転生しただけではなかった。かつて前世でのめり込んだVRMMOFPSデスバレットで使っていたキャラの特性と、武器を使えるようになっていたのだ。

デスバレットは、初のVRMMO技術を使ったFPSとしてFPSマニアから絶大な人気を博したゲームである。自分自身がリアルで銃が撃てて、まるで本当の銃撃戦に参加しているとようだと絶賛の嵐であった。しかし人気の理由としては、それだけではなく、実物の銃の様に反動や風の影響を受けて弾道が変化したりなど、そのようなリアルの挙動まで忠実に再現されている点であった。

最初は、それらの挙動に振り回されて扱いに四苦八苦したプレイヤー達であったが、次第に慣れてよくここまで再現したなと評価が上がった程である。デスバレットの特徴として対人戦とモンスター戦の二つに分かれる。デスバレットは、このように対人戦でプレイヤーをキルしたり、モンスターをキルしてマネーを稼ぎ、そして武器を購入して、モンスターや対人戦でレベルを上げてはスキルを獲得して、自分好みのステータスを作成してキャラを構築するのがカギである。ビルド構成によっては、現実ではありえないミニガンを装備して映画さながらの派手に敵を面制圧して倒すようになり、速度重視によるアクロバットな二丁拳銃で戦うスタイルなど千差万別である。ガチを含めてネタに走るプレイヤーも多いのが、デスバレットの特徴である。


そのデスバレットで作成したキャラの身体能力とマネー。購入した武器を含めて購入システムを使えるようになったのだ。目の前に画面が現れて、それを指で操作すれば購入できるのである。このコマンド画面は俺にしか見えないようで、他人から変な事をしてるようにしか映らなかった。まあ、それはそれで助かるので俺としては……。

そんな感じに変な特典も知らないうちに貰いながら、第二の学生生活を楽しんでいた時に俺は高校に上がった時にある事に気がついたのだ。クラスメイトになった人物の顔が何処か前世で見覚えはあるなと感じたからだ。最初は、ただの見間違いだと思ったが二年生の時にクラスの自己紹介の時に、俺はようやく穴の開いたピースを埋めて核心に至ったのだ。

「毒島冴子です。よろしく」

そう。俺が学生だった時に読んだ漫画の一つである学園黙示録という漫画の登場人物だったのだ。てか、普通に考えて学校の名前を見て思い出せよと思うが、無茶を言ってくれるな。そもそも前世を含めて三十年以上も前に読んだ古い漫画の話である。思い出すのだって一苦労する。

それに原作の内容も殆ど忘れてるし、確か毒島が三年になった春のころにパンデミックが起きて世界中がゾンビ騒動になるって内容だけは覚えているのだ。まさか、刺激的な毎日を過ごしたいと思った事はあったが、世界崩壊が起こった世界に飛ばされるなんてある意味で、神様は俺を苦しませたいのかと思ったよ。核心に至って最初はふざけるなと思ったが、俺が理不尽な事に不満に思っても流れは確実に変えられないのだ。

ならば準備するしかない。確実に、この世界で生き残る方法を。俺は、そう決心するに至ったのだ。

ーーー。


「あ~眠いな畜生め~。」

高二年の冬。もう少しで地獄が始まるとも思えない程に日本は平和だ。多分この世界で、地獄が始まると誰もが思っていないだろう。現状の所で俺しか握っていない情報だろう。

(いや。そこまで楽観は出来ないな)

別にゾンビ事態も囲まれなければ脅威度は高くはない。俺が問題視しているのは、俺以外に転生したプレイヤーだ。デスバレットのキャラのステータスを受け継いで、武器まで扱えるとなるとそれは脅威レベルとなる。実際に、ビルド構成にもよるが、標準的なバランスタイプで構成されたキャラも普通にオリンピックで金を取るほどまでに高い身体能力は保有している。

しかも赤外線スコープにも映らないステルス迷彩を所持すれば、サイレントキルも可能となるので厄介極まりないのだ。実際に、俺が生きている間にデスバレットのプレイヤーと思われる犯罪者が、定期的にではないが、少なからず警察や軍隊と激しいやり合いをしたとの報道がなされている。報道記者も「ただのテロリストにしては、装備が高価すぎる」と、報道しているのだ。

(プレイヤーが、この騒動にかこつけて馬鹿をやるのは目に見えている。今まで静かに暮らしていたプレイヤーも確実に行動を起こすに違いない。)

ゾンビ以外にもプレイヤーに対しての対処もしなければいけないのだ。正直言って俺はトッププレイヤーと戦うほど強いビルド構成をしていない。確かにレベルはカンストしているが、ビルド構成はガチというよりネタに近い構成だからだ。デスバレットは武器を選択するにしても種類によってはスキルを獲得しなければいけないので、アサルトライフル、サブマシンガン、拳銃、スナイパーライフルなどのスキルを獲得して初めて装備が可能なのだ。

ガチのプレイヤーほど、一つか二つの武器にスキルを絞り特化したキャラ構成にするものだ。その武器特融の豊富なスキルも多く獲得が出来るメリットもあるからだ。

それに比べて俺はあらゆる武器を扱いたいと思ったために、使える武器に制限は然程ないが、トッププレイヤーほど強力なスキルを保有していないのだ。実際にデスバレットのカンスト勢の中で俺はキャラ性能は下から数えた方が早い程でもある。俺は所謂ネタキャラなのだ。

「朝からダラけているな。田中君」

「なんだ毒島か。朝から説教か?」

ロングヘアーの黒髪に、現代の大和なでしこと学校で言われる程の美人だ。学生だった(前世)頃の俺なら間違いなく惚れていたが、いくら見た目が高校生といっても中身は四十を超えたおっさんである俺からすれば、手を出せばロリコン扱いされるので、比較的に冷静に対処できる。クラスの席替えで席がとなりという事もあり、顔見知り程度には声をかけられる頻度は高い。

そのためクラスの男子からは羨ましいぞとの嫉妬の視線を受けるのは、ぶっちゃけうざいけどな。

「君は私と互角に戦える程に強いのだ。もう少ししっかりとして欲しいのだ」

「互角って……言っとくけどあれは力任せに竹刀を振っただけで剣道と言えるもんじゃないだろうが」

「それでも私と互角に戦った事実は変わりはない。」


そう、体育の剣道の授業の時に俺はたまたま毒島と試合をしたのだ。剣道なんてやった事もないけど、それでも身体能力は、デスバレットのキャラ能力を受け継いだ俺の動きは凄まじいものだったのだ。毒島曰く「荒々しいが、剣の速度と身体能力は抜群に高い」との事であった。それでも竹刀を振り回す速度は速くとも予備動作が大きい俺の攻撃は、全国大会で優勝した毒島からすれば見切れるレベルであり、俺も殆ど毒島の攻撃を反射神経でさばいて、剣道とは言えない。

それで毒島の鋭い反射神経を逆に利用する技で一本を取られて俺の負けで終わったが、あの後から毒島から「本気で剣道を習う気はないか?」と、勧められたのだ。無論、俺は丁重にお断りした。毒島は強く勧める事もなかった為に、俺はホッとしている。


「また試合をしてくれないか?」

「気が向いたらな」

「その時を楽しみにしてるよ」

そう言って先に教室に向かう毒島。俺は相変わらずのんびりと歩く。気ままな学生生活ももう少しで終わりかと思うと、寂しさもあるが……。

「まあ、人生は分からないからこそ面白だよな……」

面倒な事は嫌いと言ってるくせに、自分から変わりうる世界を望んでいる。全く持って自分でも訳の分からない性格をしていると思うよ。

人間はいつかは死ぬ。プレイヤーに殺されて死ぬのか?それともこの世界の人間か?それともゾンビ共か?わからないけど、遅いか早いかの話である。ならば、俺はとことん後悔しない生き方をするだけだ。
 
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