神様転生した先のサイバーパンクで忍者になって暴れる話
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シチュエーション・オブ・ソウカイヤ
2話
人間世界にとっての毒である魔。それと敵対する対魔忍達。政府直属である彼等の本拠地である隠れ里五車町。
その最も重要な施設の一つが、次世代の対魔忍たちを養成する学校である、五車学園だ。
そこに今、ふうまニンジャはいた。
もちろん、ソウカイヤの頭領である彼が侵入できるのは、ちゃんとした理由がある。
とある上級魔族から奪ったユニーク・ジツ。監獄。これは、狙った物の記憶や知識や倫理観を長期間に渡って思うがままに変える。一種の催眠能力。
しかも、相手の数は無制限という上級魔族にふさわしい能力である。
その能力を使って彼は、週に二度ほど来る特別教師として認識されていた。
教える科目は、もっぱら格闘。すなわちカラテである。
現在彼は幾人もの対魔忍の卵である生徒達に囲まれていた。
あるクラスのカラテ鍛錬の時間である。
「ドーモ、クラスのミナサン。タナカです」
(何て奥ゆかしいオジギ!)
確かなカラテに裏打ちされた奥ゆかしいオジギに、クラスの皆が感嘆した。
クラスの一番手である金色の短髪に眼鏡をかけた結城炎美が、アイサツを決める。その胸は豊満だ。
「ドーモ、タナカ=センセイ。ユウキ・エンビです」
現在タナカであるふうまも、まだまだ未熟で隙だらけだが、磨けば光る素養が現れるアイサツを待つ。
「イヤーッ!」
腰から、カタナを抜きタナカに襲い掛かった。
「イヤーッ!」
タナカも、カタナを振りかざす結城に拳を振る。
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
カタナを避けて、結城の腰にチョップを打つ。そのまま彼女は横に吹き飛んでいく。
「次!」
タナカの呼び声に、青い髪をした氷室花蓮が前にでる。その胸は平坦であった。
「ドーモ、タナカ=センセイ。ヒムロ・カレンです」
アイサツの後、氷室花蓮が自身のジツ。
「イヤーッ!」
ヒョウトン=ジツを使い、地面に氷が張り巡らされていく。彼女のジツは、氷で捕らえた相手の力を奪い自身のものとする攻防一体の強力なジツだ。
タナカの足元に氷が迫っていく。 7
「イヤーッ!」
タナカの姿がその場から消えた。
「ど、何処に!」
花蓮が視線から消えたタナカを探そうと、あたりを見渡す。
「こちらだ」
上の方からタナカの声が響く。花蓮の視線が上に向けられる。
ゴウランガ!タナカは立ったままの姿勢から、上空へ飛んでいたのだ!
彼の落ちていく方向には、花蓮の姿がある。
「あ」
呆然とした花蓮の声が虚空へ消えていく。
そう、彼女のジツはあくまでも地面の氷が張り巡らされる。空中には何の意味もない!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
タナカの飛び蹴りが花蓮に直撃!タツジン!そのまま後方へ飛んでいく。
「次!」
今度は褐色の肌で両手にガンを構えた水城ゆきかぜが前に出る。その胸は豊満であった。
「ドーモ、タナカ=センセイ。ミズキ・ユキカゼです」
両手のライジング・ガンをタナカに向けて撃つ。
「イヤーッ!」
弾ではなく球形の雷がタナカに向かう。
手加減されているとはいえ、一度当たれば電撃によって動きが固まり、その瞬間に火力が集中される強力なライトン・ジツだ。
しかしタナカは其処にとどまることなく動き続けることによって、彼女のライトン・ジツを避ける。
「Wassyoi!」
ゆきかぜの周囲を猛烈な速度で回転!
あまりの速さに残像が生まれる。
「あ、う」
いくらライトン・ジツが強力でも、当たらなければ意味がない!ゆきかぜは、タナカの速度に反応しきれていないのだ。
「い、イヤーッ!」
ウカツ!ヤバレカバレに撃っても、タナカの残像に当たるのみ。隙が生まれるだけだ。
「イヤーッ!」
その隙を逃さず、ゴムでできたモギシュリケンがゆきかぜに射出された。
「ンアーッ!」
平坦な胸に当たり、ゆきかぜは後方に飛んでいく。ゴムとはいえニンジャに投げられれば、人を吹き飛ばす威力は当然ある!
「次!」
その後も何人もの対魔忍達が、彼に向かって襲い掛かるも鎧袖一色めいて倒されていった。
「…………」
「タナカ=サン、強すぎー」
ギャル系ファッションに身を包んだ千賀崎リリコが、地面に背中をつけて呻いている。胸が豊満な彼女のセイトン=ジツは極めて強力。
重力や空間を歪ませて、超スポードでタナカの背後にまわるも、カタナを持った手を捕られてイポン背負いを決めれた。
「情けない。実際情けない」
タナカの溜息交じりの言葉が、運動場に響き渡る。
「全員、自身の能力に頼りすぎている。強力なジツなど、魔の物や抜忍にも幾らでもいる。能力が聞かない相手が現れるかもしれない。だからこそ、カラテを極めなるべきなのだ」
ノーカラテ・ノーニンジャの精神を説いていた。
「タナカ=センセイが例外な気がします。毒すらすぐに回復するなんて」
腰まで伸びた長い金髪に丸メガネを掛けた高坂静流が、木に背中を預けて息を整えている。その胸は豊満であった。
彼女も自身のモクトン=ジツでタナカに麻痺毒を吸わせるも、チャドー呼吸によって回復されてしまう。そのままカラテの差を見せつけられて終わっていた。
「毒が聞かないやつもいるだろうに」
溜息を吐きながらも、いかにカラテが大事か解いていく。
相手組織の卵を強くしてどうする、と思う読者の方もいるだろう。勿論これには理由がある。
田中先生であるふうまが使っている監獄というジツ。
これによって、彼女達はタナカに対して好意を抱きやすくなっている。
つまり彼に対して惚れっぽくなっているのだ。強さという力。有能な先生という能力。教え導くというソンケイ。それらが合わさった魅力が、彼女達の心の中に恋心や崇敬を植え付けている。
ふうまの恐るべき計画は着実に進んでいるのだった。
授業の後、ふうまは五車学園の廊下を歩いていく。目的地は校長室。井河アサギの居場所だ。
前方から何やら急いでいる様子の女性が、ふうまと目が合う。
「あ、タナカ=サン!」
歩いていく途中、オレンジ色の髪に短パンを履いた井河さくらが、タナカになっているふうまに声を掛ける。
その胸は豊満だった。
「ねえ、今からお姉ちゃんのところ?」
「はい、校長に少し用事がありまして」
タナカの答えに、さくらはやたらと大げさめいて目を丸くした。
「ちょっとちょっと! もしかして、タナカ=サンはお姉ちゃんと付き合ってるの? 最近いろいろ会ってるみたいだし」
教師と思えない言動だ。周りに人がいないとはいえ、あまりが大きく風潮するものではない。
眉を潜めながらも、ふうまは口を開く
「仕事(・・)の事でよくお話ししているだけです。イイネ」
「アッハイ」
瞬間さくらの目が虚ろになりながら、首を上下に振る。
「そんな事より、いいのですか? 何か急いでおられたのでは?」
「いけない! むっちゃんに怒られる!」
何かを思い出したように体を弾ませると、さくらが脱兎のごとく走り去っていった。
それを見送ったふうまは、安堵の溜息を吐いて歩き出す。
どうやら彼の井河アサギとの現場(・・)を何度か見ていたようだ。
(気をつけねば)
ふうまは今後の計画を脳内で訂正しつつ、アサギのいる校長室へ足を進める。
校長室に着くと、ドアをノックした。
「コウチョウ=センセイ。タナカです。今いいですか?」
「タナカ=センセイ? ドーゾ」
アサギの招く声を聴いたふうまは、そのまま部屋の中へ入っていく。そのまま後ろ手で鍵を閉めた。
部屋の中では、にこやかな笑みを浮かべたアサギが立っている。
「タナカ=センセイ。どうしましたか?」
黒い髪を特有な髪形にしたアサギ。その胸は豊満だった。
有能な新任教師であるタナカに、柔らかな視線を向けている。
「ドーモ、イカワアサギ=サン。ザイバツショゾクのフウマです」
「あっっっ!」
タナカの声を聴いたアサギが、突然立ちくらみのように体制を崩した。
すぐに立ち直り、手を合わせる。
「ドーモ、フウマ=サン。イカワ・アサギです」
アイサツを交わし終ると、アサギは溜息を吐いた。
「相変わらずこの感覚は慣れないわね」
「政府にもばれない様にする為だ。仕方ないだろう」
彼はタナカという仮面ではなく、ふうまという本来の顔を出している。
「それにしてもね」
「政府の言う通りにしても、ただ犠牲が増えるばかりだ。それどころか。彼等は日夜ノマドや米連との癒着が増えるばかり。だからこそ、古くからの固有組織であるザイバツの力も使わなければならない。だろ」
教え込むようにふうまは続ける。
「最近妙な命令が増えているだろ。戦闘員に潜入捜査させるよう命じられたり、救出任務の時急に沢山の命令が増えたりさ」
「…………」
返答の代わりにアサギは沈黙する。彼女にも心当たりがあるのだろう。
勿論このようなことは本来あってはいけないことだ。政府に不信があるから米連と付き合うと言う様な物なのだから。
しかしそれは、ふうまが奪っていた監獄というサイミン・ジツで可能にしている。古くからある国固有である組織に協力するという大義名分。ザイバツの資金力を使った支援。 彼の言葉を信じやすいアサギが、受け入れてしまうのは当然のことだった。
ふうまの組織を通じて、ザイバツの資金や技術力を取得。他にもノマドや魔に魅入られた物の組織の情報を得ていた。彼も敵対組織の力を削いだり、実験データを得たりと対魔忍から利益を貰っている。
「はい、ここに俺の組織が借りた倉庫がある。この中にザイバツに依頼した装備を隠しているから、あとはよろしくな」
懐から出した書類をアサギに渡す。アサギも書類を受け取ると、机から出した記憶媒体をふうまに渡した。
「これ使った装備のデータよ。 他にも魔の物の実験データも入っているわ」
渡された記憶媒体を懐にしまう。
「米連にいる彼女達も元気にしているそうだ」
「…………そう」
ふうまの言葉を聞いたアサギは一瞬書類を読む手が止まった。その後なんともなさそうに読み続けていく。
瞬間的に現れた表情は嬉しそうであり悔しそうであり様々な感情が入り混じっていた。
書類を読み終えると、厳重に机の中へとしまう。
「あなたの組織も中々様になってきたわね」
「ああ、ようやくヤバイ級の技術者も内に引き込めたからな。そちらの姉だそうだ」
幾分の情報共有の後、アサギの隣にふうまが近づく。
「ちょっと、今は駄目よ」
「授業中だから誰かが来ることはない。外も水練の最中だから見られやしない」
ふうまの手がアサギの体を弄る。
「だからって」
「何。協力者同士体の事も分かり合わないとな」
ふうまの手をアサギの手が拒否すべく掴むが、その力は弱々しい。
「前に一度やっているんだ。一度も二度も同じだろ」
「もう。一回だけよ」
強引なふうまに押し負けたように、アサギは体の力を抜いた。
数分もしないうちに校長室の中で、
「アタシいま体温何度あるのかなーッ!?」
アサギの艶声が響くのだった。
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