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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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第23話 昔の一時

 
前書き
少しだけ休む。 

 
今から遠い遠い昔のイレギュラー戦争が始まる前の平和な一時。

ルインは第17精鋭部隊へと配属されることになり、自身の隊長となるシグマの元に向かっていた。

“(うぅ…緊張するなあ…)”

緊張しながらも先を行くルインだが、道を間違えることなくこれから自分の上司となるシグマの部屋の前に立つ。

“シグマ隊長。本日をもって第17部隊に配属されることになったルインです”

“入れ”

すると間を置かずに部屋の中から低く重厚な声が聞こえ、ルインは緊張しながらも部屋に入った。

部屋の中に入ると、椅子から立ち上がったシグマがルインを見下ろしていた。

“ルインだったな。今日から我が部隊の一員として頑張ってくれたまえ”

“は、はい…”

“お呼びですかシグマ隊長。エックスです”

“!?”

“入れ”

扉が開くと、蒼いアーマーを身に纏うレプリロイドが入室し、これからルインの先輩となるエックスがルインの隣に立つ。

シグマは自分が部隊に慣れるまでの間、エックスに自分の相手をするように言った。

“はい。それじゃあ…ルイン…行こうか?”

“あ、はい!”

エックスと共にルインはシグマの部屋を後にした。

これが、エックスとルインの出会いであり、この後にゼロとも出会うことになる。

「えっと…これが私とエックスの出会いになるわけなんだけど…」

恥ずかしそうにメンテナンスベッドに横になりながらメンテナンスの合間に暇潰しを兼ねた会話をして、エックスとの出会いを話していたルインだったのだが、相手のシエルは意外そうにしていた。

「そうなの?私、エックスとルインの出会いは…もっとこう…印象的な物を想像してたわ。」

「どんなのを想像してたの?」

「そうねえ、ルインが入隊直後にドジしてエックスにフォローされたり?」

「怒るよシエル?」

その発言を聞くとシエルは普段、自分をどんな風に見ているのかが気になるところだ。

「ふふ、冗談よ。それにしてもエックスとルインは先輩後輩の仲なのよね…。馴れ初めは普通だったようだけど、そこから恋愛に発展するなんて…素敵だわ」

「な、馴れ初めかあ…。か、何かそういう言い方されると照れちゃうよ…」

赤面しながら笑うルインに対して、一緒にメンテナンスを受けて同じくメンテナンスベッドに横になっているゼロは微妙な表情を浮かべていた。

「(何だ、この居辛い雰囲気は…?)」

何というか、女子同士の会話特有の雰囲気にあまりにも自分が場違いすぎる気がして落ち着かない。

「ねえ、ルイン。昔のゼロの話をしてくれない?昔のゼロはどんな人だったの?」

シエルが今度は昔のゼロについて尋ねてきたので、ルインはハンター時代の自分が知るゼロのことを話す。

「うーん、そうだねぇ…前にも話したけど、クールだけどガサツで大雑把。後は子供の相手は苦手だった記憶があるよ。昔、人間の赤ちゃんを見た時、泣かれるんじゃないかって奇妙な睨めっこ状態になっちゃったしね」

「あら?でも、ゼロはアルエットの話し相手になってくれてるわよ?」

愛想がいいとは言えないが、アルエットの話し相手にはなってくれているのはシエルも目撃している。

「アルエットちゃんは大人しいでしょ?ゼロは元気な子供が苦手みたい。子供は声高いしね」

「へえ…」

自分の知らないゼロの話に、シエルの口元が緩んでいく。

「シエル、良い物見せてあげようか?」

「え?良い物?」

ルインは近くの端末に備えられているケーブルをヘッドパーツに繋げると、端末のモニターに昔の映像が映る。

「昔のイレギュラーハンター時代の写真をメモリにインプットしといたの。」

「わあ、これが昔のエックスとゼロ?ゼロはちょっとアーマーの形が違うけれど」

「多分、改造したんでしょ。昔はエックスと同じ型のバスターを使っててセイバーなんか持ってなかったし」

左にエックス、真ん中にルイン、右にゼロ。

三人が穏やかな表情を浮かべている。

「………」

「懐かしい?」

「……ああ」

記憶を刺激させる映像にゼロは、少しの間を置いて頷いた。

次は三人でシティ・アーベルの街で買い出しに出掛けた時の写真であり、非戦闘モードのエックス達3人が映る。

「これはね、ケイン博士にパーツの買い出しを頼まれて、街に出掛けた時の写真なの。」

「ゼロ、凄く不機嫌な顔をしてるわ」

「ゼロにも予定があったんだけどケイン博士に押し切られちゃってさ、だから不機嫌なの」

自分が見たこともない表情を浮かべているゼロにシエルは笑みを浮かべて映像を見つめる。

「でもこれが一番面白いんだよ。ほら見てよ、ゼロの三つ編み♪」

「っ!」

「まあ♪」

ルインが端末を操作し、ケイン博士に髪を弄られて三つ編みにされたゼロの姿が映る。

何時の間にか三つ編みにされていたためにゼロの焦ったような、恥ずかしそうな表情が映されていた。

「普段のゼロからは考えられないこの焦った表情が面白いのなんのって……エックスも笑って…痛あっ!?」

突如頭を襲った衝撃に一瞬ルインは目の前が真っ白になるような感覚を覚えた。

「…調子に乗るな」

拳を握り締めているゼロの姿からして、どうやらゼロがルインに拳骨を喰らわせたようだ。

「こ、この威力は本当に久々…って、いきなり何するのゼロ!?酷いじゃない!いきなり殴るなんて!!」

「シエルに余計な物を見せるな」

「余計な物じゃないよ。どっからどう見ても素晴らしい思い出じゃない」

「それはお前だけだ」

「むー…だったら私が久しぶりにゼロの髪を三つ編みにしてあげるよ!私のメンテナンスは終わったけど、ゼロはまだ終わってないしね~。ゼロ…覚悟!!」

「なっ!?止めろ!!」

容赦なくゼロの髪を弄り始めるルイン。

何とかゼロも抵抗するが、メンテナンスがまだ終わっていないゼロと終わっているルインとでは、出せる力に差がある。

「…………」

唖然として、ゼロとルインの喧嘩(と言う名のじゃれあい)を見つめているシエル。

と言うか出会ってからかなり経つが、このように焦った表情のゼロは初めて見た。

「シエルお姉ちゃん?ゼロとルインお姉ちゃん、遊んでるの?」

メンテナンスルームでの騒ぎが気になり、アルエットが中に入ってみると、ゼロの髪を三つ編みにしようとしてるルインとそれに抵抗しているゼロの姿があった。

「あ、アルエットちゃん。今ね、ゼロの髪を三つ編みにしてるんだけど、一緒にやらない?」

アルエットの入室に気付いたルインが、アルエットをゼロの髪弄りに誘う。

「え?いいの?」

「私が許すよ。さあ、アルエットちゃん。ゼロの髪を編んで」

「おい、止めろ」

「シエルお姉ちゃん。シエルお姉ちゃんも一緒にやろう?」

「え?…そうねえ…私もゼロの髪に触ってみたいなあって思ってたのよ。」

アルエットに誘われて、今まで見ていただけのシエルも誘いに乗った。

「……………」

ルイン、アルエット、シエルがゼロの髪に触れる。

抵抗する気も失せたゼロは深い溜め息を吐いた。

「うわあ、ゼロってば相変わらずサラサラだよね。そう思わないアルエットちゃん?」

「うん、綺麗で凄くサラサラ」

「どんなミッションの後でも全く痛まないし、きっとゼロを造った人は凄く気を使っていたのかもしれないわ。」

「(どうしてこうなった……)」

何となくだが、今はここにいない親友の苦笑が聞こえた気がした。 
 

 
後書き
エックスがいればこう言うだろう。
“男は女性には勝てない”と 
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