ソードアートオンライン VIRUS
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圏内事件 前半
前書き
今回は二分割
今回、五十九層の迷宮区をマッピングし終えたゲツガは、今ホームとしている五十七層に戻ってきた。街に帰ってくると奇妙な光景を見た。
「何だあれ?……キリトか?」
窓から屋根へ飛び移るキリトを見た。どうして窓から飛んだか知らないがキリトの表情が真剣なものだったのでなにか起こったと悟る。キリトの見ている方向を見ると一人のフードを被った人物がいた。その人物がキリトの追っていると確信して細道に入って壁を蹴りながら跳ねる。そして追いついたところで剣を抜剣して斬ろうとする。しかし、そいつは転移結晶をすでに使っていて青い光に包まれていた。
「当たれぇえええええ!!」
しかしその叫びも虚しく剣は空をきった。
「チッ」
そして両手剣を背中に収める。
「ゲツガ!?お前なんでこんなところに!?」
「いや、お前が窓から飛び出すのが見えたからお前の視線を追ったら、さっきの奴を見つけたんだよ。だから追ったんだけど結局逃げられちまったぜ」
「そうか……なら、転移先を聞いたか?それさえ解かれば」
「いんや、ちょうど鐘が鳴って聞こえなかったぜ」
そう言うとキリトの肩を組んで言う。
「お前、攻略に昨日から参加してなかったよな。その理由がさっきの奴に関係してるのなら、今起こってることが重大なことなら俺にも話せよ。人数は多いほうがいいだろ?」
「……分かった。なら、俺について来てくれ」
そう言ってキリトは屋根から飛び降りる。それに続きゲツガも飛び降りてキリトに着いて行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
普通、こんなお出迎えはあるだろうか?入った瞬間、SAO内で五本の指に入るほどの美女、閃光と姫騎士に剣を向けられた。剣を向けているのがキリトではなく、ゲツガと気付いた二人は素早く剣を直す。
「ご、ごめんね、ゲツガ君。てっきり、入ってきたのがキリト君かと思って……」
「ごめんね、ゲツガ君」
アスナが先に謝罪し、それに続いてユキも謝ってくる。キリト、もしやお前、身の危険を感じて俺を先に行かせたのか?キリトを見ると俺に目を合わせまいとすぐに目を逸らした。
……うん。しばこう。今すぐしばこう。そしてキリトの前に立ち、腰辺りを抱える。いきなりの事でキリトが驚いたような声を上げるがその瞬間、筋力値を最大まで使い、一気に倒れこみながら投げ飛ばす。
「吹っ飛べー!!」
「うわあああああ!!」
キリトに決めたのは、ジャーマン・スープレックスだ。報復とばかりに力任せに投げ飛ばす。運良く窓が開いてたため、そこから飛び出してお隣の壁に猛烈なキスをした。
「お返しだ」
「「ははっ……」」
それを見たアスナたちは苦笑いをした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
キリトが戻ってくると本題に入った。今起きているのに遭遇した、キリトたち三人は圏内殺人の謎を追っていると言う。
「そうか。それでお前等は、攻略に参加してなかったのか。あと、聖竜連合のシュミットも」
そう言ってシュミットを見る。シュミットは攻略のときの堂々とした感じが一切なく、ただ何かに怯えていた。
「あれは、グリムロックじゃない。グリムロックはもっと背が高かった。あれはきっとリーダーのグリセルダだ……。あのローブ、彼女が街に行くときに着ていたのと同じだった。彼女は俺らに復讐しに来たんだ。あれは、彼女の幽霊だ」
そう言ったシュミットはタガが外れたかのように笑い声をもらす。
「幽霊なら何でもアリだ。圏内PKもお手のものだ。どうせなら、彼女にボスたちを倒してもらおう。幽霊ならもう死ねないからな」
そう言ったシュミットの前にキリトが一番初めにゲツガがこの宿に来たとき拾っていたダガーを投げる。それを見たシュミットはしばらく凝視すると体を仰け反らせる。
「幽霊じゃない。そのダガーは実在するオブジェクトだ。SAOのサーバーに書き込まれた、何行かのプログラムコードだ。あんたの持っているショートスピアと同じ。信じないなら、それ二つを持って調べればいい」
「い、いらない!槍も返す!!」
シュミットは叫びながら素早く指を動かして槍を出す。出た槍を放り投げる。それをゲツガがキャッチする。アスナが穏やかな声をかける。
「……シュミットさん。わたしは幽霊なんかじゃないと思う」
アスナがそう言うとユキが言う。
「それなら、今まで死んでいったみんなも、全員幽霊になってもおかしくないもの」
ユキの言葉にアスナも頷く。だがシュミットは首を横に振った。
「あんたらは……彼女を知らないかだろ。彼女は……グリセルダは、強くて、いつも毅然としててでも、……不正や横暴にはとんでもなく厳しかった。あんた以上だよ、アスナさん。だから、自分を罠に嵌めて殺した奴がいるとすれば……彼女は絶対そいつを許さない。たとえ幽霊になっても裁きにくるだろう……」
そう言うと重い空気が部屋を満たす。それを最初にキリトが破った。
「……あんたがそう信じるなら、勝手にすればいいさ。でも俺は信じない。この二件の《圏内殺人事件》には、システム的ロジックが存在するはずだ。俺はそれを突き止めてみせる。……あんたにも、約束どうり協力してもらうぞ」
「きょ、協力……?」
「グリムロックの行きつけの店を教えるって、あんた言ったよな。今となっては、それだけが唯一の手がかりだ。何日も張り込むことになっても、必ず見つけ出す」
キリトはそう言うと、しばらくしてシュミットは椅子から体を持ち上げた。
「あ、ついでに、元黄金林檎のメンバー全員の名前も書いてくれるか。あとで、生命の碑に生存を確認しに行くから」
シュミットはおもむろに嫌そうな顔をするが、羊皮紙にすらすら書いていき、それをキリトに渡した。
「……攻略組のプレイヤーとして情けないが……俺はしばらくフィールドに出る気になれない。ボス攻略パーティーは、俺抜きで編成してくれ。それと……」
剛毅なプレイヤーだった槍使いは、虚ろな表情のまま呟いた。
「……これから、俺をDDAの本部まで送ってくれ」
俺らにはその弱気なシュミットを笑うことが出来なかった。そして、ゲツガは言った。
「OK。俺が送ってやるよ。キリト、アスナ。ここからは別行動でやる。ユキと俺、キリトとアスナのチーム編成だ。それじゃ、ユキ、シュミットを送るぞ」
「え、う、うん」
そして俺とユキはDDA本部にシュミットを送りに宿を出た。
後書き
指摘修正部分があったら教えてください。
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