ボカロ☆ロマンス
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日常は突然壊れる
前書き
初めまして。初投稿となります。拙い文章だと思いますがどうか最後までお付き合い下さい。
冬休みに入った頃、俺は少し遅いクリスマスプレゼントを両親から貰った。といっても、両親は俺が小さい頃に事故で死んでしまった為、父親の妹夫婦から渡された訳だが。この妹夫婦はえらく俺のことを嫌っている為今までクリスマスプレゼントは愚か誕生日プレゼントさえくれなかった。そんなわけで人生で初めてのクリスマスプレゼントだった。ついでに妹夫婦の家からも1000万をポンと渡されて追い出されたので、この冬休みから1人で隣町で過ごすことになる。
あらかた荷物も運び終えたところで、俺はいよいよクリスマスプレゼントの開封をすることにした。手がガタガタ震えている。なんせこんなことは初めてなので俺に妙な緊張感がはしる。唯のちょう結びを解くだけでこんなに緊張するのか…と我ながら今の自分を可笑しく思う。というかプレゼントの大きさが俺の身長と変わらないぐらい大きいのだが…気にしたら負けか。
30分ほどかけて俺はクリスマスプレゼントの開封を終えた。が…
「おいおい…俺にこんな趣味はねぇぞ…」
出てきたのは今や伝説になっている電子の歌姫《初音ミク》の等身大人形だった。初音ミクは確か俺が生まれた頃に誕生し、それから今でも世界中で絶大な人気を誇るボーカロイドだ。《ちなみにボーカロイドとは歌を歌わせる為のソフトのことだ。》
驚愕のプレゼントにまたも妙な緊張感をはしらせながら触れてみる。
「…柔らかい。」
まるで本物の女性の肌ような柔らかい材質で出来ている。いや、触ったことないけど。
《男は狼》とはよく言ったもの。最初は緊張したが、いざ一度触れてみるとその後は、俺は変な衝動に駆られて《初音ミク》の身体中を触りまくった。何故なのかはわからない。単なる性欲なのか…それとも、誰も居ない家に突然住まわされたことによる寂しさを紛らわす為か。どちらにせよ、変態だな。俺はしばらくの間《初音ミク》を堪能した。その時、俺の身体の一部が《初音ミク》の秘部に触れた。
「…ふぁぁ…よく寝た。」
突然、《初音ミク》が起き上がり喋り始めた。本当に突然のことだったので俺は《初音ミク》から素早く距離をとり、若干身構えた。多分、俺は怖かったのだと思う。
俺の中にぼんやりと残っている両親についての記憶には実は恐怖を感じたことしかなかった。俺の中の両親と言えば、2人揃って《研究室》に篭って何かを実験しているイメージしかなかった。その研究も料理みたいな可愛い物なら良かったが、違った。俺の中のイメージだと確か…
ここから先は必ずと言っていいほど詰まる。いつもならここで意識を失い倒れるのだが、今回は違った。何か柔らかい物に包まれた。そう、まるで《女性の肌のような柔らかい材質》に。
「大丈夫ですかマスター?」
俺の知っている《初音ミク》の美しい声が聞こえた。正直怖かった。だけど、俺はもう身構えたりせず、彼女の細い腕に身を任せた。彼女の声は何故か柔らかく、俺を包み込んだ。つまり、安心したから彼女に身を任せたのだ。
「ごめん。もう、大丈夫。」
ミクは俺の身体を静かに解放した。よく考えると抱きしめられていたのか…少し顔が火照る。いやいや、相手はアンドロイドだぞ。多分。
俺が自問自答を繰り返していると、ミクが興味津々な様子でこちらを覗いてきた。うん、可愛い。
「マスター…名前を伺ってもよろしいですか?」
「名前…そうだな。」
「俺の名前は《那覇 大輝》。高校1年生。」
「那覇 大輝ですね。出来れば覚えておきます。」
いや、ちゃんと覚えてくれよ。
とにかく、俺は近くにあった彼女の説明書を見た。そこには恐怖のマッドサイエンティスト・両親からのメッセージが付いていた。
…貴方がこの手紙を読んでいると言うことは私達はもう
貴方の側にいないのでしょう。親らしいことをしてやれ
くて本当にすまなかった…
なんか両親普通にいい奴だった。これじゃあノーマルサイエンティストだな。
…貴方に私達10年の研究の成果を託します。この《初音ミク》は貴方の助けになるように作った最高のアンドロイドです。…
まさかの自画自賛。
…彼女はアンドロイドとは言いますが人間に限りなく近い存在です。私達の研究の成果のすえ、心も持っていますし、食事もとります。
成果を強調するなよ。
…ただ、彼女はまだまだ不完全です。私達に変わって彼女を完全なアンドロイドにして下さい。お願いします。…
…⁉️不完全なアンドロイド⁉️しかも、そいつを完全させる?専門的な知識も無しにどーやって…
とにかく、手紙はこれだけで終わりか。あとは説明書に目を通してっと…
「ネギスラッシュ‼️《アイス》」バコン‼️
「ぎゃあぁぁぁぁ‼️何すんだてめぇ‼️」
「だって…」
「マスターが私の自己紹介聞いてくれないんですもの。」
「自己紹介…?」
「本当に聞いてなかったんですね…」
「ごめん。」
こりゃ俺が悪い。
「じゃあもう一度。」
「私の名前は初音ミク。歌う為に生まれたボーカロイドです。」
「知ってる。」
「なんて冷たいんですか⁉️」
「いや、だって…」
面倒くさいから。その言葉は呑み込んだ。彼女が涙目でこちらを見つめているからだ。アンドロイドなのに涙を流せるとはうちの両親もいい仕事するな。
「わかったから。ごめんって。」
「それより、買い物に行かないか?歓迎会をしたいんだ。」
「歓迎会ですか⁉️」
「そんな…アンドロイドなのに歓迎会なんて…」
「じゃあ、食料が足りないから夜ご飯抜きだな。」
「…行きます。」
何こいつ可愛い。じゃなくて。こうして俺たちの不思議な日常は幕を開けた。
続く
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