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戦国異伝

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第二百三十七話 魔界衆その三

「蟄居の間もよく腹を切らなかったものじゃ」
「そこは見張っておった」
 平手が厳しい顔で言って来た。
「わしが亀岡城に入ってな」
「それで、でござるか」
「それは許さなかったのじゃ」
「そうでありました、平手殿が」
「うむ、それでここまでもな」
「平手殿が連れて来られましたか」
「そうした」
 こう柴田達に話すのだった。
「あえてな」
「それは何よりでござる」
「それでじゃが」
 さらに言った平手だった。
「あの三人はやはり上様に弓引いたことは恥ずかしくてな」
「やはりそのことがあり」
「三人共別の部屋におる」
「そこにおってですか」
「誰とも会おうとはせぬ」
「それは難儀ですな」
「三人共上様に切腹を命じられたいと思っておるわ」
「ううむ、それはまた」
 柴田はこう言って難しい顔になった。
「難儀な」
「わしでもじゃ」
 平手も言うのだった。
「その様なことをしてしまえば」
「腹をですな」
「切られると」
「そうされますか」
「そうせずにはおられぬ」
 織田家随一の忠義の者の言葉だ。
「あ奴の忠義も強いからな」
「そして恥も知っている」
「だからですな」
「どうしてもそこは」
「あ奴としても」
「腹を切らずにはいらませぬか」
「その気持ちわかる」
 平手にしてもというのだ。
「痛いまでにな。実際に何度かじゃ」
 それこそというのだ。
「腹を切ることは出来なかったが」
「頭をぶつけるなり」
「舌を噛むなりして」
「そうしてでござるが」
「自害しようとしておりましたか」
「三人共な」
 明智だけでなく斎藤と秀満もというのだ。
「何とかそれを防いで何度も何度も諭してな」
「思い留まらせた」
「そうでしたか」
「苦労した」
 三人を自害させないことにというのだ。
「しかし何とかじゃ」
「安土にですな」
「何とか連れて来た」
「左様ですか」
「そうじゃ、それで上様は三人を場には呼ばれぬという」
 その明智達はというのだ。
「そのお考えじゃ」
「三人のことを考え」
「そのうえでな」
「そうか、上様らしいな」
 柴田は平手の話を聞いて述べた。
「しかし別に処罰はじゃな」
「されぬ様じゃ」
「ならよい、十兵衛は天下に必要な者じゃ」
 無論斎藤と秀満もだ。 
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