ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第12話トラウマという名の恐怖
前書き
明けましておめでとうございます!新年最初の更新・・・というか凄くひさしぶりの更新になります!是非とも楽しんでください!
今日、エギルの店から家に帰ってミラを置いてオレはある場所に来ている。それはーーー
「よう、ひさしぶりだな・・・リトルギガント」
去年の8月、笑う棺桶に殺されたオレの現実の友達、明石翼、霧島弾、雨宮かんな、河村亜利沙の墓、オレは今ここにいる。
オレはミラに内緒にここに墓を建て、攻略の進み具合や最近の出来事を報告している。
「攻略も大分進んだよ、未来も元気にしてるぜ。最近なんて彼氏欲しがるくらいだ、まだガキのくせして色気付きやがってよ・・・もう、あの時のお前らと同い年だ」
そう、未来は今年で15歳ーーーみんなが死んだ時と同い年になった。弾やかんなはその時まだ誕生日迎えてなかったからまだ14歳くらいだったけどーーーみんなが死んだことで年齢追い越すなんて、皮肉なもんだな。オレも今年の10月で16歳になるーーーいや、それまで生きていられるかどうかーーー
「!?何考えてんだオレ・・・」
バカかオレはーーー墓とはいえみんなの前で 何バカなこと考えてんだ。
ーーーん?この感じーーーやっぱりか。
「犯人は現場に戻ってくる、名言だな。・・・出てこいよ」
オレの言葉を聞いてもう隠れても無駄だと踏んだんだろう。木の陰から一人の男が出てきた。黒いポンチョに身を包んだ男が。そう、奴はーーー
「オレの隠密を見破られたのは初めてだ。随分策敵スキルあげたな・・・ひさしぶりだな、《隻竜》クンよぉ」
「テメェらから何度も不意打ち喰らいたくないんでな、他には・・・いないみてぇだな。もうテメェとだけは会いたくなかったぜ・・・《PoH》!」
去年の夏、ここでみんなを殺した殺人者ギルド、笑う棺桶のリーダー、《PoH》。
「ああ、確かにここにゃ他のラフコフのメンバーはいねぇよ。《ザザ》や《ジョニー》は別行動、下っ端じゃオメェを殺すのは無理だろうよ」
「随分高く評価・・・してんのか?もしそうでもお前に言われても嬉しくない」
オレが言ったことを気にする様子もなくただ笑うPoH。《ザザ》と《ジョニー》というのは多分幹部の《赤目》のザザ、その相棒の《ジョニーブラック》のことだろう。幹部不在で下っ端もいない、か。
「「碌に戦力連れて来てないのになんでここに来た?」っつう顔してんな。・・・解ってんだろ?」
「ああ、薄々な。そういうことならこっちも・・・やらせてもらうぜ」
一対一の仇撃ちーーーいや。
「復讐を!!」
「イッツショウタイム!」
オレは戦闘開始の合図を、PoHはPKの前の合図を言い放ち、ここを離れ広い場所に移動した。オレはみんなの墓を傷つけたくないから移動したけど、あいつにはそんな気はないだろう。
******
「うおおおおおおおおおお!」
「シット!」
戦闘開始から早くも10分、オレは両手剣《ドラゴンスレイヤー》での猛ラッシュで奴のトマホークを破壊した。武器や防具は耐久値がなくなったら消滅する仕組みになっている。武器を失った奴が武器を持ち変えて反撃する前に一気に畳み掛ける!
「いけえええええええ!」
「おっと!」
オレは両手剣ソードスキル《スコッピード》をPoHに放つがかわされてしまった。ソードスキル使っちまったから身体が硬直しちまった。その隙に奴は武器を持ち変える。
「丁度こいつを使ってみたかっかったんだ。この・・・」
「!!・・・そ、それは!!」
奴が持ち変えた武器、それを見た瞬間オレの身体は硬直した。ソードスキルの硬直時間はもう終わった、原因はその武器の形状だ。刃渡りの大きな中華包丁、あれはーーー
「友切包丁をなぁ!」
2年前、オレの左腕を切り落とした包丁と同じ形だ!
「嘘だろ?な、なんで、なんでアレが!」
オレの硬直の原因、それはーーートラウマ。2年前の5月、オレの左腕を切り落とした通り魔が持っていた凶器。それが中華包丁だった。奴の装備した友切包丁もそれと全く同じ形だ。
「おいおいどうした?そんなに取り乱して・・・ハハーン」
突然取り乱したオレを見てPoHはオレの左腕が''あった''箇所と自分が持っている友切包丁を交互に見てーーー笑った。
「そういう・・・ことかああああ!!」
「!!」
PoHにオレが隻腕である理由が知られてしまった。それにつけこんでオレに大きく切りかかって来た。オレは避けようとするがーーー
「動け!動け動け!動いてくれ!!」
足が動かない。怖くて、怖くて堪らない。だからこそ早く逃げるように足に動けと言い聞かせる。そうしている間に奴の包丁がーーーすぐそばまで来ている。
「(ああ、そうか。オレ・・・ここで死ぬんだ)」
この世界に捕らわれて、妹や友達と再会して、友達を殺されて、妹を置いてその友達の敵に殺される。オレってーーー
「ダッセェな・・・」
翼、弾、かんな、亜利沙、もうそっち行くよ。ゴメンな未来、お前を置いて先に行くことを許してくれ。ーーーこの世界が消えたら父さんと母さんに謝っておいてくれ。
オレは奴の包丁に切られるのを目を瞑って待っていた。それが降り下ろされーーー
はしなかった。
「「一人になっても独りにはなるな」、こう言ったのはどこの誰だっけ?」
「あ、お前・・・」
オレが目を開いたら、オレとPoHの間に一人の男がいた。線が細く女のように見える童顔で、オレと同い年くらいの少年、真っ黒なコートに盾を装備しない片手剣の剣士。そう、この世界で出会ったオレの友達ーーー
「キリト?お前、なんでここに・・・」
「お前を着けてたんだ、お前の妹に頼まれてな」
「は!?」
「お前が一人でどこか行こうとしてると、決まって悲しそうな顔をするから心配だったみたいだぞ?」
未来の奴、オレが墓のこと教えてなかったから単独行動するオレを心配してたのか。オレを尾行しようとしてもオレの策敵スキルが高いから自分じゃすぐにバレることを見越してキリトに尾行させてた訳か。
「とりあえず・・・帰ってもらうぞ?PoH」
「・・・フン、まあいいか。また次の機会に・・・お友達に会わせてやるよ」
PoHはそう言い捨てこの場から去って行った。
「ゴメン、助けてくれてありがとな」
「謝るなら妹に謝ってやれ・・・あいつの心の拠り所はお前だけなんだから」
心の拠り所、か。あいつとオレは血の繋がりはないけど、ずっと一緒にすごした兄妹だ。偶然とはいえオレの友達とオレを追ってSAOに囚われて、オレと再会して、みんな殺されて、あいつにはーーー
「確かに・・・オレしか残ってないんだな」
「早く戻ってやれよ、もしかしたらずっとフレンドリスト見て心配してると思うぞ。知ったようなこと言ってるかもしれないけど・・・俺も妹いる兄貴だからさ、よく分かる」
フレンドリスト見てーーーか、あいつなら多分ずっとその状態だな。早く戻らなきゃな。というか、キリトも妹いるのか。あいつの童顔見てると、もしかしなくてもチビの頃は姉妹と間違われてそうだな。想像しただけで少し吹いてしまった。
「?どうした?」
「いや?なんでもない」
笑ったオレを見てキリトがこっちを見てきた。適当にはぐらかしとくか。そういえばーーー震えが消えた。
「キリト・・・ありがとな、マジで」
「ああ、それより、明日のこと・・・」
「ああ、ヨルコさんって人のとこに行くんだろ?確か57層だったよな、ちゃんと行くよ。・・・もう大丈夫だ」
オレはキリトに礼を言って、明日に備えてーーー我が妹の待つ、花畑の家に帰るために転移結晶でワープした。そのあと妹に怒られてメチャクチャ謝ったのは言うまでもなかったーーー
後書き
ライリュウの左腕を切り落とした凶器、実はこの回のための伏線としての設定でした。
次回は圏内事件後半からスタートします。
次回もお楽しみに!
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