魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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東馬の過去 神那島編
前書き
今回はちょっと話を遡り、前回名前だけ出てきた誠悟君との出会いです。
(これ書く前に師匠との出会いを書けよという言葉が聞こえてきますが、もうちょっとしたら書くんじゃよ?)
「神那島?」
「そう、今向かっている島の名前さ」
東馬が乗っている小型乗用車。運転しているのはつい先日、東馬の師匠緋村麻子だ。
彼らが今走っているのは神那島大橋。彼らが向かう場所、神那島に向かう為の唯一の手段といってもいい。
と言っても本当に唯一というわけではない。
フェリーも出てはいるが、フェリーはお金がかかる上に時間もかかる。
その点、この神那島大橋は時間もあまりかからずお金もかからない。必然的にこちらを利用する観光客の数が多くなっていっている。
それでもフェリーを使用する客がいるのも事実だが。
「あの……なんでそんな島なんかに?」
「まずお前は他の人間に慣れる必要がある。実際に私の仲間と話、してるか?」
「うっ……」
麻子の言葉に東馬は言葉を詰まらせる。
実際、麻子の言うとおりで東馬は碌に人と話さない。
というのも過去のある一件で他人をまったく信用できなくなってしまったのだ。(過去の件に関しては次回の過去編で明らかに)
東馬は本当は話したい、しかしトラウマにより今話した相手が自身に襲い掛かってくるのではないか、と考えるようになってしまった。
頭ではわかっていても、体が勝手に反応してしまうのである。
それをどうにかしようと、この島での療養を麻子は決定した。
この島は療養には最適でしかも島民は皆優しい。それ故にという理由とあともう一つ、この島には麻子が最も信頼を寄せている人間がいるからだ。
そんな事を麻子は考えながら車を走らせ、島の中に入る。
「うわぁ……」
助手席で外の景色を見ていた東馬が感嘆の声を上げる。
自然が豊か、それでいて車などが殆ど走っておらず、見たとしても小さな原付位だからだ。
「ほら東馬、そろそろ目的地につくぞ」
助手席で目を輝かせながら景色に見入っている東馬に注意してから、車を止める。
車から降りるとそこには一軒の家が建っていた。
「ここは?」
「お前が今からお世話になる家だ」
そう言って呼び鈴を鳴らす麻子。
しかし、呼び鈴を鳴らしても待っている人は来ないらしい。
「なんだぁ?あいつ寝てんのか?お~き~ろ~っ!」
「あ、あの師匠……その位で……」
呼び鈴を鳴らし続けながら叫ぶ麻子。
それを止めようと東馬は間に入るが
「うるさいですよっ!そんなに鳴らさなくても聞こえてます!」
中から一人の女性が出てきた。
肩までかかるであろう髪を後ろの方で縛って小さなポニーテールにしており、目元はキリッとしている。背丈は160位だろうか。スタイルもいい。
「おお、伊東妹。いやぁ、誰もいないと思ったから焦ったぞ。時間にはピッタリだったしな」
「はぁ?というか、何でここにいるんですか、緋村さん。お兄に用があるなら今家にはいませんよ?急な会議の知らせが来たとかで」
「急な用事か、それなら仕方ないか」
「あの、それで気になってたんですけど……」
と、話の腰を折るような形で女性が麻子に聞く。
「その子、大丈夫なんですか?」
聞くと、麻子の後ろに隠れていた東馬はさらに隠れて目元だけを出している。
「ああ、済まんな。ほら東馬、挨拶だ挨拶」
「…………上月東馬」
麻子のズボンに顔を隠しながら短くそう自己紹介する。
「自己紹介ありがとうね、私は美琴。伊東美琴っていうの、好きなように呼んでくれていいからね」
「……………………えっと、はい」
おずおずと差し出された手を握る。
「よしよし、そうやって積極的にいけよ」
「…………………頑張ります」
「えっと、それで?何でこの子を連れてきたんですか?」
「あれ?聞いてない?」
「あの、先ほども何で来たのか聞いたと思うんですけど……」
「あっはっは!済まんな、誠悟が言っていると思っていたよ!」
「聞いてませんよ、あのバカお兄……」
美琴は頭を抱えてため息をつく。
「はぁ、とりあえず預かりますね」
「ああ、頼むよ」
「えっ!?し、師匠、一緒には……」
頼むという言葉が出た瞬間、東馬の頭にはどうすればいいかわからないといった感じの考えしかなかった。
「一緒にいられるわけないだろ?こんなあいつのパラダイスに私がいたらあいつの胃痛がさらにひどくなるからな、自分で選んどきながらとは思うが」
「???い、いえ、ですから」
「ま、そういう事だから頑張れ♪」
そう言って麻子はさっさと車に乗り、さっさと去っていった。
「……………………」
そんなぁ、といった感じの雰囲気を出す東馬。
「あの人は、まったく……」
疲れた表情をする美琴。
「あの人には苦労するんですよね……後、お兄にも……」
「…………………あ、あの」
「うん?」
今この場では頼れるのは目の前に美琴しかいないので勇気を振り絞って話しかける東馬。
「さ、さっきから、その……言っている、その……お、お兄とか、誠悟、とかって……」
しどろもどろになりながらも何とか用件を伝える。
「ああ、今殆どこの家の持ち主状態になっている私の兄です。名前は伊東誠悟です「そして、私の永遠の宿命のライバルよ!」はぁ……」
と、美琴が出てきた家の向かいにある家から金髪の女性が出てきた。
こちらは金髪をツインテールにしており勝気そうな女性だ。
「あいつを出し抜くのはこのあたし、篠原聖良って決まってるんだからね!」
「もう、聖良ちゃん、急にどうしたの?」
と、後から出てきたのは少し赤みがかかった髪の色をしたほんわか系の女性だ。
「誠悟の家に今日から居候くるみたいなのよ、あいつあたし達に何も言ってない癖に!」
「ま、まあまあ。せいちゃんだって忙しいんだし。仕方ないんじゃない?」
「あによ!ワン公は気にならないの!?」
何か、忙しい人だなっと心の中で東馬は呟く。
「そりゃ、気にはなるけどさ。せいちゃんはどうでもいい事とかは普通に話すけどきちんと話をしてほしい話に関してはぜんぜん話してくれないけどさ」
「というか、あまり大きな声を出さないでくれませんか?この子、ちょっと人見知りするみたいなんで」
「おっと、どうやらそうみたいね」
美琴の言葉で聖良は東馬の様子を見て、少しだけ怯える東馬の様子にすっと身を引く聖良。
どうやら、少しだけ抑え気味でいくらしい。
「ごめんね、驚かせちゃって。あ、私彩。服部彩って言うの!よろしくね!」
「あ、あの……よろしく……」
東馬は少したじたじになりながらも何とか手を握り返す。
と、ここまで来て東馬はある事に気づいた。
(あれ?僕、普通に手とか繋げてる……)
これはいい変化、なのかな?と思いながらも自身の手を見てにやけるのを止める事が出来ないでいる東馬なのだった。
時刻は既に9時。
「眠れない……」
先ほどまでずっと騒いでいたからか、眠気に襲われる事はなかった東馬。
というのも、誠悟は会議が長引いているらしく美琴だけで歓迎会をする事になった。
しかし、向かいに住んでいる彩、それぞれの家に住んでいるほかの誠悟の知人達も誠悟の家にやってきた。
力仕事を任せられたら島では右に出る者はいないと言われている島一番の力持ち、藤堂春樹。
島一番の秀才にして、島一番の変態という相反する称号を持っている阿部久志。
島一番の有力者である内海家の現当主、内海静奈。
聖良が自身がかつて所属していた風紀委員のネットワークを使って呼び出した、橋本優喜と三木真智子。
静奈と共に監視の為とやってきた、毛内清美。
この記念すべき日を写真に撮りたいとカメラを構えながらやってきた美琴の大親友、中西藍子。
中々の大所帯になり、それでなのかはわからないが大いに盛り上がった。
その興奮が冷め切らないのか、東馬は布団を抜け出し、台所に向かう。水を飲もうとしているのだろう。
ジャーー…………。
「?」
と、台所の方から流しを流す音が聞こえてきた。
誰かが皿洗いでもしているのだろうか?
東馬はそんな事を考えながら、そっと台所を扉の前から盗み見る。
――――――そこには一人の男性が立っていた。男性は一人スポンジを片手にせっせと皿洗いをしている。
「あ、あの……」
盗みに入った人かとも思ったが、それなら皿洗いをしている理由にはならない、それらから東馬はこの男性がこの家の事を知っている人だと思ったのだ。
「ん?ああ、君が東馬君か、ちょっと待っててくれ、今皿洗いを済ませるから」
そう言うと男性はせっせと皿洗いを終わらせる。終わらせてから、男性はコップにホットミルクを入れてから一つを東馬に渡す。
「あの……貴方は、もしかして……」
「ああ、自己紹介がまだだったな。俺は伊東誠悟。お前の保証人だよ」
これが、東馬の人生の師匠とも言える存在である、伊東誠悟との出会いだった。
後書き
誰が最後だと錯覚していた?
ちなみに続きは本編を書きますがこうやって時々過去編を入れていきたいと思っております。
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