戦国異伝
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第二百三十六話 生きていた者達その四
「それがしは」
「そう思われますか」
「どうしても」
「では誰の采配か」
「少なくとも十兵衛殿のものとは思えませぬ」
「しかし」
平手はいぶかしむ顔で長政に言った。
「間違いなく率いているのはあ奴ですぞ」
「ですな、しかし」
「十兵衛のものではない」
「そうとしか思えませぬ」
「では勘十郎様と同じか」
「父上と」
二人はここではっとして話をした。
「そうか」
「そういうことですか」
「あの時の勘十郎様は異様じゃった」
「父上も。今思いますと」
「それを考えるとです」
平手は愕然とした様な顔になってだ、長政に述べた。
「十兵衛の傍にはです」
「何者かがいますな」
「そうとしか思えませぬ、この度もそうでしたか」
「そういえば他にも」
ここで長政が言う者はというと。
「十二郎殿も」
「あ奴もでしたな」
「あの御仁も妙でしたな」
「何かがいた様な」
「ではやはり上様が思われていた様に」
「間違いありませぬな」
こう二人で話すのだった、そしてだった。
二人で城の守りを固めて明智の軍勢が来るのを待っていた、明智の軍勢は程なく安土に着いてだった。
まずはだ、彼等は人のいない城下町を見て言い合った。
「もう逃げたか」
「町人達はな」
「戦と聞くとやはりな」
「民は逃げるわ」
難を逃れてというのだ、そして近くの山を見ても話した。
「あの山にでもおるか」
「そして戦見物か」
「戦は巻き込まれねばよき見物じゃ」
「だからじゃな」
このことは戦の常だ、だから明智の足軽達も驚くことはなかった。
それでだ、その複雑に入り組んだ城下町を前にしてだった。
そしてだ、こう話したのだった。
「ではこの町をどうするか」
「焼くしかないがな」
「このままでは邪魔じゃ」
「だからな」
「この町は焼いて」
「そしてあの城を囲むことになるな」
「そうしてじゃな」
城下町を焼いて終わりではない、彼等もこのことをわかっていて話す。
「城攻めじゃな」
「町を焼いたうえで」
「城に兵は殆どおらぬというし」
「それではな」
「大丈夫じゃ」
「何時見ても大きな城じゃが」
「見事な城じゃが」
しかしというのだ。
「人がおらぬのでは容易い」
「城攻めがしやすい」
「ではな」
「その後で攻めることになるな」
実際にこの時は明智も城攻めの前に町を焼いた。そうして。
城の周りをすっきりさせた、その時にはも夜になっていた。
その夜にだ、明智の傍にいる者達は話した。
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