戦国異伝
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第二百三十六話 生きていた者達その三
「ですから」
「落ち着いて、ですな」
「ことにあたりましょう」
「そういうことですな、では」
「はい、戻りましょう」
天主からというのだ。
「今は」
「わかりました、それでは」
「茶を用意してあります」
微笑んでだ、平手は長政に茶も勧めた。
「それどうぞ」
「おお、茶ですか」
「如何でしょうか」
「茶は好きでござる」
「ですので」
長政が茶が好きなことも入れてというのだ。
「どうぞ」
「わかりました、それでは」
こうしてだった、長政は茶を飲む為に天主を後にした。そうして茶室に入るとすぐにだった。平手が茶を淹れた。
そしてその茶を飲むとだ、平手が笑って言って来た。
「上様もです」
「茶がお好きですな」
「左様です、しかし今は」
「ここにはおられませぬな」
「そうです、我等だけでの楽しみです」
「そうなりますな」
「では」
こう話してだ、それでだった。
平手は今度は和菓子を出した、長政はその和菓子も口にして述べた。
「この菓子も」
「お気に召されましたか」
「はい、戦を前にしてのこの馳走は」
笑みを浮かべての言葉だった。
「励みになります」
「そうですか」
「では励みます」
「さて、十兵衛はどうして来られるか」
「そのことですが」
ここでだ、長政は怪訝な顔になって平手に述べた。
「気になることがあります」
「十兵衛の采配にしては」
「明智殿の采配は見事なものです」
戦の強さには自信のある長政から見てもというのだ。
「それがしから見ましても」
「だからですか」
「本来の十兵衛殿なら既に安土に来ています」
今の時点でというのだ。
「そうなっている筈ですが」
「しかし」
「まだ来ておられませぬな」
「何でも丸一日都で過ごしていたとか」
「本能寺と二条城で骸を探し」
そしてとだ、長政はさらに話した。
「御所にも人を向かわせたにしても」
「一日時を潰し」
「そしてそれから飯を炊かせて食い」
「時を潰されましたな」
「その様なことはされませぬ」
明智はというのだ。
「そこが気になります」
「ですな、そこは」
平手から見てもだった、実際に。
「妙ですな」
「まるで別の者が兵を動かしている様な」
「そうしたものがあると」
「そう思います」
こう平手に話すのだった。
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