『続:殺し、失い、得たもの。』
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『組長との出逢い』
零が組長と出逢ったのはラブホ街。
服は剥ぎ取られて、胸も出てて髪も顔もグシャグシャ。
隠す気力も立つチカラも無かった。
もぉ死にたかった。
通り過ぎる人は好き勝手にゴミの様なコトバを吐き散らしてく。
皆が零を見下してく。
零は、そんな大人や社会を恨んで睨みつけて生きてきた。
でも、もぉそんな生き方も疲れ果てた。
そんな時に現れた。
キラッキラした黒塗りの高級外車から降りてきたカッコイイおじさん。
スーツをフワッとかけられて、お姫様抱っこで車に乗せられた。
何が起きてるんか解らんくて声が出ん。
思考回路も停止。
そのまま意識飛んだらしい。
目覚めたときはベッドの中。
組長の寝室。
服はダボダボのTシャツとズボン。
下着は新しいものが...
まぁえっか。
...それより、こんな腐った生ゴミ拾う奴の気が知れん。
『起きたか?オジヤ食えるか?』
言葉が出んかった。
『あー...着替えは...嫁は死んで居らんからワシが目ぇ瞑って...スマン...』
何故ソッチが照れる!
思わず心の中で突っ込んだ。
『...助けてくれて有り難う御座います。でも、小動物や無くて零は腐った生ゴミです!』
『そぉ思うことで何とか生きてこれたんなら仕方ない。でも2度とそんなこと言わさん。とりあえずコレ食べてみぃ!』
厳つい顔が、優しく、悲しく、笑顔になってく。
食べさしてくれるまま、子供みたいに甘えてる自分が居た...。
『おいしぃ...っ!!』
今迄、食べたことないくらい、温かくて優しい...
ビックリするくらい美味しかった。
涙止まらんかった。
ほんまに止まらんかった。
頭ガンガンするほど泣いて泣いて...
しまいには喚き散らして叫んで気を失った。
目覚めた頃、おじさんは隣で手を握って悲しそうに零を見てた。
『...すみません...』
『頭、痛ぁないか?言いそびれたけど、ワシ、組長。名前は、零でえんかな?』
『はい、組長?ヤクザの?え、零の実の父さんのこと知ってんの?』
『ん?零のお父さんのことは知らんけどヤクザやで』
『そっか、父さんと同じ人種なら安心。逢いたいなぁ...』
意識朦朧の最中、そんな会話をした。
それからまた知らん間に寝てしもたんやろな。
まともに眠れる日は無かったから...。
父さんと同じ世界の人ってだけで凄く安心した。
組長の、あの内から湧き出る温かさみたいなものが心地良くて...
起きて、カラフルな光が漏れるドアの向こうに行った。
組長が暗い中で聞こえんテレビを観ながら、お酒を飲んでた。
暫く、その後ろ姿を眺めてた。
父さんと居たら、こんな感じやったんかな...
組長が、零に気付いてビックリしたらしく飛び上がった。
思わず吹き出した。
『おまえなぁ!オバケみたいに突っ立っとったらビックリするっちゅーねん!あー心臓飛び出るか思たわ』
組長は胸をさすりながらグラスの酒を飲み干した。
座れって前の席を指さした。
『何飲む?』
『...ドライ』
『アサヒか』
零は頷く。
組長は電話でドライ買ってくるように誰かに頼んだ。
『...何であそこ居ったんか教えてくれるか?言いにくいとは思うけどワシは零を捨てん。何があってもな!!』
そこらの腐った大人とはちゃう。
直感的に感じた。
『...先輩らに援助やらされてて、いつもと違って客が複数のチンピラで...でも零は既に母さんの新しい男のオモチャやけん全然何とも無い。逆に、こんな汚い生ゴミに金出すとか馬鹿みたいって...』
組長が遮る。
『零が金貰ってるんか?』
『貰ってない。先に先輩らが貰ってるらしいし。てか金あっても欲しいモン買えんし要らん。どぉでもえぇ。何もかもが消えてしまえばえぇ』
『わかった、わかったよ、零...』
組長は涙を流した。
...ように見えたけど...
気のせいかも知れん。
ゴトッ!!
ドアの向こうで音がした。
『置いときます』
『おぅっ、サンキュ』
グラスに注いでくれる。
『ワシは零の新たな人生を支えると誓う!!零、オマエも諦めず生き抜け!辛い、苦しい、死にたい、そんな想いを抱えるのは仕方ない。それでも生きろ!!ワシが救う!!』
『...わかった』
『なんや素直やないか...うん、オマエはええやっちゃ!乾杯っ♪』
『乾杯♪』
酔いながらも淡々と零の人生をありのまま話した。
聞かれることには正直に答えた。
組長は怒りを露わにしたり、悲しそうな表情になったり、涙を堪えるような素振りをしたり、そんな組長に対して、零は、父さんの姿を重ねた。
何気に関西弁やし、笑ったときの柔らかさとか、優しさ故の厳しさとか...熱血加減が似てる気がする。
そんなに記憶無いから解らんけど...
でも、父さんもこんな感じなんやろなぁって。
いや、父さんなら、間違いなく母さんの男を殺す。
零の為に...。
零を守る為なら、それくらい簡単にする。
零は、おしおきをされた後、憎しみを抑えきれん表情の時、母さんに『オマエの性格や考えは、父さんに似てる。あの血が間違いなく濃く受け継がれてる。爆発するなよ!!』って言われたことがある。
この日から、零は、組長を父親のように慕い、親子のような関係になった。
誓い通り、組長はどんなときも助けてくれた。
零に援助やらしてた先輩達は、全治数ヶ月の怪我を負って入院したとか...
あの時の複数のチンピラ共はおとなしくなったとか...
風の噂で聞いた。
自ら手を下したかどうかは解らんけど、組長の仕業なんは確かなんだろうな...
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