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黒を纏う聖堂騎士団員

作者:櫻木可憐
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06.男を捨てる時

睡眠は大切です。寝不足はお肌の敵ですから。
バカククールが言うとウザイだけですが、クロノスは女子だからアリです。
いや今回クロノスは寝過ぎたのですが。
マイエラ修道院に賊が来ようが、マルチェロが倒すからと言うと無駄な自信があります。
自分のことではないのですから、そんな自信は邪魔なだけです。
クロノスは起き上がり、行く宛もなく下の階に行きました。

ちょうどその時に、顔色が悪く気味の悪い道化師が目の前を歩いていきます。
見た目から道化師とわかる道化師はレアですが、それを通したオディロ院長もレアです。
マルチェロが絶賛嫌がるタイプではありませんか!!

クロノスは黙って通過するのを見ていました。
世の中変わり者もいるのだなっと。

 
 
 
 
ズキッ!!

 
 
 
 
いきなりの激痛にクロノスは頭を押さえ込みました。
頭が割れそうな激痛と言うのでしょう。
ここまでの激痛にあったことがないので、適切な表現が見当たりません!
ただ、それが異常な痛みであることはわかりました。
病気で起きる痛みでなければ、生理の痛みでもありません。
奥底から何かをほじくりだす痛みです。
クロノスは頭を押さえたまま、部屋に引き返しました。
そして、そのままベッドに這いつくばり寝ることにしました。

 
 
しばらくして痛みもおさまり、クロノスは起き上がりました。
デコにタオルが置かれていたことに気づかず、タオルが手の中に落ちてきました。
誰かが看病していたのでしょう。
彼女はそれがマルチェロと知るすべはありません。
彼女が知ることができたのは、宿舎の異様な静けさと胸騒ぎです。
ここからの行動は彼女の勘です。
女の勘は根拠に基づくと言いますからいいとしましょう。

彼女が向かったのはオディロ院長のいる館・・・
しかし、行くための橋がなくなっていたのです。
それが炎によると気づくことは出来ましたが、今は言うほど重要ではないでしょう。
館の扉は開いていました。

(ククールかマルチェロがこじ開けたのだろう。
・・・オディロ院長と二人が確実に中に)

いやいや、中で警備している団員を計算に入れましょうね!?
いつかその計算で破綻しますよ!?
そんなこと考えてる余裕もありません。

クロノスは泳いででも渡ろうとしました。
しかし、館からククールが顔を出したのです。
彼女はその顔を見て、察しました。
オディロ院長の死を。
そのあとに道化師の顔を思い出しました。
唯一の侵入者である道化師と言う犯人を。
そしてクロノスは気づけば叫んでました。

「ククール、お前のせいじゃないからな!!」

気づいたクロノスは、ふと不安にかられました。
野心家のマルチェロがこれを機として、悪の道に染まるのではないかと。

(女神のせいでもないのだよ、マルチェロ。
神を恨むな。神を憎むな。
まあ言えば逆効果かな。)

クロノスは黙って引き返しました。
本日二度目の逆戻りです。
今度は寝るためではありません。
オディロ院長がいない今、男として修道院にいる意味がないのです。

「オディロ院長、ありがとうございました。
あなたのおかげで、私は強くなりました。
一人旅に出ても問題はないでしょう。」

彼女はポツリと言うだけでした。
 
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