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女の子の秘密

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3部分:第三章


第三章

 この日もこんな調子だった。やはり桁外れに食べる。皆それを見て絶句だがやはり本人は平気なものである。スタイルも変わらない。食べ終えても穏やかな顔で苦しそうなものはない。
「ひょっとしたらよ」
 男の一人がそんな彼女を見てふと言った。
「あいつな」
「今度は何だ?」
「腹の中に何かいるのかもな」
「子供とか言うなよ」
 一人が顔を顰めさせてその話は注意した。
「やばいからな。推測では言うなよ」
「それだったら最近急に食う量が増えて腹が大きくなってくるだろ?」
 彼はこう言ってその一人に対して言い返した。
「それこそな。もうな」
「それもそうか」
「そうだよ。だからそれはないさ」
 それは彼も読んでいることだった。
「絶対にな」
「じゃあ何であんなに食えるんだ?」
「それだよ」
 また話が戻った。
「そこまで食えるのかな」
「で、御前はその理由を何だって思ってるんだ?」
「腹の中ってよ」
 皆早輝を見ながらひそひそと話をしている。本人は何事もなかったかのようにファッション雑誌を出して読みだしている。読みながらお茶を飲んでいた。彼女が家から持って来たと思われるそのお茶だ。
「まさかって思うけれどあれか?」
「グロか?」
「まあな」
 彼はそういう手のことかと問われればそうだと答えたのだった。
「それだけれどな」
「っていうとあれか?つまりはよ」
「回虫とか。サナダムシとかかよ」
 皆言いながら嫌そうな顔になる。普段からでもお世辞にも話しやすいものではないが食後は特にそうだった。食事中は絶対にできない話である。
「そっちだよな、腹の中だとすると」
「やっぱりそれか?」
「ああ、そうだけれどな」
 やはりそれであった。
「サナダムシとかって腹の中にいたら腹一杯食ったって思えなくなるらしいな」
「そりゃあんだけ大きなのが中で栄養吸い取るからな」
「まあそうなるよな」
 実際にそれはあるのだ。サナダムシは四メートルにもなる巨大な寄生虫でその巨大な身体で栄養を吸い取る。そうしたものが中にいればどうなるかは考えたらすぐわかることだった。
「それで痩せたって人もいるらしいしな」
「サナダムシでか」
「そういうダイエットもあるらしいぞ」
「絶対身体に悪いぞ、それ」
 仲間うちの一人が顔を露骨に顰めさせて述べた。
「そんなので痩せてもよ」
「けれど痩せることは痩せるらしいぞ」
 だがこれは確かなのだった。
「あれな」
「まさかそれか?」
 彼等はサナダムシに傾きだした。
「それで太らないのか?」
「そうじゃないのか?やっぱり」
「いや、待てよ」
 しかしここでこの推測にストップがかかった。仲間うちからの言葉であった。
「今時サナダムシとかいるか?」
「いないか」
「いないいない」
 そのストップをかけた彼は左手を平にしてそれを横に振って否定した。
「有り得ない、今農薬とかあるし衛生的にも五月蝿いから野菜とかにはそんなものついていないしな」
「そうか」
「そうだよ。だからそれはないって」
 サナダムシの説はこう言って否定するのだった。
「寄生虫はそれで殆どなくなったんだぞ。御前等だって腹の中に虫とかいないだろ」
「いたら大騒ぎだよな」
「なあ」
 これが現実であった。
「それこそな。薬飲んでな」
「あれ、種類によっちゃ身体の中動き回って洒落にならないことになるらしいしな」
「怖いこと言うんじゃねえよ」
 こうした話になると最早推測どころではなかった。気持ちが悪くなってそれで皆止めてしまった。やはりこうした話は何にも増して気持ちが悪く尚且つ恐ろしいものである。
 
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