女の子の秘密
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2部分:第二章
第二章
「それ、絶対違うぞ」
「違うか?」
「あいつ肉とか揚げ物とか甘いものも好きだろうが」
「あっ、そういえばそうだな」
「見ろよ」
ここで後ろを指差す彼だった。そこにいる早輝をだ。
「牛丼十杯だぞ」
「ああ」
「しかも特盛りだぞ」
吉野家で一番大きいメニューである。
「肉食わないなんて思えるか?」
「いや」
そこに答えがあるのだった。
「じゃあやっぱりそれか」
「大体この前だってお昼のデザートにドーナツ何個も食ってただろ」
「ミスタードーナツだったよな」
ドーナツといえばこれだった。この吉野家の近くに丁度あるのである。
「じゃあ揚げ物もか」
「今日もコロッケ食ってたしな」
「甘いものもな」
全部であった。
「何でも食うんだな」
「しかも太りそうなものもな」
「カツ丼もラーメンも大好きみたいだしな」
「この前学生食堂でどっちも大盛りで食ってたぞ」
男子学生の食べるようなものだがそういうことは全く意に介さないようである。
「それに一緒に特大ハンバーガーもな」
「ああ、マクドのハンバーガーも何個も食うよな」
「だよな。太るものばっかりじゃねえか」
答えが完全に出てしまった。
「で、何で太らないんだ?」
「あんなに細いんだ?」
答えが出ても謎は残る。それについて首を傾げる段階になった。
「それがわからないよな」
「足だって奇麗だしな」
「部活。やってたよな」
次にこのことが話された。
「確か。バレーボール部だったよな」
「ああ。レギュラーらしいな」
「うちの女子バレー部強いけれどな」
彼等の学校のバレー部は全国大会の常連である。かなりの強豪であると言っていい。早輝はそのバレーボール部でレギュラーというわけなのだ。
「運動してるからか?」
「しかも成長期だしな」
「それで太らない体質だとか?」
「いや、その三つが仮にあったとしてもよ」
彼等の中の一人が皆が挙げてきた根拠と思われるものに対して反論を出してきた。
「あれだけ食ってるのに太らない筈がないだろ」
「だよな。力士並に食ってるからな」
「まじでうちの相撲部とかプロレス研究会と同じ位食ってるよな」
「なあ」
力士やレスラーといったものがどれだけ食べるのかということは最早言うまでもなかった。何しろ彼等は食べることも仕事であるからだ。食べて身体を作るのである。
「バレーボールって相撲やプロレスとは違うからな」
「あんな巨大な身体でぽんぽん飛び跳ねられるか?」
「いや、それはない」
これは速攻で否定された。皆頭の中でまわしを付けた巨大な小錦そっくりの力士やジャイアント馬場の様なレスリングシューズの巨人がバレーボールをする姿を思い浮かべた。どう考えてもそれは有り得ない光景であった。シュール極まりない光景であった。
「だったらあれだけ食ってもあのスタイルは」
「謎だよな」
「何でなんだ?」
ここでまた皆それぞれ考えるのだった。
「それがわからないんだよな」
「全くだ」
彼等は吉野家において腕を組み考え込んでいた。その後ろでは相変わらず早輝が笑っている。その隣の中華料理店では餃子百二十個や特大ラーメン三杯を完食した記念写真があるしハンバーガーショップでは特大六段ハンバーガーを食べた写真まである。既に商店街では有名な大食い少女になってしまっていた。
今日も昼にはその大食だった。この日は食パンをそのまま使ったサンドイッチを食べている。パンだけで二十枚かそこいらはあった。
具に至っては普通の野菜や卵に留まらずカツやソーセージ、ハンバーグがそのまま入っている。とりあえず滅茶苦茶な量だった。
「やっぱりあれも食うんだよな」
「っていうかどんどん減ってるぞ」
「相変わらずとんでもねえな」
「何処に入ってるんだ?」
皆またしても彼女が食べるその姿を唖然としながら見ていた。その間にも早輝はその特大サンドイッチを食べ続ける。そうしてその机の上に積み重ねたならば優に食べている本人の背を越えそうなそのサンドイッチの山を食べ終えたのだった。十分とかからずにだ。
「また全部食ったぜ」
「しかも何て速さだよ」
ただ食べるだけではなかったのだった。速いのだ。尚且つそのうえで今度は林檎を取り出して食べている。それも三個あっという間だった。
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