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戦国異伝

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第二百三十四話 燃え落ちる寺その十三

 彼等はだ、こう話すのだった。
「殿と何処までもじゃ」
「共に行こうぞ」
「生きるも死ぬも一緒じゃ」
「ではな」 
 こうしたことを話してだ、彼等はおかしいものを感じながらも明智に従うことにした。彼等にしてはそうするしかなかった。
 それでだ、その中でだった。
 明智の兵達は本能寺と二条城を丸一日使って調べてだった、重臣達が明智に述べた。
「屍は多かったですが」
「それでもです」
「どれも黒焦げで」
「誰のものなのかわかりませぬ」
「前右府殿のものであるかどうかはです」
「秋田介殿も」
「ただ、です」
 重臣達はこうも言った。
「屍の数は多く」
「どうやらその中にです」
「お二方のお亡骸もあるかと」
「だからです」
「お二人は」
「そうか、ならよいがな」
 明智もここで納得した。
「では次はじゃ」
「御所ですな」
「あちらですな」
「あちらに人をやり」
「そのうえで」
「うむ、大義を得る」
 是非にと話してだ、そしてだった。
 今度は御所に人がやられた、しかし。
 そこには誰もいなかった、代わりにだった。
 闇の色の服を着た公卿が出て来てだ、明智の家臣達に言った。
「明智殿に伝えられよ、帝はおられぬ」
「何と、では何処に」
「何処に行かれたのでしょうか」
「わからぬ、私が気付いた時にはだ」
 既にというのだ。
「もう殆ど誰もおられなかった」
「左様ですか」
「それでは一体」
「帝は何処に行かれたのでしょうか」
「それがわからぬと言ったであろう」
 男もこう言うしかなかった。
「とにかく今御所に主な方はおられぬ」
「ですか、では」
「我等は」
「帰るがいい」
 こう彼等に言うのだった。
「わかったな」
「さすれば」
「そうさせて頂きます」
 明智の家臣達も応えるしかなかった、それでだった。
 彼等は御所から帰り明智の下に戻った、明智はそう聞いても頷くだけだった。ここで普段の彼ならすぐに探す様に言うがだ。
 そのことにも明智の家臣達はいぶかしむしかなかった、だがそれでもだった。
 ことは動きだ、そしてだった。明智の者達は都を押さえにかかった。だがそれはあまりにも遅い動きであった。


第二百三十四話   完


                           2015・7・4 
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