戦国異伝
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第二百三十四話 燃え落ちる寺その十二
「大義を貰おう」
「殿の、ですな」
「それをですな」
「それを貰い」
「前右府様征討の件をですか」
「確かとしたい、しかしじゃ」
それはというのだ。
「後じゃ」
「まずは、ですな」
「本能寺と二条城を探し」
「前右府殿と秋田介殿のお亡骸を探す」
「そうですな」
「それは一日じゃ」
その間だけ探すというのだ。
「おそらく生きてはおるまいが」
「それでもですな」
「一日探し」
「そして、ですな」
「そのうえで」
「そうじゃ、そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「大義を得た後で安土じゃ」
「わかりました」
「ではそうしましょうぞ」
重臣達も応える、だが。
明智の前から去り寺に向かう時にだ、こう彼等の間で話した。
「やはり妙じゃな」
「そうじゃな」
「いつもの殿ではないぞ」
「何かが違う」
「妙じゃな」
実にというのだ。
「話し方といい」
「そして采配もな」
「殿ならより速い」
「すぐに安土に物見でも出すしな」
「それにな」
「一日兵の全てを寺と城に回さぬな」
このことも言うのだった。
「後はな」
「御所にもすぐに人を送られるが」
「それがな」
「采配も普段の殿とは違う」
「やはり妙じゃ」
「おかしいわ」
「目もな」
一人が彼の目について述べた。
「いつもと違う」
「動きがないぞ」
「何処か虚ろでな」
「妙に暗い」
「光がない」
「そんな感じじゃな」
実にというのだ、それでだった。
彼等はだ、こう言うのだった。
「斎藤殿、秀満殿もじゃった」
「お二人も妙じゃった」
「何故じゃ」
「お三方もな」
「どうされたのじゃ」
「この度のご謀反のことといい」
「わからぬことばかりじゃ」
斎藤や秀満のことも話すのだった、そしてだった。
その中でだ、こうしたことを言ったのだった。
「しかし明智家はな」
「うむ、当家は殿とお二人で動く家じゃ」
「我等は従うのみ」
「だからな」
「このまま行こう」
「そうしようぞ」
重臣といってもだ、それでも彼等は明智達三人に忠実で持っている力も三人と比べると微々たるものだ、それでだった。
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