IFのIFストーリー
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転生者
ー白い世界ー
老人は泰人が落ちていった穴をしばらく見つめた後、ボタンを押して穴を閉じた。
ガコンと音を立てて閉まるのを見たら上を見上げつぶやく。
「・・・これで良かったかのう。全く、わしにこんなことを押し付けおって・・。しかもお主の魂と引き換えにあの若者を生き返らせるなど・・・いくら神様と呼ばれておるわしらでも禁じ手と呼んでおるのにのう。
・・・いかんいかん、もう存在しない相手に説教などしても仕方のないことなのにのう」
呟いた後しばらく無言でいたが、老人は何処かを目指し歩いていった。
ー星導館学園某所ー
「ん・・・・」
少年はいままで寝ていたかのように目を覚ます。
「・・・ここは何処だ?」
とつぶやき辺りを見回す。自分はどうやらベンチに座っていたようだ。まだ寝ぼけている頭を叩き、席を立つ。が急に目の前に投影ディスプレイが現れ、待ってましたとばかりに情報が並んでいく。
「っと。・・・ほう」
と斜め読みでスルスル読んでいく少年だが、読みきるとため息をつきまたベンチに座る。
「ちっ。この世界の基本の事しかないのかよ。まったく」
と悪態をつく。なぜならこの少年はこの世界に存在しない人間なので、もしかしたら元にいた世界に戻れるかもしれないと淡い希望を持っていたからだ。もちろん元の世界の事など載っていなく、ただ必要最低限のルールなどしかなかったのである。
「とりあえずこの学園の生徒会長に会え・・・か。まったく、その学園が広すぎるんだよなぁ・・・」
一人虚しく呟きながら空を見つめていると、いきなり何処かから、爆発音が響きその方向を探す。
「ー!なんだ?・・・とりあえず行ってみるか」
と音のした方を勘で探っていく。
少し歩くと、大きい広場の所に二人の男女が果敢に戦っていた。
女のほうは薔薇色のような髪をした少女で、一方、剣で防戦している少年は日本人特有の黒髪だった。そんなことより、少年・・・枢木泰人は危機感を抱いていた。
前の世界でも銃やら剣やらを使い戦うことはしていたが目の前で戦っている男女は防具もつけず、真剣で戦っている。しかも周りは熱狂的に声をあげて楽しんでいる。
「・・・なんでこんな物騒な世界に来ちまったんだ・・・ってあれは?」
諦めの言葉を口にして、見つめていると向こうの木々の間から男女を狙う何者かが見えたので、泰人は能力を使い、何者の背後を取った。
「こんなところから何にこそこそと殺気振りまいてんだぁ?ことの次第によっちゃあ・・・」
急に後ろから声をかけられた何者かは反射的に手に装着していたボウガンのようなもので泰人の頭と胸に向かって発射した。・・・が、
「ぐぁっ!・・・なんてな。ったく危な・・ってもういねぇし」
反射されたボウガンの矢は泰人に刺さらず、後方の木に刺さっていったが、振り向くと相手はいなくなっていた。
「・・・なにしてんだか。さっさと学園に行くかー」
と言って広場の方を向くと、いつの間に終わっていたのか一人増えた男女達が俺を見ていた。
「・・・あー。完璧、不審者だな。俺。」
と男女の方へ歩いていく。
「・・・君が狙ったのかい?」
と出会って早々かけられた言葉がそれで思わず苦笑するが、さすがに狙撃の場所から出てくると仕方ないか、と思いつつ口を開く。
「いやいや。不審者がいたもんで声をかけただけだよ。まったく物騒だなここは」
「・・・」
とおどけて見せるがみんな黙っているので俺は首をかしげる。
「・・・みんな俺が不審者って顔してるんだが。今日から学園に入学する予定でたまたまここを通りすがっただけだよ。なんなら生徒会長に聞いてみても良い」
と学園に案内してもらうよう話すと、三人のうちの一人が何やら確認をして、俺と記録を見合わせたあと俺の前に出てきた。
「・・・たしかに、あなたは我が星導館学園の生徒の手続きを踏んで、正式な生徒になっています」
「・・・もしかして生徒会長さん?」
「はい。星導館学園生徒会長、クローディア・エンフィールドと申します。では天霧綾斗くん、枢木泰人くん、改めてよろしくお願いします」
とすっと手を差し出してきたので天霧綾斗と呼ばれる少年と順番に握手する。
そうして一件落着で終わりそうな雰囲気を出してやっと学園に行けると思っていたら、横にいた少女が口を開いた。
「・・・コホン、話を戻すがいくら生徒会長といえども、正当な理由なくして決闘に介入することはできなかったはずだが?」
「・・あーいきなりここで口を挟むのはどうかと思うが、さっきもいった通り、不審者があんた達を狙っていたんでその決闘は破棄させてもらえないかな?」
「・・・なに?」
と生徒会長を睨んでいた少女はこちらに睨み返してきた。ので、
「なんならー・・・[俺が相手してやろうか?]・・どうですかね?」
と少し睨み返すように小声で言うと、
「・・・!仕方ない、それでいいだろう」
と少女は挑発(ry
じゃなくて提案に快く承諾してくれたので、
「それじゃあまた。」
「ああ」
と返事をすると彼女は去っていった。
そしてその姿を見送っていくと、生徒会長が近づき、
「彼女と決闘の約束をして良かったのですか?」
と、こちらを試すように話しかけてくる。
真意は分からないが、多分力量を図ろうとしているのだろう。
「・・・もう会うこともなさそうなんで適当に逃げますわ」
とふざけるように返事をすると、ニヤリと微笑み、
「そうですか。では学園に案内します」
と言って俺と天霧を学園へ連れていった。
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