遊戯王GX-音速の機械戦士-
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一緒に、帰ろう-
前書き
も、もう少し早く投稿する筈だったのに……!
遊矢side
時刻は夕方。
俺は今、デュエルアカデミアをぶらぶらと回っていた。
学園祭の前日である今日、デュエルアカデミアの盛り上がりは最高潮に達している。
外来からの人物の姿も増え始め、閉鎖的な島だったデュエルアカデミアにしては、珍しいことである……もちろん、喜ばしいことだ。
しかし、セブンスターズ関係者である自分たちは、手伝える時に手伝う、といったスタンスであったため、残念ながら出し物には参加できないわけだが。
ちなみに、自分たちオベリスク・ブルーは喫茶店……というよりカフェだな。
プライドが高い奴が多いのに、客商売なんて出来るのかね?
と、思ったが、予行練習を見てみたら結構真面目にやっていたな。
エリートだけあって、負けず嫌いなところが功を労した、とでも言ったところか。
「三沢とカイザーが参加出来ないのは残念だ」
と、取巻が執事服……どうやら、それがウェイターの制服らしい……にぼやかれた。
……俺は?
ラー・イエローは、祭りらしく屋台やらなにやらを出すらしい。……くそ、俺もそっちがやりたかったな。
少し、昇格したのを後悔した。
三沢とたまに行っているとはいえ、流石に交じるわけにはいかない。
料理はというと、意外にも神楽坂が活躍していた。
なんでも、有名な焼きそば職人や、たこ焼き職人のデータを記憶して、再現しているらしい……そんなことまで出来るのか、あいつは。
「天上院さんや三沢と一緒に、食べに来てくれよ!」
と、焼きそば職人兼たこ焼き職人兼お好み焼き職人の神楽坂は手を振ってきた。
やたらと、明日香のことを強調していたのが気になったが……
そして、俺が今いるオシリス・レッドは、隼人から聞いたところによると、コスプレデュエル大会というのを開くらしい。……いつも隣にいた翔は、今はいない。
謝ろうと思って行ったのだが、口に出す前に止められてしまった。
「助けてくれれば、それでいいんだな」
そう言って笑う隼人に、少しこみ上げて、「任せてくれ」と頷いた後、オシリス・レッド寮を後にした。
次に行ったのは、良く釣りをしている池だ。
明日香と初めてデュエルした場所で、それからも何回かデュエルに使う場所である。
他にも、他愛も無い世間話をしたりと、色々な話しをした思い出の場所だ。
いつもなら、腰掛けて釣りをするところであるが、今日はそんな暇はなく、その場を後に森の奥深くに進んでいった。
そうしてたどり着いたのは、デュエルアカデミアの元特待生寮である、廃寮。
明日香の兄、亮の親友である天上院吹雪が行方不明になっていて、捜しに入った明日香を守りながら、タイタンと共に初めて闇のデュエルをした。
釣りをしている池とは、また違った意味で思い出の場所であるが、ここが俺の今日の目的地だ。
――さあ、行くぞ。
今通って来た、デュエルアカデミアの道のりを思い出しながら、俺は廃寮のデュエル場に向かうため、足を踏み入れた。
「――何だ、思ったより早かったなァ、黒崎遊矢ァ……」
デュエル場にたどり着いた俺の目の前に、高田が闇の中から現れる。
「それに、一人かよ? 遊城十代に、万丈目はどうしたァ?」
「二人なら来ねぇよ。お前ごときに、三人で来る必要なんて無いからな」
もちろん、嘘だ。
ただ、俺が集合時間30分前に廃寮に来ただけだ。
……もう、誰も巻き込みたくない。
「ハッ! 減らず口を叩いてんじゃねェよ! ……ああ、そうだ。良いもん見せてやんよ」
そう言って、高田は指をパチンと鳴らす。
そうすると、中空に映画のスクリーンのような物がいくつか現れた。
それらに映っているモノは……デュエルアカデミアの各所だった。
「デュエルアカデミア……?」
「クククッ…イッツ・ア・ショータイム!」
高田が叫ぶのと同時に、スクリーンの中のデュエルアカデミアに中に現れる大量の黒い泡。
それらは形を成していき、やがて、デュエルディスクを構えたヒトガタとなった。
それを見て、俺は高田の狙いを察した。察してしまった。
「高田テメェ、まさか……!」
「ヒャーハーッハッハッ!その通り……デュエルアカデミアにいる奴全員、闇のデュエルで消してやるのさァ!」
やはり。
あのヒトガタの黒い泡は、無差別に闇のデュエルを挑む人形であるようだ。
「くそッ!」
高田に背を向け、デュエルアカデミアに戻ろうとしたが……止めた。
「ん? どうしたァ? デュエルアカデミアに戻んなくて良いのかよ?」
せせら笑う高田に対して、俺も不敵な笑みで応えた。
「逆に、なんで戻る必要があるんだ? ……デュエルアカデミアのみんなはな、あんな化け物ごときには負けねぇんだよ!」
そうだ。
スクリーンの中で、ヒトガタたちに対してデュエルディスクを構えるみんなが……十代が、万丈目が、クロノス教諭が、隼人が、神楽坂が、取巻が、あと、何でだか知らんが、オベリスク・ブルー寮で木登りをしようとしていた自称・恋する乙女――レイが……あんな化け物ごときに負けるはずが無い。
俺はそう、信じてる。
「ハッ! まあいい! 戻らなかったことを後悔するんだな!」
高田がデュエルディスクを構えたのを見て、対する俺もデュエルディスクを構える。
――明日香、三沢、亮、翔……必ず助けてやるッ……!
「デュエルだ高田! 決着をつけさせてもらうぜ!」
双方の準備が完了する。
あの時。寮の昇格デュエルの時にあんな事を言わなければ、今、こんなことにはならなかった。
だから、俺の責任は……自分で取る。
「「デュエル!!」」
遊矢LP4000
高田LP4000
俺のデュエルディスクに、『後攻』と表示される。
「俺の先攻! ドローォ!」
先攻の高田が、勢い良くカードを引く。
「俺は《キラー・トマト》を守備表示で召喚!」
キラー・トマト
ATK1400
DEF1100
亮の時と同じく、ダークチューナーをリクルートするためのキラー・トマトが現れた。
「永続魔法、《漆黒のトバリ》を発動し、カードを一枚伏せてターンエンド!」
「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺のターン、ドロー!」
今、高田のフィールドで厄介なのは、倒したらダークチューナーをリクルートするキラー・トマト。
漆黒のトバリも厄介といえば厄介だが……
「手札のこのカードは、元々の攻撃力を1800にすることで、リリース無しで召喚出来る! 来い! 《ドドドウォリアー》!」
ドドドウォリアー
ATK2300→1800
DEF800
今回戦陣をきるのは、斧を持つ機械戦士!
「バトル! ドドドウォリアーで、キラー・トマトに攻撃! 《ドドドアックス》!」
ドドドウォリアーが、自身が持つ斧でキラー・トマトを叩き斬る。
「チィッ……!」
舌打ちをしたということは、高田はドドドウォリアーの効果を覚えているのだろう。
「ドドドウォリアーは、攻撃した場合にダメージステップ終了時まで相手の墓地で発動する効果を無効にする! キラー・トマトの効果は無効にさせてもらう!」
これで、ダークチューナーをリクルートされることは無い。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」
「俺のターン、ドローォ!」
高田は、相も変わらず勢い良くカードを引く。
「こんなもんで、ダークシンクロを止められると思うなァ! 通常魔法、《闇の誘惑》! 二枚ドローォ! そして、闇属性モンスター《DT―カタストローグ》を除外するッ!」
せっかくのダークチューナーモンスターを除外した……?
……いや、ダークチューナーは闇属性。
『闇属性』に『除外』というキーワードがあるならば、あのリバースカードは……
「リバースカード、オープンッ!《闇次元の解放》!除外されている闇属性モンスター《DT―カタストローグ》を特殊召喚ッ!」
DT―カタストローグ
ATK0
DEF0
来たか……!
しかも、初めて見るタイプのダークチューナーだ。
形は、亮とのデュエルに出て来たダークチューナー、カオスローグに似ているが……
「更に、俺は《インフェルニティ・ビースト》を召喚ッ!」
インフェルニティ・ビースト
ATK1600
DEF1200
インフェルニティ・ビーストのレベルは、確か3。
「クックックッ…さァ……行くぜッ! レベル3のインフェルニティ・ビーストに、レベル-8のDT-カタストローグを、ダークチューニング!」
カタストローグが分解し、漆黒の玉になり、インフェルニティ・ビーストの体内に入っていく……
合計レベルは、-5。
「闇と闇重なりしとき、冥府の扉は開かれる。光なき世界へ! ダークシンクロ! いでよ、《氷結のフィッツジェラルド》ォ!」
氷結のフィッツジェラルド
ATK2500
DEF2500
明日香と亮、どちらのデュエルにも出て来たダークシンクロモンスター、氷結のフィッツジェラルドが出現する。
「DT-カタストローグの効果を発動ッ! このカードがダークシンクロ素材となった時、フィールド場のカードを一枚破壊する! 俺は、ドドドウォリアーを破壊だァ!」
「何っ!?」
ノーコストでの一体破壊……相変わらず、ふざけんなよ……!
ドドドウォリアーの足元に現れた、DT-カタストローグが、ドドドウォリアーを闇に沈み込ませていった。
「バトルだァ! 氷結のフィッツジェラルドで……」
「させない! 攻撃宣言前に、リバースカード、オープン! 《トゥルース・リインフォース》! デッキから、レベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する! 現れろ、《マッシブ・ウォリアー》!」
ダイレクトアタックから俺を守ってくれるのは、要塞の機械戦士!
マッシブ・ウォリアー
ATK600
DEF1200
「それがどうしたァ!? 氷結のフィッツジェラルドで、マッシブ・ウォリアーに攻撃! ブリザード・ストライク!」
氷結のフィッツジェラルドから、幾多もの氷がマッシブ・ウォリアーを攻撃するが、マッシブ・ウォリアーはものともしない。
「マッシブ・ウォリアーは、一ターンに一度、戦闘では破壊されない!」
「こざかしいッ…! カードを一枚伏せ、ターンエンドだァ!」
「俺のターン、ドロー!」
さて……
「手札の《死者蘇生》を発動! 蘇れ、ドドドウォリアー!」
ドドドウォリアー
ATK2300
DEF900
斧を持つ機械戦士が、フィールド場に復活する。
「更に、手札を一枚捨てて、装備魔法、《破邪の大剣―バオウ》をドドドウォリアーに装備することで、攻撃力が500ポイントアップする!」
ドドドウォリアー
ATK2300→2800
ドドドウォリアーは、元々持っていた斧を捨て、破邪の大剣を装備した。
「マッシブ・ウォリアーを攻撃表示にし、バトル! ドドドウォリアーで、氷結のフィッツジェラルドに攻撃! 破邪の大剣!」
普段使わない大剣だが、ドドドウォリアーは見事に扱って、氷結のフィッツジェラルドを切り裂く。
高田LP4000→3700
「コイツの効果を忘れたかァ!? 氷結のフィッツジェラルドは、戦闘によって破壊された時、表側守備表示で特殊召喚されるッ!」
「ドドドウォリアーに装備された破邪の大剣―バオウの効果! 戦闘で破壊した相手モンスターの効果を無効にする! よって、氷結のフィッツジェラルドの効果は無効だ!」
破邪の大剣―バオウは、手札コスト一枚というのが若干キツイものの、なかなか優秀な効果を持っている。
「続いて、マッシブ・ウォリアーでダイレクトアタック!」
「ハッ! この程度……」
高田LP3700→3100
確かに高田の言う通り、ダメージは微々たるモノかもしれないが、与えた。
たった900と侮る無かれ。
「俺はこれでターンエンドだ!」
「俺のターンッ! ドローォ! 引いたカードは闇属性モンスター、《DT-デス・サブマリン》! 漆黒のトバリの効果で墓地に捨て、一枚ドローォ!」
ダークチューナーが墓地に落ちた。
しかも、あのデス・サブマリンには墓地から自身を特殊召喚する効果がある。
「リバースカード、オープンッ! 《リミット・リバース》!墓地から現れろ! 《DT-デス・サブマリン》!」
DT-デス・サブマリン
ATK0
DEF0
「そして、《インフェルニティ・ネクロマンサー》を守備表示で召喚ッ!」
インフェルニティ・ネクロマンサーのレベルは確か3。
「レベル3のインフェルニティ・ネクロマンサーに、レベル-9のDT-デス・サブマリンを、ダークチューニングゥ!」
合計レベルは……-6。
「闇と闇重なりしとき、冥府の扉は開かれる。光なき世界へ! ダークシンクロ! いでよ、《地底のアラクネー》!」
地底のアラクネー
ATK2400
DEF1200
現れるのは、明日香と亮を苦しめた蜘蛛のダークシンクロモンスター、地底のアラクネー。
その効果は、あのワンハンドレット・アイ・ドラゴンと並ぶほどのチート能力。
「地底のアラクネーの効果を発動ッ! ドドドウォリアーを装備するッ! ダーク・ネット!」
地底のアラクネーが伸ばす蜘蛛の糸がドドドウォリアーを捕らえる。
防げる手段は無く、ドドドウォリアーはそのまま、破邪の大剣―バオウを捨てて、地底のアラクネーに引っ張られていってしまった。
「攻撃といきたいところだが……マッシブ・ウォリアーの効果を思い出した……ターンエンドだッ!」
マッシブ・ウォリアーの効果。
一ターンに一度戦闘では破壊されず、戦闘ダメージを受けない、という頼りになるカードだ。
高田にしたら、こちらを装備したかっただろうが、攻撃力が高いドドドウォリアーを優先したようだ。
「俺のターン、ドロー!
……速攻魔法、《手札断殺》を発動! お互いに二枚ドローし、二枚捨てる!」
高田の墓地が肥えるのはいただけないが、こればかりは仕方がない。
それに、俺にはこのカードがある!
「墓地に送った《リミッター・ブレイク》の効果を発動! デッキ・手札・墓地から、《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する! デッキから現れろ、《スピード・ウォリアー》!」
『トアアアッ!』
スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400
「ハッ! まだそんなザコ使ってんのかよお前?」
「そのザコにやられたのはお前だろうが……俺はチューナーモンスター、《ロード・シンクロン》を召喚!」
ロード・シンクロン
ATK1600
DEF800
高田の挑発を、さらりと挑発で返し、俺はチューナーモンスターを召喚した。
金色の、ロードローラーを模したデザインであるシンクロンだ。
「ダークシンクロなんかじゃない、本物のシンクロ召喚を見せてやるよ、高田! レベル2のスピード・ウォリアーと、同じくレベル2のマッシブ・ウォリアーに、レベル4のロード・シンクロンをチューニング!」
ロード・シンクロンが自らのエンジンを鳴らし、光の輪となる。
「集いし希望が新たな地平へ誘う。光差す道となれ! シンクロ召喚! 駆け抜けろ! 《ロード・ウォリアー》!」
ロード・ウォリアー
ATK3000
DEF1500
ロード・シンクロンが作った光の輪を、スピード・ウォリアーとマッシブ・ウォリアーが通り抜けた時、現れたのは、機械戦士たちの皇、ロード・ウォリアー!
「バトル! ロード・ウォリアーで、地底のアラクネーに攻撃! ライトニング・クロウ!」
ロード・ウォリアーの腕が、全力で地底のアラクネーをなぎ払う勢いで迫る。
「地底のアラクネーの効果を忘れたかァ!? ドドドウォリアーを盾にすることで、破壊を無効にする!」
高田の高笑いと共に、地底のアラクネーが捕らえていたドドドウォリアーを盾にし、ロード・ウォリアーの攻撃を防いだ。
高田LP3100→2600
「せっかく出て来たが、次のターンで地底のアラクネーに吸収させてもらうぜェ?」
「残念だが、そいつに次のターンなんぞ無い! ロード・ウォリアーの効果を発動! 一ターンに一度、レベル2以下の戦士族・機械族モンスターをデッキから特殊召喚出来る!」
この効果は、【機械戦士】にはとてもありがたい。
デッキのカードが、ほぼ戦士族・機械族モンスターで構成されていて、優秀な効果を持つ低レベルモンスターをノーコストで呼べるのだから。
「来い! 《ワンショット・ブースター》!」
ワンショット・ブースター
ATK0
DEF0
ロード・ウォリアーが作った光から現れたのは、効果破壊専門の機械族。
「何を出そうが所詮は低レベルモンスター! 地底のアラクネーの敵じゃねぇよ!」
「そいつはどうかな。ワンショット・ブースターの効果を発動! このカードをリリースすることで、自分のモンスターと戦闘した相手モンスターを破壊する! 蹴散らせ、ワンショット・ブースター!」
「何ッ!?」
地底のアラクネーに、もう装備カードは無いため、身代わりは無い。
ワンショット・ブースターが放つミサイルに直撃し、蜘蛛のダークシンクロモンスターは炎に包まれ、破壊された。
「ターンエンドだ!」
「チィッ……得意になってんじゃねェよッ! 俺のターン! ドロー!」
今、高田のフィールドには何もないため、地底のアラクネーを破壊したことによりリズムが狂った筈だ。
「チッ……墓地のDT-デス・サブマリンの効果を発動ッ! 自分フィールド場にモンスターがいない時、このカードを墓地から特殊召喚出来るッ! 蘇れ! 《DT-デス・サブマリン》!」
DT-デス・サブマリン
ATK0
DEF0
潜水艦の形をしているダークチューナーが、墓地からフィールド場に浮上した。
デュエル中に一回とはいえ、ノーコストでの特殊召喚は厄介だが、ここで使わせて良かった。
「そして、モンスターをセットし、速攻魔法、《太陽の書》をセットモンスターを指定して発動ッ!」
このコンボは、亮とのデュエルで披露したコンボだ。
ならば、あのセットモンスターは……
「俺がリバースしたのは《メタモルポット》だァ! お互いに手札を全て捨て、五枚ドローする!」
墓地を肥やしつつ、デッキ圧縮も出来る優秀なカード、メタモルポット。
亮とのデュエルの時には、デッキ破壊にも使われた。
「ククッ……そして、レベル2のメタモルポットとレベル-9のDT-デス・サブマリンを、ダークチューニングッ!」
墓地からDT-デス・サブマリンを特殊召喚したのは、攻撃表示のメタモルポットをダークシンクロ素材にするためだったらしい。
だが、重要な問題はそこじゃない。
合計レベルは-7だが……俺はまだ、レベル-7のダークシンクロモンスターを見たことがない。
「暗黒より生まれし者、万物を負の世界へと誘う覇者となれ! ダークシンクロ! 現れよ、《猿魔王ゼーマン》!」
猿魔王ゼーマン
ATK2500
DEF1600
現れたダークシンクロモンスターは、魔法使いの服を着た猿型モンスターだった。
「カードを二枚伏せて、ターンエンドだッ!」
「俺のターン、ドロー!」
……攻撃、して来なかったか。
ドローしながら、猿魔王ゼーマンの効果は防御向きの効果なのだろうと推測した。
だが、俺は攻める!
「ロード・ウォリアーの効果により、《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」
チューニング・サポーター
ATK100
DEF300
今度光から現れたのは、中華鍋をひっくり返したような被り物をしている機械族。
ステータスは貧弱だが、その名の通りチューニングをサポートする効果を持つ。
「そして、手札からチューナーモンスター、《チェンジ・シンクロン》を召喚!」
チェンジ・シンクロン
ATK0
DEF0
カミューラ戦にも出した、小さな機械族がぽっと出てくる。
「通常魔法、《機械複製術》を発動し、攻撃力500以下の機械族モンスター、チューニング・サポーターをデッキから更に二体特殊召喚!」
チューニング・サポーター×2
ATK100
DEF300
「全部合わせて攻撃力500にも届かねェザコカード共が。そんなザコカード共使うより、よっぽど良いカードあるんじゃねェのかァ?」
「悪いが、俺はカードの強さだけを見てるんじゃない。デュエルに楽しんで勝つには、コイツらと一緒に戦うのが一番なんだよ! チューニング・サポーター一体の効果を発動!シンクロ素材となる時、レベルを2に変更出来る!」
これでシンクロ素材にする、フィールド場のモンスターの合計レベルは、5だ。
「レベル2となったチューニング・サポーター一体と、レベル1のままのチューニング・サポーター二体に、レベル1のチェンジ・シンクロンをチューニング!」
力を振り絞ったチェンジ・シンクロンが、光の輪へと変身した。
「集いし勇気が、仲間を護る思いとなる。光差す道となれ! 来い!傷だらけの戦士、スカー・ウォリアー!」
スカー・ウォリアー
ATK2100
DEF1000
傷だらけでありながら、短剣を持って戦う不退転の戦士、スカー・ウォリアー。
「何だよ、ザコカードをシンクロ素材にしたら、シンクロモンスターもザコカードになんのかァ?」
「……チェンジ・シンクロンの効果と、チューニング・サポーター三体の効果を発動! このカードたちがシンクロ素材となった時、チューニング・サポーターたちの効果で、合計三枚ドローし、チェンジ・シンクロンの効果で、相手モンスターの表示形式を変更する! 猿魔王ゼーマンを、守備表示にしてもらう!」
高田のわかりやすい挑発を無視し、猿魔王ゼーマンを守備表示にする。
これで、スカー・ウォリアーの攻撃力が上回り、猿魔王ゼーマンを攻撃出来る。
「バトル! スカー・ウォリアーで、猿魔王ゼーマンに攻撃! ブレイブ・ダガー!」
スカー・ウォリアーが手に持つ短剣で、猿魔王ゼーマンに切りかかる。
……さあ、どんな効果を持ってるんだ……!?
「猿魔王ゼーマンの効果を発動! 手札からモンスターカードを捨てることで、相手モンスターの攻撃を無効にする! 俺が捨てるのは、《インフェルニティ・デストロイヤー》!」
スカー・ウォリアーの前に、インフェルニティ・デストロイヤーが現れ、スカー・ウォリアーの短剣を受け止めた。
手札コストを一枚使う、《くず鉄のかかし》と言ったところだろうか。
だが、その効果により《インフェルニティ》と名のつくモンスターカードが墓地に送られると思うと、その脅威度はかなり違う。
他のダークシンクロモンスターと比べて控え目ながら、充分に優秀な効果を持っている。
「ロード・ウォリアーで、猿魔王ゼーマンに攻撃! ライトニング・クロウ!」
手札に《インフェルニティ》モンスターがいるとは限らない。
ワンハンドレット・アイ・ドラゴンはまだ来ていないのだから、今は少しでも手札を減らす!
「猿魔王ゼーマンの効果により、《インフェルニティ・ガーディアン》を墓地に送るぜェ?」
先ほどと同じように、ロード・ウォリアーの攻撃は、いきなり出て来たインフェルニティ・ガーディアンにより防がれる。
……裏目に出たな……
「カードを二枚伏せて、ターンエンド!」
「俺のターン、ドローォ!
…闇属性モンスター、《DT-ナイトメア・ハンド》を引いたァ! 漆黒のトバリの効果により、墓地に捨てて一枚ドローォ!」
DT-ナイトメア・ハンド。
……まずい。あいつが、来る。
そんな予感が、DT-ナイトメア・ハンドという名前を聞いた時、俺に響く。
「リバースカード、オープン! 《リビングデッドの呼び声》!墓地から蘇れ! 《DT-ナイトメア・ハンド》!」
DT-ナイトメア・ハンド
ATK0
DEF0
「更に、《インフェルニティ・ドワーフ》を召喚ッ!」
インフェルニティ・ドワーフ
ATK800
DEF500
「そして、カードを二枚セットし、リバースカード、オープン!《凡人の施し》!手札を二枚ドローし、全て墓地に捨てる!」
……嫌な予感が、当たってしまったようだった。
合計レベルは、-8。
「レベル2のインフェルニティ・ドワーフに、レベル-10のDT-ナイトメア・ハンドをダークチューニングッ! 漆黒の帳落ちし時、冥府の瞳が開かれる。舞い降りろ闇よ! ダークシンクロ! 現れろ……《ワンハンドレット・アイ・ドラゴン》!」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴン
ATK3000
DEF2500
「……ッ!」
出してしまった。
高田の切り札である、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンだ。
「ヒャーッハッハッハ!来たぜェ…ワンハンドレット・アイ・ドラゴンがよォ!」
目の前に見たからこそ、分かるこの威圧感。
……だが、逃げるわけにはいかない。
そして、負けるわけにも……いかない。
「カードを二枚も伏せてるようだが、そんなのは関係ねェ! 猿魔王ゼーマンを攻撃表示に変更し、バトル! ワンハンドレット・アイ・ドラゴンで、ロード・ウォリアーに攻撃! インフィニティ・サイト・ストリームッ!」
「ロード・ウォリアーを護れ、スカー・ウォリアー!」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴンが放ったビームを恐れず、スカー・ウォリアーはロード・ウォリアーの前に立った。
「ぐッ……!」
遊矢LP4000→3100
「チッ……何しやがった!?」
「スカー・ウォリアーの効果! このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は表側表示で存在する他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択する事はできない! 更に、このモンスターは一ターンに一度、戦闘では破壊されない!」
これが、仲間を護る戦士の効果。
「なら、猿魔王ゼーマンでスカー・ウォリアーに攻撃! カースド・フレア!」
「スカー・ウォリアー……!」
猿魔王ゼーマンが発する衝撃波に、今度こそスカー・ウォリアーは破壊される。
遊矢LP3100→2700
「ヒャーッハッハッハ! これでターンエンドだッ!」
「俺のターン、ドロー!」
高田のフィールドには、高田の切り札、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンと、猿魔王ゼーマン。
「どうしたァ? ワンハンドレット・アイ・ドラゴンを倒す手段が無くて、絶望でもしてんのかよ?」
考え込む俺を見て、高田が嘲笑を浮かべながら話しかけてくる。
「いいや、その逆だ」
「アァ?」
「ワンハンドレット・アイ・ドラゴン……このターンで倒してやるよ!」
高田の表情が一瞬驚愕に包まれたが、すぐに嘲笑へと変わる。
自分の切り札が、破壊されないと確信してのことだろう。
「面白ェ…やれるもんならやってみろよッ!」
言われなくても!
「俺は、ロード・ウォリアーの効果により、デッキから《ソニック・ウォリアー》を特殊召喚する!」
ソニック・ウォリアー
ATK1000
DEF0
「そして、ソニック・ウォリアーをリリースすることで、《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」
ターレット・ウォリアー
ATK1200
DEF2000
ソニック・ウォリアーをリリースして現れるは、大砲の機械戦士。
「ターレット・ウォリアーは、リリースしたモンスターの元々の攻撃力分、攻撃力がアップする!」
ターレット・ウォリアー
ATK1200→2200
まあ、今回は攻撃力は関係ないが。
「俺はまだ通常召喚はしていない! チューナーモンスター、《ターボ・シンクロン》を召喚!」
ターボ・シンクロン
ATK100
DEF500
緑色の、その名の通りターボ型のチューナーモンスター。
「レベル5のターレット・ウォリアーに、レベル1のターボ・シンクロンをチューニング!」
ターボ・シンクロンが自身のターボを吹き鳴らし、光の輪となる。
「集いし絆が更なる力を紡ぎだす。光さす道となれ! シンクロ召喚! 轟け、ターボ・ウォリアー!」
ターボ・ウォリアー
ATK2500
DEF1500
深紅の身体を持つ、ターボを内蔵した機械戦士がフィールドに降り立った。
「で? 結局、どうやってワンハンドレット・アイ・ドラゴンを倒すんだよ……そんなザコカード共でッ!」
「そりゃ、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンに比べりゃザコカードかも知れないが……そいつらで、今から倒してやるって言ってんだよ! ロード・ウォリアーで、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンに攻撃! ライトニング・クロウ!」
攻撃力は同じだが、手札が0枚のワンハンドレット・アイ・ドラゴンには、インフェルニティ・ガーディアンによって得られる破壊耐性がある。
よって、高田から見たらただの自滅だろう。
「バカが! 迎撃しろ、インフィニティ・サイト・ストリームッ!」
駆け抜けるロード・ウォリアーの前に、無数のビームが迫る。
一撃でも受けたら、受けた部分が消し飛ぶ雰囲気だ。
「ダメージステップ時、リバースカード、オープン! 《奇跡の軌跡》! 自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動する! 相手にデッキからカードを1枚ドローさせ、選択したモンスターは戦闘ダメージを与えられなくなる代わりに、このターンのエンドフェイズ時まで選択したモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせ、1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃する事ができる! 対象は当然、ロード・ウォリアー!」
ロード・ウォリアー
ATK3000→4000
攻撃力の上がったロード・ウォリアーは、易々とインフィニティ・サイト・ストリームを弾き返し、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンに迫る。
「さあ、カードを一枚ドローしろ!」
「チィッ……クソッ!」
高田は、引くのにかなり抵抗したものの、最終的にはカードを一枚ドローした。
「お前の手札が一枚になったため、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンの効果は無効となる! 切り裂け、ライトニング・クロウ!」
明日香と亮を苦しめた龍を……俺の気持ちが伝わっているかのように、ロード・ウォリアーは力強く切り裂いた。
……だが、切り札を破壊されたというのに、高田の笑いは止まらない。
「クククッ……調子にのるなよ黒崎遊矢! ワンハンドレット・アイ・ドラゴンの、本来の効果を発動!」
「本来の効果だと!?」
墓地の《インフェルニティ》と名前の効果を得る効果ではなく、本来の効果……?
「ワンハンドレット・アイ・ドラゴンが破壊され、墓地に送られた時、デッキから好きなカードを一枚選び、手札に加えることが出来る!」
「なんだとッ……!?」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴンの本来の能力。
それは、速効性は劣るものの、あらゆるサーチカードの上位互換とも言える効果。
……最後までチートカードかよ……!?
毒づいても仕方がない。
まだ、こちらの攻撃は残っているのだ。
「ロード・ウォリアーで、猿魔王ゼーマンに攻撃! ライトニング・クロウ!」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴンに引き続き、猿魔王ゼーマンをも蹴散らした。
だが、奇跡の軌跡の効果により、戦闘ダメージは発生しない。
「まだだ! ターボ・ウォリアーで、高田にダイレクトアタック! アクセルスラッシュ!」
ターボを轟かせ、ロード・ウォリアーと同様に駆け抜ける、ターボ・ウォリアー。
「リバースカード、オープン!《ガード・ブロック》!戦闘ダメージを0にし、カードを一枚ドローするッ!」
防がれたか……
「これで俺は、ターンエンド……」
このターンで決めるほどの勢いだったが、流石にそう上手くはいかない。
「俺のターン、ドローォ!」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴンの効果により、手札に加えられたカードは、おそらく……
「カードを一枚伏せ、相手フィールド場にのみモンスターしかいない時、こいつは特殊召喚出来る! 来い! 《DT-スパイダー・コクーン》!」
DT-スパイダー・コクーン
ATK0
DEF0
新たなダークチューナー!?
亮のサイバー・ドラゴンと同じ効果を持っているらしいが……
「そして、通常魔法、《ワン・フォー・ワン》!手札の《インフェルニティ・ゼロ》を墓地に送り、デッキから《バトルフェーダー》を特殊召喚ッ!」
バトルフェーダー
ATK0
DEF0
レベル1モンスター……あのダークチューナーのレベルは知らないが、自分の知っているダークシンクロモンスターはあと一種類だ。
「レベル1のバトルフェーダーと、レベル-5のDT-スパイダー・コクーンでダークチューニング!」
合計レベルは-4。
やはり、俺が知っているダークシンクロモンスターらしいな……!
「闇と闇重なりしとき、冥府の扉は開かれる。光なき世界へ! ダークシンクロ! いでよ、《漆黒のズムウォルト》!」
漆黒のズムウォルト
ATK2000
DEF1000
「更にリバースカード、オープン!《スピリット・バリア》! 戦闘ダメージを受けなくなるッ!」
亮の時と同じコンボか……
亮と違って、《機械戦士》たちの攻撃力はあまり高くないから、大丈夫だろう……
「こいつが本命だ! 《死者蘇生》!」
やはり……!
俺が高田なら、一刻も早く切り札を蘇生する。
ならば、サーチするのは当然蘇生カード……!
「蘇れ……《ワンハンドレット・アイ・ドラゴン》!」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴン
ATK3000
DEF2500
再び現れる、高田の切り札、ワンハンドレット・アイ・ドラゴン。
「バトル! 漆黒のズムウォルトで、ロード・ウォリアーに攻撃! ダーク・ドラッグ・ダウン!」
漆黒のズムウォルトが、ロード・ウォリアーに迫る。
だが、戦闘するのは目的じゃない。
「漆黒のズムウォルトが攻撃宣言をした時、相手の攻撃力の差分、相手のデッキの上から墓地に送るッ!」
ロード・ウォリアーの攻撃力は3000。
漆黒のズムウォルトの攻撃力は2000だから、俺のデッキから10枚墓地に送られる。
亮は上手く防いだが、これはまずい……!
「漆黒のズムウォルトの攻撃に対し、リバースカード、オープン! 《ドレインシールド》! 相手モンスター一体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分のライフを回復する!」
遊矢LP2700→4700
漆黒のズムウォルトの効果は止められないが、かなりのライフを回復するカードだ。
「そんなもんじゃ意味ねェよッ! ワンハンドレット・アイ・ドラゴンで、ロード・ウォリアーに攻撃ッ! インフィニティ・サイト・ストリームッ!」
先ほども言ったが、攻撃力は同じだが相手には……ワンハンドレット・アイ・ドラゴンには破壊耐性がある。
奇跡の軌跡の時が嘘のように、ロード・ウォリアーは消し飛んだ。
「更にッ! 相手モンスターを戦闘破壊して墓地に送った時、相手プレイヤーに1600ポイントのダメージを与えるッ! 追撃のインフィニティ・サイト・ストリームッ!」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴンが放つビームが、寸分の狂い無く俺の胸を貫いた。
「ぐうッ…!」
遊矢LP4700→3100
明日香と亮も、このダメージは受けたんだ……!
この程度ッ!
俺は、倒れそうな身体に鞭打って、デュエルを継続させる意志を示す。
「ヒャーッハッハッハ! 倒れなくて良かったなァ……黒崎遊矢ァ! ターンエンド!」
「俺のターン…ドロー!
通常魔法、《貪欲な壺》を発動!墓地からスピード・ウォリアーを三体と、ロード・ウォリアーに、スカー・ウォリアーをデッキに戻し、二枚ドロー!」
ここで二枚ドロー出来る《貪欲な壺》は嬉しいカードだ。
「更に、《ヴァイロン・マター》を発動! 墓地の装備魔法を三枚デッキに戻し、漆黒のズムウォルトを破壊する!」
現れた壺のような物体から、装備魔法三枚が打ちだされ、漆黒のズムウォルトが破壊された。
ワンハンドレット・アイ・ドラゴンと違って、漆黒のズムウォルトに破壊耐性は無い。
「今更そんなザコを破壊したところで無駄なんだよ……このワンハンドレット・アイ・ドラゴンの前ではなァッ!」
「確かに、強力なモンスターだけどな……こっちが、奇跡の軌跡以外、対策してないとでも思ってんのか? 来い! チューナーモンスター、《エフェクト・ヴェーラー》!」
エフェクト・ヴェーラー
ATK0
DEF0
「レベル6のターボ・ウォリアーと、レベル1のエフェクト・ヴェーラーをチューニング!」
初めて見た時と同じように、エフェクト・ヴェーラーが光の輪を形成する。
「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ!シンクロ召喚! 現れろ! 《パワーツール・ドラゴン》!」
パワーツール・ドラゴン
ATK2300
DEF2500
……頼むぜ、ラッキーカード!
「パワーツール・ドラゴンの効果を発動! デッキから装備魔法を三枚選ぶ! 俺が選ぶのは、《団結の力》・《ダブルツールD&C》・《魔界の足枷》!」
デュエルディスクから三枚抜き取り、裏側で高田に見せる。
「真ん中のカードにしといてやるよ!」
高田の言葉は、自らの勝利を確信した者の態度だ。
その隙を……つく!
「パワーツール・ドラゴンに、《ダブルツールD&C》を装備し、自分のターンでは、攻撃力を1000ポイントアップさせる!」
パワーツール・ドラゴン
ATK2300→3300
パワーツール・ドラゴンに、ドリルとカッターが装備される。
「分かってねェのかァ!? ワンハンドレット・アイ・ドラゴンの前には、いくら攻撃力が高くても意味が無いんだよッ!」
「知ってるさ。攻撃力なんて意味ない数値だよな……パワーツール・ドラゴンで、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンに攻撃! クラフティ・ブレイク!」
パワーツール・ドラゴンは、ドリルをけたたましく音をたてながら回転させ、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンに迫る。
「俺の手札は0枚! インフェルニティ・ガーディアンの効果により、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンは戦闘では破壊されない!」
「こちらはダブルツールD&Cの効果を発動! 攻撃対象モンスターの効果を、バトルフェイズまで無効にする!」
「なにッ!?」
インフェルニティ・ガーディアンの効果を無効にし、パワーツール・ドラゴンは、そのドリルでワンハンドレット・アイ・ドラゴンを貫いた。
「ワンハンドレット・アイ・ドラゴンが二回も戦闘破壊された、だと……デッキからカードを一枚手札に加えさせてもらう……」
「カードを二枚伏せ、ターンエンド!」
「俺のターン、ドロー……」
切り札を二度も破壊されて意気消沈したのか、気が抜けた様子で高田はカードを引く。
「クククッ……カードを一枚伏せ、通常魔法、《天よりの宝札》を発動!お互いのプレイヤーは、カードを五枚引く!」
ここで、最強のドローカードだと!?
さっきのワンハンドレット・アイ・ドラゴンの時にサーチしてたか……!
「ヒャーッハッハッハ!意気消沈してたように見えたかァッ!? 冗談だよォ! 更に、《マジック・プランター》を発動ォ! スピリット・バリアを墓地に送り、二枚ドローォ!」
くそ……ちょっとでも落ち込んでると思った自分が馬鹿みたいだ……
「速攻魔法、《サイクロン》を発動! 俺は、自分のセットカード、《黄金の邪神像》を破壊し、トークンを呼びだすッ!」
黄金の邪神像トークン
ATK1000
DEF1000
「更に、カードを二枚伏せ、《ハードアームドラゴン》を召喚ッ!」
ATK1500
DEF800
……?
何かおかしい。妙だ。
高田のデッキは、ダークシンクロモンスターを使った、ハイビートデッキの筈。
ハードアームドラゴンも、黄金の邪神像も、クロノス教諭のようなデッキに使われるカードだ。
なぜ、高田のデッキに……?
「気になってるなァ……ワンハンドレット・アイ・ドラゴンは、所詮はダミーの切り札。今から、このデッキの真の切り札を見せてやるよッ!《二重召喚》を発動ッ!」
真の切り札、だと…!?
俺は、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンが切り札だと思っていだが……あれより、強力なカードが現れるっていうのか……?
「行くぜェ……この廃寮に蠢く亡者たちの魂と、邪神トークン、ハードアームドラゴンをリリースし……出て来いよ! 《地縛神 Ccapac Apu》!」
二体のモンスターをリリースして現れたモンスターは……
『巨人』
そうとしか、言えないカードだった。
その巨大さ故に、今、俺と高田がデュエルしているところ……廃寮の屋根をぶち壊しながら現れた。
「これが俺の真の切り札……! 地縛神 Ccapac Apu! 今はまだ、真の力を発揮できてないらしいがなァ……三幻魔の力を手に入れれば、世界を滅ぼせるほどの力を取り戻す……! 貴様を倒し、万丈目と遊城十代を倒せば……それはもうすぐだァッ!」
「……そんなこと、させるわけが無いだろうが!」
俺の怒号に、高田の高笑いが一瞬止まる。
「やれるもんならやってみろ……! 俺も機械戦士も、そんな簡単には負けねえッ!」
「……ハッ! お前、この状況が分かってねェなァ……地縛神 Ccapac Apuは、攻撃対象に選択出来ず、ハードアームドラゴンの効果により効果破壊もされない、まさしく『神』に等しき効果を持った!」
「それがどうしたって言うんだよ?」
ニヤリと笑い、高田を見据える。
まだだ。まだ俺は、負けていない……!
「チッ……最後まで、口の減らない奴だったなァ……バトル! 地縛神 Ccapac Apuは、相手モンスターを無視してダイレクトアタックが出来る! 裁きを下せ!」
地縛神 Ccapac Apuの巨大な腕が俺に迫る。
……だが、パワーツール・ドラゴンが俺と腕の間に入り込んだ。
「なにッ!?」
「ダブルツールD&Cの第二の効果! 相手ターンでは、相手はこの装備魔法を装備しているモンスターしか攻撃できない!」
更に言うならば、ダメージステップ終了時に相手モンスターを破壊する効果もあるのだが、地縛神 Ccapac Apuは、ハードアームドラゴンの効果により、効果破壊は通用しない。
パワーツール・ドラゴンは、巨人の手に押しつぶされはしたが……
「パワーツール・ドラゴンの第二の効果! 破壊される時、このカードに装備されている装備魔法を墓地に送ることで、破壊を免れる! 俺は、ダブルツールD&Cを墓地に送る!」
「だが、戦闘ダメージは受けてもらうぜェ!」
地縛神 Ccapac Apuから放たれた衝撃波が俺を襲う!
「ぐああっ!」
遊矢LP3100→2400
「まだだ! 《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地からまた蘇れ! ワンハンドレット・アイ・ドラゴン!」
ワンハンドレット・アイ・ドラゴン
ATK3000
DEF2500
高田の手札の枚数は……0枚だ。
「ワンハンドレット・アイ・ドラゴンで、パワーツール・ドラゴンに攻撃! インフィニティ・サイト・ストリームッ!」
何度となく俺たちを襲ったビームは、パワーツール・ドラゴンをかき消した。
「ぐううッ!」
遊矢LP2400→1700
「そして、戦闘破壊したことにより、1600ポイントのダメージだァッ! 追撃の、インフィニティ・サイト・ストリームッ!」
「ぐあああああああッ!」
遊矢LP1700→100
「往生際が悪い……ギリギリ残りやがって……! ターンエンドだ」
「待て……エンドフェイズ時にリバースカード、オープン。《奇跡の残照》……蘇れ……パワーツール・ドラゴン……」
パワーツール・ドラゴン
ATK2300
DEF2500
「それがどうしたんだよ……ターンエンド」
「俺のッ…ターン……ドロー……」
まずい……意識が……
「全く、そんなデッキ使ってるからそんなことになるんだよ……さあ、さっさとサレンダーしちまいなァッ!」
……意識は朦朧としてるが、今の言葉ははっきりと聞こえた。
「……【機械戦士】たちをバカにしてんじゃねぇよ…! そう言った奴は、俺は必ずデュエルで認めさせた!」
起き上がれ。
起き上がれ。
起き上がれ。
俺はまだ、楽しんで勝ってない……!
「……よし。俺は――」
「リバースカード、オープン! 《無謀な欲張り》! 二枚ドローォ!」
これで高田の手札は二枚。
何故、わざわざワンハンドレット・アイ・ドラゴンの効果を消したんだ……?
「ハッ! お前の手札が何であれ関係ない! リバースカード、オープン! 《全弾発射》! 手札を全て捨て、捨てた枚数×200ポイントのダメージを与える!」
俺のライフは100。
高田の手札は二枚だから、400ポイントのダメージだ。
「終わりだァッ!」
高田の手札がミサイルてなって飛んでくる。
……狙い通りだ!
使わせてもらうぜ、亮!
「リバースカード、オープン! 《ダメージ・ポラリライザー》! 効果ダメージを0にし、お互いにカードを一枚ドローする!」
俺に向かって来ていたミサイルは逸れて、横で爆発が起きた。
随分前、亮とトレードしたカードだ。
『お互いに一枚引く』……この効果のおかげで、ハンドレスコンボは破られた。
……ありがとう、亮。
「そして、パワーツール・ドラゴンの効果を発動! デッキから、《団結の力》・《魔界の足枷》・《バスターランチャー》の三枚を選ぶ! パワー・サーチ!」
「俺から見て一番右だ……どうせこんなことしても、無駄なんだよッ!」
知るか。
それは……俺が決めることだ。
意識をハッキリとさせ、デュエルディスクにしっかりとカードを入れる。
「通常魔法、《融合》を発動!」
「融合だと!?」
高田が驚くのも無理は無い。
俺は、このデュエルアカデミアに来てから一回も《融合》を使っていないからだ。
だが、俺のエクストラデッキには、一枚だけ、融合モンスターが入っている。
……今度は、お前のカードを使わせてもらうぜ、明日香!
「手札の《エトワール・サイバー》と、《ブレード・スケーター》を融合! 現れろ! 《サイバー・ブレイダー》!」
サイバー・ブレイダー
ATK2100
DEF800
最強のサイバー・ガールである明日香のエースカード、サイバー・ブレイダー。
万丈目との友好デュエルの時に貰って、これまではただの御守りだったが、このデュエルから、キチンと融合素材(偶然持ってた)も投入した。
「……何が出るかと思えば、天上院明日香のザコカードじゃねェかよ……ッたく、期待はずれだぜ……」
「更に俺は、こいつを召喚する! 来い! マイフェイバリットカード、《スピード・ウォリアー》!」
『トアアアアアアッ!』
スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400
満を持して、我がマイフェイバリットカードが召喚された姿を見て、高田は更に爆笑した。
「遂にはおかしくなったかァ!? そんなザコ共で、俺の地縛神 Ccapac Apuと、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンが倒せるかよッ!」
「倒せるか、じゃない……倒すんだよ! 手札から速攻魔法、《トラップ・ブースター》を発動! 手札を一枚捨て、手札からトラップカードを発動出来る! 俺が発動するのは、《ギブ&テイク》! パワーツール・ドラゴンのレベルを1上げて、お前のフィールドに《ADチェンジャー》を特殊召喚する!」
ADチェンジャー
ATK100
DEF100
「相手モンスターの数が三体になったことにより、サイバー・ブレイダーの効果を発動! 相手の魔法・トラップ・効果モンスターの効果を無効にする! パ・ド・カトル!」
サイバー・ブレイダーが華麗に高田のフィールドを一周すると、高田のフィールドの効果は全て意味を無くす。
「チィッ……だが、効果を無くしたところで、お前のモンスターじゃ地縛神 Ccapac Apuには勝てない!」
「何回も言ってんだろうが……勝つんだよ! スピード・ウォリアーに、《バスターランチャー》を装備する!」
先程、パワーツール・ドラゴンの効果により、手札に加えられたバスターランチャーが、スピード・ウォリアーに装備された。
「更に通常魔法、《ダブルアタック》! スピード・ウォリアーよりレベルが高い、《バックアップ・ウォリアー》を捨てることで、スピード・ウォリアーはこのターン、二回攻撃が出来る!」
これにて準備完了。
「行くぜ高田! スピード・ウォリアーで、地縛神 Ccapac Apuに攻撃!」
「スピード・ウォリアーごときが、地縛神 Ccapac Apuに適うか! 迎撃しろ、地縛神 Ccapac Apu!」
バスターランチャーを構えるスピード・ウォリアーに対し、地縛神 Ccapac Apuは、巨大な腕を振り上げた。
「神だかなんだか知らないが、俺のスピード・ウォリアーは、どんなものでもぶち破る! バスターランチャーの効果により、攻撃力が2500ポイントアップする!」
スピード・ウォリアー
ATK900→3400
「なッ……何だと!?」
「ぶち破れ、スピード・ウォリアー! バスターランチャー、シュート!」
スピード・ウォリアーが放ったバスターランチャーが、地縛神 Ccapac Apuの胸を貫いた。
高田LP2600→2200
地縛神 Ccapac Apuは、力を失い、膝をついて消えていった……
「地縛神 Ccapac Apuがやられた、だと……!? だ、だが、俺にはまだ、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンがいる!」
「サイバー・ブレイダーの第二の効果を発動! 相手モンスターの数が二体の時、攻撃力が倍になる! パ・ド・ドロワ!」
サイバー・ブレイダー
ATK2100→4200
サイバー・ブレイダーの攻撃力が、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンをゆうに超える。
「サイバー・ブレイダーで、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンに攻撃! グリッサード・スラッシュ!」
ハンドレスコンボを発動していないワンハンドレット・アイ・ドラゴンは、だだの攻撃力が3000のモンスターだ。
サイバー・ブレイダーの敵ではなく、蹴られて破壊された。
「グアアアッ!
……だが、ワンハンドレット・アイ・ドラゴンの効果で、好きなカードを一枚手札に加える!」
高田LP2200→1000
それがどうした?
「パワーツール・ドラゴンで、ADチェンジャーに攻撃。クラフティ・ブレイク!」
パワーツール・ドラゴンの攻撃に、墓地で使用するのが主な目的であるADチェンジャーが耐えられる筈がない。
そして、これで高田を守るモンスターカードは無くなった。
「やっ……止めてくれ、黒崎遊矢!」
「魔法カード、《ダブルアタック》の効果により、スピード・ウォリアーはこのターン、二回の攻撃が可能となっている!」
向こうでは、高田が喚いているが……聞く気はない。
だったらお前は、俺たちが同じことを言っていたら止めたのか?
「スピード・ウォリアーは、召喚したターンのバトルフェイズ時、攻撃力が倍になる!」
スピード・ウォリアー
ATK900→1800
スピード・ウォリアーの攻撃力が1000以上になったことで、装備していたバスターランチャーが破壊される。
そして、その時発生した爆発を推進力にして、スピード・ウォリアーは高田に突撃した。
「スピード・ウォリアーで、高田にダイレクトアタック!」
攻撃宣言をする前に、もう走っていたスピード・ウォリアーは、あっという間に高田の元へ迫った。
「ソニック・エッジィィィィィィィィッ!!」
「うわあああああッ!」
高田LP1000→0
スピード・ウォリアーの一撃で、闇のデュエルは終了した。
地縛神 Ccapac Apuが廃寮を破壊したせいか、高田は闇に引きずり込まれず、そこに倒れ込んだ。
闇は去り、破壊された天井や窓から光が差し込み、鳥のさえずりが聞こえる。
……そして、奥の方にいる、数人の人影。
天上院明日香。
三沢大地。
丸藤亮。
丸藤翔。
四人の友人の無事な姿を見て、安心感が訪れたのか、いきなり酷い激痛が全身を襲う。
「くっ……!」
だが、身体を這うように移動させて、なんとか明日香のところにたどり着いた。
数日ぶりの筈なのに、なんだかとても久しく感じる寝顔だった。
起こしたくて、頬をぺちぺちと叩いた。
「おい、明日香。いつまで寝てんだよ?」
言葉とぺちぺちが効いたのか、少し目が開く。
「ゆう…や?」
「なに寝ぼけてんだよ……明日は学園祭だぜ?」
そうだ、学園祭だ。
イエロー寮の神楽坂に、来てくれって頼まれてたな。
他にも、色々楽しみなのがあるし。
「ほら、一緒に……」
帰ろう、という言葉は、最後まで言えなかった。
後書き
あとがき
遅ればせながら(←遅すぎ)移転先の報告です。
『肥前のポチ』様が立ち上げたサイト、《暁》に投稿することになりました。
アドレスです↓
http://www.akatsuki-novels.com/
今はまだゴタゴタしていますが、最終的な目標は小説家になろうと同じ性能だとか。
ですが、小説投稿サイト《暁》は、まだ携帯用サイトが出来ておりません。
8月1日あたりになる予定なので、それまでは投稿出来ません。
まあ、そもそも、わざわざ自分の駄文を読みに来てくれる人はいないでしょうから……これまで、こんな駄作を読んでいただき、ありがとうございました。
新天地でも頑張っていきます。
最後に、いつも通り。
感想・アドバイス待ってます!
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