魔法科高校の有能な劣等生
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放課後の不幸と充実した時間
前書き
久々の更新です♪読んでくれると嬉しいです!
《放課後》
時間はきっちり守れよ。
そんな事、言われても俺は万能機じゃないんだ。
多少の時間ロスは有るし失敗だってする。それなのに文句を言ってくる奴は嫌いだ。
まぁ、遅れた俺も悪いとは思っている。約束の時間に遅れたら謝る……それは基本で普通だ。
俺は理不尽な事には屈しない。でも、屈するべき状況には対応しているつもりだ。
だからこそ俺は、この魔法科高校では真面目に授業を受けるし……授業態度も良いと思うよ? 俺からすればね。
外を眺めてても授業に参加してるから問題ないよね。
一人残った教室で外の景色を眺めながら校内ネットを確認する悲しき高校生 無月 影は以前のランクアップ期間について調べていた。
この前のランクアップ期間で優勝したのは【生徒会長】総ポイント300オーバーの最凶の魔女。
得意魔法は幻術・幻影系統魔法。
人を惑わし人を狂わすその魔法に麗しき美貌の美女…………まぁ、校内美少女ランキングでも堂々の一位だ。
―――――俺は、零宮の方が可愛い…………綺麗だと思うけど。
「てめぇー。舐めてんの?」
ふと現実に戻るとその状況に疑問を抱きたくなった。
呼び出されたから来てみれば先輩達続々登場、しかも校内ランキング実質4位の貴族 天野 青空様の登場となると。
これはもしかしてカツアゲって奴ですか?
「舐めてるとはどの辺を舐めてるのでしょうか?」
「んだぁ~その澄ました笑顔は?「状況、分かってねぇんじゃねえの?」」
「早速、世間の厳しさを教えてやりましょうや隊長!」
…………コイツら何時の時代の不良だよ。
髪型も結構昔の不良ヘアーだし服装も不良スタイルに改造されている。
学校規定の制服を面影は薄れ、彼らの色に染まってしまった魔法科高校の証を見ると何とも言えない心境だ。
魔法科高校の生徒って事は魔法の才能を認められたエリートって事だ。見た目はアレだけどコイツらもその認められた人間達だ。
多少は魔法の知識を持っている不良達は俺の制服を襟元を掴み。
「お前、昨日、零宮様と話してたろ」
―――――零宮…………なんで零宮の名前が出てくるんだ?
「えぇ、まぁ」
「何の話だ?」
「何の話と言われても普通に会話してただけなので……」
「ア゙ア゙…………いや、待てよ」
不良達はひそひそと話し始め。
「隊長!コイツ、アレですよ!ほら最近入ってきた新入りの」
その男は筋肉質だった。
まるで鋼の様な筋肉に引き締まった肉体はボクサーの様だ。
校内ランキング実質4位 3年A組 天野 青空。
ランクは【貴族】称号は《晴天の空》
優等生《ブルーム》…………昨日調べたランキングに載ってた人だ。
「お前、零宮さんの……なんだ?」
重々しい声、場を沈める様な声で天野は言った。
―――質問の意味を理解する以前に、俺は零宮のなんだ?
昨日初めて会ったから知り合い? でも、そんな返答をしても納得してくれる様子じゃないし。
悩んだ末、俺は重々しい空気の中はっきりと言ってやった。
「友達です」
その言葉を聞いた瞬間、不良達は慌て始めた。
天野の後ろまで後退し……徐々にその場から離れっていった。
「そうか…………友達。
友達……ねぇ」
天野はゆっくりと立ち上がり笑顔で俺の肩に手を置いた。
「その言葉に偽りはねぇな、愚民?」
最後の一言の一瞬、寒気を感じた。
この男から発せられる異常な覇気に多少、俺も動揺しているらしい。
「はい、ありません」
普段の笑顔絶やさず俺は天野の手を掴み言ってやった。
「…………」
天野の表情は揺るがない。
大した筋肉だ、相当鍛えてるな。俺も握力に耐えられるなんて流石、貴族様って所かな。
魔法とは関係ないジャンルの決闘なら案外いい勝負するかも。
「お前、気に入ったぞ」
その笑顔は別の笑顔だった。
先程見せた笑顔とは別の笑顔で俺の腕を見詰め、俺の目を凝視した。
「成程、腐った目だ」
「初対面でそんなはっきりと言うなんて先輩、性格悪いですね」
「すまんな、俺は正直者なんだ」
そう言って天野は笑い出した。
俺もその笑いに釣られ笑ってしまった。
成程、案外高校生ってのも悪くないかも知れない。
色んな奴らで溢れてる。まだ、俺の知らない魔法や人間達で溢れてやがる。そう考えると不思議と笑顔になった。
普段心掛けてる笑顔とは別の影の本来の笑顔で。
「影君、待って!」
その声に俺は立ち止まり後ろに振り返った。
「零宮……さん?」
はぁはぁ……と酸素を吸って吐いてを繰り返す所を見ると全速疾走で走ってた様だ。
俺は周囲を見渡し奴らの有無を確認する。多分、居ないな…………なら大丈夫だろ。
放課後の時みたいに絡まれると面倒だし周囲を確認しつつ警戒しないと。
「なに?」
「あ、あのね。
今日、あの天野先輩と話してたよね?」
「……?
まぁ、話してたね」
天野先輩…………そう言えばあの人、零宮の事をさん付けしてたよな。
不良達の奴らも零宮の事を零宮様って言ってたし。
「あの、何もされませんでしたか?」
心配そうな表情で言ってきた。
成程、絡まれた所を見て心配してくれてるのか。
「大丈夫だよ、世間話で盛り上がってただけさ」
「世間話?…………えっと……うーん、その。
影君は大丈夫だったの?」
――――大丈夫だったの?
この答え方だと他の人間で大丈夫じゃなかった奴も居るって事だ。
それから考えるとあの不良達と天野先輩、それに零宮は関係している?
「あぁ、平気だよ」
――――まぁ、興味を湧かせる現実だよ。
あの言葉も気になる。「お前は零宮さんの……なんだ?」
まるで零宮を崇拝する教徒の様な素振りにあの尋常ではない心配ようから考えると不良達と天野先輩は零宮の僕?
でも、そんな風には見えない。一方的な崇拝の様にも見えるし実は無茶苦茶慕ってる仲とか?
…………待てよ、よくよく思い出せばアイツら頭に変な鉢巻、巻いてたよな。
確か、ZERO様love!!って書かれた鉢巻だった様な。そのZEROって奴も関係してるかも知れない。
さて、早速帰って調べ上げますか。
そう思った矢先――――――奇妙な変人が現れた。
第九校の制服に身を包み見覚えのある鉢巻を頭に巻いた男は道を塞ぐ様に立ち構え、掛けていたサングラスを外した。
「お前が、《愚民》か?」
今度の変人は服装はまともだった。
あの不良達に比べたら至って普通で普通の生徒に見える。
だが、身に纏っているオーラーは他の生徒に比べるまでもない程、燃え上がっていた。
「はい、一応」
「気に食わんな」
「は?」
「その愛想で隠された笑顔を気に食わんと言ったのだ」
―――俺の十八番を見通してる?
愛想笑顔を見破られた……まぁ、大抵の人間なら俺の笑顔を見てよく笑ってる奴と思ってるが大半だ。
それをいきなり見破った男、なかなか出来る奴かも知れない。
「おっと、すまんな。
愚民だからと言って自己紹介を忘れては紳士の名が廃るというもの」
「雅 来栖、以後お見知りおきを愚民君」
また、聞き覚えのある名前だ。
校内ランキング7位 【貴族】称号《紳士》を持つ2年生だ。
今日はよく先輩に絡まれるなと思いつつ俺は口を開けた。
「親切な自己紹介をどうも、俺は1年B組 無月 影です。
ランクは【劣等生】称号は【愚民】です。よろしくおねがいします」
「ほぉ…………貴様、本当に自身を愚民と名乗るのだな」
「えぇ、与えられた称号ですし。
自分は劣等生ですので」
愛想笑顔で笑声で言うと雅の表情は曇った……と言うよりも怒っている様な。
「貴様、悔しくはないのか?」
「悔しい?
うーん……どうでしょうね、俺は与えられた称号、気に入ってませんけど自分にお似合いだと思ってますし他人から与えれた名誉に興味はありません」
まぁ、でも、アイツに言われるのだけはごめんだけどね。
「それに―――俺はこの学校のシステム事態に興味はありませんので」
「ランク付けウィークの事だな」
「はい、別にこのシステムに文句を言うつもりはありません。
ですが……見栄を張っても虚勢を見せても中身は空の魔法師達に幻滅してます」
「………………」
「その優劣で決められるのは普通です。それは世界の決まりですから俺も納得しています。
ですが……生徒同士で貶しあい自らを闇に落とす姿は見るに耐えない」
腐ってる……この学校は。
まぁ、その腐った所は俺の興味をそそられた所だけど。
「影君、ちょっと……」
零宮は俺の制服の裾を掴み、耳元で呟き始めた。
「影君、ここは退いて」
「退いて…………その言葉から察するにこれから乱闘でも始まる様な感じだけど」
「…………もしかしたら、そうなるかも」
下を向き、とても……とても小さな声で零宮は呟いた。
―――これは、まぁ、その、なんだ。
俺は溜息を付きつつ振り返った。
「その、すみません先輩……今日はちょっと色々有りましてね。
では、また後日」
敬礼し俺は歩き始める。
零宮さんも俺の後を追って歩き始めた。
後ろから感じる視線…………あの紳士の視線だ。
俺より零宮さんの事を見てるな…………これは一旦教室に戻るか図書館でも行って調べる必要が有りそうだね。
元々、帰ってから調べるつもりだったけど。今の状態で学校を出たら面倒だろうし生徒は生徒らしく学校で真面目に勉強するとしよう。
この学校の生徒会長について。零宮さんについてね。
「―――影君……その、今日は………………」
零宮は申し訳なさそうな表情でこちらを見てくる。
そんな顔されても対抗に困るんだけど……俺は立ち止まり、零宮の出方を伺う事にした。
「……なにが?」
「え、だって……その、私のせいで」
もじもじと体を揺らし言葉に詰まった様子で零宮は黙り込んだ。
―――俺は、零宮さんを知らなさ過ぎる。
多分、俺に謝りたいんだろうけど何故、俺に謝りたいのか俺には解らなかった。
俺から聞いても話してくれそうにもないので敢えて聞かないけど解らないなら自分で調べるだけだ。
「……ごめん、ちょっと用事を思い出した。
じゃぁ、今日はありがとね」
ふぅー。と1度深呼吸する事で落ち着きを取り戻し。
俺は生徒会室の扉を開いた。
「あら、無月君……来ると思ってたわ」
悪魔の様な視線―――異性を虜にする魔眼の持ち主は生徒会室の中央に配置されているテーブルに座っていた。
「えぇ、俺もここに居ると判断して来ました」
「私は生徒会長ですから。放課後は大抵、生徒会室で時間を浪費しています」
「それって色々と暇人って意味も含まれてますよね?」
「そうですわね……別に私は望んで生徒会長に成った訳ではありませんのでそれはそれで当てはまるかも知れませんね」
微笑、その笑すら異性を惑わし男を狂わせる。
「それで用件はなんですの?」
魔女は生徒会室の一番奥に置かれた椅子に座り。
扇子を取り出しつつ言った。
「会長はZEROをご存知ですか?」
「ZERO? あぁ、あの娘の事ですわね。
えぇ、知っておりますわ」
―――あの娘、会長の口振りからするとZEROは女性の様だ。
「立ち話もなんですし、お座りになったら」
「はい、そうさせて頂きます」
敬語の会話…………この人の会話では必要な必需品だ。
まぁ、会話相手が先輩って事も考慮しても有るが、それはそれで疲れる。
「それで貴方はZEROの何を知りたいのかしら?」
生徒会長は慎ましやかな笑顔だった。
暇だったから丁度いい時間潰しのつもりなのかも知れない。
「俺が知りたいのは」
「ZEROと…………零宮さんの事です」
「あらあらそんな事でしたの」
これまでの事を全て話すと会長は少し微笑み。
「それならわざわざ私でなくても。
この学校の生徒なら誰でも知ってますわよ」
「…………」
「あぁ、そうでしたわね」
嬉しそうな笑顔で会長は。
「貴方と会話する度胸を持った生徒はこの高校では限られますから、なるほど……それで私に?」
「この原因は貴方の責任でも有りますし。
それに……貴女は生徒会長だ。貴女なら有益な情報位持ってても何ら不思議じゃない」
「私に責任? 何の事かしら。
私は君に称号を与え、地位を与えた。
ただ、それだけの事で一体?」
―――女狐……惚けた振りは大抵の男なら落とす誘惑の魔顔。
それでも俺には効かないけどな。
「貴女が俺に与えた地位。
それとデマ情報を校内で拡散し俺を孤立させる」
「まぁ、そんな筋書き……まるでC級映画の様ね」
「それが貴女の考えたシナリオですから。
貴女の作る映画はその程度の物としか言えませんね」
「そんな筋書きで映画化する映画なら。
余程、暇なのでしょうね。脚本家やスタッフ、その他もろもろの映画関係者には即首です。
勿論、私ならですけど」
笑顔を絶やさず生徒会長は言った。
「なら、俺がそのC級映画の監督に成りましょう」
「?」
「貴女のシナリオは知りませんけど結末は大体、解っています。まぁ、言うなれば貴女は《簡易戦争》の独裁者。
俺は配属したてのイレギュラー《邪魔者》」
「独裁者なんて……そんな。
私は別に独裁主義者ではありませんよ?」
惚けた表情と仕草でアピールする生徒会長。
だが、そんな小細工は俺に通用しない。
「もぉ、その変でぶりっ子は止めたらどうです」
「…………貴方、」
生徒会長も薄々、気付き始めた。
俺のイレギュラーに。
「自己干渉能力の高かさに周囲を惑わす才能、見事ですね。
自身の無意識なサイオンアクセスを周囲に拡げる事で他人から見られる情報の操作。他人の自分からの評価をねじ曲げ、自分の思うままに他者を操る。流石、生徒会長……その魔法は独裁者向きですよ」
「まぁ、俺も人の事は言えないですけどね」
独裁者ってのは自分の理想を押し付け、頭の中の自分の思い描いた世界を提供する事で初めて成立するものと俺は考えている。
あの生徒会長にはその素質と才能は有ると思うけど。
結末は最悪だろうね。あのタイプの人間は最初は慕われてチヤホヤされるけど全てを壊された後は絶望する、俺はそんな人間を何度も見てきた。
まぁ、いい見本だよ。無月家の人間はさ。
独裁者、独裁主義の集まりだったからな。
滅ぼされた事を恨んではいない。寧ろ感謝してるよ。
あんなクズ共を殺してくれてね。
まぁ、自分の感傷は後回し。今は、この事態にピリオドを打たなきゃね。
生徒会長との話も付いたし。後は返事を待つだけだ。
明日から開催される《ランク付けウィーク》でそれ相応の結果さえ出せばアイツを黙らせるには十分だと思うけど……。
うーん。どう、あの独裁者を攻略するかねぇ。
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