逆襲のアムロ
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20話 星の屑作戦開始 5.7
* 茨の園 5.7 3:00
デラーズ・フリート(デラーズ艦隊)が出港前にデラーズが兵士たちに演説を行っていた。
「諸君!我が艦隊は栄誉あるこの作戦の為に、今まで鍛錬を積んできた」
兵士たちはそれぞれの部屋や現場のモニターで聴いていた。
「あのソロモンの戦いにより、戦線が膠着し、ギレン閣下が提唱した『優性人類生存説』。これを実証させる機会に至るまで3年と月日がかかった。我々が何故この絶対的不利な戦争でここまで戦ってこれたのか?」
デラーズは間を置き、話し続けた。
「それは我々の戦いが正義だからだ。連邦はあの悪夢を忘れたかの如く、艦隊を再建してきた。この挑戦に対して、我々は断固打ち破らねばならない。そして今度は連邦の拠点に神の雷を落とすことにより、連邦を完全に屈服せしめる。それには諸君らの働きが必要だ」
デラーズは拳を握り、更に声を高めた。
「かのアースノイドらに追いやられた我々スペースノイドの進化を、古い人類へ示すためにも。この<星の屑>は我々を新たなるステージへと導くであろう。ジーク・ジオン!」
デラーズの兵士たちは皆高揚し、それぞれ気合いが入っていった。
傍で眺めていたガトーは敬愛するデラーズを見ていた。
「(さすが閣下だ・・・そうだ。我々の崇高な使命は亡きドズル閣下も望むジオンの勝利、スペースノイドの真の自立だ。それ以外は何もない)」
ガトーは心の中でそう呟き、自分の疑念を払拭させようとした。
座乗艦の艦長グラードルにガトーが最終の打ち合わせを申し入れられた。
「少佐。我々の第1陣の出撃はあと1時間後です。皆、会議室にて待っています。敵の集結した艦隊に少佐の一撃を入れてからの残敵の掃討戦に移ります。その状況により、本国の部隊が第2次ブリディッシュ作戦に流れ込む段取りです」
「そうか・・・それで奴らの息の根を止めることができる。我々の苦労もここに来て報われる」
「そうですな。少佐と栄誉ある先陣を務めることができて、私も高揚しています」
グラードルはガトーへ満面の笑みで述べた。ガトーも「そうか」と一言返して、グラードルと共にブリーフィングへと出掛けていった。
* サイド6 外縁宙域 アルビオン 5.7 4:10
シナプス隊はバウアーの特命により、観艦式の観覧のため一路ルナツーへと進路を向けていた。
ブレックスは観艦式での何やら陰謀めいたことが行われるのではと言う情報を掴んでいた。ブライト、アムロもカイたちからの情報で、連邦の上層部でのジオンとの取引が行われていると噂を聞いていた。
ブライトはアムロと連絡を取り、アムロからテムへバウアーとのパイプ役を請け負ってもらい、バウアーは政府特命にてアルビオン隊を動かすと軍へ指示を出していた。
アルビオン艦橋でブレックス、ブライト、シナプスと話し合いが持たれた。
ブレックスがまず観艦式について説明した。
「ワイアット大将率いる宇宙艦隊がジオンを屈服させ、宇宙に平穏を取り戻させるためのイベントだな。噂ではジオンを一戦にて屠るぐらいの戦力を準備終わっているそうだ。派閥間でも断トツの実働部隊戦力だ」
ブライトがカイの情報を伝えた。
「だが、ワイアット派の正規軍への反発がかのガンダム強奪へ結びついたという噂がある」
シナプスがブライトの話した情報にある予想を立てた。
「核の使用状況については一網打尽と言うが一番しっくりきますな。奴らは観艦式を狙う」
ブレックスとブライトもその予想に首を縦に振った。そしてブレックスは話し始めた。
「既に、ワイアット将軍への警告は済ましてある。しかし、将軍は取るに足らないと仰った」
シナプスは危機感が足らないと思った。それをブレックスに伝えたが、逆の事を言ってきた。
「いや、シナプス大佐。将軍は既に織り込み済みだと言っていた」
「なんですと?どういうことですか」
「将軍は観艦式自体もアピールとして、派閥間の企みとジオンの内通を一挙に上げようと画策しているそうだ・・・。皆が策士であって、我々は頭が痛い」
ブレックスは少し笑っていた。隣のブライトも複雑そうな顔だった。
ブレックスは困惑しているシナプスへある質問をした。
「シナプス大佐。君たちのいる宙域は無線状態などどうだ?」
シナプスは艦橋のスコットより、サイド6外縁に入ってからミノフスキー粒子の濃度が濃くなり過ぎていると情報を受けていた。まるで戦闘状態のようだと。ちなみにこの通信についてはサイド6を経由した割とオープンなチャンネルでの会話だったので通信状態が良好だった。
シナプスは観艦式を行う上での周辺宙域の警戒態勢の高さによるものだと考えていた。しかし、ブレックスの質問の仕方がどうやらそうではない含みの言い方だった。
「はい、ルナツーの方面の通信すら直接的にはできない状態です。このためにとルナツー方面の軍は独自の秘匿回線網を敷いているようで、それは我々にも分かりません」
「つまり、我々にも伝わらない程、将軍は警戒をしていることだ。そして、軍本部への連絡も欠かさないで行っている。観艦式を予定通り行うと。これは擬態なのかどうなのか全くわからない」
そう話しているとアルビオンの前方より接近してくる艦隊があった。数は10隻単位のものだった。
シナプスはその艦隊へ連絡を取った。レーダーで観測できる距離ならば通信が可能だった。
「こちらアルビオンのシナプス大佐だ。貴官の所属と知らせていただきたい」
すると、接近中のマゼランより通信が入った。声のみの通信だった。
「こちらはルナツー方面軍の巡視隊の隊長ヘンケン・ベッケラー中佐だ。貴官らはどこへ向かう予定だ」
「はい。ルナツーの観艦式を観覧しようと思いまして、後何か良からぬ噂も聞きまして、ある連邦高官からの特命にて向かっております」
「そうか。ルナツーには何もないぞ。皆警邏に出払っている。何か起こると思うから、近づかない方が良いと司令部からの通達だ」
「なんですと。ルナツーが空!」
「そうだ。この広大な宇宙。集まれば大艦隊を要するだろうが、散らばってしまえば大した数ではない。司令からはある合図と共に、地球軌道上へ集結するという指令をいただいている。勿論ソーラレイの軌道外だがな」
シナプスはヘンケンの話を聞いて、通信中のブレックスらの顔を見た。ブレックスは瞼を閉じて、読めない先の展望について思案していた。
* ルナツー内 式典会場 5.7 12:00
観艦式の準備で余念のないよう司令部より指示出ししていたワイアットはルナツー内の式典議場にて、観艦式の開始を宣言していた。
式典会場には無数の連邦士官がオープンなバイキングスタイルにてドリンクやフードが食べれるようにごった返していた。その前方にひな壇があり、司会進行役がワイアットへ壇上へと促した。
「では、開会の挨拶と宣言を宇宙艦隊総司令官グリーン・ワイアット大将より頂きます。どうぞ宜しくお願い致します」
ワイアットはひな壇へゆっくりと足を運んでいった。ひな壇の頭上には大型モニターが配備され、ルナツーを取り囲む圧倒的な艦艇戦力が映し出されていた。
ワイアットが壇上のマイクの前に立つと、式典に出席している士官たちへ話し始めた。
「えー、我々は3年前ルナツーを奪還し、ソロモンへ救援に行きました。故ティアンム将軍の部隊が失われ、私の艦隊も窮地に追いやられました」
ワイアットはその頃の思い出を沈痛な面持ちで語っていた。
「しかし、我々はジオンの脅威から屈することなく、数少ない戦力にて、ジオンからの侵略を阻むことができました。それはひとえに貴官らの働きによるものでした。例え劣勢になろうとも国を守る、人々の笑顔を守る、そう想う軍人がこの場にいたからに他ありません」
ワイアットは前を見つめ、抑揚付けて語った。
「私は微力です。皆の支えが有って、ここに立つことができております。私の趣味である紅茶も安心して飲めるのも貴官らが働いてくれるからです」
ワイアットの冗談にどっと会場が湧いた。ワイアットは片手で制して、話し続けた。
「モニターに映るこの陣営も貴官らの働きによるものであります。私たちはこの艦隊を持ってして、宇宙に真の平穏をもたらす、そして皆が安心して暮らせる世の中を取り戻そうじゃありませんか」
会場がさらに盛り上がった。その時、会場がとてつもない揺れに襲われた。
頭上のモニターが白く輝いた。
ワイアットは傍の連邦軍高官へ事態の報告を求めた。
「何・・・何が起きたのだ!」
式典に出席していた士官たちが慌ただしく、状況把握のために常駐している基地司令部へと連絡を取っていた。ワイアットは慌てた演技をしていた。そして来るべき時が来たと悟った。
その後、ワイアットの下へ状況の知らせが届いた。
「司令!ガンダム2号機による核攻撃です。外のルナツーに配備された偽装艦隊がすべて消滅しました」
「そうか。各ゲートの状況は?」
「はっ。被害が甚大ですが、南のメインゲートの2か所は無事です」
「よし、そこから私の旗艦と残りを出撃させる。目標は地球軌道上サイド3方面だ。但し、3時間後にな。その代り一番近い哨戒隊をルナツーへ呼び戻せ」
「かしこまりました」
ワイアットが指示を出すと、再び壇上のマイクへと戻っていった。
「あー、皆さん聞こえますか?先ほど敵の攻撃がありました。しかし、我々は無傷であります。敵の攻撃は既に予測の範囲でした。このパーティーは続けたいと思います。各方面の哨戒部隊の集結にはいささか時間が要します。沢山英気を養ってから、我々は最後の戦いに挑みましょう!」
ワイアットはそう言うと、会場は最高潮に盛り上がった。
一方、攻撃をしたガトーは焦っていた。
核を撃つ前はガトーは連邦の大陣営を目の前にして紅潮していた。
「私の一撃で宇宙に真の自立をもたらす」
そう思い、願い放った一撃がモニターで目視するに、前の艦艇はまさしく本物だった。しかし、後の艦艇がすべて風船が弾けるような反応だった。
「な・・・ダミーだと!」
ガトーは座乗艦であるグラードルの艦艇より救難信号が発せられていた。
「少佐!してやられました。この宙域にまばらですが、敵艦艇が集結してきます!」
「グラードル!退却進路は?」
「はっ!サイド6外縁からが手薄で、<茨の園>のデラーズ閣下の部隊と合流できます」
「わかった。すぐに戻る。後詰でカリウスらを出撃させておいてくれ」
「了解であります」
ガトーはグラードルの通信を終えると、唸りながらもルナツーを後にしていった。
核の衝撃により、ガンダムのシールドの耐久性能が限界を超えていたらしく、持ち腕のジョイント部分まで損傷をもたらしていた。
「ん?左腕が動かない・・・」
ガトーは連邦の周到な備えに恐怖し、急ぎでムサイへ帰投していたが、その前にもう1体のガンダムが立ち憚った。
「なっ!・・・あの時のガンダム・・・」
コウは先発で偵察のため、アルビオンより出撃してルナツーの方面に居た。そこで運良く、はたまた悪く、ガトーと対峙できた。
コウはあの時のガンダム2号機を見て、唸った。
「奪われたガンダムだ・・・!この野郎!」
コウはガトーへライフルを連射した。ガトーはそれを避けたが4発目にして掠った。
「っぐ・・・ガンダムめ。多少やるようになったではないか」
ガトーはサーベルを抜き、コウへ接近した。その速度にコウは対応しきれず、ライフルを捨てて、サーベルに持ち替えて、ガトーのサーベル捌きを避けていた。
そして、両者のサーベルが交わるとき、両者の声が聞こえた。
「ガトー!あの時の、トリントンでの屈辱をここで晴らす!」
「ふん。あの時のヒヨっこか。多少は腕を挙げたみたいだな」
そうコウとガトーが言葉を交わすと、ガトーのサーベルがコウのガンダムを力でねじ伏せ、後方へ吹き飛ばした。その振動でコウが悶えた。
「うっぐ・・・ガトーめ!」
コウは意識を保ったままで、ガトーの次の攻撃に備えたとき、ガトーのガンダムの左腕の動きに違和感を覚えた。
「(ん?・・・左腕が動作していない・・・そうか!)」
コウはガトーの左腕が動かないことを予想し、ガトーの左側に回り込もうとする動きで攻撃していった。その動きにガトーは後手に回った。
「・・っぐ、気付かれたか。やるようになったな」
そして、互いにサーベルの応酬を繰り返しているうちに、ガトーのシールドにコウのサーベルが深々と突き刺さった。そしてそのサーベルは貫通し、ガトーの左腕を貫いた。
その損傷でガトーの左腕が爆発した。
「何!・・・このガンダムがあーっ」
ガトーは右手のサーベルを逆手に持ち、コウの肩から後ろへと刺した。
すると、コウのガンダムのバックパック付近が爆発した。
「がっ・・・畜生!」
そして、互いに接近して離れられず距離を取れないまま、バルカンを打ち尽くし、互いにガンダムが自沈寸前になっていた。
コウは脱出すべく、周囲の簡易バーニアを探し、自身のアタッチメントに付けて、コックピットを開けた。すると、目の前にガトーが同じようにいた。
ガトーはコウのヘルメットに近付いて、コウの名前を聞いた。
「私は有名人らしいから、お前を私は知らない。名前は何という?」
ガトーの圧力にコウは素直に名前を答えた。
「コウ・・・コウ・ウラキだ」
「ウラキか・・・二度と忘れん!」
そう言って、ガトーは星の海へ身を投じていった。
コウも呆然となりながらも、すぐ我に返り、ガトーと同じく身を投じた。
そして互いに後詰で来ていたパイロットたちに回収されて、各座乗艦へと帰投していった。
もう一方で、バニング隊とアムロがコウとは別方面での出撃で敵艦艇をキャッチしていた。
バニングはモンシア、ベイト、アデルに攻撃指示を出した。
「よーし!敵はこのミノフスキーの濃さで気づいていない。奇襲をかけるぞ!」
「了解です、隊長!」
バニングたちは敵艦に急速接近し、ムサイを3艇強襲により撃破した。
その後、残存の艦艇より数10体程のリック・ドムとゲルググに出撃してきた。
バニング隊を1体ずつ破壊したムサイを盾にして撃破していった。
アムロも単機での撃墜を重ねていった。
バニング隊の連携というもの神業に近いものが有り、傍に居たアムロも感嘆していた。
そのうちワイアットの哨戒部隊がこの宙域へ殺到してきたため、戦況的に不利と認識した敵残存艦艇はその場を離れていった。
その時、バニングは敵艦の捜索により、敵の作戦の概要をファイルで入手していた。
そのことを帰投中にアムロに告げた。
「レイ大尉。良いものを見つけました」
「そうか。何て書いてありますか?」
「・・・これは!敵は<星の屑>という作戦名でまた愚行を重ねようとしています」
アムロは傍のバニング機を見て、嫌な予感を覚えた。それはバニング機の腹にできていた敵から受けた損傷具合であった。それについて、アムロはバニングへ警告した。
「バニング大尉。貴官のジム、そこに捨てていけ」
バニングはアムロの言うことに疑問に思った。この損傷具合ならば別に問題ないと判断していたからだった。
「大丈夫ですよ。レイ大尉。艦まで戻れます」
しかし、アムロは断った。
「いいや、大尉のジムはダメだ。嫌な予感しかしない。それに貴官の持つ資料は今後の指針に役立つ。もし、その損傷での爆発で貴官と資料の両方が失われては、今後の展開で血を流す者が多くなるやも知れない。それを貴官はどう責任を持つ?死んでか?死んだらどうにもならない」
モンシアたちもその通信を聞き、自身の隊長の喪失感を予想すると恐怖に駆られた。
モンシアもアムロの意見に賛同した。
「バニング隊長。まだうちらには隊長が必要なんです。レイ大尉の言う通り、そのジムは危ないでっせ」
ベイトもバニングを説得した。
「そうですよ。モンシアもたまには良い事を言います。奴の良い事は余りに少ない。それを危惧する理由になると思います」
モンシアはベイトの発言に反発した。
「酷いぞ。ベイト!オレはなあ~、隊長の事を思って・・・」
アデルは笑って、バニングに言った。
「ハハハ・・・こう両中尉も申しております。隊長、我々の気を汲んで頂けませんでしょうか?」
バニングはそう4人に言われ、断らずにはいられなかった。
バニングは観念し、ジムを捨てる準備を整えた。
「わかった。モンシアがたまにだがそう良い事を言うほど不吉なものはないからな。レイ大尉の下でよいか?」
アムロは避難先を指定されると、快く了解した。
「ああ、そうしてくれ」
そう言って、その場に5機とも止まり、バニングがジムを捨て、必要な書類と共にアムロのコックピットへ入っていった。アムロもコックピット内に簡易座席を設置し、そこへバニングを搭乗させた。
バニングを回収した数秒後、バニングの乗ったジムは損傷による誘爆でその場で四散した。その光景にバニングは絶句した。
「ああ・・・大尉にお前らの言うことを聞かなければ、正に星の屑だったな・・・」
「そうだな。バニング大尉は良い部下をもったものだ」
そうアムロがバニングに語り掛けると、4機はアルビオンへ帰投した。
アルビオン艦橋にて、コウの戦闘報告がなされていた。
ガトーとの交戦、ガンダムの回収失敗ながらも、ガンダムの撃破と自身のガンダムの喪失。ガトーを取り逃がしたこと。その報告を傍に聞いていた。ニナは複雑だった。
「(アナハイムからは回収できない場合は破壊も已む得ないと言われていたから良かったけど、私の出世からは遠のいたわね・・・でも、あの人が無事なのはなによりだわ・・・)」
そう思っていたニナはシナプスずっと呼びかけられていたことに数秒たってから気が付いた。
「あっ・・・はい。何でしょうか艦長」
「ニナさん。ガンダムは回収不能となりました。大変申し訳ございません」
「いえ、これも一つの選択としてアナハイムからの要望でありましたので、敵の手や他の企業に情報を流されるくらいならばという話でした」
「そうですか・・・」
シナプスはニナの回答に感想を軽く漏らすと、別の話題を出してきた。
「ニナさん。実はアナハイムのレイ博士から通信文を頂いておりまして、貴方の新型量産機計画は一旦中断ということになったそうです」
ニナはその知らせに当然だろうと思っていた。テスト機を失って続行が不可能になったからだった。しかし、その後のシナプスの知らせにニナは驚愕した。
「バニング大尉の持ち帰った資料を通常通信が回復したのでワイアット将軍へ報告申し出たところ、我々もジオンとの戦いに参加せよとの命令が下された。そこで本艦は圧倒的な戦力を補充しに、ラヴィアンローズへ進路を向けている。ワイアット将軍直々の命令だ。アナハイムからの許可も下りている」
「なっ!ラヴィアンローズ・・・まさか・・・」
ニナの動揺に艦橋に居た、コウやアムロ、バニング隊の面々が見ていた。何故驚愕をしているのかアムロがシナプスに質問した。
「艦長。ニナさんの動揺と圧倒的な戦力とは関係があるのか?」
「ああ、ウラキ少尉の新型機への対応能力を見てとの判断で、アナハイムの新型量産機開発との併用で、ソロモン攻略時の拠点防衛用に対抗すべく開発していたのだ。モビルスーツ1個大隊に匹敵する火力を持って、ジオン攻略の包囲網の一翼を担うことになっている」
アムロはそんな戦力の存在に驚きを見せた。ニナは少々反論した。
「しかし・・・あの機体は規格外で・・・ガンダムとも言えない、不安定な戦力です」
コウは「ガンダム」という言葉を聞いて、高揚した。
「あるんだ・・・ガンダム3号機が・・・」
コウの呟きを聞いて、ニナは説明した。
「ええ、量産機ラインから外れた超大型機。理論上使用した場合、あのビグザムもいともしない火力で粉砕するとも言われる代物よ。ただ、実戦投入したこともないホントに戦力になるかどうかも不明なものよ・・・しかし、研究は凍結されたと聞いた・・・」
「が、行われていたのだよ。ワイアット将軍の工作もあってな。カーバイン社長が秘密裏で配慮したそうだ」
シナプスはニナへ伝えると、ニナは聞いていないとブツブツ言っていた。
バニングはガンダムの存在に、コウよりもアムロが適任ではと艦長に申し出た。コウもその意見には悔しいながらも否定はできずにいたが、シナプスが否定した。
「レイ大尉はあくまで我が隊のオブザーバー参加だ。うちはうちの専属でこなそうと思っている。レイ大尉からも同意見を貰っている」
アムロはシナプスの意見に賛同した。
「艦長の言う通りだ。オレはこの艦の手助けはしたいとは思うが、ガンダムというシンボルは艦のエースだ。本来ならばバニング大尉に任せるべきなのだがな」
アムロがそう言うと、バニングは首を振った。
「オレはこの年で英雄など気取る気概などないよ。だからウラキに任せている」
アレンもバニングの意見に同調した。
「そうですな大尉。オレもこのヒヨっこがここまで成長してきたのを見れたことに若干喜びを感じる年になってきたようです」
モンシアもベイト、アデルと共にそれに倣った。
「おう~ウラキくん。君が乗らないなら、ボクが請け負ってもよいけどよ~」
「まあ、バニング隊の我々はバニング大尉が乗らないのいでしゃばる訳にはいかないからな」
「そう言うことです」
アデルはコウの傍により、コウの背中を叩いた。
「ウラキ少尉。貴官のような若手が将来の道筋を示すことが良いと思っています。ガンダムは我々の道しるべです」
コウの傍にいたキースもコウの肩へ手を置いた。
「そうだよ~。コウがガンダムに乗らなきゃオレらが盛り上がらないよ」
「み・・みんな・・・有難うございます」
コウはその場で艦橋に居るもの、全てに頭を下げていた。
コウは本来ガンダム回収並び、ガンダムの撃墜されたことに処罰されると自認していたのだが、不問にされ、尚新しいガンダムを託されるということに喜びと感謝を覚えた。
シナプスは艦橋にいるクルーへジオンの思惑とワイアット総司令の作戦を話した。
「さて、<星の屑>の概要は先のガンダム2号機による奇襲での連邦艦隊撃滅と合わせたジオン本国による第2次ブリディッシュ作戦だ。ターゲットは月と地球だ。コロニーをフォンブラウンに落とし、もう一つを地球へ落とす」
艦橋一同は息を飲んだ。シナプスは話を続けた。
「ジオンはア・バオア・クーに集結した大艦隊にて用意したコロニーを護衛しつつ、地球への降下軌道に乗せる。一方のワイアット艦隊はソーラレイにより、阻止限界点まで艦隊を動かせない。しかし、近々ソーラレイを無力化できるとワイアット将軍は公言している。我々は単艦故の独自の行動がとれる。ソーラレイの照準を連邦艦隊から放すことはできない。その隙を突き、コロニーの推進力を潰す」
そのシナプスの話にモンシアが疑問を呈した。
「しかしながら、それは地球のコロニーだけの話ですよね。月はどうするんですか?」
シナプスはモンシアの質問に回答した。
「その問題については月の人々が請け負うらしい。ワイアット将軍とブレックス准将とも同意見だ。結局はジオンは2段構えでのコロニー落としを画策している。時間差でのな。まずは先に来るコロニーを阻止してから、次に来るコロニーの対処となる」
モンシアは「まさか」と驚愕した。シナプスは頷いた。
「そうだ。今回は地球へコロニーが最低でも2個来るぞ。コロニーにソーラレイ、ジオンの大艦隊・・・もはや先が読めん・・・」
シナプスの言葉に一同沈黙していた。
* ワイアット艦隊旗艦 バーミンガム級 艦橋 5.8 10:00
ワイアットは相変わらず艦長席にて紅茶を嗜んでいた。そこへ部下より報告が入った。
「司令。先のルナツーへの核攻撃した部隊への捕捉、捕獲が困難になりました」
ワイアットはティーカップをガチャっと音を立てて、眉間に皺を寄せた。
「・・・身内の裏が取れなくなったな。何故だ?」
「はっ、敵の先発部隊はサイド6外縁を通り、我が追撃部隊があと一歩というところで敵の別働隊が我が隊の行く手を阻みました」
ワイアットは一息付いて、その別動隊についての情報を聞いた。
「確認したところ、ジオン本国の部隊ではなくアステロイド・ベルトから来たジオンの部隊だそうで・・・」
ワイアットはジオンの陣容について記憶を漁った。そこから1つジオンの資源基地を思い出した。
「アクシズか・・・奴らも動き出したか・・・」
「どうやらそのようです。かの勢力も戦力としては未知数ですが・・・」
「だが、取るに値はしないだろう。言っても高々、資源基地だ」
ワイアットはバニングからの情報を得て、敵の作戦は理解したが、その後ろに潜む連邦の敵についての情報が得られなかったことに悔しさを滲ませていた。
* アクシズ先遣隊 クワジン級 格納庫 同日 13:00
ガトーたちはデラーズ艦隊に合流できずに敵に捕捉されかかったところをハスラーに助けられていた。
ガトーはこのことに感謝していた。ハスラーはガトーの感謝よりも別の事をガトーに話していた。
「実はな、ガトー少佐らを助けたのも偶然ではないのだよ」
「はっ?どういうことですか」
ハスラーは艦内の広い格納庫をガトーと歩きながら、ガトーたちの救援はゼナの願いだと話した。
「ゼナ様の・・・」
ガトーは亡きドズルの妻の名前を聞き、驚いた。ハスラーは頷き、説明した。
「ゼナ様はギレン閣下の成す事に疑念を持たれている。それがアクシズの総意となりつつある。生き証人を見つけてはギレン閣下へ告発し、ドズル閣下の無念を晴らそうと思っているのだ」
ガトーは複雑な面持ちで伏し目がちになり、ハスラーの話を聞いていた。
「そのため、ギレン閣下の目を潜り、デラーズ大佐から離れた貴官をこの機会にと思い、ここへ招待したのだ。まあやり方としては結果救援となったから良かったよ」
「・・・そうですか・・・」
ハスラーの言葉により、ガトーは再びギレンへの懐疑的な思いが芽生えた。
「して、君はこれからどうする?願わくば我々と共に行動して欲しいのだが・・・」
ガトーは少し考えて、答えた。
「ハスラー提督。私はジオンの士官であります。しかし、あのソロモン以来、全てを正義とは思えません。時間を頂きたい。仮にゼナ様と同じ思いに至るときは馳せ参じます故・・・ご了承下さい」
「そうか・・・貴官程の軍人をこちらに招くことができればと思ったのだが、今回はこれぐらいだろう・・・」
そうハスラーが話し終えた時、格納庫のある大きな扉の前に辿り着いた。
そして、傍にいた部下にその扉の開閉を命令した。
「ガトー少佐。貴官はまだ生き残らねばならない。そのための手助けを我らはしようと思う。これを持ち、戦線へ復帰してくれたまえ」
真っ暗の中、明かりが付くとガトーの眼前に見えた圧倒的な大型のモビルアーマーに、ガトーは息を漏らした。
「これは・・・ジオンの精神が形となって現れている・・・」
「AMA-002ノイエ・ジールだ。どうかこれでいつかゼナ様の手助けをして欲しい。それを思い、君に託す」
ガトーは素晴らしい機体を目の前にして、ゼナの想いとデラーズの想い、そしてギレンへの不安を考えて複雑な心境だった。
後書き
*そのうち、マチルダやダグラスらも再登場させないと。。。あとマ・クベもか・・・
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