| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

息抜きも

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

10部分:第十章


第十章

「そうでしょ」
「息が?」
「そうよ。息が詰まるからね」
 それで話すのだった。
「だからだよ。息が詰まるからね」
「遊んでるの」
「ほら、見てよ」
 ここで登志夫の言葉が変わった。
 そしてそのうえでだ。直美の弟達に顔を向けた。そのうえでまた話すのだった。
「あの子達ね」
「弟達?」
「凄く楽しそうじゃない」
 微笑んでだ。そうして彼女に話すのだった。
「そうでしょ。楽しそうでしょ」
「遊んでるからなの」
「そうだよ。遊んでるからだよ」
 それでだと話すのだった。
「ああして。息抜きになってるからね」
「楽しんでるの」
「そういうことだよ。それでね」
「それで?」
「僕達も今してるじゃない」
 直美自身にだ。顔を向けての言葉だった。
「そうじゃない」
「今って」
「さあて。次は何をしようかな」
 話は何時の間にか登志夫のペースになっていた。そのまま直美を乗せてだ。話を進めてきた。
「それじゃあね」
「何って」
「ヨーヨーでもすくう?それとも今度は何を食べようか」
「そうね。そこまで言うのなら」
 微かにだがだ。直美の顔が和らいだ。そうして登志夫に答えてきた。
「ヨーヨーかしら」
「それだね」
「ええ、そちらに行きましょう」
 こう登志夫に答えたのだった。
「それじゃあね」
「うん。それじゃあね」
「たまにはいいわ」
 直美はその顔でまた言った。
「こういうこともね」
「うん、それじゃあね」
 そんなことを話してだった。二人はだった。
 今は祭りの中で遊んだ。それは直美にとってははじめてのことだった。けれどそれでもだ。このうえなく落ち着き癒されることだった。
 それでだ。祭りが終わって弟達と共に家に戻る時にだ。送ってきている登志夫に対してだ。こう言うのだった。
「ねえ」
「何かな」
「今日のことだけれど」
 登志夫に顔を向けての言葉だった。彼も彼女に顔を向けている。
「許してあげるわ」
「それはどうも」
「普段は許さないけれど」
 顔を正面に戻して。今度はこう言った。
 そしてだ。そのうえでだ。こうも言ったのだった。
「けれどね」
「うん。けれど?」
「これからもたまには許してあげる」
 これが登志夫への今の言葉だった。
「たまにはね」
「そう、たまにはだね」
「だからたまによ」
 そこは強調する。一応は。
「けれどたまにはいいから」
「うん、わかったよ」
 このやり取りしてだった。登志夫は直美にあらためて話した。
「じゃあ今度はね」
「今度は?」
「また考えるよ」
 笑っての言葉だった。
「その時にね」
「今考えてないの」
「だって。そういうのはしたい時にするものだからね」
「したい時って」
「それでいいから。だって息抜きはしたい時にするものだからね」
 この言葉をだ。直美に話した。
「だからね。その時にね」
「いい加減ね」
「たまにだったらいいんだよね、いい加減も」
「まあね。それはね」
 そんな話をしながら直美を送る登志夫だった。そんなことをしてだった。直美を少しだけ柔らかくしたのだった。それがはじまりだった。


息抜きも   完


                   2011・2・6
 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧