Secret base ~君がくれたもの~
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3部分:第三章
第三章
また連絡してくれとあった。それを見て。
僕は嬉しくなった。連絡先さえわかれば。また彼と会えるから。
けれど会うのはそれからずっと先になった。少なくとも今すぐには会えない。そのまま会いたいとは思いながらも。
会う機会がなくて。それでだった。
僕はそのまま十年を過ごした。大学に進学して地元の役所に入った。そこで児童福祉のところで勤めている。人の役には立っていると思う。
そのことに何とか夢は適えたかな、と思っている時にだった。
彼からの手紙が来た。そこに。
今度会いたいとあった。会う場所は僕がいる町、彼もいた町の駅前の喫茶店だった。二人でよく行った馴染みの店でもある。
そこに行ってだった。僕達は会った。そして来た彼は。
あの頃と同じだった。あまり変わってない。その彼が僕の前に来て。
「元気だった?」
笑顔でまずはこう言って来た。そうして。
僕の前に座って。それから話をはじめてきた。
まずは僕のことを尋ねてきた。
「今何してるの?」
「うん、地元の役所に勤めてるよ」
「ああ、そういえば公務員になりたいって言ってたね」
「うん、そうなんだ」
こう答えて。さらにだった。
「児童福祉課に勤めてるよ」
「そう、じゃあ」
「君があの時言ったよね」
「覚えてるよ。人の役に立つ仕事をしようって」
「言ったから」
それでだった。なったと答えた。
それを受けて。彼もこう言ってきた。
「僕もね」
「君もなんだ」
「なったよ」
微笑んで僕に答えてきた。
「消防署員にね」
「そうだったんだ、君もなったんだ」
「なれたよ。ただね」
「ただ?」
「今は事務仕事なんだ」
こう言ってだった。彼は。
少し残念な笑顔になった。それで僕に言ってきた。
「まあそれでもね」
「それでもなんだ」
「うん、頑張ってるよ」
そしてだ。それが何かも。彼は僕に言ってくれた。
「事務仕事も。必要だしね」
「人の為になる仕事だからだね」
「うん、だからね」
彼はすぐに前向きな笑顔になって話した。
「頑張ってるよ。君と約束した様に」
「あの時の約束だね」
「そう、その通りにやってるよ」
「何かそれを言ったら」
彼の話を聞いて。僕は言った。
「御互いにもらった感じだね」
「約束したからだね」
「うん、僕は君にもらって」
将来の約束、それからだった。
「君は僕にもらったからね」
「そうなるね。本当に」
彼も僕の言葉に笑顔で頷いてくれた。それでだった。
お互いに。僕達は笑顔になってそれで。
二人でだ。同時に話した。
「じゃあこれからも」
「約束をそのまましていこうね」
「御互いにもらったものを大切にして」
「そうしよう」
こう笑顔で言い合い約束を誓い合った。それが僕達の出会いだった。
ただ喫茶店の後は居酒屋に行って飲んだ。そこは十年前とは違っていた。けれど僕達はあの頃のままだ。そのことは変わらない。ずっと。
Secret base ~君がくれたもの~ 完
2011・9・5
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