Secret base ~君がくれたもの~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
2部分:第二章
第二章
「僕はそうした。人の為になるやりがいのある仕事に就きたいんだ」
「それはどうしてなの?」
「うん、人間って生きていたら悪いことだってするじゃない」
「そうだね。どうしてもね」
そのこと自体が何かわかってきていた。意識していなくてもどうしてもそうしたことをしてしまう。人間にはそんな一面もある。
そうしたこともわかってきている僕に。彼はまた話してきた。
「だから。罪滅ぼしかな」
「その為にも」
「なりたいんだ。それにね」
「それに?」
「そういう仕事をしてると」
話が変わった。今度はだった。
「勇気が出るし」
「勇気が?」
「人の命や安全を護っているだって思ったら」
「そう思うとなんだ」
「うん、勇気が出る仕事をやっていきたいんだ」
これが彼が僕に言ったことだった。
「だから。消防署に入って」
「それで頑張りたいんだね」
「やるよ、僕は」
空を見上げたまま微笑んで。彼は言った。
「絶対にね」
「そうだね。僕もね」
「君もなんだ」
「なるよ、人の為になる仕事をやれる人に」
こう話してだった。それでだった。
僕は夜空から彼に顔を向けて。そして。
「絶対に就いて頑張るから」
「そうだね。お互いにね」
「僕も君も」
「なろう、将来は」
そのことはお互いだと。言い合った。
「約束する?」
「そうだね。しようか」
今度もだ。お互いにだった。
言い合ってそれで。
指切りをした。それからだった。僕達は並んで歩いたまま。
僕達は夜道を歩いて家に帰っていた。その中で。また彼から言ってきた。
「若し今僕達が別れ別れになってもね」
「それでも?」
「そう、それでもね」
こう言ってだった。僕に顔を向けて。
それでだ。今度はこんなことを言ってきた。
「また会おうね」
「どういうこと?それって」
「まあいいから。また会おうね」
最後はどうしてか寂しい笑顔だった。けれどその笑顔の意味はすぐにわかることになった。
夏休みが終わり二学期になって学校に行くと。そこには。
彼の姿はなかった。話を聞いたらこうだった。
「転校したんだ」
「そうみたいだよ、お父さんの仕事の都合でさ」
「急に決まったみたいなんだ」
皆が僕にこう話してきた。
「先生が言ってたけれど」
「だから僕達にお別れを言う暇もなかったみたいなんだ」
「そうだったんだ」
その話を聞いてわかった。どうして僕にあの時寂しい笑顔を向けてくれたのか。
そのことがわかってだった。僕は。
心が寂しくなった。けれどそれでもだった。
家に帰ると手紙が来ていた。彼からの手紙だった。
そこには別れの言葉を言えなかったことを謝ることが書いてあって。それで。
連絡先も書いてあった。遠く離れた他の県だ。
そこが書いてあって。それでだった。
ページ上へ戻る