IS〜もしもの世界
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36話
俺は特にする事もないので箒の調整を手伝う事にする。一夏はラウラとシャルの練習を見させてもらうといって離れたので珍しく二人で話す。
「おーい箒〜」
「む・・・泰人か」
と空中投影ディスプレイを睨みながら返事をする。
「・・・そんなに難しいのか?」
「ああ・・・このエネルギー分配にするんだがどうだろうか?」
と俺に映像を飛ばす。
「ん〜、展開装甲があり得ないくらい万能だなぁ。エネルギー云々は置いといて」
「だが肝心のエネルギーが足りないのでは意味が無いだろう。まったくあの人の作るものは・・・」
とぶつぶつと言っていたが俺はふと疑問がでた。
「箒、<絢爛舞踏>は使えないのか?」
「あ、あれは・・・まだ使えない」
と苦虫を噛み潰したような顔をする箒。そりゃ出来るんならこんな事で苦労はしないわな。
「うーん、なら少し難しいけどマニュアル制御で配分してみたら?」
と思いつきで言ってみると、唸っていた箒がガバッと顔を上げてきた。
「・・・!それだ!ありがとう泰人!・・っ!す、すまない。ではこれから練習をしてくるとしよう」
「お、おおう。あんまり根を詰めすぎるなよ?」
俺がそう言うと、「ああ」と苦笑しながら離れていった。
そうしてまた他の人を手伝っていると、みるみる時間は過ぎていくのだった。
ーキャノンボール・ファスト当日ー
あれから箒はマニュアル制御をしっかり出来るようになり、俺も扱いに慣れたりしてすぐに当日になった。
「おー、よく晴れたなぁ」
「だな。あ、そろそろ始まるし行くか」
「おお」
と軽い会話をしてピットに行く。
司会の軽い説明の後、ついに一年生の専用機持ち組が始まろうとしていた。
「それではみなさん、一年生の専用機持ち組のレースを開催します!」
と言われると同時に身構える。そして開始のランプが光る。
「っ!」
高速機動特有の視界が曲がる現象が起きるがそんな事は気にする場合では無い。俺のは速い分、コースアウトもなりかねないので神経を研ぎ澄ます。
「くっ!このっ!」
「へへん!おっそーい!」
と一夏たちの声が後ろでかすかに聞こえるが無視する。一夏たちとは1コーナーもの差があるがさっさと逃げてゴールつもりだった。
だが。
2週目に入った直後、異変は起きた。
「・・・これは、っ!シャル!ラウラ!避けろ!」
「えっ?・・っく!」
「っぐあ!」
と少し速く気づき、シャルとラウラに警告したが、いきなりで避けれなかったらしく、上空からの弾丸に二人とも撃ち抜かれた。
「ちっ!・・・あのときのやつか・・・!」
「⁉︎」
「一夏!鈴と二人で攻撃!箒は俺とだ!セシリアは後ろで支援、分かったな!」
と言うと、すぐに陣形を組み、謎のISーシンデレラのときのBT使い、[サイレント・ゼフィルス]を囲む。が、相手は焦るどころかニヤリと口を歪めた。
「・・・!狙いは一夏か!一夏!鈴!シャルたちを見てきてくれ!ここは三人で抑える!」
と少し戸惑いを見せた2人だがすぐに下がり、見に行ったので、今度は2人に命令する。
「・・・箒とセシリアは一夏たちに飛び火が行かないようにしてくれ」
「・・ここは三人で言った方が・・・」
「すまん、俺の攻撃だと味方も危ない。それに相手は得体が知れないからな」
「むっ・・・」
「まあ、そこまでいうなら泰人さんに任せましょう」
少し不満な様子を見せた箒だがセシリアが宥めたのでこれ以上は何も言わなかった。
「さて・・・サイレント・ゼフィルス、他の呼び方が無いんでそう呼ばせて貰うが、「お前は何者だ⁉︎」」
と同時に光速機動で近づき掌底をする。普通ならただのバカ力だがこの速さだと、これだけでも打鉄くらいなら装甲を吹っ飛ばす威力を兼ね備えていた。
だが無言で横に避けビームを撃ってくる。
そして俺はそれを避けながらまた掌底を繰り出すといたちごっこのようなことを繰り返していた。
答えは沈黙。まあ黙秘でもだいたい見当はついてるんだがな。まだわかん無いだけに慎重にならざるを得ないって感じだがそろそろ時間も稼げたので少し行動を起こしてみる。
「・・・そろそろか」
「・・・一体何をするつもりだ」
「さあね。気になるならこっちに来いよ。まあ俺から行くけどな」
そう言って精神を研ぎ澄ませる。と同時に刀を呼び、居合の体勢に入る。
「こんなことをしても埒が明かないので、取り敢えずお前を取っ捕まえるかな!」
台詞を言うと同時にあいてに向かって高速の移動と共に神速の居合を放つ。さすがに相手も対策してきているのか当たることはないが体勢は崩れたのでそこを攻め続ける。
「っオラァ!どうした!お前の強さはこの程度か!」
とあからさまな挑発をかけると、意外にも乗ってきてくれたのでさらにこちらに気を引きつける。
「・・・ククッ」
「っなに笑ってやがる!」
と大きくでた俺の攻撃をかわし、まるで待ってたと言わんばかりの笑みで銃口を突きつける。まあ、そんなことは<こちらから>してきているのでー
「っー⁉︎・・・クソっ」
後ろでタイミングを計っていたセシリアのレーザーに気づかずくらいよろめく敵。そこを見逃すほど俺も優しくは無いので攻撃しようとして刀を振ろうとしたのだが
「これで終わりっ⁉︎ぐあああ!」
突如背中に焼け付くような火球が降ってきて、予期せぬ攻撃に吹っ飛ばされた。
「くっ。セシリア、状況!」
と振り向くがそこに見えたのはゼフィルスに攻撃を受けて肩から血を流すセシリアと謎の金色の繭に包まれたISの攻撃に防御をなんとかしている箒の姿だった。
「っ、・・・てめえら・・・」
ふつふつと湧き上がる殺気と怒気が混ざり、対の刀を呼び出す。
とセシリアがゼフィルスに向かい手で作った銃で撃つような仕草をすると、どこかに行っていたビームがどこからか敵の体を貫いた。
「⁉︎」
そして俺は時を止める。そのままゼフィルスに近づき、再び時は動き出す。
「なっ⁉︎」
と驚きを隠さないが流石軍隊を襲撃する相手は引く体勢のままビームを撃つ。
「スサノオ」
と刀にスサノオを纏わせビームを消し去る。
そして倒れるセシリアを抱える。
「すまない。すぐに運ぶから安心しろ」
とセシリアに伝えると激しい攻防のせいか気を失った。
「ふん・・・そのまま行かせるとでも思っているのか?」
と近接のブレードを振り、俺へ向かう敵。
「ああ、思ってるよ!」
とスサノオを出し、相手のブレードごとへし折り、吹き飛ばす。
「ぐっ・・・一体貴様こそ何者だ?」
「うるせぇ、おれがセシリアを抱えているうちに消え失せろ。じゃないとー」
と全て言い切る前にゼフィルスは何者からの連絡を受け、もう一人のやつとどこかへ逃げて行った。
「ふーっふーっ、落ち着け俺」
と今すぐにでも追いかけて殺したい衝動を抑え、すぐに安全なとこまで運ぶ。
しかし、セシリアを先生達に任せると急激な疲労のせいか、俺も気を失ってしまったのだった。
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