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戦国異伝

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第二百三十三話 本能寺の変その十一

「よいな」
「はい、では」
「ここではですな」
「我等二人が、ですな」
「後詰でありますな」
「頼む、飛騨者達も残るが」
 城の屋根の上でだ、縦横に暴れる彼等のことも話した。
「後詰はな」
「我等二人にですな」
「お任せして頂けますか」
「そうじゃ、頼むぞ」
 確かな声での返事だった、そうしたことを話してだった。
 信忠は暫く戦ってからだ、あえて周りに芝居で言った。
「最早これまで、それでは」
「はい、では」
「我等も後で参ります」
 周りの者達も答えた。
「それではお先に」
「あちらに」
 こうしてだった、信忠は城の中に入ってだった。
 そのままだ供の者達に言った。
「ではな」
「はい、これよりですな」
「お屋形様は」
「外が気になるが」
 その外の喧騒を聞きつつの言葉だ、まだ激しい戦が行わ怒声と剣撃、それに鉄砲の音と燃える音までする。
「しかしじゃ」
「はい、お屋形様はです」
「まずはです」
「お逃げ下さい」
「そうすべきじゃな」
「では我等も」
「お供させてもらいます」
 供の者達も言う、そして。
 信忠はその抜け穴に入った、そうして彼は二条城を後にした。だが囲む者達はそのことに気付いてはいなかった。
 闇の衣の者達がだ、城を攻めながら話していた。
「順調じゃな」
「うむ、これも御前が明智の者達を操ってくれるからこそ」
「攻められておるな」
「ではな」
「このまま攻めてな」
「二条城を攻め」
 そしてというのだ。
「織田信忠を滅ぼし」
「本能寺の織田信長もじゃ」
「あちらも今頃はどうしようもなくなっておるわ」
「ではな」
「このまま攻めようぞ」
「我等は我等でな」
 こう話してだ、そしてだった。
 彼等は信忠の動きを知らずに攻めていた、何も知らないまま。勝ちの手を打っている者は実はそうではなかった。


第二百三十三話   完


                      2015・6・26 
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