ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第9話隻腕のドラゴン
前書き
どうも!最近前より更新ペースが早くなった醤油ラーメンです!
今回は皆さんが忘れがちかと思われるライリュウの異名の由来が明らかに!
それでは、どうぞご覧ください!
《思い出の丘》ーーー何故このフィールドがそう呼ばれるのか、恐らくそれは使い魔を亡くした《ビーストテイマー》のみが手にでき、己の愛獣を蘇らせる命を与える花。《プネウマの花》が存在するからなのだろう。この世界で苦楽を共にし、決して消えることのない思い出。死してそれまでで終わってしまった思い出を蘇生で繋ぎ、新たに思い出を生み出す。少なくともオレはそう思う。
「これは・・・」
「もし予想外の事態が起きて、オレが離脱しろと言ったら必ずこの《転移結晶》でどの街でもいいから飛ぶんだ」
オレはシリカに非常時の為に《転移結晶》を渡した。オレでもどうしようも出来ないことが起きないとも限らないからな。
「でも「約束してくれ」・・・わかりました」
シリカが反論しようとしたのをオレは遮る止めた。シリカは渋々了承してくれた。
「シリカ、そろそろモンスターが出るエリアだ。用心しとけ」
「は、はい!」
オレの隣で歩く少女、名をシリカ。彼女も己の愛獣との再会を願い、新たな思い出を生み出すことを望むその一人。
「この層の全てが花畑な為に、この層を徘徊するモンスターもそれに相応しい怪物だ。少し女の子には厳しい戦いになる」
「この層に相応しい?それってどういう・・・ひっ!?」
急に短い悲鳴をあげたシリカ。彼女のいたオレの隣を向くと彼女の姿はすぐに消え、空を見上げたらーーー現状を把握した。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「少し遅かったか・・・(汗)」
植物型モンスター《ネペント》。それも結構デカイやつだ。見た目は赤い花が口になっていて、蔓が触手になってる食虫植物ならぬ食人植物。どこかの赤と緑の兄弟の冒険に出てくる植物みたいなやつ。違いは土管に入ってなくて自分で動くくらいかな。
そのネペントが触手でシリカを宙吊りにして口を大きく開けた。
「落ち着けシリカ!こいつすごく弱いから!花の下を突けばそんなに難しくない!」
「ライリュウさん助けて!見ないで助けて!」
そういえばシリカにあげた装備、スカートだったっけ。宙吊りにされている訳だから・・・うん。
「ムリ!」
これしか言えない・・・。ピナの蘇生の為の試練だと思ってくれ。
「このぉぉ!いい加減に・・・しろぉ!」
結論から言おう、足を掴んでた触手を斬ってオレの言ったポイントにソードスキルを撃ち込みネペントを排除した。
そのまま着地してスカートを抑えてこっちを向いた。
「・・・見ました?」
えーっとーーーこういう場合どう言えば正解なんだっけ?見てないと言ったら絶体「嘘だ!」って言われるし、素直に見ましたと言ったら今後のオレの人徳が疑われる。とりあえずーーー
「......強いなシリカ」
「ごまかさないでください!/////」
適当にはぐらかす。
その後もオレたちはプネウマの花を目指して進んでいった。
******
「ライリュウさん、妹さんのーーーミラさんのこと聞いていいですか?」
「どうした急に?」
いきなりミラのことを質問してきたシリカ。本当にどうしたんだ?
「あたしに似てるって言ったじゃないですか。現実のことを聞くのはマナー違反ですけど・・・ダメですか?」
「・・・忘れろって言わなかったか?/////」
似てるって言ったことはマジで忘れてくれ、言っておいてすごく恥ずかしいから。
まあそれよりも、マナー違反なのを承知の上で聞いてきたんだ。本当なら言いたくはないけどーーー別にいいか。SAOにいるんだから。
「・・・妹って言ったけど、ホントは血の繋がりのない義理の兄妹なんだ」
「え?」
そりゃ驚くか。そんな複雑な兄妹、周りにはいないだろうし。
「産まれた時から10年間、ずっと知らされてなかったんだ。オレの本当の両親は交通事故で亡くなったらしくて父親の友人夫婦に養子として引き取られたんだ。そしてオレの10歳の誕生日、突然それを知らされたんだ・・・それもニュース番組みたいにめくりで」
「その伝え方、どうなんでしょうかね・・・」
「ああ、その時はオレが養子だったことよりその伝え方にぶちギレたよ。それで父さんの顔面を思いっきりぶん殴った」
あれは本当にぶちギレた。衝撃の事実よりもその伝え方が衝撃的だったもん。
「・・・でも、そのあと最後のめくりで「竜はオレの息子だ!」って言われて円く納められたけど。父さんと母さん、脳内お花畑の永遠のバカップルだったから......その能天気が移ったのかな」
「確かに重度の能天気じゃないとそんなすぐにはムリですよね・・・ん?「竜」ってもしかしてライリュウさんの?」
「あ!ヤベ!」
ついうっかり本名言っちゃったよ!SAOではリアルの名前は基本言っちゃいけないのにーーーとにかく適当にはぐらかして次に進もう。
******
「ここに蘇生の花が?」
「ああ、・・・」
オレが指を示す先、ついにたどり着いた。シリカは走った。己の愛獣の復活のキーになる、花が咲く光る台座のもとへ。
「!」
シリカが台座の前に立った途端、光る台座の上に芽が伸びた。それから数秒かけて芽は完全なる花へと成長した。
「手に取ってごらん」
オレの言葉にシリカは頷き花を手に取り摘んだ。
《プネウマの花》。彼女が今一番欲したものがそ、の手のなかに。
「これでピナが生き返るんですね?」
「ああ」
「良かった」
シリカは花をそっと胸に抱いた。やっぱり嬉しいよなーーー
「でも、この辺は強いモンスターが多いから。オレの家に戻ってから生き返らせよう?ピナだってきっとその方がいいと思うぞ?」
「・・・はい!」
よし、帰ろうかーーー
******
ーーーそう簡単には帰らせてくれないか。オレの隣を歩くシリカの肩に手を置き彼女を止める。
「ライリュウさん?」
「そこで待ち伏せてる奴、出てこいよ」
オレたちの視線が集まる木の陰、そこには確かにいた。黒い服を着た赤髪の女が。
「ロ、ロザリアさん!?」
「あたしの隠密を見破るなんて、なかなか高い索敵スキルねぇ黒マントの忍者さん。その様子だと、首尾よくプネウマの花をゲット出来たみたいねぇ。おめでとう・・・じゃ、早速花を渡してちょうだい」
やっぱりそうくるか。せっかく手に入れた花を「はいそうですか。どうぞどうぞ」なんて渡すと思ってるのか?
「な、何を言って・・・まさか」
「そうだシリカ。悪いけどそうはいかないんだよなぁオバサン。いや・・・犯罪者ギルド《タイタンズハンド》のリーダー・ロザリアさん、と言った方がいいか?」
「・・・へぇ」
ロザリアはオレがオバサンと言ったことにはさほど反応しなかった。なぜなら、オレがロザリアの正体を寸分違わず言い当てたからだ。
「でも!ロザリアさんはグリーン・・・」
「犯罪者ギルドの構成員全員が犯罪者プレイヤーである必要はない。手口は簡単だ。グリーンのメンバーが獲物を見繕い、犯罪者の仲間が待ち伏せてるポイントまで誘い出す。犯罪者は街に入れないから回復アイテムなんかも簡単には手に入らなくなるからな。夕べオレたちの会話を盗み聞きしたのもアンタの仲間なんだろ?」
「じゃあ、この2週間一緒のパーティにいたのは・・・」
ここまで言えばシリカもよくわかるだろう。こいつはーーー
「そうよ。戦力を確認して、冒険でお金が貯まるのを待ってたの」
ここまで言って舌を出し、まるで蛇のように自分の唇を舐めた。こいつの考えややり方を考えると、ホントに蛇みたいに見えてくる。
「一番楽しみな獲物だったアンタが抜けて残念だったけど・・・レアアイテムを取りに行くっていうじゃない?でもそこまで解っててその子に付き合うなんて・・・バカァ?それともホントにたらしこまれちやったの?」
「~!」
「たらしこまれた」、そのセリフを聞いてシリカは静かな怒りを露にした。それをなだめつつーーー
「別にたらしこまれちゃいねぇよ。バカは否定出来ない分ちょっと悲しいけど・・・あえて言おう、オレもアンタを探してたんだよ。シリカにも盗み聞きのあとに全てを話して協力しあってきた。利用するような真似したくないからな」
「・・・どういうことかしら?」
やっと本題に入れる。ここまでくるのに長かったぜ。
「アンタ・・・10日前に《シルバーフラグス》っていうギルドを襲ったな?リーダー以外の4人が殺された」
「あぁ、あの貧乏な連中ね」
なんも悪びれずにはっきり言いやがったーーー腐れ外道が。
「リーダーだった男はな、朝から晩まで最前線の転移門広場で泣きながら仇討ちしてくれる奴を探していた。だが彼は「殺すんじゃなく牢獄に入れてくれ」と言ったんだ。アンタに・・・仲間を殺した相手を殺さずに投獄することを望んだ彼の気持ちが解るか?オレだったら絶体にそんなこと出来ない」
「解んないわよ、マジになってバカみたい。ここで人を殺したところで、ホントにそいつが死ぬ証拠なんてないし。それより・・・自分たちの心配をした方がいいんじゃない?」
奴が指をパチンと鳴らすとグリーンの仲間が一人、犯罪者の仲間が六人現れた。ーーーけどそんなことはどうでもいい。こっちはグツグツと腹が煮えくり返ってるくらい怒ってるんだからな。
「ライリュウさん!人数が多すぎます!脱出しないと・・・」
「・・・シリカ、オレが逃げろって言うまで転移結晶を準備して待ってろ」
「はい、でも「待ってろ!・・・これからかなり暴れる」・・・解り・・・ました」
きっとオレの声には強い怒気が含まれていただろう。シリカの体が少し震え上がったところを見て、多分間違いはない。
「ライリュウさん!」
「ッ!ライリュウ!?」
オレの名を叫んだシリカの声に敵数人が反応した。
「竜の顔を模した黒い両手剣・・・」
オレの道を阻む全てをぶった斬る為に作った最強の剣《ドラゴンスレイヤ》ーーーー
「赤い忍者装束・・・」
オレを愛してくれたあいつの意思を継ぐ為にオレが仕立てたーーー
「鱗模様の籠手・・・」
硬く、もう二度とオレから何も奪わせないための鱗・・・
「そして・・・左腕の存在しない隻腕の剣士・・・」
この外道共は、オレの名を忘れることは出来ないだろう。お前ら巨人の手はーーー
「《隻腕のドラゴン》・・・ライリュウ!?」
隻腕のドラゴンの逆鱗に触れちまったんだからな。
後書き
ようやくウチの主人公の異名を出せました。自分では大層なネーミングすぎてかえって安っぽく感じてしまいます。
15日から18日まで修学旅行に行くのでその間は続きを書けないと思います。実は僕、学生なんで......。
今回もご覧下さりありがとうございました!次回もお楽しみに!
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