おぢばにおかえり
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第十七話 梅雨ですその十一
「だからお休み長いのよ、多分」
「この梅雨を乗り切ったら」
「後は七月の最初にテストして終わり」
それが天理高校です。
「お休みが五十日はあるわよ」
「その間先輩はどうされてるんですか?」
「大体実家に帰ってるわね」
やっぱりそうでした。
「ただ。ここにいる時間も長いわね」
「部活でですか」
「あとひのきしんと」
用木コースと色々あります。ひのきしんをしたりとか。簡単に言えばボランティアで働くっていうことです。
「そういうので色々残ってるわ」
「東寮は閉められるんですよね」
「まあ一応は」
夏休みと冬休み、それと春休みの間はそうです。
「けれど許可があればね。これは北寮もそうよ」
「ですか」
「ええ。まあ色々とあるのよ」
本当に色々とあります。結局自宅生以外はあれこれとここにいることになるのが天理高校です。多分おぢばに慣れないと結構辛いものがあるかと。
「夏、暑いけれどね」
「やっぱりそれですよね」
「けれどあれよね」
ここで先輩はふと仰いました。
「あれって?」
「それでも夏好きなのよ」
雨の中でにこりと笑いました。この笑顔がまた。男の子が見たらそれで一撃で陥落しちゃうような。そんな奇麗で素敵な笑顔です。
「夏がね」
「そうなんですか」
「プールに行くのは恥ずかしかったけれど」
「どうしてですか?」
こうは聞いても大体事情はわかります。これは高井先輩と同じです。高井先輩もこの長池先輩もやっぱり。正直に言って本当に羨ましいです。
「だって皆私見るのよ」
「やっぱりですか」
「やっぱりなの」
「先輩色白いですし」
特にお顔が。私も肌は白いって言われますけれど。
「それに御顔だって」
「顔は別に」
「しかもスタイルだって。それでプール行ったら危ないですよ」
「危ないかしら」
「声かけてくるだけならいいですけれど」
私が男の子でプールで先輩みたいな人見つけたらそれこそ。最初御会いした時驚きましたから。物凄く奇麗な人なんだって。それは今もですけれど。
「危ない男だったら」
「何かそういうこと結構言われるけれど」
「当然ですよ」
あれっ、先輩には自覚ないんでしょうか。
「だって先輩位の人になったら」
「私なんか全然よ」
けれど私の言葉には苦笑いして首を横に振るだけでした。
「私なんかより全然奇麗な人一杯いるじゃない」
「はあ」
「だからよ。そんなの言われても」
「そうですか」
「ええ。それにそういう話って何か」
苦笑いのまま仰います。
「恥ずかしいわよ」
「すいません」
「別に謝らなくていいわよ」
それは許してもらいました。やっぱり先輩はとても優しい人です。これでどうして怖いだなんて言うんでしょうか。私は一度も先輩のそんな顔を見たことないですけれど。
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