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おぢばにおかえり

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第十七話 梅雨ですその十

「わかっているわよね」
「おぢばの夏ですよね」
「そうよ。特におぢばがえりとその後」
 この時期は本当に地獄です。おぢばがえりじゃ毎年詰所で苦労しています。
「凄いのよね」
「そうですよね。冬は寒いことこの上ないですし」
「考えてみれば暮らしにくい場所かも」
 それは否定できません。もっとも冬は天理高校は冬休みが一ヶ月、春休みも一ヶ月あるんですけれど。夏休みは五十日もあります。
「思えばね」
「それだけ休みがないと辛いんでしょうか」
 ふとこう思いました。あの暑さと寒さを思うと。
「ううん、そうかも」
 先輩は私の今の言葉に考える顔になられました。雨ですので腕は組みませんが。
「それに寮の生活って」
「はい」
 話はまたそこに。寮の生活に。
「大変じゃない、何かと」
「体力凄く使いますよね」
「体力もそうだけれど気力がね」
 それが問題でした。特に一年の間は物凄いです。今の私がそれを実感していますからよくわかります。本当にしんどいものがあります。
「使うでしょ」
「そうですね。それは」
 私もそれは否定できません。
「大変だからね。それに」
「それに?」
「先生も大変でしょ」
 次に出た言葉はこれでした。
「幹事の先生達も」
「あっ、そういえば」
 言われてそのことにはじめて気付きました。天理高校の寮は学校の先生が幹事も兼任されています。つまり生徒達と侵食を共にしているわけです。こう言えば聞こえがいいですけれど実際は悪い子供達の相手をしているっていうことになります。それってかなりしんどいです。
「そうですよね。休みが短いと」
「負担よ」
 これでした。
「下手したら出なおす破目になるわよね」
「それはありますね。東寮だって」
「色々あるわよね」
「ええ」
 色々なんてレベルじゃないです、実際は。朝は早いですししかも生徒の数は多いし。もっとも東寮はまだ人が少ない方ですけれど。男の子の北寮に比べると。
「それもあるのかもね」
「そうなんでしょうか」
「学校は生徒だけのものじゃないしね」
 これ重要ですよね。殆ど意識しませんけれど。
「先生や事務の人だっているしそれに」
「ようぼくの人達も」
「その人達もね」
「あとここの学校は」
 話がどんどん進みます。ようぼくというのはおみちの言葉でおさづけというおたすけの中でも大切なものをさせて頂くことのできる人のことです。おぢばでお話を十回聞かせてもらってそれになれます。天理高校ですと三年の時にそれを聞かせて頂いて新年にようぼくにさせて頂きます。
「二部の人達だっているしね」
「ですね」
 二部というのは所謂夜間の人達です。天理高校は夜もあるんです。制服も同じです。ただ普通の夜間学校と違うのは寮に住んでそこでひのきしんをさせて頂きながら学校に通うというところです。こうしたところも本当におぢばならではになっています。
「色々と大変だから。やっぱりお休みが長くないと」
「堪えますね」
「そういうことになるわね」
 何となく話がわかってきました。 
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