遊戯王GX-音速の機械戦士-
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―目覚め―
デュエル・アカデミア旧寮跡。かつてタイタンとの闇のデュエルや、セブンスターズとの戦いで用いられたそこが、吹雪さんが戦いの場所として示した場所だった。
「この寮が僕の最初の場所だ……亮や友人と、この寮で過ごした……いや、今はそれより、キミとのデュエルが先だ」
昔のことを思い出して感傷に浸るよりも、今迫りつつある危機を防ぐため、黒いコートを着込んだ吹雪さんは決意したような表情を見せる。そして封印していた《ダークネス》のカードを解き放ち、再びその黒い仮面を身につける。
「ぐっ……うぉぉぉぉぉ!」
「吹雪さん!」
苦痛を伴った叫びをあげる吹雪さんに駆け寄ろうとするも、それはすぐさま手で制される。肩で息をするような状態だったものの、吹雪さんに何とかダークネスの力は定着し、再びあのデュエリストが俺の前に姿を現していた。
「僕は……まだ大丈夫だ。そう簡単にはね。さあ、早速始めようか」
「……はい」
デュエルを通してダークネスの記憶を辿ることで、俺たちの世界への侵略者の正体を探る。そのために闇のカードの封印を解放し、命を賭けた吹雪さんからの頼みに対し、俺もデュエルディスクをセットする。
……肝心の【機械戦士】からは、まだ何の答えも返ってこないが。それでもやるしかない……吹雪さんが敵の正体を闇から探るように、俺もこのデュエルを通じて、【機械戦士】たちとの絆を取り戻す……!
『デュエル!』
遊矢LP4000
吹雪LP4000
「俺の先攻」
デュエルディスクが指し示したのはこちらから。しかし、【機械戦士】たちとの絆が感じられないからなのか、それとも別の要因か……吹雪さんを相手取るのは厳しい手札だった。
「俺はモンスターとカードを一枚ずつセットし、ターンを終了する」
「……僕のターン、ドロー」
最初の俺の布陣に何を思ったのか、吹雪さんは少し沈黙してからカードを引いた。確かダークネスとしてのデッキは真紅眼を取り込んだ【ドラゴン族】――いつもの吹雪さんとは違い、真紅眼はメインでなく切り札扱いであり、その分多様なドラゴン族が投入されていた。
「僕は《幻木龍》を召喚!」
封印されている間に力を蓄えてデッキも変わったのか、先のデュエルでは見せなかった龍が召喚される。……むしろ、先のダークネスとは別物と考えた方がよさそうだ。
「そしてフィールドに地属性モンスターがいる時、手札の《幻水龍》は特殊召喚できる!」
さらに吹雪さんのフィールドに現れるのは、先の《幻木龍》が地属性の龍ならばまさしく水の龍。レベル8の最上級モンスターではあるが、そのステータスは驚異的ではない……が。むしろ吹雪さんの目的は、そのモンスターを二体フィールドに揃えることではないか。
「さらに《幻木龍》の効果。フィールドの水属性モンスターと、同じレベルとなる……二体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築!」
「……ッ!」
二体の龍のかみ合った効果を最大限に活かした、速攻で行われるエクシーズ召喚に舌を巻くと、《幻水龍》と《幻木龍》の姿が重なっていく。今吹雪さんが使っている力が、あのミスターTと同じものであるならば――エクシーズ召喚されるカテゴリーのモンスターは。
「雷鳴よ轟け! 稲光よ煌めけ! 顕現せよ、我が金色の龍! 《No.46 神影龍ドラッグルーオン》!」
――やはり降臨する《ナンバーズ》。金色の雲を纏いながら、その神々しい姿を顕現させると、雄々しい雄叫びがフィールドに轟いた。
「そしてドラッグルーオンの効果を発動! 自分フィールドにこのカード以外のモンスターがいない時、手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚できる! 現れろ、《真紅眼の黒竜》!」
その雄叫びに呼応するかの如く、さらに吹雪さんの十八番こと《真紅眼の黒竜》がフィールドに降り立つと、最上級ドラゴン族二体がちっぽけな俺を睥睨する。まだ後攻一ターン目にもかかわらずその布陣は、吹雪さんが本気だということを感じさせた。
「くっ……」
「さあ、一気にいくぞ遊矢くん……《真紅眼の黒竜》でセットモンスターに攻撃! ダーク・メガ・フレア!」
俺がその威圧感にたじろいでしまう間にも、吹雪さんは自身のエースモンスターに対して攻撃を命じる。真紅眼の黒竜から放たれた火球に、俺が伏せていたセットモンスター――《ガントレッド・ウォリアー》は一瞬にして破壊されてしまう。
「さらにドラッグルーオンでダイレクトアタック! 火炎神激!」
「リバースカード、オープン! 《くず鉄のかかし》! その攻撃を無効にする!」
どんなものでも焼き尽くしてしまいそうな火炎放射は、しかして、くず鉄で作られたかかしに防がれる。《くず鉄のかかし》が何とか攻撃を防いでくれると、その効果によって再びセットされる。
「僕は……カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」
「……俺のターン、ドロー!」
《くず鉄のかかし》で何とか防ぐことが出来たが、次のターンまでに対策をしないような相手ではない。まずは降臨したナンバーズ……あのモンスターを何とかしなくては、今の調子では何も始まらない。
「俺は《マッシブ・ウォリアー》を召喚!」
召喚されるは要塞の機械戦士。ステータスは下級モンスター水準ではあるが、その効果のために攻撃表示でも問題はない。むしろ、そうでなくては問題である程に。
「さらに通常召喚に成功したことにより、このモンスターは特殊召喚できる! 来い、《ワンショット・ブースター》!」
自身の効果によって、黄色いミサイルを積んだ機械族が特殊召喚される。こちらの常套手段でもあったその二体に、吹雪さんから目的は明白だろうが……
「バトル! 《マッシブ・ウォリアー》でドラッグルーオンに攻撃!」
当然、その戦闘の結果は分かりきったものだったが、《マッシブ・ウォリアー》は戦闘ダメージを受けない。さらに一度だけ破壊されない効果も併せ持ち、ドラッグルーオンの火炎放射も盾を構えて防ぎきった。
「メインフェイズ2、《ワンショット・ブースター》の効果を発動! このカードをリリースすることで、戦闘を行って破壊されていない相手モンスターを破壊する!」
《ワンショット・ブースター》が2つのミサイルを発射すると、ドラッグルーオンは何の抵抗もなくミサイルに直撃、爆発する――が、無傷のままだ。よく目を凝らして見据えると、ドラッグルーオンの前に透明の壁のようなものが展開していて。
「僕は永続罠《ナンバーズ・ウォール》を発動した。このカードがある限り、ナンバーズはナンバーズでしか倒せない」
「あの罠か……」
十代とミスターTのデュエルの際にも使われていた、ナンバーズに強固な体勢を付与する《ナンバーズ・ウォール》。十代は《ナンバーズ・ウォール》自体を破壊することで対処したが、今の俺の手札に永続罠を破壊できるカードはない。
「カードを一枚伏せて……ターン、終了」
「僕のターン、ドロー」
結局、《ナンバーズ・ウォール》に攻撃を防がれた俺に出来ることは、もう一枚カードを伏せるだけ。戦闘破壊耐性を持つ《マッシブ・ウォリアー》に、一度だけ攻撃を無効にする《くず鉄のかかし》を含めた二枚のリバースカード。防御の布陣を整えたように見えたものの。
「僕は《ミラージュ・ドラゴン》を召喚し、バトルに入る。ミラージュ・ドラゴンでマッシブ・ウォリアーに攻撃! ミラージュ・クラッシュ!」
「リバースカード――!?」
ドラッグルーオンの影から召喚されるは、下級ドラゴン族モンスター《ミラージュ・ドラゴン》。その金色の爪をもって《マッシブ・ウォリアー》を切り裂く前に、伏せてあった《くず鉄のかかし》を発動しようとするも――《ミラージュ・ドラゴン》が一にらみするだけで、《くず鉄のかかし》が石化されたように動きを封じられる。
「《ミラージュ・ドラゴン》がいる時、お互いにバトルフェイズ中に罠カードは発動出来ない。よって《くず鉄のかかし》は無効にさせてもらう」
「……だが、《マッシブ・ウォリアー》は一度だけ破壊されず、ダメージも受けない!」
《くず鉄のかかし》を封じられた俺は、せめてもの抵抗として《マッシブ・ウォリアー》の効果を宣言する。その言葉に違わず《マッシブ・ウォリアー》は《ミラージュ・ドラゴン》の爪を耐えきるが、吹雪さんのフィールドにはまだ二体のモンスターが残っている。
「だが耐えられるのも一度だけだ。《真紅眼の黒竜》で攻撃、ダーク・メガ・フレア!」
続いて攻撃してくる《真紅眼の黒竜》の攻撃を防ぐことは出来ず、先の《ガントレット・ウォリアー》のように、《マッシブ・ウォリアー》もその盾ごと砕け散る。……そして無防備となった俺を、ドラッグルーオンは見据えていた。
「……ドラッグルーオンでダイレクトアタック。火炎神激!」
「ぐぁぁぁっ……!」
遊矢LP4000→1000
今度は攻撃を防ぐことは出来ず直撃し、俺のライフは一気に1000ポイントにまで落ち込んでしまう。……いや、それ以上に。地獄の業火のような火力を持ったソレは、俺の身体と精神を焼いていく。
「ぁぁあ……ぐっ……!」
「……遊矢くん。ダークネスの力を借りて、分かったことが一つある」
未だに苦しむ俺に対して、吹雪さんは優しく語りかけてきた。ダークネスとしてではなく……天上院吹雪という一人の先輩として。
「普段僕には感じられない精霊というのも、今の僕になら感じられる。君のデッキが……今、羽化直前の蝶のような気配だ」
俺のデュエルディスクに挿入されたデッキ――【機械戦士】たちを指差しながら、吹雪さんはそう語る。
「異世界で君をそんな目に遭わせて……機械戦士たちも君と同じように、力を望んだんだ。今まで力を蓄えた休眠状態になって、君の呼びかけに答えないほどに」
「休眠状態……?」
信じられない、という目線で俺も機械戦士たちを見る。こんな時、つくづく精霊の存在を感じることの出来ない自分が恨めしい。【機械戦士】たちが変わる必要はない、俺の実力が足りないだけだというのに。
「その休眠状態を目覚めさせるには……相棒である、君の呼びかけだけだろう」
「相棒……相棒、か……」
――そう呟いた後、ドラッグルーオンの炎を振り払って立ち上がる。三体のドラゴンたちに恐れず立ち向かい、【機械戦士】たちが入ったデュエルディスクを掲げる。
「そんな気遣いさせて悪かったな……一緒に戦ってくれ、相棒!」
その呼びかけとともにデッキが金色に輝き――いや、その光は一瞬で収まった。まるで気のせいだったかのように。……だが、聞こえる。
「みんな……」
デッキの声が聞こえる。あの異世界での死闘を乗り越えて、無力感に苛まれたのは自分だけではない。それは【機械戦士】も同じであり、これからは生まれ変わった新生機械戦士――
「……どうやら、一皮むけたようだ。僕はこれでターンエンド」
「いや、エンドフェイズにリバースカード、《奇跡の残照》を発動! このターン破壊された《マッシブ・ウォリアー》を、守備表示で特殊召喚する!」
《ミラージュ・ドラゴン》が妨害するのは、あくまでバトルフェイズ中の罠カードの発動のみ。それ以外のフリーチェーンの罠カードの妨害は出来ず、《奇跡の残照》の効果によって《マッシブ・ウォリアー》が復活する。
「俺のターン、ドロー!」
エンドフェイズの巻き戻しが起こるものの、吹雪さんがそのままターンエンドを選んだことで、俺のターンへと移行する。フィールドには《マッシブ・ウォリアー》と《くず鉄のかかし》、吹雪さんのフィールドには《No.46 神影龍ドラッグルーオン》に《真紅眼の黒竜》、《ミラージュ・ドラゴン》に《ナンバーズ・ウォール》が控えている。
「俺は魔法カード《ブラスティング・ヴェイン》を発動! 俺のフィールドのセットカードを破壊し、カードを二枚ドローする!」
《ミラージュ・ドラゴン》の高い妨害効果によって、使用不可も同然となった《くず鉄のかかし》を破壊しながら、魔法カード《ブラスティング・ヴェイン》の効果によって二枚のカードをドローする。吹雪さんのフィールドの《ナンバーズ・ウォール》は既に発動しているため、《ミラージュ・ドラゴン》の効果の対象外なのがズルいところだ。
「さらに速攻魔法《手札断殺》! お互いにカードを二枚捨てて二枚ドロー!」
――そして新生した機械戦士の先陣を切るのは、やはりこのモンスターでなくてはならない。
「墓地に送ったカードは《リミッター・ブレイク》! デッキから《スピード・ウォリアー》を特殊召喚できる! 守備表示で現れろ、マイフェイバリットカード!」
『トアアアッ!』
守備表示での登場となったものの、勇猛な叫びとともにフィールドへ降り立つ。その登場は、さらなる仲間への布石となりて。
「守備表示のモンスターが二体のみの時、このモンスターは特殊召喚できる! 現れろ、《バックアップ・ウォリアー》!」
特異な召喚方法を持った重火器で武装した機械戦士が、守備表示の《スピード・ウォリアー》と《マッシブ・ウォリアー》がいることでその召喚条件を満たし、三体のドラゴン族の前に立ち向かう。このままでは下級モンスターである《ミラージュ・ドラゴン》しか破壊できないが、機械戦士にはまだ手段はある。
「さらに通常魔法《アームズ・ホール》を発動! デッキトップを墓地に送り、デッキから装備魔法《デーモンの斧》を装備し、そのまま《バックアップ・ウォリアー》に装備!」
デッキか墓地から装備魔法を手札に加えることが出来る、という優秀な魔法カード《アームズ・ホール》。ただし発動にはデッキトップを一枚墓地に送ることと、そのターンの通常召喚を封じなくてはならない。だが、《スピード・ウォリアー》も《バックアップ・ウォリアー》も特殊召喚――問題なく発動され、《デーモンの斧》は《バックアップ・ウォリアー》に力を与え、その攻撃力を1000ポイントアップさせる。
よって攻撃力は3100ポイント。吹雪さんのフィールドにいる最強のモンスター、《No.46 神影龍ドラッグルーオン》の攻撃力を僅かながら超える。
「だが《ナンバーズ・ウォール》がある限り、ドラッグルーオンは破壊されない!」
「ああ。だからまだだ! 俺は墓地から罠カードを発動!」
その宣言とともに俺のフィールドの《スピード・ウォリアー》と《マッシブ・ウォリアー》の二人が、そのエネルギーを《バックアップ・ウォリアー》に与えていく。さらにその力は《バックアップ・ウォリアー》だけでなく、フィールド全域に伝わっていくと、吹雪さんのドラゴン族を汚染していく。
「墓地の罠カード……《ミスディレクションの翼》は、このカードとモンスター二体を除外することで、相手フィールドの効果を無効にし、モンスター一体の攻撃力を800ポイントアップさせる!」
自分のモンスターを二体除外する、というとてつもないデメリットはあるものの、その効果は《サイバー・ブレイダー》第三の効果に匹敵するもの。さらに自分のモンスター一体――つまり、バックアップ・ウォリアーの攻撃力を800ポイントアップさせる効果もある。
「これで《ナンバーズ・ウォール》の効果は切れた! バトルだ、《バックアップ・ウォリアー》!」
《スピード・ウォリアー》と《マッシブ・ウォリアー》、除外された二人の力を借りた罠カードの効果が発動し、《ナンバーズ・ウォール》の効果が発動する。加えて攻撃力3900にまで達したバックアップ・ウォリアーが狙うは、先程まで永続罠に守られていたナンバーズ、ドラッグルーオンだ。
「《バックアップ・ウォリアー》でドラッグルーオンに攻撃! サポート・アタック!」
両手と両肩に背負った重火器の一斉射撃に、ドラッグルーオンは蜂の巣と形容するのが相応しいこととなる。……いくら神秘の竜であろうと、破壊されるだけのダメージを与えられれば、当然破壊されるだけだ。
「……やるな」
吹雪LP4000→3100
あくまでドラッグルーオンは駒の一つなのか、破壊されても特に動揺を見せることはなく。それでも、ようやく少しばかりのダメージを与えられた。
「カードを一枚伏せて、ターンを終了!」
「僕のターン、ドロー!」
この瞬間、《ミスディレクションの翼》の効果は途切れ、吹雪さんのフィールドの効果は復活する。また、《バックアップ・ウォリアー》も《デーモンの斧》による強化分のみとなった。
「僕は《マジック・プランター》と《七星の宝刀》を発動。《ナンバーズ・ウォール》と《真紅眼の黒竜》をそれぞれコストに、四枚のカードをドローする」
永続罠とレベル7モンスター、それぞれをコストにすることで二枚ドローを果たす魔法カードが発動し、吹雪さんはフィールドを犠牲に四枚のドローを果たす。結局《ミラージュ・ドラゴン》以外のカードはなくなり、まるでデュエルは仕切り直しだ、といっているようでもあった。
「そしてこのモンスターは、ドラゴン族モンスターを除外することで、特殊召喚できる!」
吹雪さんがドローしたカードの中で手に取ったのは、再び切り札クラスの雰囲気を纏ったカード。《ミラージュ・ドラゴン》が先のターンでのこちらのモンスターのように除外され、その姿をフィールドに現した。
「現れろ! 《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》!」
かつてダークネスとなった吹雪さんと戦った際に切り札だった、真紅眼がダークネスの力を得た姿。それが一部機械化したように金属で覆われており、銀色の装甲を煌めかせていた。
「《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》は、一ターンに一度、手札か墓地のドラゴン族を特殊召喚できる。雷光とともに蘇れ、《No.46 神影龍ドラッグルーオン》!」
その効果は、奇しくもドラッグルーオンと同じような効果であり、再び俺のフィールドにドラッグルーオンが現れる。《ナンバーズ・ウォール》が《マジック・プランター》によってリリースされたのが不幸中の幸いだったが、これではどちらかを残せば永遠にどちらかを復活させられ――
「いや……」
――蘇生されたドラッグルーオンには、エクシーズモンスターが効果を発動するために使う、オーバーレイ・ユニットがない。ならばその効果は発動出来ず、今はバニラモンスターに等しいのではないか。
「……よし」
「さらに速攻魔法《サイクロン》により、《デーモンの斧》を破壊する!」
そうエクシーズモンスターについて仮説を立てていると、吹雪さんが発生させた旋風に《デーモンの斧》が破壊され、その攻撃力が元々の攻撃力に戻ってしまう。
「バトル! 《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》で、《バックアップ・ウォリアー》に攻撃! ダークネスメタルフレア!」
《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》の攻撃力は、3000の大台には届かないものの2800とそれに迫る。さらに2100の《バックアップ・ウォリアー》を破壊するには、それでも充分すぎるほどで。
「リバースカード、《マジカルシルクハット》を発動!」
それに自分のライフポイントは僅か1000ポイント。これ以上ダメージを受けるわけにはいかず、フィールドに現れた三つのシルクハットの中の一つに、《バックアップ・ウォリアー》は守備表示となって身を隠す。
「シルクハットか……レッドアイズ、そのまま攻撃だ!」
強化された黒い炎がシルクハットを焼き尽くすものの、そこはもぬけの空でしかなく。《バックアップ・ウォリアー》がいた証は見られない。
「ならばドラッグルーオンで攻撃! 火炎神激!」
先のターンで俺を焼き尽くした一撃が、今度はシルクハットに向かって浴びせられる。当たるかどうかは五分五分の可能性の中、ドラッグルーオンが放ったシルクハットから――
「破壊されたのは罠カード《フライアのリンゴ》。セットされたこのカードが破壊された時、一枚ドロー出来る」
――ではないシルクハットから、身を隠していた《バックアップ・ウォリアー》が無事な姿を見せる。代わりにシルクハットの中に仕込まれていた罠カードは、破壊された際にカードを一枚ドローさせる《フライアのリンゴ》。
「くっ……こちらもカードを一枚伏せ、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!」
二体のドラゴンからの猛攻を何とか凌ぎつつ、俺はそれらを排除せんと新たなカードに手をかける。
「俺はチューナーモンスター、《音響戦士ドラムス》を召喚する」
「音響戦士……だと」
今まで俺のデッキに入っていなかった、新たなウォリアー――機械族の戦士に対して、吹雪さんは少し眉をひそめる。機械戦士たちが、あくまで元の形を維持したまま、進化した証のモンスターであるが……今はまだ、その力を見せる時ではないらしい。
「レベル5の《バックアップ・ウォリアー》に、レベル2の《音響戦士ドラムス》をチューニング!」
《バックアップ・ウォリアー》はシンクロ召喚に関するデメリット効果を持ってはいるが、あくまでその効果は《バックアップ・ウォリアー》を特殊召喚したターン時のみ。一ターン経過した今なら問題はなく、二体のモンスターは星になっていく。
「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワー・ツール・ドラゴン》!」
黄色の装甲を装備した機械竜が、雄叫びを上げながらシンクロ召喚される。同じドラゴンだからか、吹雪さんのフィールドにそびえる二体のドラゴンを威嚇しながら、対抗するように飛翔する。
「パワー・ツール・ドラゴンの効果を発動! デッキから三枚の装備カードを裏側で見せ、相手が選んだカードを手札に加える! パワー・サーチ!」
デッキから飛び出した三枚のカードを受け取ると、吹雪さんに選ばせるために裏側表示のカードが見せられ、その中の一枚が俺の手札に加わることとなる。選んだ装備魔法は《ダブルツールD&C》、《魔導士の力》、そして――
「……右のカードだ」
「選ばれた装備魔法、《団結の力》を《パワー・ツール・ドラゴン》に装備し、バトルフェイズ!」
自分フィールドのモンスターの数×800ポイント、装備モンスターの攻撃力をアップさせる装備魔法《団結の力》が選ばれる。俺のフィールドには《パワー・ツール・ドラゴン》が一体のみだが、それでも攻撃力は3000を超える。……どの装備魔法を選んでいようと、その結果自体は変わらなかったが。
「《パワー・ツール・ドラゴン》で、《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》に攻撃! クラフティ・ブレイク!」
「レッドアイズ……!」
吹雪LP3100→2800
ダークネスの力を使った切り札とは思えぬほどに、あっさりと《パワー・ツール・ドラゴン》の一撃のもとに沈む。特殊召喚効果は確かに厄介ではあったが、その単純なステータス自体はあまり脅威的ではなかったらしい。
「カードを二枚伏せ、ターンエンド」
「私のターン、ドロー!」
これで俺のフィールドには《団結の力》を装備した《パワー・ツール・ドラゴン》に、リバースカードが二枚でライフポイントはちょうど1000ポイント。対する吹雪さんのフィールドは、オーバーレイ・ユニットがない《No.46 神影龍ドラッグルーオン》、リバースカードが一枚、ライフポイントは2800。
こちらのライフポイントが低い以外は、どちらもエースモンスターを展開して、状況は互角……というところか。しかしてあのナンバーズが、このまま何もしないとは思えない。
「私は《オーバーレイ・リジェネート》を発動! このカードは発動後、エクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットとなる!」
エクシーズモンスターはオーバーレイ・ユニットがなくては、その真の効果を発揮することは出来ない。わざわざ補充する専用の魔法カードがあることから、その仮説自体は合っていたようだが、ドラッグルーオンのユニットが回復されてしまう。
「ドラッグルーオンの効果発動。オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚する! 現れろ、《魂食神龍 ドレイン・ドラゴン》!」
「なっ……!」
先に《真紅眼の黒竜》を特殊召喚した時のように、ドラッグルーオンはオーバーレイ・ユニット一つを代償にしながら、その雄叫びで新たなドラゴンを呼ぶ。そして特殊召喚されたドラゴンの攻撃力は――4000。何の効果も発動した様子もなく、ただ基本的なステータスは4000なのだ。
「ドレイン・ドラゴンはエクシーズモンスターの効果でのみ、特殊召喚できる。バトルだ、ドレイン・ドラゴンで《パワー・ツール・ドラゴン》に攻撃!」
《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン》を破壊したことで、ドラッグルーオンの効果の発動条件を満たし、圧倒的ステータスを持つが運用に難があるドレイン・ドラゴンを特殊召喚する。ずいぶんあっけなく破壊された、などと思ったレッドアイズの破壊は、ただ吹雪さんに誘われていただけだった。
レッドアイズすら囮にした、吹雪さんの必殺の策。その事実に気づいた直後に、ドレイン・ドラゴンの爪が《パワー・ツール・ドラゴン》を襲った。
「……ッ!」
遊矢LP1000→100
まさに首の皮一枚繋がった。そして《パワー・ツール・ドラゴン》には、装備魔法を身代わりに破壊を免れる効果がある――が、《団結の力》を身代わりにしてしまえば、《パワー・ツール・ドラゴン》の攻撃力はドラッグルーオンのものを下回る。そうなってしまえば、ドラッグルーオンの追撃で俺のライフポイントは尽きる。だが、効果を発動しないというのはもってのほかで。
そんな詰みだと突きつけられたような状態で、俺が選んだ選択は――何もしないこと。何故なら、《パワー・ツール・ドラゴン》は、傷一つついてはいないのだから。
「あれは!」
吹雪さんがその状況に気づく。そう、ドレイン・ドラゴンと《パワー・ツール・ドラゴン》の間に現れ、その攻撃を一身に受けていた盾の機械戦士の雄志を。
「墓地の《シールド・ウォリアー》を除外することで、戦闘による破壊を無効に出来る!」
《アームズ・ホール》によって墓地に送られていた、墓地から仲間を守る盾の機械戦士の効果を宣言すると、除外されてフィールドから消えていく。その働きにより《パワー・ツール・ドラゴン》は無傷と、《団結の力》は健在かつ破壊もされることはない。
「……メイン2。ドラッグルーオンを守備表示にし、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー! まずは《パワー・ツール・ドラゴン》の効果発動、パワー・サーチ!」
攻撃力が《パワー・ツール・ドラゴン》に勝てないと、守備表示となるドラッグルーオンを前に――それでも守備力3000を誇っているが――《パワー・ツール・ドラゴン》は、再びその効果を発動する。
「俺は《パワー・ツール・ドラゴン》に、装備魔法《ブレイク・ドロー》を装備し、バトルフェイズ!」
その効果によって手札に加えられた装備魔法を、パワー・ツール・ドラゴン自身に装備しながらも、俺はバトルフェイズへと移行する。だが、ただ攻撃する訳ではなく――そもそも今のままではドレイン・ドラゴンには適わない――伏せていた二枚のリバースカードのうち、一枚をこのタイミングで発動する。
「さらにリバースカード《奇跡の軌跡》を発動! 相手にカードを一枚ドローさせ、戦闘ダメージを与えられない代わりに、モンスターに二回攻撃と1000ポイントの攻撃力を付与する!」
「ドレイン・ドラゴンの攻撃力を越えたか!」
吹雪さんの言った通りに、《奇跡の軌跡》は《パワー・ツール・ドラゴン》の攻撃力を1000ポイントアップさせ、またも僅か100ポイントだがドレイン・ドラゴンの攻撃力を超える。さらに二回攻撃も付与されたため、守備表示のドラッグルーオンも逃さない。
「バトルだ、パワー・ツール! ドレイン・ドラゴンに攻撃、クラフティ・ブレイク!」
ただしその効果の代償として、《奇跡の軌跡》を発動しては戦闘ダメージを与えられない。……だが、ダメージを与える方法ならば存在する。
「速攻魔法《旗鼓堂々》を発動! 墓地から装備魔法を選び、モンスターに装備できる! 俺はドレイン・ドラゴンに、墓地から《ニトロユニット》を装備!」
「《ニトロユニット》だと!?」
突如としてドレイン・ドラゴンにの胸元に、ニトロが満載された爆薬が装備される。その効果は、装備モンスターが破壊された時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える――というもの。ドレイン・ドラゴンの攻撃力は4000、その高い攻撃力は存分に利用されることとなった。
「いつのまに《ニトロユニット》を……《アームズ・ホール》で落としたカードは、《シールド・ウォリアー》だった……」
「シルクハットの中に隠しておいたんだ」
その一言で吹雪さんは《ニトロユニット》の出所に気づく。確かに《手札断殺》や《アームズ・ホール》で墓地に送ったカードは使いきり、もはや吹雪さんにとって俺の墓地に未知のカードはない筈だった。
しかしデッキから魔法・罠カードを二枚、間接的にだが墓地に送れる《マジカルシルクハット》ならば。破壊された際に一枚ドローする《フライアのリンゴ》とともに、《ニトロユニット》は破壊され墓地に送られていた。
それを墓地の装備魔法を装備させる速攻魔法《旗鼓堂々》が回収し、今……《ニトロユニット》は、《パワー・ツール・ドラゴン》によって起爆された。
「《ニトロユニット》の効果発動! 破壊されたドレイン・ドラゴンの攻撃力分のダメージを与える!」
「――墓地から《ダメージ・ダイエット》の効果を発動! 効果ダメージを半分にする……!」
過去最大級の《ニトロユニット》の爆発がフィールドを覆い尽くす前に、吹雪さんの周囲に半透明のバリアが張られていく。墓地から発動された《ダメージ・ダイエット》は、効果ダメージを半分にする効力がある。
「……うぐっ!」
吹雪LP2800→800
それでもダメージは甚大であり、遂に吹雪さんのライフもギリギリにまで追い込まれ――そのダークネスの力を司る仮面に、ピシリとヒビが入った。壊れることはなかったものの、一目で修復不能と分かるほどのヒビだった。
「さらに装備魔法《ブレイク・ドロー》の効果。装備モンスターが相手モンスターを破壊した時、カードを一枚ドローする。さらに二回目の攻撃、クラフティ・ブレイク!」
さらに《奇跡の軌跡》の効果によって、《パワー・ツール・ドラゴン》は二回目の攻撃を可能とする。《ナンバーズ・ウォール》もなく、守備表示となったドラッグルーオンは、攻撃力を上げた《パワー・ツール・ドラゴン》の前に再び破壊された。
「そして《ブレイク・ドロー》の効果により、さらに一枚ドロー……ターンエンド」
「……期待通りだね、遊矢くん」
《奇跡の軌跡》の二回攻撃と《ブレイク・ドロー》により、出来るだけ手札を補充していると、今までダークネスの時のような口調だった吹雪さんが少し優しい声色に戻る。
「吹雪さん……」
「たまには僕も亮みたく、年長らしくしないとね……さあ最後だ。止めてみせろ! 僕のターン、ドロー!」
吹雪さんのおかげで俺はこの世界に帰りたいと、守りたいと再認識することが出来た。【機械戦士】たちと再び心を通わせることが出来た。そんな吹雪さんが最後の攻撃だと宣言し、カードをドローする。
「僕はリバースカード《闇次元の解放》を発動! 除外されている闇属性モンスターを特殊召喚する! 来い、《真紅眼の黒竜》!」
デュエル序盤で魔法カード《七星の宝刀》のコストとなり、除外されていた吹雪さんのエースカードが、《闇次元の解放》により再びフィールドに舞い戻る。今まで様々なドラゴンが特殊召喚されてきたが、やはりその竜が最も力強く。
「さらに魔法カード《黒炎弾》を発動! 《真紅眼の黒竜》の攻撃力分のダメージを与える!」
「それは通さない! カウンター罠《ダメージ・ポラリライザー》!」
吹雪さんが誇る最強のバーンカードたる《黒炎弾》。それに対抗するため、ずっと伏せられたままだったリバースカードがようやく開かれ、《黒炎弾》が発射される前に食い止める。
「効果ダメージを無効化し、お互いにカードを一枚ドローする」
「何かと思えば、亮のカードじゃないか。懐かしいな……」
感傷に浸るのは少しの間だけ。以前トレードした亮のカードをしばし懐かしむと、吹雪さんはさらなるモンスターを呼び出した。
「なら《真紅眼の黒竜》をリリースし、《真紅眼の闇竜》を特殊召喚する!」
真紅眼にダークネスの力が注ぎ込まれていき、本来ありえない強化形態へと進化を果たしていく。ステータスは一見変わらないように見えるが、その効果は攻撃的な効果へと進化していた。
「《真紅眼の闇竜》は墓地のドラゴン族×300ポイント攻撃力をアップさせる。よって、攻撃力は5500!」
吹雪さんの墓地に送られたドラゴン族は7体。よって攻撃力は2100ポイントアップし、遂にその攻撃力にまで達する。《パワー・ツール・ドラゴン》と言えども、その一撃をくらえばひとたまりもない。
「だからまだ最後じゃない……俺は《エフェクト・ヴェーラーの効果を発動!」
そんな闇に墜ちた怒れる竜に対して、エフェクト・ヴェーラーは優しく包み込む。手札から捨てることで、相手の効果を一時的にだけ無効化するそのカードにより、《真紅眼の闇竜》は元々の攻撃力へと戻っていく。
「カードを一枚伏せてターンを終了しよう。この瞬間《エフェクト・ヴェーラー》の効果は切れ、《真紅眼の闇竜》の攻撃力は上昇する!」
「俺のターン……ドロー! 《パワー・ツール・ドラゴン》の効果を発動する!」
《エフェクト・ヴェーラー》のおかげで助けられたが、それもあくまで時間稼ぎにしか過ぎない。再び《真紅眼の闇竜》の攻撃力は上昇し、状況の打開を賭けて《パワー・ツール・ドラゴン》の効果を発動する。
「真ん中のカードにしようか」
「真ん中のカードは……《魔界の足枷》! 俺は《真紅眼の闇竜》にこのカードを装備する!」
《パワー・ツール・ドラゴン》の効果は当たりを引き――吹雪さんが選んだのだからハズレか――装備モンスターの攻撃力を、強制的に100ポイントに固定してしまう装備魔法、《魔界の足枷》が《真紅眼の闇竜》に発動される。
「リバースカード、オープン! 《魔法反射装甲・メタルプラス》!」
吹雪さんのフィールドに伏せられた最後のリバースカード、《魔法反射装甲・メタルプラス》を発動すると、《真紅眼の闇竜》は銀色の装甲に包まれる。まるで先の《レッドアイズ・ダークネス・メタルドラコン》のようなソレに、装備しようとした《魔界の足枷》は無効化されてしまう。
「確か前は、その装備魔法にやられたんだったね……《魔法反射装甲・メタルプラス》は、発動後装備カードとなり、装備モンスターへの魔法効果を無効にし、ついでに攻撃力を300ポイントアップだ」
言われてみれば前回のデュエルでも、高攻撃力を保っていた《真紅眼の闇竜》を《パワー・ツール・ドラゴン》の効果でサーチした、《魔界の足枷》を使った一撃がフィニッシュだったか。特に意識したつもりではなかったが、以前通じた手はもはや通じることはなく。
《魔界の足枷》……いや、《魔界の足枷》だけでなく、《真紅眼の闇竜》を対象とする魔法カードが無効にされた今、《真紅眼の闇竜》をどうすることも出来ない。幸いなことに《パワー・ツール・ドラゴン》はその効果で破壊耐性がある、守備表示にして耐えるしかこのターンはないか……
「ライフ・ストリーム・ドラゴン……?」
……そう思った時、エクストラデッキから呼ばれた気がした。《パワー・ツール・ドラゴン》の中で解放を待つ竜、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の声が。
「よし……頼む! 装備魔法《リビング・フォッシル》を発動! 墓地から《エフェクト・ヴェーラー》を特殊召喚する!」
墓地のモンスターの効果を無効化し、さらに攻撃力を1000ポイント下げることで特殊召喚する、装備魔法《リビング・フォッシル》。さらに装備されたこのカードが破壊された時、装備モンスターも破壊されてしまうが、それらのデメリットには何の意味もない。
「さらにレベル7の《パワー・ツール・ドラゴン》を、レベル1の《エフェクト・ヴェーラー》にチューニング!」
装備魔法で強化された《パワー・ツール・ドラゴン》の装甲を、《エフェクト・ヴェーラー》はクルクルと回って解き放っていく。炎を伴って飛翔するドラゴンには、もはや余計な機械など装着されていなかった。
「集いし命の奔流が、絆の奇跡を照らしだす。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」
《パワー・ツール・ドラゴン》が《エフェクト・ヴェーラー》の力を借りて、その真の力を取り戻す。さらに飛翔したそこから、俺に対してエネルギーを与えていく。
「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》がシンクロ召喚された時、俺のライフを4000にする! ゲイン・ウィータ!」
たった100ポイントだった俺のライフポイントが、一瞬にして初期ライフへと復帰する。ただしその効果は、このデュエルでは対して意味を成すものではない。何故なら……このターンで終わらせるからだ。
「さらに――《スピード・ウォリアー》を召喚!」
そしてやはり呼び出されるのは、吹雪さんの《真紅眼の黒竜》がそうであったかのように、俺にとってこの局面で現れるべきモンスター。マイフェイバリットカードたる《スピード・ウォリアー》が、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》とともに並び立つ。
――そして、一枚の魔法カードを手に取った。
「これが、機械戦士たちの決意の証! 魔法カード《ヘルモスの爪》を発動!」
「来るか……」
新たに【機械戦士】たちに加えられた魔法カードが発動し、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が光に包まれる。装備魔法で強化されていた《パワー・ツール・ドラゴン》を素材にしてまで、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》をシンクロ召喚したのはこれが理由。《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の声に従って、俺は《ヘルモスの爪》の効果を起動する。
「《ヘルモスの爪》は発動後、モンスターと融合し、新たな装備カードとして生まれ変わる!」
「融合?」
吹雪さんの疑問の声とともに、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が《ヘルモスの爪》と融合していき、その身体を変形させていく。雄々しくも美しい羽を持ったドラゴンから、鋭い刀身を輝かせる一振りの剣へと。
「融合召喚! 《真紅眼の黒竜剣》!」
対戦相手が吹雪さんだったからか――融合召喚された装備カードは、黒炎を纏った紫色の刃。フィールドに残っていた《スピード・ウォリアー》が、宙に浮かんでいたその剣を手に取った。
「《真紅眼の黒竜剣》は融合召喚された後、他のモンスターの装備カードとなり、攻撃力を1000ポイントアップさせる。さらに、お互いのフィールドと墓地のドラゴン族×500ポイント、攻撃力をアップさせる!」
その効果は偶然にも《真紅眼の闇竜》の効果と似通ったものであり、吹雪さんの墓地に溜まったドラゴン族の力を借り、さらに《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と《真紅眼の闇竜》の分も加算される。その上昇量は《魔法反射装甲・メタルプラス》と自身の効果を加えた、《真紅眼の闇竜》の攻撃力を真正面から超える。
「バトル! 《スピード・ウォリアー》は攻撃時、元々の攻撃力は倍になる! よってその攻撃力は……7300!」
「美しい剣だね……さあ来い、遊矢くん!」
吹雪さんのライフポイントを削りきるほどの攻撃力となった《スピード・ウォリアー》が、剣を持って《真紅眼の闇竜》へと疾走する。その脚力を持って飛翔するように跳躍すると、真正面から《真紅眼の闇竜》の炎を切り裂きながら剣を振りかぶる。
「《スピード・ウォリアー》で、《真紅眼の闇竜》に攻撃! 真紅剣一閃!」
振り上げた剣か《真紅眼の闇竜》を一閃に切り裂き、吹雪さんへとトドメを刺す。炎を撒き散らしながら破壊されていく《真紅眼の闇竜》を見ながら、吹雪さんもその閃光に包まれていった。
吹雪LP800→0
「吹雪さん!」
倒れた吹雪さんに走り寄ると、再びダークネスの仮面がカードとなって封印されていき、元の吹雪さんの顔が露わになる。
「ああ、すまないね……でも、もう一仕事頼みたいんだ」
「え?」
その吹雪さんの言葉が発せられた瞬間、落ちた《ダークネス》のカードが闇に包まれていく。すぐさまそこから吹雪さんを連れて離れていくと、独白は続いていく。
「僕たちの今のデュエルを介して、あちらの世界と繋がってしまった……ミスターTが来る……」
――奴らの名は、ダークネス。
後書き
何? デッキとは書き換えるものではないのか?
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