逆襲のアムロ
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17話 エアーズロックの死闘 3.7
前書き
すみません。シリアス過ぎて退屈かもしれませんが、
ティターンズの躍進やジオンの様々なことをやる上での布石となりますので
お付き合いくださいませ。
* トリントン基地 3.7 0:00
ブレックスは基地被害の報告をジャブロー本部へ通信していた。
モニターには地球連邦軍統合作戦本部長のジーン・コリニー元帥が映っていた。
「元帥閣下。申し訳ございません。敵の襲来によりガンダムが奪取され、基地内も多数の死傷者が出てしまいました」
コリニーは膝の上で飼っている愛猫のシャムネコをなでながら、ブレックスをねぎらった。
「そう落ち込むでない准将。敵が捕捉しきれなかったのも私の統率力の無さが露呈したことでもある。今は皆が足並み揃え挑まないとならん時なのに、味方同士で引っ張り合っている。残念なことだ」
コリニーは憔悴した感じでブレックスに語り掛けた。その様子にブレックスは察した。
「元帥の心痛お察し致します。ジオンが攻めてきたのは明白でありますので、アルビオン隊にはガンダム奪還を指令致しますが・・・」
「そうだな。それがよかろう」
「はい。シナプス大佐も元よりそう申しておりました。早速伝えます。では」
そう言うと、ブレックスは通信を切った。
* ジャブロー本部 コリニー私室 同時刻
コリニーはブレックスより切れた通信端末より別のところへ通信を繋げた。
「中々上手くいかないものだなジャミトフよ」
通信相手は宇宙にいるジャミトフ・ハイマンだった。
ジャミトフはトリントン基地が落ちなかったことについてコリニーに詫びた。
「申し訳ございません。手引きとしては充分ではあったと思ったのですが、予想外な事が起きたみたいです」
「ああ、あのカラバという秘密結社か・・・後ろにガルマ・ザビが暗躍していると聞く」
ジャミトフはコリニーの反応を待った。するとコリニーが語り始めた。
「・・・今は時が欲しいな。私の力でも今の連邦を一つに取りまとめるには困難だ。ガルマは議員として我々の上位にある。ことを構えるには危険すぎる・・・」
ジャミトフはコリニーの言葉を聞くと、「そうですか」と答えた。そしてコリニーはジャミトフにある計画に進捗について聞いた。
「あのグリーン・ノアの計画はどうなっている」
「はっ、バスクが仕上げに入っております。あと3ヵ月頂ければ期待通りの結果をご覧にいれましょう」
「そうか・・・2か月後ルナツーで観艦式が行う予定である。第2次ビンソン計画の集大成だということでワイアット大将が息を巻いておる」
「それは、それは・・・」
ジャミトフは少し笑い、そして再び表情を固めた。
「ワイアット提督には有終の美を飾っていただけそうで何よりです」
「ああ、全くだ」
ジャミトフの言葉を聞いたコリニーはそう述べ、愛猫を優しく撫でていた。
* オーストラリア上空 アルビオン艦橋 3.7 0:10
アムロは腕を組んで艦橋窓から見える夜空を眺めていた。
その姿にモンシアが近づいてきて話し掛けてきた。
「大尉。黄昏ておりますな。あんな死ぬかもしれなかった防衛戦で助かった奇跡にパアーッとやったりしないんですか?」
アムロはモンシアの陽気さに少し笑った。
「フフフ・・・中尉は良い人柄だな。そういうムードメーカーは隊には必要だ」
モンシアはアムロに褒められ、更に気分が乗った。
「そうでしょう。あのアナハイムのニナさん?結構美人ですな。それなのにあのコウとかいうヒヨっこ。アレにガンダムを任せるなんて・・・」
モンシアはコウに対して愚痴をこぼしていた。ガンダムはある意味連邦のシンボルであった。そのシンボルになった理由もアムロのアレックスの働きに他ならない。
アムロはため息を付いて、モンシアにこう伝えた。
「中尉。貴官の腕前はよく知っている。しかしながら貴官は兵器をおもちゃでしか見ていないようだ。ガンダムに乗るならば、その傲慢さを捨ててからにするんだな」
モンシアは赤面して、アムロが振り返りその場を立ち去ろうとするところを殴りかかるようなアクションだけを見せていた。その場にいた相棒のベイトとアデルはクスクスと笑っていた。
艦長席に立っていたバニングもその一通りの話を聞いていて、モンシアに語り掛けた。
「そうだな。レイ大尉の言う通りだモンシア。ガンダムに乗りたい、女にモテたいと思っている間はお前に新兵器など託せん。日々精進することだ。技量に劣るウラキの実直さを見習うんだな」
モンシアは長年付き合いの長い部隊長に言われると、「そうなのか・・・」と言って、落ち込んで一人アムロの居た位置で黄昏ていた。
* アルビオン艦内 格納庫 1:25
コウはガンダムの中で様々なシミュレーションをこなしていた。傍でニナが付きっ切りなっていた。
「そう、そのタイミングでレバーを入れるの」
「・・・なるほど。これでこうなるのか・・・」
互いに真面目にやっているのだが、傍から見ると仲睦ましいカップルのようだと眼下にいるキースとモーラが思っていた。
「あ~あ、コウはあんな美人に・・っと」
キースは学習していた。傍にモーラがいたからだ。何か下手のことを言うと締め上げられていた。
モーラもキースとのそう言うノリが楽しくて仕方なかった。むしろ下手打ってもらえないかと格納庫に来た時に期待をしていた。
「ウラキ少尉はホント真面目だね~。もう1時間も同じ訓練。飽きないね~」
「ああ、入った時からそうだよ。アイツはできないことを良く反復して克服するんだ。ただ、納得しないことには次に進まないとかで融通利かないときがあるんだけど・・・」
すると、ガンダムのコックピット辺りから喧嘩する声が聞こえてきた。
それを聞くとキースが「ほらね」とモーラに言った。
「だから、貴方のやり方じゃ全部こなすに時間がかかりすぎるのよ。こことここは飛ばして後でやればいいの!」
「そんなんじゃ、使い方も何もない!マニュアルは1から全てこなしてこそじゃないか!」
「この頭でっかち!」
「なんだとー」
ニナは「もう知らない」と言って、コックピットから離れ、リフトでモーラとキースの居るフロアに降りてきた。
「あんな頑固なひと初めてだわ!」
そうモーラたちに吐き捨てて、格納庫から出ていった。
コウはニナがいなくなっても夜通しマニュアルと格闘していた。
* オーストラリア内陸部 野営地 3:25
ガトーは数人の仲間と共に暖を取り、休息していた。
こういう戦場での憩いのひと時をガトーが大切に感じていた。
「こう、安らぐ時に今何かをしている自分を忘れることができる。そんな余裕を感じさせる」
部下のウォルフガング・ヴァール大尉がガトーを気遣った。
「少佐は色々役目が有り過ぎて、心配です。そう言う気持ちになるのは、失礼ながら荷が重いからではないですか?」
ガトーは少し笑った。
「そうだな。大義、大義と口には出すが、あのソロモンの砲撃を思い出す度に自分がよく分からなくなってくる」
「少佐・・・あれは少佐のせいではありません」
「分かってる。あの時私もドズル閣下と一緒であれば、こんな気持ちにはならなかっただろう」
ガトーはデラーズを尊敬していたが、デラーズが心酔するギレンへは懐疑的であった。ソロモンの時に知って放ったソーラレイ。ドズルが犠牲になった。あれが大義であるならばとガトーは感じていた。
「しかし、一兵士としてはギレン総帥のため。お役に立たねばならない」
ガトーはそうヴァールに言ったが、本当は自分に強く訴えたかったことだった。
* アルビオン艦橋 5:55
そろそろ夜明けが近づいてきて地平線が薄くオレンジ掛かってきた頃、シナプスの奸計により、艦内にジオンと通じるものがいることに気が付いた。
ニック・オービルである。
シナプスは前々よりあの包囲された基地やガンダムの強奪など、いくら連邦が一枚岩でないとはいえ、ここまで見事にやられるものではないと考えていた。つまり内通者の存在。それを疑った。
1名ずつ内緒で不在の間部屋を捜索したところオービルが黒だと判明したのであった。
それに気づいたオービルは格納庫よりコア・ファイターを奪取。アルビオンより逃走した。
それすらシナプスの張った罠ともオービルは気付かなかった。
「で、あのアナハイム野郎が目的地へご案内してくださるそうで」
艦橋にてパイロットが全員揃っていた。その中のモンシアがそう口にした。
オービルは必死にガトーの居るエアーズロックを目指していた。願わくば一緒に宇宙へ上げてもらおうと思っていた。
「こんなところで捕まっては、あの方に迷惑がかかる・・・というか殺される!」
そう口にした瞬間、オービルの視界が白くなった。
通信士のウィリアム・モーリス少尉がオービルの信号がエアーズロック付近で消滅したことに気が付いた。
「艦長。オービルがどうやら撃ち落とされた模様です」
それを聞いたシナプスは頷き、艦内に号令を掛けた。
「各員、第一種戦闘配備。敵はエアーズロックを根城としている可能性が高い!」
「了解!」
各パイロットらは格納庫へ走っていった。それをアムロは見送っていった。
シナプスはアムロを見て、話し掛けた。
「レイ大尉。我が隊はどうかね?」
アムロはシナプスの質問に回答した。
「ええ、実に士気が高い。艦内クルーへの艦長の信頼感が素晴らしく、そしてモビルスーツ隊はバニング大尉がしっかり手綱を握っています。申し分ありません」
「そうですか。しかし、何故オブザーバー参加したのですか?」
アムロは少し間と取り、答えた。
「月に向かわれると聞いたので。GP01ですか・・・アレの重力下実験の後、再びアナハイムに戻るそうで。ちょっと父にでも会おうかと」
「レイ博士にですか」
「ええ。先の戦いでアレックスを改修のため、月に預けています。父は持てる技術の集大成をそれに注ぐと躍起になっていまして、次いでシャアからある技術提供があったので、それを父に渡そうと」
するとアムロはポケットからある金属片と袋に入ったプロセッサーを出していた。
「なんですか、それは?」
「サイコフレームというものです。人の感応波に作用する代物です」
アムロはこの時代でもサイコフレームを触れる機会が来たことに複雑な心境だった。
「(この曰く付きがオレをこの時代へ変位させたのだろうか・・・)」
アムロは目を閉じ、過去、現在とその先に起こる読めない未来について思いを馳せていた。
* エアーズロック ジオン打上基地 6:30
HLVに搭載されたガンダムのガトーは既に宇宙への打上げを待っていた。
そこに敵襲の報がもたらされた。
「将軍!連邦の追跡部隊です。数6か7」
伝令の報告を聞いたノイエン・ビッター少将はガトーへ連絡を入れた。
「聞こえているとは思うが、君を宇宙へ送る計画に変更はない。全力でサポートする故、君も成すことだけに集中してくれ」
ビッターの決意に、ガトーは唇を噛みしめていた。
またここで味方が犠牲になる。しかも自分のために。居た堪れないながらも、自分の信ずる大義のためにとビッターに一言伝えた。
「お願いです。宇宙に上げてください」
「わかった。・・・その言葉だけで十分だ」
ビッターはその場を部下に任せて、自分もモビルスーツへ向かって行った。
アルビオンの追跡部隊の先方はアレンとコウだった。
その少し後方にベイト、モンシア、バニング。さらに後方でアデルとキースがガンキャノンで支援するという陣形であった。
もうすぐエアーズロックが目視できる地点に来たその時、アレンがコウに静止を求めた。
「少尉。ちょっと待て」
「なんですか、中尉」
「・・・この荒野・・・何かおかしい」
アレンは望遠で辺りを見回した。コウも見たが視界が良いので敵影は見えなかった。
コウは「前進しましょう」とアレンに提案した。しかし、アレンはそれを拒んだ。
「少尉。オービルは撃墜されたのだ。こんな何もない荒野で」
アレンはコウにそう伝えたが、コウは首を傾げていた。アレンは舌打ちをして、後方のバニングへ連絡した。
「大尉。前方何もないです」
その報告を聞いたバニングは後方のアデル達をバニングの位置まで呼びつけた。
アデルはバニングに質問をした。
「どうしましたか隊長」
「ああ、先方のアレンからの報告でエアーズロックを前にして何もないらしい」
そうバニングが伝えると、アデルは「なるほど」と言った。そしてアデルはバニングに提案をした。
「それでは、キース少尉と共に中距離砲で荒野を均しましょうか」
「そうだな。やってくれ」
バニングはアデルとキースに砲撃許可を与え、キースもアデルの言う方向へキャノン砲を連射した。
キースは疑問に思った。
「なんで、敵が見えないのに打つのですか?」
その問いにアデルは丁寧に答えた。
「敵が見えないということは敵が隠れているということです。先手必勝です。嘘でも、威嚇でも反応しないものなどいません」
そう言うと、レーダーに10数体のモビルスーツ反応が出てきた。
バニングは頷いて、全員に攻撃の号令を掛けた。
「よーし。敵が見えたぞ。各自ペアになって各個撃破し、敵陣を突破するぞ」
アレンとコウは先方のあぶり出てきたザクらをサーベルで斬り割きながら進軍して行った。
そのアレン達が仕留めそこなった分をモンシアとベイトが掃討し、バニングは単機で左を迂回して敵を駆逐、その援護にアデルとキースが砲撃をしていた。
アレンとコウがエアーズロックに辿り着くと、その巨大な岩の上からHLVが打ち上げられたのを目視で確認できた。
アレンはコウに叫んだ。
「少尉ー!お前のガンダムの推進力ならアレを仕留めることができるはずだー。飛べー!」
「了解です!」
コウはガンダムのバーニアをフルスロットルにして上空へ飛び上がった。そしてHLVをライフルの射程に収めた。
「・・・これで仕留める」
そうコウが思った瞬間、その射線に1機のザクが躍り出てきた。
エアーズロック頂上より飛び出したビッターのザクであった。
「貴様にやらせる訳にはいかない!」
「ああああ・・・」
急にカメラに入ってきたザクにコウは動揺した。空中にて、そのザクのヒートホークがコウのライフルを見事に両断し、コウを地面へ蹴り飛ばした。
「うわーっ!」
コウは慣性に従い、地面へ落下した。
そしてビッターは倒れたガンダムに止めをさそうとしてヒートホークを振り上げながら、ザクのバーニアをガンダムの方へ吹かした。
「とどめだ!」
ビッターがガンダムへ落下しながら斬りかかる瞬間、横からの砲撃でビッターのザクは四散した。
コウはその四散したザクを見ていた。
「コウ~、良かった~。生きてるか~」
狙撃したのはキースであった。キースの一撃がコウの窮地を救ったのであった。
ビッター将軍を失った発射基地は兵士たちが白旗を挙げ、アルビオンの追跡隊に降伏した。
降伏した者たちは捕虜として、アルビオンに収容し、トリントン基地へ送られることになる。
ガトーの乗ったHLVは地球の重力から離れ、宇宙空間に出ていた。
そこには手筈通り、迎えに来ていたムサイがあった。
そのムサイの艦長ビリィ・グラードル中尉がガトーの乗るHLVへ通信していた。
「少佐。良くご無事で・・・」
その通信にガトーが答えた。
「ああ、尊い犠牲の上でここまで来れたのだ。無事が当然だグラードル」
ガトーの声はこの計画に費やすために消えていった仲間たちを悔やむ気持ちで悲しそうに言った。
「そうですか・・・少佐。お疲れ様です」
ガトーはHLVよりガンダムを切り離し、ムサイの搬入口よりガンダムを収容させた。
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