逆襲のアムロ
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16話 エースとビギナー 3.6
前書き
*ガツガツ書いています(笑)
* トリントン基地 3.6 18:15
ガトーは目の前にいるガンダムに対峙していた。
割と基地の防衛の反応が良かったため、ガトー程の腕前ですら基地内での逃走経路を予定とは変えながら安全な所を選んで進まざる得なかった。
その結果、コウはガトーに追いつくことができた。
コウは意を決し、ガトーへ呼びかけた。
「そこのモビルスーツ!無駄な抵抗は止めて投降しろ」
ガトーは笑い出し、コウのガンダムへサーベルを手にして詰め寄った。
「なっ!」
コウは驚きながらも反射的にガトーのサーベルを横に避けた。
ガトーは感心しながらも次の行動に出ていた。
「一太刀でやられなかったのは誉めてやろう」
ガトーはサーベルを握った手で側面に避けたコウを殴りつけた。
「ぐあ~っ」
コウのガンダムはその衝撃で倒れた。
その姿にガトーは拍子抜けをした。
「なんだ・・・こんなのも避けれんとは・・・さっきのはマグレか」
コウは無様に倒れたガンダムを起き上がらせた。
そして敵の腕前に戦慄した。
「・・・これがエース・・・これが戦争・・・」
コウはうろたえながらも自分に言い聞かせ、サーベルを抜き構えた。
ガトーもそれに倣った。
* アルビオン 艦橋 同日 18:20
アルビオンに戻ったシナプスはオペレーターのジャクリーヌ・シモンより奇襲についての状況報告を聞いていた。
「シモンくん、状況は?」
「はい、遠距離からの敵の攻撃が止まりません・・・ん?増えました!・・・敵の数がどんどん増えてきます」
シナプスはその知らせに驚愕した。この辺一帯は連邦の管理監督下にある。そんな不穏分子らなど昼夜徘徊できるようなことはまずない。
索敵ミス・・・有り得ないとシナプスは思った。そうなると、事前に準備がなされていた・・・。
そして同じ答えに辿り着いていた、より正確な答えを持っていた基地司令のブレックスから通信が入った。シモンがその通信の知らせをシナプスにした。
「艦長!ブレックス基地司令からです」
「つないでくれ」
モニター一面にブレックスが映った。とても深刻な顔付きだった。
ブレックスが重たい口を開けた。
「・・・シナプス大佐・・・やられました。既にジオンの包囲網下に当基地はあるようです」
シナプスはやはりと思った。無駄と思いながらもブレックスに尋ねてみた。
「・・・援軍は・・・」
ブレックスは首を振った。
「ない。・・・嵌められたんだジャブローに。無線が通じない。ここは陸の孤島と化している。ここまでの手引きも恐らくは私の失脚を狙ってのことだろう。しかも跡を残すことなく」
「なんと・・・卑劣な!」
シナプスは震えた。連邦内での争いがここまでになっていたことに。しかも使えるものならば敵すら利用することに。ブレックスは続けた。
「・・・基地の守りは私らだけで十分だ。君らはガンダム1号機を回収し、この場から逃げて欲しい」
「なっ!我々も残ります。少しは時間を稼げるでしょう」
そうシナプスが言うと、ブレックスが怒鳴った。
「何のための時間稼ぎだ!無駄死にするためのか!そんな必要ないことはいらん!」
シナプスはブレックスの迫力に言葉を失った。ブレックスはすぐ我に返り、謝罪して同じ事をシナプスに言った。
「・・・取り乱してすまない。もう一度言う。この基地からの脱出を考えてくれ。以上だ」
ブレックスの通信が切れ、シナプスは艦長席で悔しさで震えていた。
その頃、防戦一方のコウはガトーのサーベル捌きに避けるのに必死だった。
ガトーのサーベルの打ち下ろしにコウのガンダムがサーベルで防ぎ切れず、ガンダムのサーベルの持ち手の関節部分から折れ曲がってしまった。その姿を見たガトーはコウに言い放った。
「未熟!・・・貴様のような軍人が戦っている相手の技量すら読めず立ち向かってくるとは身の程を知れ!」
そのガトーの言葉は近くにいたコウに届いていた。そのガトーの言葉に気脅されていた。そして上官でもないのにガトーに謝罪をしていた。
「はいっ・・・すみません・・・」
その言葉にガトーが面を喰らい、そして吼えた。
「私は敵だぞっ!」
ガトーはコウのやり取りに怒りが込み上げ、コウのガンダムに斬りかかった。その時横から1機のジム・カスタムがガトーのガンダムに蹴りかかった。その蹴りはガトーの側面を綺麗に蹴り飛ばし、コウはガトーのガンダムが横に吹っ飛んでいくのを見た。
「大丈夫か、ウラキ少尉」
そのジム・カスタムはアムロが操縦していた。アムロはブライトから基地の状況を聞いていた。
敵はガンダム奪取は目的だが、もう一つが基地の壊滅にあった。
「ウラキ少尉。よく持たせてくれた。あのガンダム、敵が基地内にいる限り、敵の総攻撃が始まらないだろう」
「えっ・・・総攻撃?」
コウはアムロの言葉がよく呑み込めていなかった。アムロはコウに改めて説明をした。
「敵はこのトリントン基地の壊滅を目的としているみたいだ。生憎、この基地で戦える兵士はほぼ訓練生。そして一番の目的はブレックス准将の殺害だ」
「なっ!」
コウは基地司令の殺害目的の攻撃と知り、益々混乱した。
「何故ですレイ大尉!何故基地司令を・・・」
アムロはその質問に答えた。
「戦争当初より、派閥闘争が起きていた。そして今、ブレックス派と呼ばれるエゥーゴが勢力を伸ばし始め、それを邪魔に思う者が実力行使をし始めたのだ。もっとも、まだ裏で手引きする感じではあるけど・・・」
コウは驚愕した。志願兵としてはニュース程度で派閥争いについては何となく知っていたが、巻き込まれた今が自分の想像を遥かに超えていた。コウは恐る恐る核心突いたことを聞いてみた。
「・・・つまり、このジオンの来襲はブレックス准将の対抗する連邦派閥の手引きと」
「そうだ」
コウは唸った。元々正義感あって連邦軍に志願したので、その様な卑劣な行為を到底認められなかった。アムロは彼の純粋さを心配し、付け足して言った。
「人は損得勘定する生き物だ。駆け引きは必要な時はある。それをいい方に活かすこともできたりもする。現にオレは各地のジオンとの戦いで多くのジオン兵を説得し、なるべく死傷者を出さずに平定してきた。その中には騙して降伏させたりもしたことはあったさ。それでも人が死ななければと思った」
アムロは一息置いた。そして話続けた。
「これはオレのエゴだが、自分にとって気持ち良いことをしたと思っている。今のところ皆が自分の正義に共感している。そういうあざとさを身に付けて、視野を広げていくことも良い軍人を目指すものとして必要な資質だと思うよ」
コウはアムロの話を聞いていた。世の中はそんなに単純ではない。自分が思う正義が世の正義ならばとっくに戦争など終わり平和な世の中になっているはずだと。しかし現実はそうではない。
コウはアムロの言うことを今は理解できなくても、考えていく姿勢は大事だと考えた。
ガトーはアムロに蹴り飛ばされた衝撃で傍の建物に突っ込んでいた。
ガトーは一瞬何が起きたかが分からなかった。
「・・・っつ、一体どこから攻撃を・・・」
ガトーはガンダムを瓦礫の中から立ち上がり、周囲を見回した。
すると、先ほどまで圧倒していたガンダムの隣にジム・カスタムが1機いた。
ガトーはあのジム・カスタムにここまで吹っ飛ばされたと気付いた。
「・・・増援か。どうするか・・・」
ガトーは一瞬考え、1機のガンダムは元々操縦者の力不足で戦力にならないと判断し、応戦することに決めた。
ガトーは再びサーベルを構えた。
「さて、この最新鋭のモビルスーツ相手にジム・カスタムがどこまで相手できるかな?」
アムロもサーベルを構えた。アムロはコウを後方に下がらせた。
ガトーのガンダムはホバー走行ができた。その性能を活かしてガトーはアムロに鋭い一撃を放った。
「フハハハハ・・・もらった!」
ガトーは目前まで動かないジム・カスタムを捉えていたが、ガトーの鋭い打ち下ろしをアムロは体捌きのみで躱した。
「なっ!」
ガトーは驚いたが、一瞬で次の攻撃に移っていた。ガトーはサーベルの持ち手でジム・カスタムの顔を狙った。しかしそれもアムロはガトーの後ろに回り込む形で躱し、さらにガトーの後背を取った。
「よし、取り押さえる」
アムロはそう言うと、ジム・カスタムのバーニアを全開にしてガトーのガンダムを後ろから押し倒し、腕を背中に抑えつける固め技をした。
「うぐっ・・・不覚・・・」
ガトーはアムロに一瞬で制圧された。その時、ガトーの側に砲撃が数発入った。
「少佐ー!」
ゲイリーを始めとするザメルとドム・ドローベンが10機程、基地の防衛網を突破してガトーの救援に駆け付けた。
「ちぃ、もう少しだった・・・」
アムロはガトーを放し、コウを連れてその場を退却した。
ガトーは身を起こし、救援に駆け付けたゲイリーに礼を言った。
「すまない。予定通りとは行かず。このソロモンの悪夢とかいう異名も返上せねばならぬかもな・・・」
ゲイリーはガトーの言葉を否定した。
「いえ、我々にできないこと。このガンダムの奪取を単独でやってのけたのです。少々時間が押していたことに気になり、我々の方も単独行動に出てしまいました。ビッター将軍にどやされますな」
ゲイリーら部隊の面々が笑った。ガトーはそんな部隊員を頼もしく思った。
そしてもう一人の隊員クルトがガトーにビッター将軍からの命令を伝えた。
「少佐。口頭になりますが、エアーズロックにHLVの用意があります。ビッター将軍もそこでお待ちでございます。少佐が到着次第、発射する段取りです」
「そうか。了解した」
ガトーは数機の護衛を携えてトリントン基地を後にした。
そしてトリントン基地へのジオンの包囲総攻撃が開始された。
海側からはドライゼ率いる潜水艇とズゴックEの大部隊、陸地側からはアダムスキー、クルト、ゲイリー率いるドム、ザメルの大部隊。
どこからそんな数の戦力を都合できたのかは言わずもがなだった。一番の理由は大方ブレックスを邪魔者にする輩が多かったという話だった。
一方の基地防衛はモビルスーツ隊としては、バニング隊とアムロ、リュウ、ジョブ・ジョンと教官と新兵たちだった。
激戦の中、モンシア、ベイト、アデルの連携が光っていた。一時は陸地側の進行を食い止めていたが多勢に無勢であった。バニングが命令を出し、基地を1ブロックずつ放棄していった。
後退の最中モンシアがベイトとアデルに声を掛けた。
「ひゃ~、しかし、こんなピンチはアメリカ以来だな。スリルがあるぜ」
ベイトが余裕を見せたモンシアにふっかけて言った。
「じゃあここで踏みとどまって、よりスリルを味わえるぞ」
モンシアはベイトの挑発に乗る訳がなかった。
「ブルブル、冗談言いなさんなベイト君。上官命令にゃ~従わざる得ませんぜ」
「っつたく、調子だけは良い」
そんなやり取りにアデルは笑っていた。
* 基地司令室 同日 19:00
ブレックスが腕を組み、戦況報告を受けては各所へ指示を出していたところにブライトが部屋に入ってきていた。ブレックスはそれに気付き、ブライトにも基地からの脱出を促した。
「・・・ブライト君か。君らもグレイファントムで逃げなさい」
ブライトは時計を見ていた。そしてブレックスに伝えた。
「基地司令。敵の思惑通りにはいきませんのでご安心を」
ブレックスはブライトの話に疑問を持った。援軍など見込めない状況だ。ブレックス自体は今の状況は不測だった。それがブライトは否定をしている。そのことにブレックスは質問した。
「それはどういう意味かな?」
「ええ。実は本日夜到着の予定ですが、カラバという組織の輸送機がグレイファントムの改修のためニューヤークからこちらへ向かってきていまして。こういう不測の事態も含めて多少の戦力を搭載しております」
「なんだと・・・カラバが・・・」
カラバも小さい組織ながらエゥーゴと同じ立ち位置の団体であった。しかし、その団体とブライトが繋がっていることに驚いた。
「カラバのリーダーは実は私の元部下でして・・・後ほど紹介致します」
そうブライトが言うと、基地の管制官がある航空機をレーダーで捉えていた。
「司令!未確認の大型航空機3機。当基地に接近してきます」
ブライトはその報を聞くと「来たか」と言った。
ブレックスは連邦に属さないカラバが基地に到着することに若干抵抗があった。しかし敵も非合法手段で来ている訳なので、そこは背に腹は代えられなかった。
* トリントン基地上空 アウムドラ艦内 19:30
18時過ぎに基地より特殊回線でブライトより救援信号を受け取ったハヤトは、本来着陸するオーストラリアの民間の空港を通過し、トリントン基地上空へ来ていた。
アムロからの技術提供により、独自に開発された新型兵器RMS-099 リック・ディアスの搭乗したシャアは基地の状況をハヤトより逐次報告を受けていた。
この時のシャアは既に仮面を外し、連邦と同じ制服で色は相変わらずの赤を着込んでいた。
ハヤトより降下前の最終確認が入る。
「シャア、トリントン基地の現状は基地司令部まで敵があとわずかな距離に来ている。既に包囲網も完成されているな。この状況下を打破するには後方からの奇襲しかない。このアウムドラのリック・ディアスは15機だ。これらを基地の北側に降下させ、一気に敵の戦線を崩壊させる」
シャアは重力下においてパイロットスーツを着込まず搭乗していた。体が3年前より鍛えられ逞しくなっていた。
「了解だ、ハヤト。シャア・アズナブル、リック・ディアス出るぞ!」
シャアはアウムドラの後部ハッチより勢い良く飛び出していった。
降下する重力にシャアは身を委ねていた。
「待っていろ。ブライト、アムロ。今から助けに行くからな」
そして基地北側にバーニアを吹かせて着地した。
他のリック・ディアスらも着地を済ませていた。
「大佐。皆無事に降下できましたぜ」
シャアのすぐ隣のリック・ディアスに乗るデニムが声を掛けた。
「よし、私とアポリー、ロベルトは正面から。デニム、ジーン、スレンダーらは右側面から入り込め。残りは後ろから援護しながら付いて来い」
「了解!」
アウムドラ艦橋からハヤトは無事にリック・ディアスの降下を見届けてホッと一息ついた。
その傍にはジャーナリストになったカイと同じくジャーナリストだがカラバの運動を支援するベルトーチカ・イルマが居た。
ハヤトの安堵した様子にカイが声を掛けた。
「無事に救援できそうだな。一緒に戦争を潜り抜けてきた仲間だ。ここで死なれちゃ目覚めが悪いってもんだぜ」
カイの話にベルトーチカも同意した。
「そうそう。あのアムロってエース。巷で噂されているニュータイプってらしいじゃん。興味があるから死なれちゃ困るのよね~」
ハヤトがベルトーチカの「ニュータイプ」という言葉に反応した。聞いたことない言葉だったからだ。
「ベルトーチカさん。ニュータイプとは?」
「ああ、ジオンが研究しているらしいんだけどね。なんか戦闘でよく生き残る人の特徴を調べる機関があって、その人たちはよく直感が働いて、人が行動する前に予知し動けるんだって。まあエスパーに近いかな」
ハヤトは考え込んだ。アムロがベルトーチカが言うニュータイプだと言うことを。条件的にはあながち嘘ではないと思った。何故なら、ハヤトが身近でアムロの戦う姿を見ていたからだ。あれは尋常ならざるものだった。
ベルトーチカはそのニュータイプについて補足した。
「あとね、ニュータイプは人と人とが感応し合える、共感し合えるという説もあるらしい。今現在もその研究が進んでいてね、兵器利用に転じているらしいよ」
「その話は聞いたことがある」
カイがベルトーチカの話に割り込んできた。
「ハヤトも知っているだろう。アムロの乗っていたアレックスの仕様。あれにはバイオセンサーが搭載されていた。あれはアムロが操作する反応速度の限界の先を見据えた代物だった。あくまでアレは機体の内側だけに秘められた性能だった。それを凌駕する技術、プロセッサーがあるそうだ」
「カイ、それはなんだ?」
「サイコフレーム・・・という代物らしい。兵器利用は知らないが、アメリカのオーガスタ研究所にてララァ・スンによる開発が進められている。セイラさんが言う話だと凄くスッキリするらしい」
「スッキリ?」
「ああ、ララァが操るシステムは近くにいる生物をとてもリラックスさせるそうだ。驚きなのがそのシステムを動かしている間のわずかな周囲だが物体の動きがゆっくりしている」
カイは話に間を置いた。艦橋の窓に寄り、眼下を見下ろした。
そして再び話始めた。
「そんなのが兵器になるのかわからん。まあ色々な可能性がある分野なんだろうな。ララァのやっていることは分からんが・・・」
ハヤトは腕を組み、カイやベルトーチカの話を自分なりに考えていた。
* トリントン基地 司令部周辺 19:40
アムロたちとバニング隊が互いに陸側、海側と最終防衛線を敷き、ジオンの猛攻を凌いでいた。
キースもジム・キャノンⅡに乗り込んでいて、威嚇射撃をしていた。しかしその顔に絶望が満ちていた。
「コウ~、もう駄目だ。ここで死ぬんだよ~」
キースの泣き言にコウは叱咤した。
「諦めるんじゃない!きっと必ず希望がある。それまで持ちこたえるんだ」
その言葉にアムロが褒めた。
「そうだウラキ少尉の言う通りだ。もうすぐ援軍が来る」
その言葉にコウとキースが反応した。
「援軍!やったー・・・ってどこからですか大尉!」
「前面まるで敵しかいませんよ」
アムロは感じていた。あのエースが既にこのトリントン基地にいることを。
10分後、防戦していたアムロたちが敵の撃ち方に変化が出てきたことに気が付いた。
それは時間が過ぎるほど銃弾の数が減っていった。そのうち砲撃が鳴りやんでいた。
アムロたちは物陰から姿を出した。そこには見知れないモノアイの黒いモビルスーツが立っていた。
その中の一機が赤いモビルスーツだった。
アムロはそのモビルスーツに駆け寄った。赤いモビルスーツもアムロの方へ駆け寄った。
「生きていたかアムロ!」
「ああ、救援助かるシャア」
コウはその赤いモビルスーツがかつての赤い彗星だということを知った。
キースもそれに気付き、興奮していた。
「コウ~。ガンダムも凄かった。アナベル・ガトーも怖かった。レイ大尉も最初はびっくりした。しかし、ここに来て赤い彗星ってなんなんだあ~」
コウもキースと同じだった。今日一日で様々な体験ができた。まず生き残ったことについて喜ぼう。それから色々振り返ろうと思った。
バニング隊もこの場に駆け付けてきた。モンシア、ベイト、アデルも赤い彗星に驚いたが、色々教えを乞いたいとねだっていた。その光景にバニングは「やれやれ」と呆れていた。
* トリントン基地 基地司令官室 同日 21:00
ハヤト達カラバはトリントン基地へ着陸し、基地司令のブレックスと会談していた。
ハヤトはブレックスに全面的なサポートを申し出たがブレックスはまだ時期でないと回答を保留した。
「ハヤト君、君らの申し出を受けるにはまだ連邦内部での敵がまとまり切れていない以上混乱をきたすだけだ」
ハヤトはブレックスの言が正しいと思った。しかし、ハヤトとしては姿勢を見せたかった。ただそれだけで十分だった。
「わかりました。准将が動くときは我々は特に要請なしでサポートします。それだけ覚えていてもらえれば結構です」
「そうか。とだけ言っておこう」
「それではグレイファントムはこちらで預からせていただきます。我々もちょっと非合法でね。連邦内部に若干パイプがありまして、その許可は得ておりますから」
「では許可証を拝見しよう」
ハヤトはブレックスにグレイファントム改修許可証を提示した。
「ふむ・・・アナハイムからか。しかしながら良く絡む。アナハイムの独擅場だな兵器業界は」
「はい・・・そういう時代みたいですから」
「よろしい。了解した」
「有難うございます。では早速明日より民間飛行整備場へ移送し、やらせていただきます」
そう言ってハヤトが部屋を出ていくと、代わりにシナプスが入って来た。
「失礼致します。基地司令」
ブレックスはシナプスがこの部屋に来た要件を察した。そして先んじて述べた。
「分かっている。逃げたガンダムを追いたいのだな」
「そうです。アナハイムのニナを始めとする関係者も社内での訴追が不安視されており、我々も軍としてジオンにやられております。そのため雪辱せねば面目が立ちません」
「と、言うよりも、この私自身も許可を出さねば、利敵行為と見なされるかもしれないな」
ブレックスは苦笑した。シナプスはそれについて黙っていた。
そしてブレックスはシナプスにガンダム追跡の許可を出した。
* アルビオン艦橋 3.6 23:00
夜遅くだが、ガンダム奪還のための部隊編成が成された。
アルビオン既搭乗員はそのままだが、実戦部隊が1人もいなかったため、基地より補充された。
モビルスーツ隊でバニング大尉、ベイト中尉、モンシア中尉、アデル少尉、ウラキ少尉、キース少尉、アレン中尉。
そこに1人のエースが緊急用パイロット兼オブザーバーとして参加した。
そのパイロットにモンシアは口笛を鳴らした。
「シナプス艦長。本日付けでグレイファントム隊より異動になりましたアムロ・レイ大尉です。宜しくお願い致します」
その姿にバニングを始めとするすべてのクルーが心強い味方がやって来たと感じた。
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