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ドーバ

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第三章

「もう未開の証拠じゃない」
「そうなるかな」
「そうなるよ、というかおじさん日本人なのに」 
 日本人だが流暢な英語であることには何も思わずにだ、キラは男に言った。
「そんな未開なのが好きなの?」
「それは関係ないと思うけれどね」
「関係あるよ、日本みたいな進んだ国から来たのに」
「いやいや、実は私は観光会社の人間でね」
「日本から来てなんだ」
「こっちの支店で働いていてね」
 そしてというのだ。
「こうしたお仕事もしているんだ」
「トロブリアンドまでのなんだ」
「これはサービスでね」
「その抽選の」
「ツアーの中のね、特賞に当たったら」
 男はキラにあらためて言った。
「トロブリアンド諸島に行けるよ」
「それは別にいいよ、けれど他の商品もあるのかな」
「テレビとかあるよ」
「テレビ!?じゃあそれが貰えるのなら」
 家にテレビはもうあるが自分のテレビを欲しくてだ、キラは乗った。
 そして男から抽選の話を聞いて前に出していた商品の中で最も安いものを買ってだ、そのうえで抽選をしてみた。
 道具はガラガラと鳴って回ってだ、そうして。
 その中から一つの小さな玉が出て来た。その金色の玉を見てだ。
 男は手に鈴を出してカランカランと鳴らしてだ、キラに笑顔で言った。
「おめでとう、特賞だよ」
「特賞ってことは」
「そうだよ、トロブリアンドにね」
 まさにそこにというのだ。
「行けるよ」
「だから行きたくないのに」
「無料だよ」
 男は商売を出した。
「しかも全部こっちで持つから」
「おじさんの会社で」
「どうかな、君にお金は全くいらないよ」
「それなら」 
 キラもお金がいらなくてそのうえでサービスを得られるのならと思ってだ、それでだった。
 結局そのツアーの話を受けることにした、そしてだった。
 そのツアーに参加した、確かにツアーは日本の企業の支店が全てやっていた。オーストラリアからも人が来てだ。
 キラはポートモレスビーから車と船でトトロブリアンド諸島まで来た。そしてその諸島の一つに入ってだった。
 周りの海を見回してだ、彼はとりあえずこう言った。
「まあ奇麗だね」
「こんなに奇麗なんだ」
「凄いわね」
「噂には聞いていたけれど」
「まるで楽園よ」
 他のツアー参加者達はうっとりとさえしていた、見ればパプワニューギニア人独特の黒い肌の者もいるが白い肌のオーストラリアやニュージーランドの者も多い。
 その白い肌の参加者達がだ、特に言っていた。
「じゃあクラも見て」
「丁度今は収穫祭だし」
「それも見ましょう」
「是非」
「ああ、それの時期だったんだ」
 収穫祭の話を聞いてだ、キラも言った。
「今は」
「そうなんですよ」
 ここでキラの前に抽選のところにいた日本人の男が来た、それも笑顔で。
「またお会いしましたね」
「おじさんもいたんだ」
「このツアーのガイドの一人でして」
 それでというのだ。 
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