| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三世代の真の力

 
前書き
バトル・オブ・ドラゴンスレイヤーもいよいよ折り返し地点です。
この話はシリルの独壇場かナツとの合体魔法(ユニゾンレイド)かでスティングたちの戦い方を変える予定だったので結構迷いました。
さてさてどっちになったのかな? 

 
「ナツが楽園の塔で見せた姿とかって・・・」
「ああ。しかし・・・」

グレイとエルザが変貌を遂げたスティングたちを見て話をしている。

「あの時はエーテリオンの食べてその力を得た」

最初にナツがドラゴンフォースを発動させた時は様々な種類の魔法が合わさりあったエーテリオンの魔水晶(ラクリマ)を喰らい、魔力を増幅させたことにより起きた言わば偶然の産物。

「ゼロの時も俺の全魔力を食べてその力を解放できた」

二度目の時はナツがシリルとウェンディが初めて出会った六魔将軍(オラシオンセイス)討伐の時。最後の最後にナツがニルヴァーナの足にある魔水晶(ラクリマ)を壊すためにマスターゼロと戦い、記憶を無くしていたジェラールに魔力を託され、それにより解放した姿。

「シリルが俺と戦った時は天空の巫女がつけている『絆の指輪』の効果により全ての能力が上がり、覚醒して発動していた」

カミューニの言う通り、シリルは頭にケガをしたこととウェンディとの互いを思う力により力が底上げされ、ドラゴンフォースになったのである。

「あいつらは・・・自らの力でドラゴンの力を解放できるというのか」

7年前にカミューニがハデスを倒すために求めた力。その時に彼は言っていた。「第三世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は自らの力でドラゴンフォースが使える」と。
だが彼自身も半信半疑だったためにジェラールたちには言わずにいたのだった。
そして今、彼らの前に現れた第三世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)たちは自分たちの力でドラゴンフォースを解放した。

「ローグ、グラシアン。手を出すな」

ドラゴンフォースで顔に白い鱗が出てきているスティングは手で隣に立っているローグとグラシアンを制すると前に歩いていく。

「俺1人で十分だ」

スティングはいきなりそんなことを言い出した。

『な・・・なんと先程まで劣勢だった剣咬の虎(セイバートゥース)!!まさかの1対3宣言!!』
『それほど自信(じスん)があるんだろうね』

スティングのまさかの発言に観客たちもざわざわとしている。それほどまでに無謀と思われることだからだ。

「そうですとも。スティング君とローグ君とグラシアン君にはドラゴンフォースがあるんです。負けるわけありませんよ、焦って損しましたね」
「ドラゴンフォースのことすっかり忘れてたね」
「フローもそうもう」

レクターたちはナツたちに押されていたスティングたちのとっておきを忘れていたらしくそんなことを話している。

「俺はまだ見たことねぇが、そんなにすげぇのか?」
「ああ。このままでは不利だな」

グレイとエルザがそう言う。その後ろにいるラクサスは腕を組み、スティングたちを見つめている。

「カミューニがハデスを倒すために求めた力か・・・どんなもんか見せてもらおうじゃねぇか」





















「ドラゴンフォース・・・」
「シリルが天狼島で見せた姿よね?」

ウェンディとシャルルはスティングたちのドラゴンフォースをその目で見たことにより、シリルがカミューニと戦った時のことを思い出している。
普段の力を遥かに越える力を見せたシリル。聖十大魔導の中でもトップクラス・・・つまりは大陸(イシュガル)の最高ランクに位置しているカミューニと五分に渡り合えた姿。
ウェンディたちはそれを見て心配そうな表情を浮かべる。

「シリル~・・・大丈夫なのかな~」

セシリーが情けない声を出すとルーシィが手で拳を握りしめながら言う。

「大丈夫」
「ルーシィさん?」
「ナツたちなら大丈夫」

ルーシィはナツたちが負ける姿など一切頭にない様子で魔水晶(ラクリマ)ビジョンをじっと見つめていた。

















「ナメやがって」

ガジルはスティングの大胆不敵な発言に目を細めている。

「でもこの感じ・・・」
「ああ。強ぇぞ」

シリルとナツはスティングのはね上がったプレッシャーを感じ取り、険しい表情になる。

ダッ

1人で挑むと言ったスティングがまず最初に動く。素早いスタートダッシュでナツに接近すると、その速度についてこれなかったナツのガードを掻い潜り、鉄拳を押し込む。

「うおっ!!」

ガジルは攻撃したばかりのタイミングを狙いスティングに回し蹴りを入れようとした。スティングはそれを体を前に屈めて交わすと手から白の球体を出してガジルを飛ばす。

「水竜の・・・翼撃!!」

シリルは両腕に水の翼を作り出しスティングに襲い掛かる。だがその動きもスティングは見切っており、ジャンプで交わされると真上から踵落としを繰り出され、地面に倒されてしまう。
飛ばされたナツとガジルはそれぞれ壁と地面を強く蹴り出し、スティングへと接近し、起き上がったシリルも彼らに続くようにスティングへと立ち向かう。

「ぐおっ」
「ぐあっ」
「ぐぅ」

3人がかりでスティングへと格闘技を打ち出していく妖精の尻尾(フェアリーテイル)。スティングはその全てを受け止めなおかつ攻撃を3人の体へと打ち込んでいく。

「っお!!」

ガジルを一本背負いして闘技場に落とすスティング。続いてシリルが低い背を利用として足元を払おうとしたがそれさえ交わされ、襟を掴まれガジルが倒れたところに投げ込まれる。

「この!!」

ナツがスティングに突進したがそれもガードされて頭を掴まれ他の2人の元へと飛ばされていく。

ニヤッ

スティングは3人が一点で交わったのを確認すると空へと高く高く垂直跳びをし、シリルたち3人の真上へと入る。

「白竜の・・・ホーリーブレス!!」

スティングのブレス攻撃。その攻撃も最初に見た咆哮よりも遥かに威力が増しており、さらには攻撃範囲も増えていた。

ゴォォォォ

スティングのブレスは3人を捉えると大爆発を起こし、いかなる魔法でも壊れることのなかった闘技場の床をぶち抜いてみせた。

『ああっと!!なんということでしょう!?闘技場の床が・・・』
「崩壊!?」
「なんて威力なんだ・・・これが第三世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の力なのか!?」

実況席もエルザたち新・妖精の尻尾(フェアリーテイル)も予想だにしなかった展開に目を見張る。それだけスティングの力がすごいということなのである。

「「ガジル!!」」
「「ナツ(兄)!!」」
「「シリル(くん)!!」」

レビィとリリー、ハッピーとロメオ、ジュビアとミラジェーンがこのあり得ない攻撃をもろに喰らった3人の名前を叫ぶ。
3人は崩壊した闘技場の地下へと重力に従って落ちている。

『戦いの場は闘技場の地下へ移るようですが、試合は続行されます!!皆様は魔水晶(ラクリマ)ビジョンにてお楽しみに下さい!!』

闘技場の上部に現れた巨大な魔水晶(ラクリマ)ビジョン。そこに映るのはただ深い地下へと穴を落ちていく3人の妖精たち。

「まだまだこれからだぜ!!」

スティングは3人に向かって一直線に姿勢を整え、落下するスピードを上げて距離を詰めていく。
このまま下まで落ちるかと思われた3人の内の1人、ナツは崩壊したことにより自分たちと一緒に落ちていた瓦礫を足場に使い、

「火竜の・・・劍角!!」

迫ってきていたスティングに頭突きを喰らわせる。

「水竜の・・・」
「!!」

ナツの頭突きにより弾かれたスティングの背後にシリルが待ち構えていた。シリルは腕に魔力を集中させ、飛んでくるスティングに狙いを定める。

「砕牙!!」

シリルの引っ掻き攻撃によりまたも空中で移動させられるスティング。そのスティングに今度はガジルが一撃を放つ。

「鉄竜の・・・咆哮!!」

若干ではあるが上からの攻撃であったためにスティングは重力とその威力に押されて一気に闘技場の下に出来ていた地下の最下部へと叩き落とされる。
シリルとナツ、ガジルの3人は空気の抵抗を受けながらゆっくりと落ちていきながらスティングの落ちた場所を見ている。

ガラッ

地下へと落ち大ダメージを負ったはずのスティング。彼はそんなダメージなど屁でもないかのようにすぐさま立ち上がると右手と左手の間に白き魔力を溜めていく。

「白き竜の輝きは万物を浄化せし・・・ホーリーレイ!!」

スティングの身長ほどに膨れ上がった魔力の球体から流星群のような無数の光が飛び散り、空中で自由に動けないシリルたちを襲う。

「うおおおおおっ!!」
「うあああああっ!!」
「ああああああっ!!」

空中では当然避けることができず、次から次へと迫ってくる光の群れを浴び続けるシリルたち。

「光・・・」
「聖属性の魔法」

スティングの魔法を見てエルザとメイビスはそう呟いた。
ホーリーレイを受けたナツたちはスティングと同じように地下の地面へと叩きつけられる。

「うおっ!!」

ナツはバランスをすぐに整え目の前のスティングへと殴りかかる。

「くっ」

スティングも同じようにジャンプしてナツへと飛び込む。
ぶつかり合う2人の拳。しかしその威力の違いは火を見るより明らかだった。

「くっ・・・」
「飛べよ」

無情にもピンポン玉のように飛んでいってしまうナツ。
そのスティングにシリルとガジルが2人がかりで襲い掛かる。

「鉄竜剣!!」
水竜の斬撃(ウォータースライサー)!!」

ガジルの剣とシリルの昨日覚えたばかりのジュビアの物まね魔法でスティングに斬りかかる。
スティングはドラゴンフォースにより早さが遥かに増しており、絶妙なコンビネーションで攻めてくる2人の刃を交わしては逆に攻撃を入れてを繰り返し、2人は弾き返され続けてしまう。

「うおらっ!!」

復活したナツがスティングの上から鉄拳を浴びせようとするがスティングはそれを合気道のように投げ飛ばす。

「やぁぁぁ!!」

シリルが目の魔水晶(ラクリマ)をさらに輝かせ、スティングに蹴りと拳の応酬を試みる。
シリルの速度はさっきよりも増したがスティングはそれ以上に早くて捉えきれずにいる。
しかし目を完全に解放したことでシリルはスティングの筋肉の動きなどから次の動きを予測して攻撃を受け流したり交わしたりする。

「頭下げろ!!」

その声が聞こえたと同時に頭を下げるシリル。その後ろからガジルがかなり長めの鉄竜棍を元々シリルの頭があった辺りめがけて伸ばす。
シリルの頭で隠れていたところからいきなり鉄竜棍が出てきたために胸元でそれを喰らってしまうスティング。しかしあまり効いておらず、頭を下げたせいでスティングの動きを見ていなかったシリルをガジルの元へと蹴り飛ばし、2人は衝突して吹っ飛んでいく。

「クソッ・・・火竜(サラマンダー)!!」

シリルと一緒に飛んでいるガジルはナツを呼ぶ。

「こいつを・・・使え!!」

ガジルはなんとシリルの首根っこを掴むとナツの方へと全力で投げる。

「行け!!シリル!!」
「はい!!」

ナツは飛んできたシリルに火をまとった足を向ける。シリルもそこに足を出す。2人の足裏が合わさったと同時にナツは曲げていた膝を一気に伸ばしてシリルを発射させる。

「水竜の・・・劍角!!」

体を回転させながらスティングに突っ込むシリル。ガジルが投げた力とナツが蹴り出した反動により速度が従来の劍角よりも遥かに速く、威力も倍はある。

「無駄だぜ!!」

シリルの渾身の一手をスティングはものともせずに弾き返ししまい、シリルはナツの前に落とされる。

「これで終わりだ」

そしてスティングはトドメと言わんばかりにブレスを吐き出し、砂煙が地下を覆う。

(レクター、お前との約束だからな。俺は必ず勝つぜ)

スティングとレクター。2人が幼き日に交わした約束。それは『みんなの見てる前で火竜(ナツ)を倒す』こと。
砂煙が晴れる。そしてそこに倒れている3人の姿を見たスティングは左腕を強く握りしめ、高々と上げて見せた。

(見ているか?レクター)


















「ナツ・・・」
「ガジルくん・・・」
「シリル・・・」

医務室にいるルーシィたちは地面に伏せ、ピクリとも動かない3人を見て目に涙を浮かべていた。

















「終わったみたいだな」

闘技場の地下、スティングとシリルたちがいるところよりも少し上からこの戦いを見ていたグラシアンがそう言う。

「時代は移り行く。7年の月日が俺たちを真の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)へと成長させた」
「もうあんたらの時代は終わっちまったんだよ」
「ああ」

ローグ、グラシアン、スティングの三大竜は意識のないであろうナツたちに聞こえるようにそういった。

『 ああっと・・・さすがにピクリともしない!!凄まじい一進一退の攻防の果て、力尽きたのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)なのか!?』
「ナツ・・・」
「ガジル・・・」
「シリル・・・」

ハッピー、レビィ、ミラジェーンは思わず目から小さな水滴をこぼしてしまう。

「どうした立て!!お前はそんなもんじゃないだろ!!」

リリーは共に修行を3ヶ月間してきたガジルに檄を飛ばす。

「ナツたちでも勝てねぇのかよ・・・」
「悔しいぜ・・・ちくしょう・・・」

ワカバとマカオも悔しさで声のトーンが下がっている。

「ナツ兄!!立ってくれよ!!」

ロメオが地下へと響くほどの大音量でナツを呼び起こそうとする。それでも彼らは全く動く気配がない
スティングはそれを見て本当に終わったのだと確信し、ドラゴンフォースを解除する。

「でも・・・やっぱり強かったよ・・・ナツさん・・・ガジルさん・・・シリルくん」

どこかホッとしたように頬を緩ませ、戦った3人に称賛の声をかけるスティング。

『三者ダウンか!?』

審判であるマトー君の確認がまだ行われていないため、彼らがどういった状態なのかまだ観客たちにもわからない。

「立てよナツ!!ガジル!!シリル!!」
「私たちの声が届いているだろう!!」

グレイとエルザが3人に渇を入れ、目覚めさせようとする。

「ギルドの想いは1つ!!お前たちと共にある!!」

エルザの必死の呼び掛けにも彼らは応答しない。

「妾の見立て違いだったか」

ミネルバはナツが予想よりも弱かったことにガッカリした様子でそう言う。

「スティング!!」
「お疲れさん」

ナツたちの前で立っているスティングの元にローグとグラシアンが歩み寄る。

「ああ。悪いな、ローグ。ガジルさんまで取っちまって」

スティングはローグに対して背を向けたままそう謝罪する。

「いやいや、謝るならシリルのことだろ。大事な初恋の相手をこんなにボロボロにされて・・・なぁ?」
「お前!!」
「アハハハ!それもそうかもな」

完全に勝利の余韻に浸りながら面白おかしくローグの過去を引っ張り出してくるグラシアン。スティングもそれに乗っかり、彼らの顔を見ながら笑顔を見せる。

「その話・・・詳しく聞かせてもらえませんか?」
「「「!?」」」

スティングの背後から聞こえるはずのない声が聞こえ、驚く三大竜。すぐさま振り返るとそこには倒れていたはずのシリル、ナツ、ガジルの3人が立っていたのだった。
終わったかに思えた戦い。しかし彼らの立ち上がった姿を見て観客たちは騒ぎ立てる。

















「シリル!!」
「立った~!!シリルたちが立ったよ~!!」

ウェンディとセシリーは立ち上がりスティングたちに向き直っているシリルたちを見て手を取り合い小躍りしている。

「さすがだよね。何回倒れたって絶対立ち上がるんだから」
「しぶといというかしつこいというか」

嬉しそうなルーシィと苦笑いしながらそう言うシャルル。だがシャルルも心の中では彼らが立ったことに喜んでいるに違いない。



















「いってぇ」
「思ったよりやるな」
「それよりさっきの初恋がどうのこうのって何!?」
『なんか意外とピンピンしてる!?』

首をゴキゴキと言わせているナツとガジル、そしてローグの恋ばなを微かに聞いていたシリルは嫌な予感を覚えたらしく問い詰めていた。

「けど、お前の癖は全部見えた」
「何!?」
「いや無視しないでよ!!」
「ちょっとおめぇは黙ってろ」

ナツに弱点を見つけたと言われ驚くスティングとローグとグラシアン。シリルは自分の問いに答えてもらえずに怒っていたがガジルに口を塞がれた上にガッチリと捕まえられてしまい身動きが取れなくなる。

「攻撃のタイミング、防御の時の体勢、呼吸のリズムもな」
「何・・・」

ナツの横にいてシリルを押さえているガジルも、押さえられているシリルもナツの言葉に驚いた様子がない。つまり彼らもスティングの癖を見つけたということだ。

「バカな!!こっちはドラゴンフォースを使ってんだぞ!?」
「おおっ。大した力だ、身体中いてぇよちくしょう」

取り乱すスティングに対し肩を回しながらそう言うナツ。だがグラシアンとローグはある考えに至っていた。

「なるほど・・・ハッタリか」
「揺れるなスティング。お前の癖などあの中でわかるはずがない」

彼らはナツの発言はハッタリでスティングの心を乱し、その隙に倒そうとしているのだと思ったらしい。しかしその考えを否定するかのようにガジルが「ギヒッ」と笑う。

「ハッタリだぁ!?火竜(サラマンダー)にそんな頭使う芸当できっかよ!!」
(コクコク)

ガジルはナツの方を笑いながら見てそう言い、シリルさえもその言葉にうなずいていた。

「うるせぇ!!てかシリルまでなんでそっち側なんだよ!!」

ガジルにキレた後、味方してくれると思ってたシリルに裏切られたナツは2人を思いきり睨んでいた。そして3人はさっきのナツの発言を証明するかのようにスティングの癖を挙げる。

「例えば攻撃の時、軸足が11時の方を向く」
「いーや、10時だな」
「11時だよ!!」

ナツとガジルはそれぞれ別々の角度を言い、額をつけてまたしても睨み合う。その際ガジルに抱き抱えられている形のシリルが2人に押し潰されそうになっているがナツたちは当然のように気づかない。

「何言ってやがる!!11時じゃねぇ、10時だ!!」
「11時だぁ!!23時でもいい!!」
「お前それ一回転してんじゃねぇか!!」

目がくっつくのではないかと云うほどに顔を近づける2人。その矛先が遂にシリルに向けられる。

「シリル(ガキ)!!お前はどっちだと思う!?」

シリルは口を塞いでいたガジルの手を払うと酸素を思いきり吸い込んだ後その問いに答える。

「じゃ・・・じゃあ10時30分で」
「「間を取るな!!」」

自分の主張を曲げないであろう2人のどちらを味方するか迷ったシリルは間を取ってそう答える。
だがシリル的には2人の見つけた癖はどっちも正解だと思っていたらしい。理由はスティングが攻撃の中でも上半身の攻撃と下半身の攻撃とで軸足の向きが変わっているのをシリルは目を使って見つけていた。でもそんなことを説明するのは面倒な上に意味がないだろうと思ったシリルは諦めて真ん中を取ったのだった。

「ほれ見ろ火竜(サラマンダー)!!てめぇが間違ってるからガキが気ぃ使っちまったじゃねぇか!!」
「気ぃ使わせてんのはそっちだろ!?」

ガジルはシリルを離すとナツと取っ組み合いになり、次第にいつものギルドのような殴り合いへとヒートアップしていく。

「「「・・・」」」
「ナツさん!!ガジルさん!!落ち着いて下さい!!」

唖然としてケンカをしている2人を見ている三大竜と2人を落ち着かせようとしているシリル。ケンカをしているナツとガジルを見て妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々はため息をついたり、2人らしいと笑っている者もいたりした。

「てめぇ・・・」
「この・・・」
「あの・・・」

いつまで経っても終わりそうにない2人のケンカ。それを見たシリルは一息ついた後、スティングたちの方を向き直る。

「2人がこんなだし、はっきりいってこれくらいならナツさんたちを煩わせる必要も無さそうなので・・・





















俺1人で相手してあげますよ」

シリルはそう言うとケンカする2人の前に立ち、スティングたちに対して構える。

「なっ!!」
「お・・・おい・・・」
「シリル・・・」

スティング、グラシアン、ローグの三大竜は目の前の小さなドラゴンの宣言に思わず耳を疑う。
目には目を、歯には歯を、1対3には1対3を。

「やられた分はきっちり返します。それが妖精の尻尾(うち)のやり方です」

三大竜を見据えて不敵に笑うシリル。水竜vs.三大竜の戦いが始まる。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
最後はやっぱりシリルの独壇場でいかせて頂こうと思います。
ナツとの合体魔法(ユニゾンレイド)も見たかった気もしますが、そろそろシリルに単独での戦いをやらせたいという作者の親心でこうさせていただきました。
「あれ?まだガジル退場してなくね?」と思った皆様、安心してください、これからですよ(笑)
ただちょっと自己満な気もしますがやりたいことがあるのでそれをやり易くするためにガジルにはもう少しだけいてもらうことにしました。
次回もよろしくお願いします。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧