逆襲のアムロ
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9話 ダグラスの死線 11.12
前書き
想像と書く速さと時間といろいろ間に合っていない今日この頃です。。。
* ミネソタ西境 ダグラス本隊 ビック・トレー 11.12 9:00
ダグラスは2日間の一戦で別動隊を含めた全体の2割の戦力を失っていた。その別働隊に3割程割いていたため、ガルマ本隊の戦力比としては三分の一に満たなかった。それでも壊滅せずに維持できたのもジム改を始めとする連邦の新兵器の賜物であった。
それでも多勢に無勢。ダグラスは始めから防衛線に徹していた。
ビック・トレーの艦橋に仁王立ちして戦況を見守るダグラスの姿に兵士は劣勢の最中安心感を与えていた。だがその当人ダグラスは心中不安に感じていた。
「(油断、不安は士気に関わる。平然と堂々とみせねばな。そうは思えど結構悲観的な状況でそうせねばならない自分に少々笑えてくる。そしてかなり不安だ)」
そう感じている間も矢継ぎ早に戦況報告が入る。
「司令!敵が両翼より防衛部隊の隙間に爆撃を開始!両側の部隊間の連携、指揮系統が途絶する部隊が続出しております」
「司令!前衛の部隊が敵戦車部隊と交戦中。戦果は上々ですが、敵余剰戦力の逐次投入により膠着しております」
「このままでは本隊と両翼、前衛と分断されます」
ダグラスはその状況に応じて判断を下す。
「両翼への連絡。各隊で各個撃破を目指せ。連携が取れずとも敵両翼の戦力火力とも正面より明らかに薄い。前衛部隊には緩やかにと前線を下げるように通達。こちらも縦深に陣形が変化しつつある。本隊との連携を重視し前線崩壊をしないように務めよ!」
「了解。しかし司令、両翼への伝達が各部隊との連絡が途絶しておりまして・・・」
「なら、各隊へバイクを飛ばせ!」
「はっ・・・はい!」
ダグラスは下士官を怒鳴りつけ、命令を遂行させた。
激戦の最中一時の迷いが兵士の危険を晒すことになる。
艦橋から叱咤され急ぎ早出て行った下士官のと入れ替わりにこの本隊のテネスと並び称されるモビルスーツ機動部隊長ミヤ・サミエック少佐が入ってきてダグラスに語り掛けた。
「司令、まずい戦況だな。分かっていただけにかなり深刻だ」
「サミエックか。ここが踏ん張りどころなんだがな。テネスがウィスコンシンの補給線を断てばやつらはすぐにでもガス欠を起こす」
ダグラスは大軍故の弱点を知っていた。あれだけの大兵力を動かすにあたり、燃料輸送こそガルマの生命線であった。だからまともに相手はしないそういうスタンスで戦いに挑んでいた。
* ミネソタ中央部上空 ガウ艦橋 同日 10:15
ガルマ自身も物量による弱点は知っていたが、前線に張り巡らせたザクの壁を頼りにしていた。後方の補給基地とも定時連絡は欠かさない。戦況を見るに2日あれば連邦を撃退せしめると踏んでいた。
そしてアメリカを進軍する連邦の要がこのダグラス部隊であると認識していた。他の前線から大部隊の強襲を聞かなかったことでもあった。この部隊の撃退こそが連邦の前線拡大を防ぐと考えていた。
ガルマもガウの艦内で戦況を見て、意外と粘るなと愚痴をこぼしていた。
そこでガルマは次の策に打って出た。分隊長のバイソン大尉を通信で呼び出した。
「バイソン。貴官の隊を敵中央と左翼の間に割って入れ。陣形が崩れたところでガウの爆撃を敵左翼に浴びせ敵本隊との完全分断を図れ!」
「はっ」
ガルマの指示により、バイソン部隊が戦車隊と航空部隊を率いてダグラスの左翼よりの中央へ雪崩れ込んだ。少々伸びきっていたダグラスの本隊はその攻撃に対応が遅れた。そして先の両翼の攻撃により、各隊が独自に迎撃をしていたダグラス部隊の両翼が更なる指揮系統のトラブルに見舞われた。
そして目論見通り、ダグラスの左翼は完全に孤立化した。ダグラス本隊と右翼がガルマのマゼラアタックとドップ隊、ガウ空母に半包囲されていた。一方の孤立した左翼はただでも遊兵となっている上で包囲されていた。
その状況を見たダグラスは唇を噛んだ。
「戦力の2割を失ってしまった。あと3日持てば・・・」
その言葉を聞いたサミエックは一息ついてダグラスに話しかけた。
「孤立しただけでしょう。まだ失われてはいない。彼らは私が指導した有能なパイロットたちだ。中将の司令に忠実に応え実行している」
そしてサミエックは振り返り艦橋を後にする際にダグラスに安心しろと声掛けた。
「オレが左翼で指揮を取りにいってくる。この戦いの敵は元々烏合の衆だ。ただ数が多すぎて鳥害になっているだけだがな」
そう言って格納庫へ歩いて行った。それを後ろ姿で見送ったダグラスはすまぬと一言を言い、自分で御しえる部隊の再編を激戦の中行った。
サミエックはジム改に乗り込み、部下20機を連れて孤立した左翼にガウの雨の中猛然と走行した。
「いいか!お前ら。ここがこの戦いの踏ん張りどころだ。英雄になるチャンスだぞ!」
サミエックは部隊に激励し、部下はそれに応えるように我武者羅に左翼部隊の救援に進軍した。
* ミネソタ ダグラス部隊 左翼 同日 12:00
包囲されても尚分散した各部隊は部隊内での連携により着々と戦果を挙げていたが、ガウの爆撃とマゼラアタックの綿密で隙のない砲撃により、1機ずつ弾薬、燃料切れを起こしては撃墜されていった。
この状況をある部隊長が話すに、
「狙いを当てるのに越したことはないが、無数となるとこちらには弾倉に限りがある。1発で仕留める戦車とモビルスーツを同等にしては数で圧倒されるとまるでハチの巣を相手にしているようだ」
モビルスーツの装甲などマゼラアタックの砲撃の1つではそう撃墜は難しい。しかし火力の集中では話が変わってくる。いくら撃墜してもアリのように湧いてくる敵の重厚な包囲網による連邦左翼の全滅が免れなくなってきていた。
全ての要因としてどちらへ向かえば良いかがわからないことに各隊すべてが悩んでいた。
そこに天の助けとも言える本体からの救援が来た。
「生きてるか!このサミエックが来たぞ!」
サミエックはオープンスピーカーで左翼に到着したことを戦場に伝えた。
ここまで到着するまでに半数のジム改を失っていた。
「この左翼はすべてオレの指揮下に入る!最初の命令だ!皆後方に向かって、ミネソタ境まで全力で突撃ー!」
バラバラになっていた各部隊が一丸になってミネソタとノースダゴタの州境に向かってひたすら突撃した。包囲網もガルマの本隊よりには余剰戦力が備えてあったが、州境方面には包囲網の壁のみであった。ジム改らの突破力はマゼラアタックを一瞬でガラクタと化していった。
よって、左翼全滅の危機は免れたがそれまでに左翼の半数が失われていた。
ガルマはその戦闘報告を聞き、今一歩だったが連邦の本隊に集中できると言った。
通信でバイソンからガルマへ連絡が入った。
「申し訳ございません。もう一息で敵に楔を打てるところでした」
「いや、上出来だ。彼らは一旦戦線から離脱した。あと残るは敵本隊と右翼のみ。攻めやすくなった」
「はっ。左様で」
「バイソン。もうひと働きしてもらうぞ」
ガルマはバイソンに敵本隊の後方に回り込み包囲網を完成させるように命じた。
その動きをダグラスが見て、本隊と右翼との残存軍の集結を図った。
ガルマは勿論その動きを見ていた。ガルマは高らかに笑った。その姿を見た副官のダロタ中尉は不思議そうに上官を見ていた。
「ハッハッハッハ・・・その覚悟潔し!ダロタ。敵が突っ込んでくるぞ」
「敵がですか?包囲されているのにですか?」
「そうだ。あの敵左翼の後退を見ただろう。突破力は計り知れない。それを見越してだろう」
「確かに、ですが我が軍を突破するなど・・・」
「確かにな。しかし色々やりようはあるぞ。我々の火力ではあの突撃を流すしかないが、より深く縦深陣へと誘い込み徐々に包囲殲滅をしていく。だが、その包囲網は明らかに薄いものとなる。そこを左右どちらかに急進して逃げ出すことも可能だ」
「では、敵はもう敗北を覚悟したと」
「そうだな。とりあえずはミネソタでの戦いはこれで終結するだろう。我が軍の勝利を持って。どちらにしろ奴らの退路は我々が断った。そして自ら退路を切り開きに死に物狂いで向かってくる。勇者たちにはジオンの礼節をもって存分にもてなしてあげよう」
ガルマは決着に2日要すると踏んでいたが、今日中につけることができると思い喜んでいた。早く愛するイセリナの下へ馳せ参じることが何よりの願いでもあった。
* ダグラス部隊 ビック・トレー艦橋 同日 13:00
右翼との集結、再編を終えたダグラス部隊は方錐陣形を取り、ジオンの一番分厚い中央部への突撃を開始した。
「突撃だ!ダグラス部隊の底力を見せてやれ!」
全軍決死の思いでマゼラアタックの海とガウの雨の中進撃していった。
その勢いはガルマの予測通り凄まじくマゼラアタックを粉々にし、ガルマ本隊へ接近しつつあった。
ガルマは上手に受け流しながら本隊をミネソタ東境ぐらいまで陣を下げていった。
それまでにダグラス部隊の残存兵力が別動隊含めて総数の2割を切っていた。
* グレイファントム 同時刻
グレイファントム艦橋でガルマ部隊の防衛線を突破しつつあるが未だ本隊との共闘が叶わないブライトは苛立ちを覚えながらも、モニターにて戦局の全体図をマチルダと眺めていた。
ブライトのその様子にマチルダは落ち着くようにと声を掛けた。
「ブライト艦長。ダグラス中将は連邦でも名将です。歯がゆい気持ちは分かりますが、貴方ひとりが戦局をコントロールできるとは思えません。目の前の防衛線を攻略した後、本隊の撤退支援に回るべきかと思います」
ブライトはマチルダを睨んだ。
「撤退!負けたというのですか!」
「ええ。完全に。さもなくばダグラス将軍があんな作戦を取るとは思えません。あれは隙を見ての急速転進撤退の構えです」
マチルダがモニターを指差すと確かに本隊の突撃が徐々に右に動く形をしている。
「将軍は自身を殿に部隊の後退をするでしょう。そういう方です」
ブライトはダグラス将軍という人の苛烈さに唖然とした。
そしてマチルダはブライトにそれが戦争というものですと諭した。
* ダグラス部隊 ビック・トレー 同日 16:00
全体の1割5分の撤退に成功させ、ビック・トレー含む残存部隊は逃げきれず孤立した。
ダグラスを始めとするすべての兵が死を覚悟しガルマの軍勢に立ち向かった。
ガルマは全軍に包囲殲滅の命を下した。
数々のジム改が1機また1機と撃墜されていき、ガルマの部隊がビック・トレーを射程内に収めた。
「これで終幕だ」
ガルマがそう言うと、ダロタはビック・トレーに砲撃を集中させるように命を下した。
その時だった。ガルマの搭乗するガウが後方より攻撃を受け、他のガウも同じく攻撃を受けて中には撃沈している艦艇も出た。
ガルマのガウは大きくバランスを崩した。ガルマは床に放り出され、体を打ちながらもなんとか立ち上がって叫んだ。
「何事だ!」
「はっ。後方より連邦の遠距離射撃です」
「バカな!そんな情報ないぞ」
ビック・トレーのダグラスにもその状況が報告でもたらされた。
オペレーターが歓声を上げた。
「将軍!ウォルフ少佐です。ウォルフ少佐のスナイパー部隊がウィスコンシン側よりミネソタへ侵入!」
「バカな・・・3部隊でのウィスコンシンの補給線攻略命令を下したのだぞ」
ありえないとダグラスはぼやいた。
このタイミングでは基地よりもガルマ隊への牽制を現場で優先したに他ならない。
かつ逐次斥候を入れながら、一番危機的状況で参戦してきた。
ガルマにとって完全に虚を突かれた形であった。狙われるなら後方の補給基地だった。そことの情報は逐次欠かさなかった。もし襲撃されたときは戦闘を取りやめ後退する手筈でもあった。
「敵が迂回して我が軍の補給基地を攻略するには時間が要る。直接的に我が軍の後背を突く方が近いが。しかし、これは・・・」
ガルマの哨戒網に引っかからないゲリラ的動きでウォルフ隊は後背より参戦に成功した。ガルマは地上軍に後方の射撃部隊の制圧を命じ、ガウも射撃が届かない程度にここまでガルマの高度を落とした。
30分経っても射撃部隊の制圧にガルマは苦心していた。
その射撃部隊の他にキッシンガムのガンキャノン部隊も参戦していた。
しかしその数は半分だった。残りはテネスと共に補給線攻略へ進軍していた。
ガルマはダグラスの包囲網を崩す訳にもいかず、予備兵力で後方の対処をしていた。
その15分後グレイファントム隊がガルマの防衛線を突破し参戦してきた。
ブライトは席から立ちあがって、艦橋に足を踏み鳴らした。
「よし!各モビルスーツ隊低空飛行しているガウを狙え!」
グレイファントムの上に鎮座しているセイラとジョブ・ジョンのジムスナイパーカスタムのライフルが的確にガルマが乗艦しているガウを始めとする数10機を矢継ぎ早に狙撃していた。
ガルマのガウは航行不能となり墜落のような形で地上へ不時着した。
ガルマは全員に退艦指示を出し、副官に次の座乗艦を探すように先に促し本人も退艦しようとした。
「屈辱だ。我がガウをここまでされるとは・・・」
それでも依然ガルマの軍は兵力的にも余裕があった。しかし、眼前のビック・トレーと後方の連邦の援軍にグレイファントムがガルマの置かれている状況に余裕を持たせなかった。
「早く、旗艦を・・・司令部を移さねば・・・」
ガルマは不時着時に腕を強く打ち、肩が脱臼していた。
そのガウに1機のドムが近づいてきた。そのドムからシャアが降りてきてガウに乗り込みガルマを探した。
「ガルマ!どこにいる」
すると、副官のダロタと通路で鉢合わせた。
「シャア中佐!司令はあちらです。代わりに救護をお願いいたします」
「了解した」
その後ダロタの説明された通路へ向かうとそこにゆっくりと肩を抑えながら歩くガルマを見つけた。
シャアの姿にガルマが応えた。
「おお、シャアここだ!」
シャアが負傷しているガルマを見つけた。ガルマは頼りになる味方の助けに安堵したが、シャアは銃を抜きそれをガルマに向けていた。
「何のまねだ。シャア」
「フフ、君は良き友人であったが君の父と姉がいけないのだよ」
「・・・混戦でこの私を消そうというのかね」
「ああ。これなら疑う余地なく私は逃れられる」
「なぜだ。・・・なぜだシャア!」
「そうだな。君には聞いてもらおう」
当初は説明する気もなかったが何故か説明した。
ガルマに自分が恨みを買う理由をすべて伝えた。
ガルマはそれを聞いて開き直った。
「なら、仕方ない。イセリナには申し訳ないがここまでのようだ」
ガルマは堂々と立ち尽くし、シャアはガルマに銃口の狙いをつけた。
その時、シャアの手に何か暖かなものが触れた。
「(その方を見逃して差し上げて・・・彼は帰りを待つひとがいるの・・・)」
シャアはその感覚に驚き銃を放した。ガルマはその行動にきょとんとした。
「どうした。シャア・・・?」
「いや、・・・どうやら私には君は殺せないらしい」
シャアは感覚で何かを悟った。そしてガルマの腕を持ち脱臼を直した。
「・・・っぐ。シャア・・・何故」
「わからんよ。しかしガルマ。君のことを私は諦めることにする。でも、君は私を裁く理由がある」
「・・・そうだな」
「だから、私は今日付けでジオンを離れることにする。もう一度自分を鍛え見つめ直した方が良さそうだ」
シャアはガルマの肩を貸してガウの搭乗口まで一緒に歩いた。
ガルマはしばらく考えシャアへ告げた。
「これは夢だったのだシャア。しかし、君に起きた不幸は現実だ。私は君とその現実に向き合おうと思う」
シャアはガルマの顔を見た。そして前に顔を戻しガルマに語り掛けた。
「君は家族を裏切ろうとするのか?辛い選択だぞ」
「構わない。私以外の家族が隠していた秘密なのだから。そしてそんな非道に加担していたならばその始末を付けるのも身内の務めだ・・・」
ガルマは口悔しい思いでいた。ガルマ自体は清廉潔白が信条であった。故にスペースノイドの代表として家族が先導することに誇らしかった。しかしそれは、陰謀によるものだとは思わなかった。知っていたとしても止めることができない。ならば力を付けなければならないと考えた。
「今は無理だ。派閥で私がジオンのトップになれば自ずと彼らを断罪し、法の下で君の主張を認めさせる。だからシャア、君はジオンに残れ。私が手伝ってやる」
「・・・有り難い申し出だ。あまり選択肢もなさそうだ。君に託そう」
「ああ、任せてくれ」
シャアは当初復讐を考えていた。しかし、アムロとの談話や様々な経験、そしてあの妙な感覚から成すべきことに疑問を感じていた。ガルマを殺さなかった。それはシャアにとって一つの成長になった。
シャアとガルマは外に出るとダロタ始めとする搭乗員が車に乗り、手を振っていた。
「司令!中佐!こちらです」
ダロタの乗る車に2人は乗り込み無傷のガウにドムを搭載して離陸した。
* ウィスコンシン上空 ガウ艦橋 11.15 9:00
ダグラス部隊は多くの犠牲を払いながらも12日に無事退却をし、遅れて15日にはガルマも後方の補給基地襲撃の報告を受けガルマ部隊の全軍をミネソタより引き揚げた。グレイファントムもノースダゴタの補給基地まで後退していた。
別動隊のテネス等3名の部隊も再び迂回しダグラスの下へ帰投していた。
3名とも命令不服従ということと本隊の全滅を防いだということで情状酌量が組まれ1週間の謹慎処分となっていた。
艦内にはシャアの姿がなかった。戦闘詳報によると重傷を負い3ヶ月入院ということだった。それは真実でなく、シャアはガルマより暇を貰い軍から少し離れることにした。
シャアはガルマにこう話していた。
「自分の気持ちを整理したいと思う」
「そうかシャア。私もやるべきことが増えたな。君が戻るまでアメリカの半分は守り抜く。私はジオンを変えねばならないからな」
「わかった。でも無理はするなよ」
シャアはニューヤークより民間飛行便で東に向けて飛んでいた。
きっとこの選択が良いのだろうとシャアは思った。復讐に取りつかれていた自分に疑問を持ち始めていた。そして立ち止まったきっかけが先の撃てなかった銃・・・その感覚が残っていた。
非科学的なことはあまり信じないシャアも直感として怪しさをその感覚に覚えた。
その感覚を知るべくインドへ向かっていた。シャアはその感覚に囚われたときインドのガンジス河が脳裏に焼き付いた。
「(焼き付かされたという方が正確か。それだけ強い残留思念・・・信じたくもないが今の私にはその勘が空振りでもすがる必要のあることかもしれない)」
シャアは飛行機のシートに深々と腰を落とし眠りについた。
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