海の底から
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
2部分:第二章
第二章
「何がいるかわからないぞ」
「そうですね。そういえば」
今度はだ。若い船員が言ってきた。
「これも聞いた話ですが」
「んっ!?何だ?」
「海の底に凄い怪物がいるらしいですね」
こう言うのである。
「何でも」
「怪物か」
「ほら、シーサーペントとかいう」
この存在のことを言うのだった。
「そういうのもいるとか」
「おいおい、それはあれだぞ」
年配の船員はこのシーサーペントのことには笑って返してきた。
「伝説だぞ」
「伝説ですか」
「ああ、伝説だ」
それだというのである。
「絶対にいる筈がないぞ」
「そうですか」
「確かに色々な話があるさ」
「はい」
「それでもな。実際にいるかどうかってなるとな」
そしてだ。若い船員にこう言ってみせた。
「いないな、そんな大昔の巨大な恐竜の生き残りなんてな」
「そうですか」
「ああ、いない」
彼は笑って断言してみせた。
「間違いなくな」
「何だ、そうなんですか」
「そうだよ。いないよ」
彼はまた言った。何時の間にか鯨と烏賊は海の中に消えた。どうやらそのまままた闘っているようである。とりあえず彼等からの注意は外れていた。
そしてだ。話も一段落した。年配の船員は若い船員に言った。
「じゃあそろそろ中に戻るか」
「そうですね。コーヒーでも飲みますか」
「ああ、そうしような」
こう話してだった。そのうえで実際に船の中に戻ろうとする。しかしここでだった。
白髪の船員が出て来た。二人と同じ服を着ている。その顔は狼狽したものだった。
「お、おい!見ろ!」
「見ろって」
「何かあったんですか?」
「これを見ろ、すぐにだ」
こう言ってだ。何かを出してきた。それは。
ソナーの反応だ。それを紙に出していたのだ。海の中に危険なものがないかどうかをチェックしているのである。尚海の上はレーダーで行っている。
そしてその紙を二人に見せる。そしてまた言ってきた。
「これ、何だと思う?」
「何だとって」
「これですか」
「ああ、これだ」
その紙の一点を指差す。するとだ。
首が細長い。頭は小さい。そして楕円形の身体に四つの鰭の足がある。尻尾は短い。それが何かというとであった。形だけでわかるものだった。
「恐竜、ですか?」
まずは若い船員が白髪の船員に言った。
「これって」
「そう思うか」
「はい、そう思います」
実際にこう答える彼だった。
「これって」
「そうだな。恐竜だよな」
「そうとしか思えませんよ」
「そんな筈ないだろ」
だがここでだ。年配の船員が顔を顰めさせて言ってきた。
「そんな、恐竜なんてな」
「しかしソナーには出てるぞ」
白髪の船員は眉を顰めさせて彼に反論する。
「こうしてな」
「この目で見ないと信じられるか」
それでも彼は言う。
「ソナーだって間違えるだろ」
「ソナーを疑うのか」
「何度も言うが目だ」
年配の船員は言い切る。
ページ上へ戻る