MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士
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040話
「来いロラン、もう一度勝負しよう」
ウォーゲーム最終決戦第二試合。メルから出るのはチームの副参謀的なポジションでジークと共にメルをここまで押し上げてきたアルヴィス。そして彼が指名したのは唯一敗北しているナイトクラスのロラン。自らと同じくファントムによって植えつけられた呪い"ゾンビタトゥ"をその身に受けている者。ロランは笑いながら競技台へと足を進め台へと登った。
「最終決戦第二戦!!メル アルヴィス!! チェスの駒 ロラン!! 開始!!」
「跳ねなさい」
戦いのゴングが告げられたと同時にロランは力を解放した。地面から無数の石の塊が浮かび上がっていきキューブ状へと整えられミサイルのようにアルヴィスへと突撃していく。以前敗北した時はこの攻撃に苦しめられた彼だが成長した今、超スピードで迫りくる石の塊程度は簡単に回避しながら余裕綽々と言った表情を見せた。
「動き方が全然違う。成長されたんですね、ではこうしましょう!レイピアウィップ」
ストーンキューブが利かないと判断し次のARMを展開する、見てくれは石で構成された鋭い剣のよう。それを見て13トーテムポールをロッドバージョンで展開し来るであろう斬撃に備える。いつも通り張り付いている笑顔のまま剣を振りかぶり思いっきり振り降ろしたロラン。ジークなどが使う常套手段である飛ぶ斬撃かと思ったが剣自体がまるで鞭のように撓りながら伸縮し迫ってくる。
「鞭かっ!ぐっ!」
伸びる剣に驚き一撃を食らってしまうが食らった肩が爆発した。伸びる剣ではなく爆発を生む鞭である事を理解したアルヴィスだが迫りくる怒涛の鞭の連打。連続で食らい続けるのは幾らアルヴィスとはいえ拙いがこの程度でやられる彼ではない。連打をロッドで捌きながら鞭を戻そうとする一瞬に鞭を掴み取り無理矢理引きちぎる。
「助けてやりたいんだ。俺の親友を!!」
「レイピアウイップを引きちぎるとは無茶な人ですね」
「奴を助ける時間が俺にはもう残り少ない。ゾンビタトゥが既に全身に回りつつある」
アルヴィスとロランの体に刻まれているタトゥ、それはファントムによって掛けられた不死の呪い。その呪いを受けると徐々に呪いが体を蝕んでいきタトゥが全身に広がっていく。やがて全身にタトゥが広がった時その人間は不死のゾンビへと変化してしまう。
「喜ばしい事じゃないですか!もうすぐは貴方はファントムは同類になれる!!私はまだまだ時間が掛かりますから羨ましい」
「ふざけるな!!」
本気で羨ましげな視線を向けてくるロランを一喝する、それでもロランは永遠の命が得られると答える。永遠に傍に居たいと思える人と共に居れる素晴らしい事だと。
「永遠の命など全ての人間が憧れる訳じゃない!!生ける屍になど誰も憧れない!!限りある命を―――大切な人と歩む事こそ人間の意味があるんだ」
「違います、大切な人と限りなく歩む事の方が素晴らしい事です」
互いの内に秘める思いを吐き出す。限りある命こそ美しく大切な人と共に過ごす命にこそ意味があり幸せであるという考えのアルヴィスと大切な人と共に永遠の時の中で過ごし続ける事こそ意味があるというロラン。
「私は、大切な人と別れる事など耐えられません。だからこそ永遠の命は素晴らしいのです!!」
広げられた純白の翼、そこから放たれる矢のような羽がアルヴィスへと向かっていく。それを防御するために片手に装備できる盾のARM"ガーデス"を展開して防御しつつ13トーテムポールを一つ一つばらばらにしつつ射出する。
ドガガガガガガガ!!!!
低い破裂音を響かせながらロランを攻撃するトーテムポール、様々な攻撃方が可能であるARMだからこそ出来る使用法。それでも翼をボロボロにするのが精一杯なのかロランは不敵な笑みを浮かべている。
「アルヴィスさん、貴方は大切なものはありますか?」
「ある。メルへヴンに住む人たちとメルへヴンの平和、そして俺と共に戦ってくれる仲間たちだ!!」
「そうですか―――私はファントムです、絶望の中にいた私を救ってくれた彼です」
「ア・バオア・クー」
ロランの言葉を聞き入れてから瞬時にガーディアンARMを発動。出現した死神のような魔の守護者はロランをバリアの中へと封印する。
「はっはやい!!」
「もしもお前がダンナさんに出会っていたら、共に歩んでいたのかもしれないな。―――バーストアップ」
呟くように言い放れた言葉は起爆スイッチを押す引き金。ア・バオア・クーの瞳がギョロリと蠢きバリアの中で魔力を爆発させた。
「ファン………トム………」
「勝者 アルヴィス!!!」
運命の扉は何処にでも存在する。人は何時も運命を選択をし自分で道を決めて進んでいる、些細な扉の違いで大きく運命は動きを変えてしまう。ある時はまっすぐ、ある時は大きく曲がり狂いまたまっすぐに進む。全く真逆の人間ももしかしたら同じ道を歩めたかもしれない人間だったのかもしれない。
「負けて……しまいましたが………アルヴィスさん、最後に一言いいですか……?」
「なんだ」
「―――女王は、欲しいと思ったものを必ず手に入れます……」
そう言い残すとロランは自らディメンションARMを発動して去っていく。
女王はディアナを示している事は間違いなくそれは望んだものを確実に手に入れる。つまりどういうことなのだろうか。アルヴィスはそれを考える前に自分の勝利を祝福してくれているメルの皆のもとへと向かうのであった。
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