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宴のゲスト

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3部分:第三章


第三章

「じゃああんたのアパートに厄介になろうか」
「酒なら何でもあるぜ」
 ジャックはさらに明るく男を誘った。
「だからな。楽しくやろうぜ」
「ああ。それじゃあな」
 男のその言葉を聞いてジャック達は目で頷き合った。そうしてそのうえでやはり目だけで笑い合う。それからウエストエンドの彼のアパートに入って。そこでまた飲むのだった。
「ほら、ウイスキーな」
「ああ、これか」
「ぐいっとやってくれよ」
 実際にジャックはそのウイスキーをストレートで飲み干した。それを男にも急かすのだった。仲間達も同時に飲んでいる。部屋の中は殺風景で何もない。テレビと食器棚に今彼等の座っているテーブルの他は何もない。そんな殺風景な部屋であった。
「こういうふうにな」
「ああ、それじゃあな」
 男もそれに応えてそのウイスキーを飲む。やはり一気だった。
「いいねえ」
「気持ちよくやったね」
「ああ、好きだからな」
 男も笑顔でエドガー達に対して答えた。
「ウイスキーが一番な」
「いいことだよ。やっぱりあれだよ」
 チャーリーは相変わらずマリファナを吸っている。そのうえで男に話すのだった。
「ウイスキーはすぐにがつんとくるからな」
「そうさ。だから酔いたい時にはこれだよな」
「全くだぜ」
 まだ明るい話であった。その時にジャックは男に対して尋ねたのだった。
「それでさ」
「ああ。今度は何だい?」
「あんたの名前だけれどな」
 彼が今度尋ねたのはこのことだった。実はまだ名前を聞いていなかったのだ。
「何ていうんだい?」
「俺の名前かい?」
「そうさ。何ていうんだい?」
 このことを彼に尋ねるのだった。
「あんたの名前な。一体」
「俺か。俺はヘンリーっていうんだ」
「ヘンリーかい」
「ヘンリー=グライム」
 こう名乗るのだった。
「これが俺の名前さ」
「リングネームもそうかい?」
「そうさ」
 もう一杯ウイスキーを飲みながら笑顔で答えるのだった。
「その通りさ。そのまま使ってるんだよ」
「わかったさ。じゃあ覚えておくな」
「頼むぜ。またすぐに試合があるからな」
「ああ」
 彼がそのヘンリーの相手をしているうちにだ。エドガーが彼の後ろに回り込み食器棚の中からあるものを取り出してきた。それは本来食器棚の中にはないものだった。
 鉈であった。とてつもなく大きな鉈であった。それを持って来てまだジャックと楽しく話しているヘンリーの真後ろに来てそのうえで。その鉈を思いきり振り下ろしたのだった。
「ぐっ・・・・・・」
 彼は何が起こったのかわからなかった。そのまま意識を急激に失っていく。こうしてここで意識を失ったことは彼にとってせめての幸せであった。
 彼はそのまま前に倒れ込んだ。頭の後ろからどくどくと濁った血を流している。この時点でまだ生きているかどうかは不明であった。
 しかしそれだけではなかった。ヘンリーが倒れるとジャック達は満面に笑顔を浮かべてそのうえで。すぐに彼をシャワールームに連れて行った。
「用意はできているよな」
「ああ、勿論な」
「それはできているわ」
 またエドガーとエリスがジャックの問いに答える。四人がそれぞれ頭から血を流しそれで床を汚しているヘンリーの両手両足を持っていた。
「よし、じゃあな」
「これを放り込んでな」
「まずは茹でるか」
 さながら食材、しかも肉を茹でるかのような言葉であった。
「それからだな」
「それにしてもよ」
 ジャックはへらへらと笑いながらチャーリーに尋ねた。
「こいつ生きているかな」
「さあな」
 ヘンリーは平然と笑って彼に返した。
 
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