ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜
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第五十一話 激闘
前書き
3DS版ドラクエ8がやりたすぎですが、やれない……。
たぶん自分がプレイできるようになる頃にはもっと面白いドラクエが出ているんでしょうね。
ちなみにキメラはドルマゲス(第二形態)、オークはガマデウス並みに強くさせてあります。
本編でこんなの出てきたら軽く絶望しますね。
「さて、次はこっちからだ」
オークのザオリクで復活させられたキメラが嫌な笑いを浮かべながら、ベギラゴンを唱えた。
「マヒャド!」
マヒャドを唱えてキメラのベギラゴンを何とか相殺する。そのままキメラにメラゾーマを唱えようとした時だった。
「ミレイ!」
「えっ?」
ジョーが叫んだ意味がわからず少し呆然としていると、オークの槍が私を狙っているのが目に入った。
やばい!このままじゃ串刺しにされる!
咄嗟に私は後ろに飛ぶことで辛うじて槍を避けた。
「ありがとう、ジョー」
ジョーが叫んでくれなかったらあのまま私は串刺しになっていた。
「礼なら戦いが終わった後にしろ、ミレイ」
ジョーはそう言ってメタルキングの剣を構えて、オークとキメラに向かい合った。
「そうだね」
私は息を整えると、キメラではなくオークにメラゾーマを放った。メラゾーマがオークにぶつかって、オークが呻き声をあげた。
傷ついたオークにキメラはやれやれといった感じでベホイミを掛けようとしたその隙に、アベルがキメラにバギクロスを唱えてキメラを切り刻む。
更にマーリンがベギラゴン、メッキーが凍える吹雪でキメラとオークに全体攻撃をした後、ピエールとジョーがオークにトドメを刺した。
「く……そ……が」
そしてキメラも、最後に毒づいて消滅していった。
「これでまだ前座とは……」
マーリンが汗を拭いながらポツリと言った。
「確かにあの2匹は強かったけど、あいつらを倒せたんだからきっと親玉だって倒せるよ」
私は励ますように言ってから、ホイミンちゃんと皆の手当てをした。
*
「どうやら、あの2匹がやられたようですね」
青白い炎が光源の、薄暗く瘴気に満ちた部屋。そこでアベル達の戦いの一部始終を見ていたゲマはジャミに言った。
「申し訳ありません、ゲマ様!あの2匹はかなりの精鋭のつもりだったのですが……」
跪き、許しを乞おうとするジャミにゲマは優しく笑いかけた。
「気にする事はないのですよ、ジャミ。
キメラはともかくオークの方は、魔法の適正がない魔物にどこまで魔法を使えさせられるかの実験体。代わりなどいくらでもいるのです。
使い捨ての駒よりもあなたは自分の役目を優先させなさい」
「はい、わかりました。ゲマ様」
ジャミはゲマに敬礼した後、自分の持ち場へと戻っていった。
「さて、そこのゲバン大臣」
ゲマの黄色い瞳に見られたゲバンは「ヒッ」と怯えた声を上げた。
「あなたは今回のグランバニア襲撃に関しては本当によく役立ってくれました」
ゲマは柔らかい声色で言葉を紡ぎながら、ゲバンの青褪めた頰をゆっくりと指で撫でる。
「さて、あなたの役目はこれで終わりですが……この後どうしましょうかね?」
「この後も何も、私にはもうグランバニアには居場所は無い。光の教団に身を寄せるしかない」
震えながらも、ゲバンは何とか言葉を絞り出した。
ゲバンの言葉を聞いたゲマは可笑しそうに笑いを浮かべる。
「何が、可笑しいのだ」
「失礼、ゲバン大臣。でも自分の境遇をまだ理解していない貴方が可笑しくて可笑しくて」
ゲマが言葉を紡ぎだせばだすほど、ゲバンの頰を撫でる指は早くなっていく。
「私は、あなたの役目は終わりと言ったのですよ。つまりあなたとはもう協力関係はなくなったという事」
ゲマのその言葉で大臣はこれから自分がどうされるのかを察した。
「やめろ、ゲマ、頼む、何でもする。光の教団の奴隷にでも何でもなるから命だけは!頼む、頼む、どうか、ですから、それだけは!」
「さて」
大臣の狂乱を見たゲマは、その瞳に邪悪な喜びを浮かべた。
「あなたを、この後どうしましょうかね?」
そしてしばらくの間叫び声が響き、血が辺りに飛び散って、やがて辺りは静寂になった。
*
キメラとオークを倒した後私達は隠し通路を見つけて、そこを探索していたところで何かを見つけた。
最初は周りが暗くてよくわからなかったけど、近づくうちにそれが血まみれになった人間だという事がわかった。
すぐにベホマを使おうとした時、声が聞こえてきた。
『もう手遅れです。いかなる手段を使っても私はもう生者には戻れない』
声がした方向を見るとそこには青白く、半透明なゲバン大臣がいた。
「ゲバン……」
アベルは憎しみの籠った瞳で大臣を睨んだ。
『アベル王、誠に申し訳……いや、私がいくら詫びても意味など最早ありますまい。ですが私がグランバニア城を魔物に襲撃させた事、その真意だけはあなたに伝えておきたかったのです』
そしてゲバン大臣は語り始めた。
グランバニアという国をとても愛していた事。祖国の為に大臣になった事。でもオジロンさんが王の器ではない事を知り、オジロンさんではなく自分が国を治めなくてはと思った結果暴走して、魔物と手を組んだ事を。
「ゲバン、お前がした事は許されない事だ。例えそれがグランバニアへの思いが由来だったとしても」
『それはわかっております。私はどうしようもない程、愚かでした』
自分を自嘲する大臣に、続けてアベルは言った。
「僕はお前がした事を許すつもりはない。……だがオジロンはお前の事を深く信頼していた。お前が魔物と手引きをしたとわかっていても尚信じていようとした。お前の言葉はオジロンに伝えておく」
『ありがとうございます、アベル王……。どうか、グランバニアに生きて戻ってください……』
大臣はその言葉を最後に、旅立っていった。そして、大臣の亡骸も塵のようになって消えていった……。
*
ゲバン大臣の最後を看取った後、更に奥に進むと広い部屋にたどり着いた。
部屋の中心には玉座があって、それに座っているのは巨大な、馬を無理やり2足歩行させたかのような魔物。そして玉座の近くの柱にはビアンカが縛り付けられていた。
「よく来たな、グランバニア王。だが来ない方が良かったな。大臣を利用してこの女を連れ攫ったのはお前を誘き出し、俺自身が国王に成り代わる為だ」
「それはさせない!」
アベルが叫ぶが、魔物は面白そうに目を細めた。
「ほぅ。なら俺を止められるかどうか、お前たちを物言わぬ屍に変える事で教えてやろう」
魔物は玉座から立ち上がると、獰猛に叫んだ。
「我が名はジャミ!光の教団大司祭のゲマ様の側近だ!」
「行くぞ、皆。ビアンカを助けて、グランバニアに生きて戻ろう」
アベルは剣を構えて、皆もそれぞれの武器を構えて、私はジャミを見据えてーー。
そして激闘が始まった。
後書き
大臣が魔物と手引きした理由ですが、この小説では愛国心が高かったあまり「グランバニア王家ではなく自分が治めなくては」という思いに駆られた結果という事にしています。
でもそれが背景にあろうともアベルも言っている通り、大臣のした事は許されないものですが……。
さて、次回はジャミとの戦い。そしてミレイに試練が訪れます。お楽しみに。
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