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ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜

作者:むぎちゃ
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第五十話 忍び寄る影

 
前書き
骨折前に書いたやつ2話目です。 

 
 デモンズタワー東塔。
 アベル達が足を踏み入れた途端、そこは激戦区と化した。
 どこからか現れたのか強力な魔物達がアベル達を取り囲んでいた。

「ピエール、イオラをホークマンを中心に。ドラきち、君はアームライオンにマヌーサを。スラりんはスクルト、メッキーは凍える吹雪を全体に」

 アベルの指示通りピエールの放ったイオラがホークマンの群れを吹き飛ばし、ドラきちのマヌーサがアームライオンの視界を封じ、スラりんのスクルトがアベル達を覆い、メッキーの凍える吹雪が周囲の魔物を纏めて凍りつかせ、動きを止めた魔物をアベルのバギクロスが一網打尽にした。
 その後もアベル達は探索を続けていたが、戦いの手が休まることは殆どなかった。
 魔物の一体一体が強いという事もあるが、何より数が多い。アベル達も強さという点では負けてはいなかったが、ただでさえメンバーを分けてしまっているのに、量での戦いになると苦戦を強いられてしまうのが厄介だった。
 この先に待ち受けているであろう強大な存在を考えればここで無駄な魔力を消費するわけにもいかないが、ビアンカの事を考える以上迅速な敵の殲滅を優先させなくてはならず、結果として数度の戦闘でさえかなりの魔力を消費せざるを得ないのが現状だった。
 そしてアベル達の行く手を阻むのは何も魔物達だけではない。
 デモンズタワーの内部には、床から飛び出す槍や、突如壁から放たれてくる矢といった罠が至る所に仕掛けられていた。
 魔物との休みない激戦の連続に、罠に注意しなくてはいけないこの状況でアベル達の心身は確実に消耗していた。

 だが、それでも彼らは進んだ。ビアンカを必ず取り戻すという想いのもと。決して諦めず。

 もう何度目になるか数えるのも馬鹿らしくなるくらいの戦闘の後、アベルはふと気付いた。
 父が母を助ける為に世界中を旅していたのも、自分達が今こうしてビアンカを助ける為に向かっているのも同じ事だと。
 そして父と自分はどこまでも親子だという事を。




「ベギラゴン!」

 マーリンが後ろの魔物の群れをベギラゴンで一掃してくれた。
 私はマーリンに感謝しつつ前方の魔物の群れをマヒャドで凍りつかせる。

「皆、怪我ない?」
「……大丈夫だ」
「儂も特に負傷しておりませんな」
「僕も大丈夫だよ」
「ホイミンちゃんと、マーリンとジョーは大丈夫と。ゲレゲレは?」
「ガウッ」

 大丈夫だと言うかのようにゲレゲレは小さく吠えた。
 
「よし。それじゃあ次に進もうか」

 私がそう言って、廊下を歩き出した瞬間だった。
 
「痛!」

 いきなり足に激痛が走った。
 足を見てみると靴の底に穴が空いていて、そこからたくさん血が流れてた。

「ミレイちゃん、大丈夫!?」

 ホイミンちゃんが慌てながらも、私にベホイミを掛けてくれた。足中に走っていた鋭い痛みが一瞬にして消える。

「ありがとう、ホイミンちゃん」

 ホイミンちゃんに感謝しながら、私は床を見る。
 そこにはたくさんの針が飛び出していて、そのうちの一本には私の血がこびりついていた。

「どうやら罠が仕掛けられているようですな。ミレイ殿、ここは遠回りを」
「うん」

 針山から私達は遠ざかって、別の廊下に入り先を進む。
 道中の戦闘に加えて、罠があるかどうか調べる為にインパスをいちいち使わなくちゃいけないからたくさん魔力を使う必要はあるけど、途中で体力と魔力を全回復してくれる魔方陣を見つけたのは大きかった。

 でも、アベル達の方にも回復の魔方陣があるとは限らないから早くアベル達と合流しなきゃと強く思った。


 魔物との連戦を潜り抜けて、なんとかアベル達と合流してその間も必死にデモンズタワーを登って行っていたけど、最上階にたどり着いた時に私達の目の前に2匹の魔物が現れた。
 1匹は毒々しい色をした翼を持つ巨大なキメラ、もう1匹は苔の色の体毛をしている巨大なオークだった。

「おい、見ろよ。あの女を取り戻しに来た人間達だぜ」

 キメラが嗄れた声でオークに言うと、オークは頷きながらこう言った。

「あの女は旨そうだったがあいつはジャミ様の物だからな。ここにいる奴らで存分に腹を満たすとするか」
「ふざけるな!僕たちはビアンカを取り戻すためにここまで来たのに、お前らみたいな奴らに喰い殺されてたまるか」

 アベルは叫びながら、敵に向かって勢いよく飛ぶとメタルキングの剣をオークに向かって振り下ろした。
 オークはその両手に持った槍でアベルの一撃を受け止めると、そのままアベルを吹き飛ばす。
 落ちてくるアベルを咄嗟にゲレゲレが受け止めた。

「ありがとう、ゲレゲレ」
「ガウ」

 ゲレゲレに礼を言いながらアベルは体勢を立て直して、再びオークに立ち向かっていく。
 アベルが剣を振り下ろすタイミングに合わせてバイキルトを唱え、アベルに続いてオークに向かっていくゲレゲレ、ピエール、ジョーにもバイキルトを掛ける。
 最初こそオークは槍でアベル達の攻撃に対応していたけど、その内対処しきれなくなって体に傷が作られていくのを見ると舌打ちして叫んだ。

「キメーラ!こいつらは厄介だから一旦お前に任せた!」
「随分情けねぇな。まぁ別に引き受けてもいいがその分俺に寄越せよ」
「いいから、早くしろ!」

 オークがその体からは信じられない程の身軽さでその場を跳んで離れると、キメラがオークと入れ替わる形で躍り出た。

「じゃあデカイのを最初からやるか。喰らえ、ベギラゴン!」

 キメラが唱えた瞬間、黄金の炎が凄まじい熱と勢いを持ってアベル達を襲う。
 私は急いでマジックバリアを唱えたけど、マジックバリアがその効果を発揮したのはアベル達が灼かれた後だった。
 ホイミンちゃんが慌ててベホマラーをアベル達に唱えて、傷を回復したけどその間に相手は更なる攻撃の準備をしていた。

「マヒャド!」
「ベギラゴン!」

 キメラが放ったマヒャドをマーリンのベギラゴンで相殺した後、私はキメラにメラゾーマを放った。キメラは呪文を打ったばかりで反応が遅れ、メラゾーマが直撃する。
 続いて2度目のマーリンのベギラゴン、アベルのバギクロスがキメラに直撃してキメラは崩れ落ちた。
 まだ辛うじて生きているようだけど、あのまま消滅するのも時間の問題だろう。そう考えて私はオークの方を向いた時信じられない言葉を聞いた。

「ザオリク」

 オークがその言葉を言った瞬間に金色の光が後少しで消滅しようとしていたキメラの体に降り注ぎ、キメラが復活する。
 完全な体を取り戻したキメラはオークにベホイミを掛けるとニヤリと嫌らしく微笑んだ。

 

 
 



 

 



 
 

 
後書き
原作との変更点。

原作ではキメーラ35とオーク20はそれぞれ別々に戦いましたがこの小説では一緒に戦っています。
そして原作では大して強くもない(ていうか弱い)ボスであるこいつらが大幅な強化。
キメーラはベギラマ→ベギラゴン、ヒャダルコ→マヒャドが『現時点での』変更点。
オークはザオリクを使うのが『現時点での』変更点です。

 そういえば大臣が出てくるのを飛ばしていましたが、ジャミ戦前に持っていきます。 
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