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山から洞窟へ
現れた少女は、以前魔法図書館で襲ってきた吸血鬼らしい少女だった。
確かこの魔道書を狙っていたようなと僕が思っていると、
「あれ、エイダ、どうしたの?」
「うげっ、リリア……何であんたがこんな所にいるのよ」
「だって私、レイアの友達だもの。一緒に旅行くらいはするでしょう?」
「旅行ね……まあいいんじゃない? 楽しめる時に楽しんでおくのは一番だから」
そういってちらりとレイアの方を見るエイダ。
レイアがぎゅっと杖を握り締める。
何か別の意味があるのだろうかと僕が思っているも、そこでエイダは僕を指さして、
「それで、そこの貴方、その魔道書を寄こしなさい!」
「……選ばれないと、中身が見れないのでは?」
「そこは根気よく説得よ。それで私は29冊は落としたわ。そして30冊目がその魔道書になるの!」
「でも僕には魔道書はこれ一冊しかありませんよ?」
「代わりに好きなだけ別の物を上げるわ! だってそれは貴重な本だもの、私のコレクションに加えたいわ!」
「……集めるだけなんですか?」
「そうよ、魔道書という過去の魔法使い達の英知の結晶を集めるのが私の趣味なの!」
「はあ、そうですか。それで、“ニートナ備忘録”だったかな?」
そんな彼女の話を僕は聞きながら読み途中の、魔道書に、
「それで君はどちらにつきたい? ……そう簡単に僕の頭に当たれると思うなよ」
持っていた魔道書が僕の顔に近づいて雇用とするので必死で手で押さえこみつつそう答える。
それにエイダは、
「ふーん、じゃあ力づくで奪わせてもらうだけよ。貴方みたいな拙い初心者の様な魔法で私が倒せるとは思わない事ね」
「この前は吹き飛ばした気が……」
僕がそう告げると顔を赤くして彼女は、
「こ、この前は油断しただけよ。というわけで勝負!」
そういいだしたエイダ。
僕としてはあまりしたくなかったのだけれどそこでリリアが、
「じゃあこういうのはどうかしら?」
そして、面白いわねとエイダはそれに乗ったのだった。
その黒い山に登る途中、何匹もの魔物と呼ばれる凶悪そうな怪物に出会う。
それを僕の魔道書で学んだ魔法の一部を使ったり、リリアが意外にもナイフを使って敵を倒していたり、レイアが魔法を使ったりしていた。
意外に現れる敵はそれほど強くはない。
すでに10組程度は倒しただろうか。
そこで洞窟の入口にやってくると、丁度エイダと鉢合わせする。
僕達よりも早くに進んだはずだが、その分だけ敵と遭遇しやすかったのかもしれない。
一方僕は後から来たので、僕達はそれほど魔物と遭遇しなかったのかもしれない。
そもそも彼女一人で倒しているのだからその時点でフェアな競い合いとは言えないのではと思っていたが、
「く、“魔法結晶石”の高度な核は私が手に入れるんだから! そしてその本は絶対に手に入れてやるぅうう」
そう叫んでエイダは一人洞窟の中へ。
彼女の周辺に灯りは見えない。
この洞窟は中がうすぼんやりと光っている。
「どうしてここはこんなに明るいのかな?」
「山にある魔力を光として放出しているのです」
レイアがそう答える。
流石は異世界、不思議な物がある物だと僕は思ってそこで、
「早く行こうよ!」
リリアの言葉に僕は頷いたのだった。
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