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髑髏の微笑み

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3部分:第三章


第三章

「よおリー」
「ああ、話は聞いてるよ」
 リーもにこやかに笑って彼に対して言った。
「婚約したんだってね。おめでとう」
「ああ。ところで前の話覚えてるか?」
「不吉な相のことか」
「そうさ。それはまだ俺の顔にあるかい?」
 酔いの回った赤ら顔で尋ねる。
「どうだい?見えるか?」
「ああ、まだあるな」
 リーはそれに応えて言った。
「しかも近付いている」
「外れそうだな、それは」
 今幸せの絶頂にある彼はそれをすぐに否定した。
「残念だったな、外れて」
「そうだったらいいけれどな」
 だがリーは深刻な顔を崩してはいない。
「一つ言っておく」
 彼はそのうえでディックに述べた。
「首には注意しろ」
「首にか」
「そうだ。何か顔にそれが見えるんだ」
 ディックの顔を眺めながら言い続ける。
「どういうわけかはわからんがな」
「そうなのか」
「まあ安心しろ」
 リーは表情を穏やかにさせてこう述べた。
「危機は確実に避けられるみたいだからな」
「そうかい。だったらいいけれどな」
「しかし妙だな」
「まだ何かあるのか?」
「いや、あんたの顔に浮かんでるそれだけれどな」
「ああ」
「こんなのは見たことがない。それは」
 そしてまた言う。
「相当得体の知れないものらしいな。それだけは覚えておいてくれ」
「何かわからねえがわかったぜ」
 ディックはそれにまた前と同じ返事をした。
「気をつけるさ。それで今日は」
「ああ、わかってる」
 リーは元のにこやかな顔に戻ってそれに応える。
「あんたの幸せに乾杯だ」
「そう、有り難う」
 この日はそのまま浴びる様に飲んだ。したたかに飲んだディックはふらふらと歩いて宿舎に帰る。その途中で路傍にある石に気付いた。
「大きな石だな」
 人の頭程もあった。そのうえやけに丸かった。人の頭に似ている。
「よお」
 酩酊寸前だった彼はその酔いのまま石に声をかけた。自分でも半分以上訳がわかっていない。
「俺今度結婚するんだよ」
 こう声をかけた。
「よかったら来るかい?」
 酔っていても石が言葉を言う筈がないのはわかっていた。全ては酔ったうえでの戯れであった。それはわかっていた。だが。異変が起こった。
「ああ、わかった」
「!?」
 何処からか声が聴こえた。ディックはそれを聴いて顔を顰めさせた。
「何だ、誰かいるのか!?」
「何を言ってるんだ、今話し掛けてくれたじゃないか」
「っていうと」
「そう、私だよ」
 声は石からだった。驚いたことに石が話しているのだ。
「な、そんな馬鹿な」
「おかしなことを言うな。自分から声をかけてくれたのに」
「おい、何で石が」
「石も喋るものだ。それよりな」
「うう・・・・・・」
 あまりのことで言葉が出せない。酔った頭であれこれ考えているうちに石はまた言った。
「楽しみにしているからな」
 そこまで言うとさらなる異変が起こった。その丸い石が。一瞬だが髑髏に見えたのだ。
「なっ!」
 驚きの声をあげてしまった。だが次の瞬間には。石は何処かに消えてしまっていた。周りを見回しても何処にもなかった。まるで煙の様に消え失せてしまっていた。
「・・・・・・飲み過ぎたかな」
 ディックはそう思った。いや、思うことにした。
「寝るか。幾ら何でもこんなのじゃまともに動けやしないしな」
 そう自分に言い聞かせて宿舎に戻った。全てを酒のせいにして眠りに入った。それでその石のことは忘れた。そしてそれから暫く経ち婚礼の日となった。

 
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