魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第二十八話 事件解決
「さっきまで戦意喪失していたクローンとオリジナルか……まあ、意味はないけどね」
スバルはそう言うと手を振る。それと同時にコピー達がそれぞれ獲物を持ってフェイト達に迫る。
「はぁっ!!!」
「やぁっ!!!」
しかし、そんなコピー達の攻撃をフェイトとアリシアは自身のデバイスの一振りで蹴散らす。
「なっ!?ふ、ふん、マグレだね。こいつらはお前らと同じ実力を持っているんだ。待っているのは引き分けという無残な結果さ!」
スバルは叫ぶ。それに呼応してかコピー達も立ち上がり再度攻撃しようとするが
「私たちは負けない!」
「負けられない!」
フェイトとアリシアの気迫に気おされてか動けないでいた。
「お、お前ら動け!?何で動かないんだ!?」
スバルはうろたえる。こんな筈ではないからだ。
彼女達が動けない理由をスバルはわかっていた。いや、わかってはいるがわかりたくなかった。
コピー達は……怯えている。自分達よりも相手の方が実力が上だと察したからだ。
しかし、彼女たちにそんなプログラムを施した覚えがスバルにはなかった。
すると、コピー達はそのまま倒れこみ気絶してしまう。
「な、何でだ……何で……」
スバルは信じられないといった表情でその場に座り込んでしまう。
「あなたの悪行もここまでです」
「スバル・カルヴァドス。あなたを逮捕します」
フェイトとアリシアは自身のデバイスを油断なく構えたまま、スバルににじり寄る。
「ふ……ふ…………ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
そう叫ぶと、スバルは近くにあったコピー達が使っていた鉄パイプの一本を握り締め、フェイトに振るう。
「っ!しまっ!?きゃぁっ!!」
「フェイト!!!」
「動くなっ!!!」
スバルはフェイトの首に腕を絡ませて絞める。フェイトは人質にされてしまったのだ。
「フェイ、ぐっ!?くぅ!!」
「全!動いちゃダメ!」
全は助けに向かおうとするが、腕と腹に激痛が走りその場に倒れこむ。
「ダメだ……フェイトを助けないと……!」
「でも、その体じゃ……!」
「そこのお前らも動くなっ!これを押されたくなかったらな!」
スバルはそう言うと懐から何かのスイッチを取り出す。
「この研究所はいざという時の為に爆弾が仕掛けられていてね……しかも、ここでの研究成果は他の同じ研究所に一斉に送信されるという仕組みになっている」
「まさか、貴方……ここで、爆弾を……!?」
「そうさ、動くなよ。このスイッチを押されたくなかったらな……」
そろそろと後ろへと後退するスバル。アリシアと全、るいは動こうにもスバルの腕にフェイトがいるため、動こうにも動けない。
「ふっふっふ……やっぱり、僕は勝者なんだ……生まれながらの勝者……僕が負ける事なんてありえないんだ……」
そんな事を呟きながらどんどん後ろへと下がるスバル。
このままでは逃げられる、と全が思った瞬間
ガシッ!!!!!!
何かの腕がスバルを羽交い絞めにした。
「っ!な、だ、誰だ!?」
羽交い絞めにされた事でフェイトはからくも脱出。すばやく距離を取る。
そして、スバルを羽交い絞めにした人物を見て誰もが硬直した。
それは
「「父さん!?」
「「アリットさん!?」」
「兄さん!?」
他でもない、先ほどまで死に体だったアリット・テスタロッサだったからだ。
「これ以上罪を重ねるのは……止めろ、スバル……!」
「何をする!?離せ!!」
じたばたともがくスバル。アリットは先ほどまで縛られていたせいであまり力が出ないのか、勢い任せに振りほどかれる。
「うわっ!?」
「父さん!」
フェイトとアリシアは自身の父親に近寄る。
アリットは目を開かずに、声のする方に顔を向ける。
「おお、アリシアに……アリシアとは違う声がフェイトだな……」
「父さん、目が……?」
父親が目を空けないのを目が見えないと取ったのかフェイトがそう質問する。
「いや、お前たちの死を見たくはないんだ……娘の死なんて、見たくはないんだ……」
「あ……」
その言葉で先ほどのスバルの言葉を思い出す。アリットには死が見えている。
その死という物をアリシア達にも見てしまうから、目を開けたくはないのだろう。
「はぁ、はぁ……何でだ、何で起きれている!?お前から因子を抽出し尽した!その果てに待っているのは死の筈だ!!」
スバルは息を荒げながらそう叫ぶ。
「ああ、確かに死に体だったさ……でもね。人間の生命エネルギーっていうのは無限に湧き出る物なのさ。そうそう簡単に吸い尽くせはしない。ましてや……ずっと俺と一緒に生きてきた目の力だぞ?」
「くそくそくそ……なんで僕の思い通りにならないんだ……兄さんも、お前らも!!!!」
「人生さ、そうそう上手くはいかないものさ」
こうして、この事件は幕を閉じた。
事件の顛末を言及しておこう。
スバル・カルヴァドスは逮捕。あの研究所は閉鎖された。
計画によって作られた子供達は管理局で厳重に保護。その後の生活を約束された。
そして、この計画によって一番の被害者であるアリット・テスタロッサだが……奇跡的に回復した。
どうやら、最低限の食事だけは与えられていたみたいで最低限の治療とリハビリだけで日常生活に支障をきたさないまでに回復した。
そんなアリットが最初にしたこと、それは特殊なコンタクトレンズを使用して、アリシア立ちを見る事だった。
「…………おお、アリシアにフェイトか……こんなにも成長して……本当に、嬉しいよ……」
「父さん……!」
「お父さん……!」
フェイトとアリシアはアリットに抱きつき、涙をこぼす。
仕方ないだろうとその場にいた全は思う。なぜならいないと思っていた父親に会えたのだ。
「全もありがとう……おかげでお父さんに出会えた」
「ん?」
気がつけば全の近くまでフェイトが来ていた。
「俺のおかげって訳じゃないさ。会うべくして会えた。それだけだろ?」
「でも、全がいなかったらと思うと……」
全ははぁ、とため息をつくと骨折していない左手でフェイトの頭をぽんぽんと叩く。
「だったら、今の時間を大切にしろ。これから幸せになれ、俺に礼を言うのはそれからだ」
「あ、うん…………」
フェイトは頭を撫でられてほんわかした顔になる。
そして、それを見て頬をぷくっと膨らませる姿があった、アリシアである。
(フェイトってば、一人だけ抜け駆けなんて……!くっ!)
今の二人の態度などを見ればわかるかもしれないが、二人とも記憶を取り戻している。
それは一重にアリットとプレシアのおかげでもある。
―アリットがプレシアと再会した日―
『遅かったじゃない、フェイトアリシ…………』
家のドアを開けたプレシアは硬直する。
なぜならそこには
『や、やあ……あ、あはは…………』
行方不明であった自身の夫がいたからだ。
『あ、アリット……?』
『うん、そうだ……遅くなったけど、ただいま……』
『……おかえり、アリット!!』
嬉し涙を流しながらアリットに抱きつくプレシア。
『はは、本当懐かしいよ……あの頃が……』
『これから、取り戻しましょう……?』
『ああ……』
いきなり二人の世界に入ってしまったため、フェイトとアリシアは立ち尽くしてしまう。
『あら?ごめんないさいね、二人とも。アリットが帰ってきた事が嬉しくて……』
『本当に済まないな。何分数十年ぶりの再会だったからね……これに秀二やアトレもいればあの時のメンバーが全員集合だったんだが……』
『秀二?アトレ……?』
『ああ、その辺はまだ思い出していないのか。プレシア、あの写真を』
『いいの?二人に見せても……』
『いいさ、アリシア達は大丈夫だ』
『……わかったわ』
そう言ってプレシアは皆を家に入れて自室へ向かい、そこから一枚の写真を取り出して持ってくる。
『これは当時の写真……ほら?私とアリットの隣にいる男性と女性が秀二とアトレ……全君のお父さんとお母さんよ』
そして、フェイトとアリシアは写真を見た瞬間、記憶がかちりとはまった、そんな感覚になった。
『そっか……私達……』
『全と……昔、会ってたんだ……』
フェイトもアリシアもこれで合点がいった。昔に会っていたからこそ、全は知っていたのだ。
アリットの事を。そして、私達の事も。
あの映像はやはり過去の映像だったのだ。そうアリシアとフェイトは直感でわかった。
………………………
……………
……
…
こんな経緯があってフェイトとアリシアは記憶を取り戻した。
しかし、ここで問題が発生。
フェイトはそこまで全の事を頭ごなしに拒絶してはいなかった。
しかし、アリシアは違う。結構拒絶してきた。
それが負い目となっているのだろう。アリシアはあまり全と一緒に行動する事が出来ないのだ。
「アリシア」
「父さん……?」
「行ってきなさい」
「え?でも……」
「大丈夫だよ。全君はあの秀二の血を継いでいるからね……多少の事は水に流すよ」
「父さん……」
「好きなんだろ?アタックし続けないと誰かに取られるよ?フェイトしかり、あの時の女の子しかりね……」
「ええっ!?や、やっぱりなの……?」
「うん、そこの所も秀二似なんだろうね、鈍感な所とかも……」
アリットはしみじみとしながらそう呟く。
「ま、負けられない……!」
そう呟いて、アリシアは意を決して全の所へと向かう。
それを見ながらアリットは風を感じながら、呟いた。
「全君……君がその運命に負けないように、見守っているよ」
後書き
はい、というわけでフェイトとアリシアは記憶が戻りました。
ちなみに僕の中ではアリットとプレシアはバカップルという感じですwww
次回からはいよいよ、はやてさんの記憶が戻りますよ。はやての記憶が戻った後はちょっと、ね……。
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